移動平均線は、相場の流れを掴むための基本的なテクニカル指標で、多くのトレーダーに幅広く活用されています。
その理由は、一定期間の為替レートを平均化し、トレンドやレンジなどの相場環境を簡単に把握できるからです。
価格の平均値を見ることで、相場の転換期を見極めることができ、レンジからブレイクする、トレンドから横ばいに推移するなど、トレードポイントが分かります。
そこで、これからトレードを始める上で、移動平均線を最大限活用するため、具体的に次の3点を詳しく説明します。
1.基本的な見方
2.実践で使える応用編
3.利益を上げている実例
この3つを覚えれば、冷静な判断でトレード戦略を立てることができ、その結果、見違えるほど勝てるトレードができるようになります。
それでは、始めましょう。
執筆者
ぶせな
FXの専業トレーダー。認定テクニカルアナリスト。 本格的にFXを開始してから10年で1億6,500万円の利益を突破。著書に、『最強のFX 1分足スキャルピング』『最強のFX 15分足デイトレード』(共に、日本実業出版社)がある。ツイッターアカウントは、『@busena_fx』、ブログは『億トレーダーぶせなブログ』。
1.移動平均線の基本的な見方
最初に、移動平均線がどのようなツールかをご理解いただき、それから計算方法と設定について、詳しく見ていきます。その後に、戦略を立てるための実践的な見方をお読みいただくと、深く理解できるようになります。
1.1.移動平均線は相場の流れを明確にする
移動平均線は、刻々と推移していく一定期間の価格を平均した線です。価格は、常に未来に向かって移動していくため、この線も同様に移動していきます。
下のチャートをご覧下さい。青い線が、移動平均線です。

ちなみに、緑色のローソク足は、価格が上昇したことを示す陽線のローソク足です。また、赤色のローソク足は、価格が下落したことを示す陰線のローソク足です。
ローソク足が上昇していくと、移動平均線も上向きになって上昇しているのがわかると思います。逆に、ローソク足が下落していくと、移動平均線も下向きになってローソク足を追いかけていきます。
このように、移動平均線はローソク足を先導するものではなく、後から付いていくものです。これは、前提としてとても重要なので、ローソク足が先導するということを最初に認識しておきましょう。
ちなみに、ローソク足チャートは、1本のローソク足が連なってできたもので、いわば「棒グラフ」のようなものです。一方、移動平均線は「線グラフ」のようなもので、1本の線でできていますね。
そして、ローソク足は現在値を、移動平均線は平均値を表しており、形は違うものの、為替レートを正確に反映しています。そのため、移動平均線は、チャートを見る上で、ローソク足と同じくらい大切です。
なお、移動平均線を一度表示すると、削除しない限り自動的に線を描き続けてくれます。これは、ローソク足と同様で、トレードしている時、労力もかからず自然に視覚に入ってきます。
トレードとは直接関係ないことかもしれませんが、労力がかからないというのはとても重要で、面倒だと思う作業は長続きしなくなります。
1.2.ローソク足より上なら強気で下なら弱気を示す
移動平均線は、ローソク足との位置関係が重要です。位置関係というと難しく聞こえるかもしれませんが、次の2点を基本として覚えて下さい。
- ローソク足が移動平均線より「上」にある時は「強気相場」
- ローソク足が移動平均線より「下」にある時は「弱気相場」
どんな相場でも、ローソク足が移動平均線よりも上か下かを最初に見ることがポイントです。
では、改めて下のチャートをご覧下さい。

ローソク足と移動平均線を別々に見るよりも、2つの位置関係を見たほうが、より相場環境を把握しやすくなったと思います。
横ばい相場では、ローソク足が収束して移動平均線を何度も上下しています。この時、移動平均線も水平で傾きがなく、ローソク足と移動平均線の間に空間がありませんね。
ローソク足だけ見るよりも、2つを合わせて見ることで、すぐに状況が分かります。
このように、相場環境の把握に迷ったら、基本に戻ってこの2点を思い出して下さい。基本を忘れなければ、どんな相場でも応用できます。
1.3.「期間」と「種類」の適切な選択
移動平均線は、価格の平均値であることは上述しました。この平均値を出すには、次の2つの項目を考慮する必要があります。
- 平均を取る期間をどれくらいにするか
- どのタイプの移動平均にするか(平均を取る計算方法が違う)
これだけではわからないと思いますので、順番にわかりやすく説明します。
1.3.1.期間設定はトレードスタイルに合わせると良い
例えば、日足で25日移動平均線というと、直近25日間の終値を合計し、25で割れば算出できます。この「移動」とは、「直近」のことを指し、ローソク足が1日進むと移動平均線も1日進みます。つまり、常に直近25日分の終値になります。
ちなみに、この期間設定は、好きな数字にすることができます。
仮に、200日の移動平均を設定すると、数か月~数年単位で分析できます。その反面、スキャルピングのように数分以内で売買を繰り返すトレードスタイルには不向きです。そのため、移動平均線の期間設定は、あなたのトレードスタイルに合わせて設定する必要があります。
なお、私が実際に設定しているおすすめの期間は、後ほど理由も含めて紹介します。
さて、先ほどは、終値を計算基準に用いましたが、終値ではなく、中値(1日の高値と安値の中心値)を基準にすることもできます。また、高値・安値・終値を3で割った価格を基準にする方法もあります。そのため、どの価格の平均を取るのか、一概に正解はありません。
しかし、この先は、最も一般的で重要と考えられている、終値を採用して説明していきます。
1.3.2.指数平滑移動平均線(EMA)が一番おすすめ
移動平均線には、一般的に、次の3つの種類があります。
- 単純移動平均線(SMAまたはMA)
- 加重移動平均線(WMA)
- 指数平滑平均線(EMA)
それぞれ、移動平均の算出方法が違います。詳しい計算方法までは知る必要はありませんが、特徴を理解した上で選択すると良いでしょう。ちなみに、私が使用していて特におすすめなのは、3つ目の指数平滑平均線(EMA)です(理由は後述)。
まずは、それぞれの移動平均線の特徴を簡単にお伝えします。
《単純移動平均》
英語でSimple Moving AverageまたはMoving Averageといい、日本でも頭文字を取ってSMAやMAと言われます。採用した期間の終値を、単純に平均したものです。一般的に移動平均線というと、単純移動平均線のことを指します。
《加重移動平均》
Weighted Moving Averageで、略してWMAと言います。10日WMAを例にすると、10日目の価格を10倍、9日目の価格を9倍、8日目の価格を8倍というようにしていきます。したがって、直近の価格ほど重点が置かれます。
《指数平滑移動平均》
Exponential Moving Averageで、略してEMAと言います。直近の価格を2倍するので、最新の値動きが反映されます。
この3つのうち、どのタイプを使えば良いのかに正解はありません。選択は好みの問題であって、どれを使っても良いということになります。
しかし、同じ移動平均線ですので、そこまで大きな違いはありません。どのタイプを使うかではなく、使い方次第です。使い方が正しければ、どのタイプでも使いこなせるでしょう。
最初はそこまで深く考えなくて良いです。しかし、使わないであれこれ考えても仕方ないので、まずはどれでもいいので使ってみましょう。
ちなみに、私が使っているのは、先ほどもお伝えした、3つ目の指数平滑移動平均線(EMA)です。なぜかというと、FXの世界では一番メジャーだからです。
多くのトレーダーが見ているものを使えば、機能する場面も多くなります。直近の価格に重点を置き、移動平均線の先端がより敏感に反応するほうが、トレーダーに好まれるのでしょう。
なお、これからチャートで解説する移動平均線は、全てこの指数平滑移動平均線(EMA)を使います。
ポイント!
トレードでは、何よりも相場の流れを掴むことが重要です。そのためには、ローソク足と移動平均線を同時に見るようにしましょう。
2.的確な相場分析を可能にする移動平均線の知識
ここからは、移動平均線を使った実践的な見方を解説します。日々の相場で、私が実際に活用して利益を出している使い方なので、ぜひ参考にして下さい。
2.1.三本の移動平均線で相場環境が明確になる
ローソク足が移動平均線よりも上にあるか下にあるか、この位置関係が基本だということは上述しました。しかし、この基本だけでは、トレード戦略を立てることは難しいですね。そこで、これを応用して利益を出すために、3本の移動平均線を使います。
なぜ3本かというと、相場の仕組みに則した考え方を採用しているからです。次の2点を思い出して下さい。
- 3つのトレンド(短期トレンド/中期トレンド/長期トレンド)
- 3つの相場の流れ(上昇トレンド/下降トレンド/横ばい)
この3の数字は、移動平均線を使いこなすためにとても重要な数字です。詳しく説明します。
2.1.1.トレンドが3種類だから移動平均線も3本にする
トレンドには、次の3種類がありました。
現在がどのトレンドかを把握するために、移動平均線を活用するとします。例えば、日足チャートを見て、仮に移動平均線を1本しか出していないと、次のような問題が発生します。
期間設定を200日などの長期にすると、数か月~数年単位の流れは分かりますが、直近の短期的な値動きを捉えられません。逆に、25日などの短期にすると、数日~数週間の短期的な動きには対応できますが、もっと大きな流れが掴めません。
下のチャートをご覧下さい。

ローソク足が、赤色の200EMA(200日移動平均線)より上にあるので、強気相場で長期の上昇トレンドという大きな流れは分かります。しかし、一時的に下げている箇所も多いです。特に、白い四角の箇所はレンジになっていて、これから本当に上昇するのか分からないですね。
では、25EMA(25日移動平均線)と75EMA(75日移動平均線)を追加して、移動平均線をトレンドの種類と同じ3本にしてみます。下のチャートをご覧下さい。

なお、3本の移動平均線の設定は、次の通りです。
- 黄色のラインが短期の25EMA
- 青色のラインが中期の75EMA
- 赤色のラインが長期の200EMA
Aでは、トレンド相場であることは間違いないと分かります。
Bでは、移動平均線とローソク足の位置関係に注目して下さい。25EMAと75EMAよりも、ローソク足が下にあります。そして、200EMAよりもローソク足が上にあるので、長期トレンドは上、しかし、短期・中期的には上昇トレンドが終了して、弱気相場の傾向にあります。
Cは、ローソク足が25EMAより下、75EMAと200EMAより上です。短期的には弱気で、中長期的には強気であることを表しています。
このように、トレンドは短期・中期・長期の3種類なので、移動平均線も同じく3種類を表示します。そうすることで、全ての相場において、3種類の相場を見落とすことなく、細かいところまで把握できるようになります。
なお、期間をどの数字にするかは、あまり問題ではありません。私が設定している期間は、上述した次の3つです。
お伝えしているように、この数字以外はダメなのかというと、そうではありません。短期は20でも構いませんし、中期が50でも良いでしょう。ただし、マーケットではキリの良い数字が好まれますので、短期なら21や22ではなく、20や25にすると良いでしょう。
そのため、この先は、3本の移動平均線の呼び方を、25EMA・75EMA・200EMAに統一します。
2.1.2.上昇/下降/横ばいの3種に合わせて移動平均線も3本にする
先ほどは、移動平均線とローソク足の位置関係を見ました。次に、移動平均線の傾きに注目してみましょう。傾きは、次の3つのうちのいずれかになります。
相場には、上昇トレンド/下降トレンド/横ばいの3種類がありましたね。移動平均線は価格の平均値なので、傾きは、この3種類の相場を表しているとお考え下さい。
つまり、まとめると、次のようになります。
- 移動平均線が上向きなら上昇トレンド
- 移動平均線下向きなら下降トレンド
- 移動平均線が水平なら横ばい相場

例えば、先ほどと同じ上のチャートのCでは、25EMAが下向きなので短期的に下降トレンド、75EMAと200EMAが上向きなので中長期的には上昇トレンド、というように把握できます。
このように、3種類の移動平均線を活用することで、短期・中期・長期移動平均線のそれぞれが、上昇トレンド・下降トレンド・横ばいのうちどれを表しているのかを的確に捉えられます。
2.1.3.三本の移動平均線が違う役割を果たす
1本の移動平均線が、どんな相場でも有効に機能することはありません。1本のトレンドラインが機能し続けることはないのと同じことです。期間設定の違う移動平均線3本を活用することで、各々が短期・中期・長期という役割を果たし、総合的に判断できるようになります。
3種類の移動平均線で3つ相場の流れを把握する、というイメージでチャート分析を行うことがポイントです。目的を明確にして移動平均線を見ると、より深いチャート分析ができるようになります。
2.2.順張りと逆張りのトレード戦略
移動平均線を活用するために覚えていただきたい相場の見方は、順張りと逆張りです。トレード手法というと、順張りか逆張りのどちらかになりますが、移動平均線は、このどちらでも活用できます。
なお、順張りの戦略としてゴールデンクロス、逆張りの戦略としてデッドクロスがあります。この2つを使ったトレード戦略を解説していきます。
2.2.1.ゴールデンクロスとデッドクロスを使った戦略
まずは、順張り戦略から見ていきます。
移動平均線は、相場の転換点を示してくれることがあります。それは、移動平均線が交差する時で、次の2つの状態は強いシグナルになります。
- 短い移動平均線が長い移動平均線を「下」から「上」に突き抜ける
- 短い移動平均線が長い移動平均線を「上」から「下」に突き抜ける
前者を「ゴールデンクロス」、後者を「デッドクロス」といい、クロスした方向へ相場が進み出す可能性を示唆しています。チャートで見るとわかりやすいので、下のチャートをご覧下さい。

Aでは、25EMAが75EMAを下から上に突き抜けています。この状態がゴールデンクロスで、強い上昇シグナルとなります。この後に25EMAと75EMAが、200EMAをゴールデンクロスしているので、さらに強い上昇シグナルとなりました。
ローソク足を見ると、確かに、ゴールデンクロスしたAから上昇トレンドが始まっていますね。つまり、Aが相場の転換点になっています。Cも同様で、ゴールデンクロスしてから価格は上昇しています。
一方、Bがデッドクロスです。短い移動平均線が、それよりも長い移動平均線を上から下に突き抜けています。デッドクロスは、25EMAが75EMAを下抜けたり、75EMAが200EMAを下抜けるなど、パターンは様々です。
こちらも、デッドクロスしたBから下降トレンドになっているのが分かりますね。この場合は、上昇トレンドから下降トレンドに相場が転換しているので、最初に短期移動平均線の25EMAが、中期移動平均線の75EMAをデッドクロスしています。
このように、ゴールデンクロスは上昇シグナルで、デッドクロスは下落のシグナルになります。順張りか逆張りでいうと、これからトレンドが始まることを示唆する順張りで、トレンドフォローの戦略を立てることができます。
2.2.2.移動平均線とローソク足を組み合わせた逆張り
次は、逆張り戦略です。
価格は、3本の移動平均線から乖離すると、今度は元に戻ろうとする圧力が働きます。相場が過熱して、一方向に急騰や急落すると、行き過ぎやオーバーシュートになり、急激に反転します。下のチャートをご覧下さい。

上昇トレンドが、ゴールデンクロスしたポイントからスタートしています。そして、Aでは3本の移動平均線から大きく上に乖離しています。短期の25EMA(黄色)を引き離すように急騰していますね。
移動平均線は遅行するとはいえ、このような行き過ぎた状態は長続きせず、いずれ反転します。
なお、この行き過ぎを見るには、75EMAや200EMAよりも、一番短い25EMAで見ると把握しやすいです。短期の移動平均線ですらローソク足と乖離する、という見方ができます。
ローソク足が直角に近いくらいに急騰し、ローソク足と25EMAの空間が短期間で開き始めたら、調整が入ると考えます。この時、逆張りで売り注文を出すにしても、どこでエントリーするかが重要になってきます。
価格は、抵抗帯や支持帯にぶつかったり、値幅を達成すると反転します。そこで、レジスタンスラインを見つけるのが、一番良いでしょう。
Aのように急騰し、かつレジスタンスラインに当たったりすると、それまでの急騰が信じられないくらいに今度は急落したりします。何度も同じような場面を経験すれば、いずれ、天井近くで売りエントリーできるようにもなります。
なお、抵抗帯と支持帯の見つけ方については、『サポートラインとレジスタンスラインで相場の反転を見抜くコツ』で解説しています。
2.3.移動平均線とローソク足の位置関係を見る
3本の移動平均線は、短期・中期・長期というように、設定した期間が異なるため、その役割も違います。トレード戦略を立てるために、さらに詳しい特徴を紹介していくので、これまでの知識を整理しながら付いてきて下さいね。
2.3.1.順張りは短期25EMAと中期75EMAに注目
相場は、トレンドが発生するとしばらく継続するものです。その際、トレンドは一方向へ進むのではなく、上下動を繰り返しながら「Nの字」を描いて進んでいきます。
上昇トレンドなら、高値更新を更新すると、一時的に反落し、それが押し目となってトレンドへ回帰していきます。下降トレンドの場合は逆で、安値を更新したら、一時的に反発して戻しポイントとなり、また下降トレンドへ回帰していきます。
この押し目と戻りのポイントが、移動平均線だと25EMAと75EMAになりやすいです。そのため、トレンドが発生すると、何度も25EMAと75EMAにぶつかってはトレンドへ回帰します。下のチャートをご覧下さい。

下降トレンドが発生し、Aでは反発して戻していますが、黄色の25EMAにあたって下降トレンドへ回帰しています。
Bも同様で、25EMAに当たった箇所が戻りポイントになっていますね。そして、Cでは長めの戻りになっていますが、青い75EMAにぶつかって下降トレンドを強めています。Dも同じです。
移動平均線が、抵抗帯や支持帯になっていると考えると良いかもしれません。トレンドラインは真っ直ぐな線ですが、移動平均線は丸みを帯びたトレンドラインのようなものです。機能するトレンドラインは、ぶつかっては反発や反落を繰り返し、トレンドを継続させます。
それと同じで、トレンドが強いほど、ローソク足が25EMAもしくは75EMAにぶつかると、何度もトレンド回帰させます。
2.3.2.パーフェクトオーダーは強いトレンドを示唆する
トレンドが発生すると、敏感に反応する短期の25EMAが、最初にローソク足と同じ方向へ進み始めます。それから中期の75EMA、長期の200EMAが順番にトレンド方向へ傾きます。
そして、この3本の傾きが同じ方向へ一致した状態を、「パーフェクトオーダー」と言い、トレンドが強い状態を表しています。下のチャートをご覧下さい。

Aで移動平均線が3本ともデッドクロスし、ゴールデンクロスしているBまで下降トレンドが継続しています。
トレンドの最中の移動平均線の順番を見ると、下から25EMA、75EMA、200EMAです。ローソク足が一番に走り、それを追うように短期の移動平均線から順番になっていますね。これが、パーフェクトオーダーです。
このパーフェクトオーダーは、トレンドの期間が短いとできません。トレンドが短期間で終わると、パーフェクトオーダーになる前に移動平均線が収束してしまいます。
また、移動平均線が急角度になると、かなり強いトレンドであることを示唆していますので、そのトレンドが長く継続する可能性も高くなります。
そのため、パーフェクトオーダーになったら、そのトレンドには逆らわず、トレンドフォローの順張りトレードに徹するのがポイントです。
逆張り戦略だと、トレンドが終わるまで何度も損切りになる確率が高くなります。そのため、そろそろ反転するだろうと、勘で逆張りするのではなく、移動平均線に素直に従う判断をすると良いでしょう。
2.3.3.トレンド終了のシグナルは200EMAで判断
短期25EMAと中期75EMAは、トレンドが継続していく見方でした。一方、長期の200EMAは、トレンドが終了する見方になります。
25EMAと75EMAに乗って進んでいたトレンドは、永遠に続くことはなく、いずれ失速します。ローソク足の勢いがなくなると、しばらく乖離していた200EMAに戻ってくることになります。これが、トレンドが終了するシグナルになります。
下のチャートで確認してみましょう。

25EMAと75EMAに乗って、長い上昇トレンドが発生していました。
そして、ローソク足が200EMAを下抜けている右の白い丸の箇所では、25EMAと75EMAがデッドクロスした後、25EMAに押さえ付けられるように、下に押し出されています。
この時の、ローソク足と移動平均線の位置関係に注目してみましょう。
上昇トレンドの時は、ローソク足がどの移動平均線よりも上でした。しかし、白い丸の箇所では、ローソク足がどの移動平均線よりも下にきています。これは、同じ波の上昇トレンドが明確に終了したシグナルになります。
ここで注意してほしいことは、継続していた上昇トレンドの波が終了したのであって、下降トレンドが始まることではないということです。そのため、安易に売り注文を出すことは良い戦略ではありません。
下降する可能性が高まったということであり、レンジ相場になる可能性もあるので、勘違いしないようにしましょう。
2.3.4.レンジ相場は3本が収束した状態
3本の移動平均線は、トレンドが発生している時は、各々が角度をつけて推進し、役割を果たします。しかし、レンジ相場になると、移動平均線の行き場がなくなるかのように3本が収束します。
下のチャートをご覧下さい。

白い四角の箇所は、他とは違って移動平均線が3本とも集まり、傾きもなく水平になっています。また、ローソク足が移動平均線の間に挟まれたり、上下したり行き場を失っている状態です。
このように、3本の移動平均線が収束して水平な時は、レンジ相場になります。
特に、長期の200EMAが水平な時は、かなり強い材料がないと相場が動き出さないため、上図のように徐々に膠着していくことが多いです。事実、四角の箇所の手前から、200EMAは水平になっていますね。
実際の相場では、ローソク足だけを見てレンジ相場だと把握することは、かなり難しいです。しかし、このように移動平均線を活用すると、トレンドを把握しやすくなります。
ポイント!
3本の移動平均線を使うことで、相場の流れが良く分かるようになります。その結果、いい戦略が立てられるようになります。
3.他のテクニカル指標を組み合わせたトレード戦略
トレードで利益を上げるためには、まずチャートを見て相場環境を把握し、それから利益確定と損切り幅を決めます。決して、すぐにエントリーするものではなく、順序立てて戦略を練ることが重要です。
これから、移動平均線と他のテクニカル指標を組み合わせたトレードの例を紹介します。これまで説明してきたことを基本にしているので、がんばって理解してみて下さい。上述のように、相場環境を把握してから戦略を立てている点にご注目下さい。
3.1.パーフェクトオーダーで順張りする
まず、トレンドに乗るという戦略を見てみましょう。
FXトレードでは、トレンドフォローは最も一般的なトレード手法で、絶対に覚えておきたい見方です。相場は、トレンドが発生するとしばらく継続する傾向にあるため、トレンドの初期の段階で見極めることが重要です。下のチャートで確認してみましょう。

Aでは、それまでレジスタンスラインだった価格帯を上にブレイクし、サポートラインに役割転換しています。
ポイントは、Bになります。ここで価格が反発しているので、このサポートラインが機能していることが分かります。そして、移動平均線にもご注目下さい。75EMAが200EMAをゴールデンクロスしていて、いよいよパーフェクトオーダーになるかどうか、というポイントです。
さらに、ローソク足がぶつかって、75EMAと200EMAが支持している形になっています。もし、この支持が移動平均線だけなら、ここから上昇トレンドにはならず、レンジ相場かもしれません。しかし、サポートラインも全く同じ価格帯で支持していますね。
そのため、Bでは反発する根拠が交差しているポイントで、強い買いシグナルになります。ここで買い注文を出しても良いほどです。
その後、矢印の箇所では、パーフェクトオーダーを維持しています。角度を見ると、なだらかに推移しているので、ここから大きく上昇することもなさそうです。しかし、トレンドは直近の高値を必ずブレイクするので、Cの高値ブレイクは時間の問題となりそうです。
ただし、確率的に高値をブレイクしやすいというだけで、全てブレイクするわけではありません。10回トレードすれば、そのうち数回は想定が外れるでしょう。
その1回で大損しないように、想定と違ったら損切りは徹底して行います。利益は伸ばし、損切りは早く行うことで、安定した利益が出せるようになります。
今回のように、トレンドの見方が正しければ、ブレイク後は直近の値幅の2倍は出ますので、Dまで目指せます。なお、Eでは、25EMAに乗ってトレンドを強めていますね。
このように、トレンドに乗ることができると、かなりの利幅を得る事ができます。今回のようなパターンは、トレンドが発生する典型で、パーフェクトオーダーとサポートラインを組み合わせている点にご注目下さい。
3.2.ヘッドアンドショルダーと移動平均線で逆張り
次に、逆張りのトレードを見てみます。下のチャートをご覧下さい。

今回のポイントはAになりますが、そのプロセスを把握することが大事です。
まず、パーフェクトオーダーにより上昇トレンドが発生していました。その後、ヘッドアンドショルダーが形成されています。これを見つけられるかどうかも、重要ですね。
矢印のポイントでは、ローソク足が3本の移動平均線よりも下になりました。これで、上昇トレンドは明確に終了したと判断できます。ただし、これだけでは下降トレンドになるかは分かりません。レンジ相場になる可能性もあります。
そこで、ヘッドアンドショルダーのネックラインを下抜けていることが、見極めのポイントです。ネックラインを下抜けると、下落しやすくなります。下げる根拠が交差しているので、あとは、いつ下降トレンドになるか?という時間の問題になります。
そして、Aではネックラインがレジスタンスラインになり、さらに25EMAが200EMAをデッドクロスし、ローソク足を上から抑え付けるかのように下押ししています。その結果、いくつも根拠が重なったAから下降トレンドになりました。
このように、移動平均線で相場環境を把握し、他のテクニカル指標と組み合わせると、より確度が高いトレードが可能になります。
3.3.異なる時間軸を組み合わせる
これまでは、同じ時間軸において、異なるテクニカル指標の根拠を組み合わせました。これだけでも、確度の高いトレード戦略を立てられます。これに加えて、同じ通貨ペアでも、異なる時間軸で同じ根拠を見つけると、さらにトレード根拠が強くなります。
下の1時間足チャートをご覧下さい。

まず、移動平均線を見てみましょう。
200EMAを挟むようにローソク足と25EMA、75EMAが推移しており、方向感のない環境が続いています。トレンドは、長期の移動平均線である200EMAに角度がつかないと継続しません。その点、レンジ相場といえます。
また、白い丸の箇所では上抜けできず、2回とも高値で抑えられています。そして、右の矢印の箇所で、Aのサポートラインを下抜けました。Aまでに、上抜けできなかったポイントから徐々に下げ始め、パーフェクトオーダーを形成してサポートラインのAを下抜けています。
サポートラインを下抜けたので、今度はAがレジスタンスラインに役割転換します。矢印の箇所は、25EMAが上から上値を抑え、さらにレジスタンスラインにぶつかっているので、押し出されるように下落していますね。ここで売り注文を出すのが、確度の高いトレードになります。
では、なぜ丸の箇所では、上値が止められているのでしょうか?
2回とも長いヒゲになっていて、強い抵抗を感じますね。その答えは、次の日足チャートを見ると分かります。

矢印の箇所が、1時間足で上値を抑えられていたポイントです。実は、日足の下降トレンドラインにぶつかっていて、上昇ではなく、これから下落するための、絶好の戻しポイントになっていたのです。
Aでは、水平になっていた200EMAを、25EMAがデッドクロスしています。ここで、3本の移動平均線よりもローソク足が下へきましたね。さらに、矢印の箇所は長い下降トレンドラインにぶつかっているので、強い抵抗を受けて長いヒゲになっています。
これを踏まえて改めて1時間足を見ると、下落する可能性が高いと判断でき、売り戦略に自信が持てるようになります。

日足で上抜けできない理由が分かったので、サポートラインを下抜けてから売り目線のトレード戦略を立てることが容易になります。日足トレンドは下で、1時間足も下になったので、売り注文を出すことに自信が持てるようになります。
このように、移動平均線といくつかのテクニカル指標を組み合わせる他、異なる時間軸も判断根拠にすると、なお良いです。こうしたトレード戦略を立てるクセを付けると、短期間で常勝トレーダーになることもできるでしょう。
まとめ
価格の平均値である移動平均線は、トレーダーに最も活用され、とても重要なテクニカル指標です。この記事を何度も読み返して、日々の相場で移動平均線がどのように動き、機能しているか確かめて下さい。
なお、ここで紹介した事例は、実際に私が利益を上げている実践的な見方なので、すぐに活用していただけると思います。トレードが上手くいかずに悩んでいる方は、まずは移動平均線をチャートに表示して、まっさらな気持ちでチャート分析からスタートしてみて下さい。