
オプションをある程度学んでいくと、ボラティリティという言葉にぶつかるはずです。
このボラティリティはオプションの価格に大きな影響を与える要素で、オプションをマスターするうえで避けては通れない概念です。
ボラティリティは初心者にはとっつきにくいですが、これが本当に理解できればオプションで利益をあげるのが簡単に思えるようになるはずです。
今回は、オプションで利益をあげるのに不可欠なボラティリティの基本的な知識とボラティリティを活用して利益をあげるための方法をご紹介します。

木原 克明

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ボラティリティとは
ボラティリティはわかりやすく言うと、株価が一定の期間にどの程度変動するかという「変動ぐあい」のことです。
株価の変動が大きいときは「ボラティリティが大きい」といい、変動が小さい場合には「ボラティリティが小さい」と言います。
ボラティリティは何らかの材料で株式市場が不安定になると大きくなる傾向があり、リーマンショックなどの大きなショックがあると急激に大きくなります。
それでは、実際にボラティリティはどのような動きをするのか見てみましょう。
例としてアメリカにあるS&P500という代表的な株価指数をとりあげます。
このS&P500はニューヨーク証券取引所(NYSE)やNASDAQに上場している銘柄から代表的な500社を選んで算出している指数です。
この指数は日本のヤフーファイナンスでも見ることができます。
まずはチャートを見てみます。
下記はS&P500の過去10年のチャートです。
チャートを見ると比較的なだらかに上昇していますが、2008年から2009年の間に大きく下落していることがわかります。
リーマンショックです。
このアメリカ発の金融危機で世界の株式市場に激震が走りました。
それでは、この時期にS&P500のボラティリティがどのようになったかを確認しましょう。
S&P500のボラティリティを表す指標にVIXというものがあります。
下記のチャートはS&P500のボラティリティ指数(VIX)の過去10年間の推移です。
このチャートでは数値が大きいほどボラティリティが大きくなります。
ほとんどの期間で10~20ポイントの間で推移していますが、ときおり跳ね上がっているところがあります。
この跳ね上がっている部分はボラティリティが大きくなったところです。
これをみると、ちょうど株価が暴落した2008年から2009年にかけて指数が急激に上昇していることがわかります。
この期間はちょうど株式市場に激震が走ったリーマンショックのタイミングです。
VIXは市場参加者がパニックになると上昇することから、別名「恐怖指数」とも呼ばれています。
このように、ボラティリティは市場参加者の心理状態を反映している鏡のような存在といえます。
ヒストリカルボラティリティ
これまでボラティリティについて説明してきましたが、一口にボラティリティといっても、実は2種類あります。
1つはヒストリカルボラティリティです。
これは、過去のデータに基づいて算出したボラティリティで過去の一定期間に株価がどの程度動いたかを計算して出した数値です。
その名のとおり、過去の実際の株価の変動ぐあいを表した数値です。
インプライドボラティリティ
インプライドボラティリティは、市場参加者の期待をもとに算出した変動率のことです。
市場参加者の期待から変動率をどのように算出するのかというと、実際に市場で取引されたオプションの取引価格から逆算することによって算出します。
具体的にどのように逆算するかをみてみましょう。
まず、オプションの理論価格を算出するための計算式にブラック・ショールズ式というものがあります。
ブラック・ショールズ式は少し難解ですが、オプションで収益をあげるためには、式の細かい内容まで理解する必要はありませんので安心してください。
このブラック・ショールズ式によるとオプションの理論価格は次の6つの要素で決定するとされています。
- 権利行使価格
- 残存期間
- 原資産価格
- 原資産利回り
- 短期金利
- ボラティリティ
これらの要素のうち、1から5までは、
- どの銘柄のオプションか
- 権利行使価格はいつなのか
- いつの時点の価格を求めたいのか
ということ決めれば確定することができます。
また、オプション価格も市場での実際の取引価格から確定することができます。
すると、オプションの理論価格を求めるために必要な数値のうち、ボラティリティ以外の数値は全て確定することができます。
これらの数値をブラック・ショールズ式に当てはめることで、
ボラティリティを算出することができます。
この方法で算出された値がインプライドボラティリティとなります。
インプライドボラティリティは市場参加者の取引価格から算出された値で、オプション参加者の将来のマーケットに対する期待を反映している数値ということができます。
今後、「ボラティリティ」という場合、このインプライドボラティリティを指しますので覚えておいてください。
ボラティリティを利用する方法
それでは、ボラティリティをどのように利用すればよいのでしょうか。ボラティリティを利用して収益をあげる手順をみていきましょう。
下記はS&P500の株価指数(SPX)とボラティリティ指数(VIX)を比較したチャートです。
このチャートを見るとわかるとおり、SPXが急落するとVIXが跳ね上がっていることがわかります。
そして、ボラティリティは一時的に跳ね上がってもすぐに元の水準に戻っていることがわかると思います。
このようにボラティリティは市場の動揺で一時的に跳ね上がりますが、その状態は長くは続かず、やがて市場が正常化すると元の水準に戻るという性質があります。
このボラティリティの水準はオプション価格に影響を与えます。
そして、ボラティリティとオプション価格は、次のような関係にあります。
- ボラティリティが上昇するとオプション価格は上昇する
- ボラティリティが下がるとオプション価格は下落する
このボラティリティがもつ性質と価格との関係性を利用することで、
オプションから継続的に収益をあげていくことができます。
では実際の具体例を見てみましょう。
米国市場にSPXSというETF銘柄があります。
ETFとは上場投資信託のことで、通常の株と同じように売買できるものですので、株式と同じように扱ってもらって結構です。
SPXSはS&P500という米国株の代表的な指数に連動したETFです。
ただし注意してもらいたいのが、この銘柄はベア型と呼ばれ、S&P500とは反対の動きをするように設計されています。
つまり、S&P500が上昇すると下落し、S&P500が下落すると上昇するというように、S&P500と反対の動きをします。
さらに、この銘柄はレバレッジドETFと呼ばれるもので、S&P500の動きに対して3倍の動きをするように設計されています。
このSPXSをS&P500のVIX指数と比較したのが下記の図です。
VIXとほぼ同じ動きをしていることが分かります。
そこで、このSPXSをVIXの代替として利用することで、ボラティリティを収益化することが可能になります。
どのようにするかというと、SPXSが跳ね上がったところで、SPXSのコールオプションを売ります。
例えば、2015年の6月、SPXSは18ドルを超えました。
このとき、SPXLの権利行使価格18ドル、期日が2017年1月のコールオプションが
4.5ドルで取引されていた時がありました。
米国のオプションは100株で1単位なので、コールオプションを1枚売ることで、450ドルの収入を得ることができます。
その後、ボラティリティが低下したタイミングで買い戻して利益を確定させても良いですし、期日まで持ち続けても構いません。
このとき、権利行使に備えて、資金をリザーブしておく必要があります。
目安としては、当初は権利行使価格18ドルの50%の9ドルを想定した資金を準備しておきます。
1枚100株ですので、9ドル✕ 100株=900ドルを準備しておきます。
ちなみに、この準備金のことをリザーブ資金と呼びますので覚えておいてください。
そして、この900ドルはVIX指数が上昇するごとに増やしていきます。
例えば、株価の下落が予想以上に大きかった場合、SPXSも大きく上昇することになります。
こうして、期日に資金がショートしないように備えておく必要があります。
まとめ
ボラティリティを理解することはオプション投資で成功していくための重要な鍵となります。
もっと言うと、ボラティリティとその使い方さえ理解できれば、オプションで成功できると言っても言い過ぎではありません。
まずは、この記事でボラティリティの概念について、しっかりと理解してください。
そして、ボラティリティの理解には文章やチャートを見るだけではなく、実際の株式市場とオプション価格の動きを観察していく必要があります。
ボラティリティとオプション価格の関係を頭だけではなく、感覚で理解していくのです。
その際、少しでも構いませんので、実際にポジションを持ってみることをおすすめします。
実際にポジションを持つことで、株価や市場のボラティリティの変動でオプションの売主や買主がどのような心理状態となるのかが、理屈ぬきで理解することができるからです。
また、ボラティリティについては、Ivolatility.com(http://www.ivolatility.com/)というサイトで確認することができます。
こちらのサイトの使い方については今後、ご紹介したいと思います。