ロックアップ解除を利用して18万円の利益をあげた投資事例

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新規公開株(IPO)は誰でもすぐに売却できるわけではありません。大株主には「ロックアップ」という制限がかかっている場合があり、この制限の関係で株価が一定の水準にならないと売却できないことがあります。

実は、このロックアップを利用して利益をあげる方法があります。今回は、この方法についてお伝えしたいと思います。

1. ロックアップとは何か?

新規公開株(IPO)には予め大株主がいます。

会社の経営者や役員、従業員など会社の関係者の場合が多いですが、会社の取引先や関連会社(いわゆる利害関係者)も株式を保有している場合があります。

また、ベンチャーキャピタル(venture capital、略称:VC)という投資会社も参加している場合があります。ベンチャーキャピタルは、投資家から資金を集めファンドを組成して未公開の企業に投資をします。そのため、会社の関係者や利害関係者とは異なり、大株主といっても儲けるために、上場後すぐに売却してくることが予想できます。

ただ、IPOの新規上場後に大株主が、無制限に大量の保有株を売ってしまったら、売り圧力が強すぎて株価が暴落してしまう危険性があります。

それを防ぐために、「上場後一定期間、若しくは一定の株価にならなかったら、大株主は保有株を売ってはいけません」というルールがあります。

これを「ロックアップ」といいます。

具体例を見てみましょう。

1.1. 大株主が会社関係者で構成されている場合

  • 安江工務店(1439)
大株主 利害関係 単位(株) ロックアップ
安江博幸 代表取締役社長 493.040 180日間売却不可
安江行彦 血族 160,800 180日間売却不可
安江久樹 血族 106,400 180日間売却不可
安江将寛 血族 56,000 180日間売却不可
安江かおり 特別利害関係者など 46,400 180日間売却不可
従業員持株会 特別利害関係者など 35,600  
山本賢治 専務取締役 14,640 180日間売却不可
安江紀江 代表取締役社長の配偶者 12,000 180日間売却不可
印田昭彦 取締役 10,160 180日間売却不可
奥田勇 特別利害関係者 6,000 180日間売却不可

このように同社の場合はほとんどの大株主が経営者の一族で構成されています。

ほとんどの大株主に上場から180日間売却することができないロックアップがかかっていますが、唯一、ロックアップがかかっていないのは従業員持ち株会です。こちらは従業員の積立用に運用していますので、すぐに売却されることは考えられません。

結論として、同社の場合は大株主の状況を見ると大株主がすぐには売却してこないことがイメージできます。

1.2. 大株主にベンチャーキャピタルが含まれている場合

ゲームウィズ(6552)

大株主 利害関係 単位(株) ロックアップ
今泉卓也 代表取締役社長 3,100,000 270日間売却不可
インキュベイトファンド2号 ベンチャーキャピタル 2,300,000 270日間売却不可
YJ1号 ベンチャーキャピタル 1,244,000 270日間売却不可
ジャフコSV4共有投組 ベンチャーキャピタル 996,000 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
インキュベイトファンド3号 ベンチャーキャピタル 560,000 270日間売却不可
真壁雅彦 取締役 216,000  
阿部拓貴 従業員 100,000  
重藤優太 従業員 100,000  
東陽亮 取締役 70,000  
井上健 従業員 60,000  
田村航弥 従業員 60,000  

同社の場合は大株主の上位にベンチャーキャピタルが見受けられます。そして会社の代表である今泉氏とベンチャーキャピタル3社に対して、270日間売却ができないロックアップがかかっています。

ただし、ベンチャーキャピタルの中でジャフコSV4共有投資組合の996,000株にだけ、「90日間売却不可、1.5倍で売却可能」というロックアップになっています。このロックアップの場合は「90日間売却はできないが、IPOの株価が公募価格の1.5倍以上になったらロックアップは解除されるので売却してもいいですよ」ということを意味します。

つまり、上場日に同社の株価が公募価格の1.5倍以上のなってしまったら、ベンチャーキャピタルの中で、すぐに一社だけ売却できる会社があるということです。各社の条件には注意が必要です。

※ロックアップでよく見られる条件

ロックアップの種類 ロックアップの内容
90日間売却不可 上場日から90日間は売却してはいけない
180日間売却不可 上場日から180日間は売却してはいけない
1.5倍 株価が公募価格から1.5倍になったら売却可能
2倍 株価が公募価格から2倍になったら売却可能

1.1.3. ベンチャーキャピタルにロックアップがかかっていない場合

シェアリングテクノロジー(3389)

大株主 利害関係 単位(株) ロックアップ
引字圭佑 代表取締役CEO 3,172,200 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
榊原暢宏 特別利害関係者など 714,200 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
綿引一 特別利害関係者など 714,200 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
MSIVC2012V投組 ベンチャーキャピタル 250,000  
アイビス新成長投組第3号 ベンチャーキャピタル 164,000 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
田中慎也 取締役 163,400  
(株)エイトミリオン 特別利害関係者など 108,500  
(株)ベクトル 特別利害関係者など 81,900 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
鈴木始 取締役 47,200  
植田栄作 取締役 35,800  

同社の場合は大株主の上位に株取引には「90日間売却はできないが、IPOの株価が公募価格の1.5倍以上になったら売却してもよい」というロックアップがかかっています。ただ、MSIVC2012V投資組合だけはロックアップがかかっていませんので、IPOが新規上場したらすぐに250,000株を売却することができます。

2. ロックアップの確認方法

IPOの大株主にどのようなロックアップがかかっているのか確認するためには、会社の目論見書(もくろみしょ)を確認します。たいていの企業の場合は目論見書の売出要項の部分に書かれている「募集又は売出しに関する特別記載事項」を確認するとロックアップについて確認することができます。

そこで、ジェイ・エス・ビーという会社を事例にご紹介します。

ジェイ・エス・ビーの大株主

大株主 利害関係者 単位(株) ロックアップ
岡靖子 代表取締役会長 2,300,000 180日間売却不可
NIFSMBC-V2006S3投組 ベンチャーキャピタル 318,000 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
OMインベストメント(株) 役員らが議決権の過半数を所有する会社 285,000 180日間売却不可
三菱UFJキャピタル4号投組 ベンチャーキャピタル 230,000 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
森トラスト(株) 特別利害関係者など 133,100 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
みなとエクイティサポート投組 ベンチャーキャピタル 110,000 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
(株)関西アーバン銀行 取引先 78,900 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
伊藤敏浩 従業員 75,500  
(株)シティビルサービス 特別利害関係者など 66,100  
社員持ち株会 特別利害関係者など 45,800  

同社は大株主に3社のベンチャーキャピタルが存在し、それぞれ、「90日間売却はできないが、IPOの株価が公募価格の1.5倍以上になったらロックアップは解除されるので売却してもいいですよ」というロックアップがかかっています。

実際にこのロックアップがかかっているのか目論見書を見てみましょう。IPOの目論見書は証券会社の窓口やインターネットの検索などで確認できます。

そして、目論見書の売出要項の部分に書かれている「募集又は売出しに関する特別記載事項」を確認します。

スクリーンショット 2017-08-11 11.21.12そして、ロックアップの項目を確認します。

スクリーンショット 2017-08-11 11.21.23 以下がカッコ内の全文です。

売出人かつ当社株主であるNIFSMBC-V2006S3投資事業有限責任組合並びに当社株主である三菱UFJキャピタル4号投資事業有限責任組合、森トラスト株式会社、みなとエクイティサポート投資事業有限責任組合、株式会社関西アーバン銀行、株式会社サイバーエージェント、中信ベンチャー・投資ファンド2号投資事業有限責任組合及び中信ベンチャーキャピタル株式会社は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場(売買開始)日(当日を含む)後90日目の平成29年10月17日までの期間中、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社普通株式を貸し渡すこと及びその売却価格が「第1  募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって、東京証券取引所における初値が形成された後に主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却等は除く。)等は行わない旨合意しております。

これによると90日間売却はできないが、IPOの株価が公募価格の1.5倍以上になったらロックアップは解除される内容が書かれています。

3.ベンチャーキャピタルがロックアップ解除を意識する例

ベンチャーキャピタルは投資会社なので、出資しているIPOの売却によって利益をあげなければなりません。そのため、IPOが上場する際にロックアップ価格を意識するケースがあります。(全く意識しないでIPOの株価を見ながら売却をしてくるベンチャーキャピタルもいます)

そこで、ベンチャーキャピタルがロックアップを意識している例をご紹介します。ヨシムラフードホールディングスというIPOの事例です。同社は2016年3月にIPOをした企業ですが公募売出し数30万株、公募価格は880円でした。

大株主はほとんどベンチャーキャピタルで構成されています。ロックアップの条件は90日間売却はできないが、IPOの株価が公募価格の1.5倍以上になったらロックアップは解除されます。公募価格が880円ですので1.5倍の解除では1,320円以上でロックアップが解除されますので、そうなるとベンチャーキャピタルは売却することができるようになります。

大株主 利害関係 単位(株) ロックアップ
吉村元久 代表取締役CEO 1,804,319 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
(株)産業革新機構 ベンチャーキャピタル 947,368 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
日本たばこ産業株(株) 取引先 210,500  
諏訪光憲   200,211 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
埼玉成長企業サポートファンド投資事業有限責任組合 ベンチャーキャピタル 180,000 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
ネオステラ1号投資事業有限責任組合 ベンチャーキャピタル 180,000 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
ジャフコ・スーパーV3共有投資事業有限責任組合 ベンチャーキャピタル 142,300 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
安田企業投資4号投資事業有限責任組合 ベンチャーキャピタル 117,700 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
ニッセイ・キャピタル4号投資事業有限責任組合 ベンチャーキャピタル 100,000 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
  • ヨシムラフードホールディングスの上場当日の状況

 こちらは同社が新規上場する日の気配状況を撮影したものですが、公募売出し数30万株に対して、1,320円に232,200株もの売り株数が出ています。全てが1,320円で指値をしているわけではないと思いますが、私は上場当日にあまりにも露骨に1,320円で売りが集中しているので「売り急ぎたいベンチャーキャピタルが多い」という印象を持ちました。

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4.ロックアップ解除を狙った投資手法

ここまでベンチャーキャピタルについてご説明してきましたが、ベンチャーキャピタルのロックアップ解除価格を利用した投資手法があります。それが私のIPO投資でいう「VCターゲット狙い」になります。

ここで事例をお伝えします。2016年6月に上場したベガコーポレーションという会社です。同社の大株主は下記のとおりです。大株主の中にはジャフコという上場企業のベンチャーキャピタルが含まれてました。

大株主 単位 ロックアップ
(株)アルタイル 1,800,000 90日間売却不可
浮城智知 1,632,000 90日間売却不可
ジャフコ・スーパーV3共有投資事業有限責任組合 945,000 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
手島武雄 305,000 90日間売却不可
ベガコーポレーション従業員持株会 37,200 180日間売却不可
富田誠 26,500  
末永絵美 20,000  
CHEW SU BEE 20,000 90日間売却不可
江田亮平 13,000 90日間売却不可、1.5倍で売却可能
亀山光晴 12,800 90日間売却不可、1.5倍で売却可能

ベガコーポレーションの公募売出し株数は84万株、公募価格は1,600円です。ロックアップの条件は90日間売却はできないが、IPOの株価が公募価格の1.5倍以上になったらロックアップは解除されます。

公募価格が1,600円なので、ベンチャーキャピタルのロックアップ解除価格は1,600円×1.5倍で2,400円になります。同社のその価格を下回る2,000円でした。

私は2,020円で500株買い付けしてロックアップ解除価格前の2,380円で売却し、18万円の利益をあげることができました。その後、同社はロックアップを上回り短期間で4,140円で売却しています。

スクリーンショット 2017-08-11 11.32.56 ベンチャーキャピタルも出資した以上、売却して益出しをしなければなりませんので、特に株価の条件でロックアップが解除されるIPOには、ベガコーポレーションでお伝えしたようなロックアップ解除価格まで株価を値上がりするということが起こる傾向があります。

VCターゲット狙いは、この値動きに注目して投資をしていきます。IPOが上場して初値が決まった時は大株主のロックアップ解除条件を確認して、ロックアップ解除価格より現在の株価が低ければ、狙ってみて良いと思います。

4.まとめ

今回はベンチャーキャピタルのロックアップ解除に注目したIPOセカンダリーをお伝えしました。年間で様々なIPOが新規上場しますが、ロックアップ解除価格より下の価格で初値が決まるケースがございますので、セカンダリー投資の一つとして理解しておくと、投資の幅が広がるでしょう。

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柳橋義昭

柳橋義昭

IPO投資を中心としたイベント投資で年間2000万程度のトレード利益を得ている株式投資家。証券会社でのIPOの業務の経験や、証券ディーラーの経験を活かして独自のIPO攻略法を構築。

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