ナンピンとは、ポジションが含み損になった時に、損切りをせずに、さらにポジションを建てることです。
損切りと逆の行為なので、含み損が利益に転ずる可能性がある一方、損失を拡大させることにもなります。
FXを含め、投資の世界では、ナンピンは非常に危険なやり方だと言われます。ただし、ルールをしっかり決めて行うナンピンは、悪いことばかりではありません。
重要なのは、ナンピンにはどのようなリスクとリターンがあるのか、最初に理解することです。そこで、この記事では、ナンピンについて、具体的に次の3つに分けて説明します。
- ナンピンするとポジションがどうなるか知る
- ナンピンで大損する2つのパターンを知る
- ナンピンを活用するための心得
実際のチャートやシミュレーション表を使って、初心者にもわかりやすく解説しています。
ぜひ、最後までお読みいただければ幸いです。
執筆者
ぶせな
FXの専業トレーダー。認定テクニカルアナリスト。 本格的にFXを開始してから10年で1億6,500万円の利益を突破。著書に、『最強のFX 1分足スキャルピング』『最強のFX 15分足デイトレード』(共に、日本実業出版社)がある。ツイッターアカウントは、『@busena_fx』、ブログは『億トレーダーぶせなブログ』。
はじめに:ナンピンとは
冒頭でもお伝えしたように、ナンピンは、ポジションが含み損になった時に、損切りせずにポジション(建玉)を追加することです。
ナンピンした後に値が戻れば、すぐに利益になります。しかし、値が戻ることなくさらに逆行してしまうと、あっという間に損失が拡大して大損します。
私が初心者の頃、ポジションが逆行する度にナンピンしたことがありました。結局、値は戻らず1,000万円の損失を出した経験があります…。
私に限った話ではなく、初心者がナンピンした挙句、損切りできずに大損する例は後を絶ちません。なぜなら、ナンピンをすると損失を先延ばしにすることができるので、ナンピンのことをまだよくわかっていない初心者がやりたくなってしまう手法だからです。
また、ナンピンは、一度成功して味を占めるとリスクを省みずに行うようになる恐れがあり、極めて依存性が高いやり方です。
では、ナンピンが絶対的にリスクしかないかというと、そんなことはありません。リスクを知らないまま使うから悪いのです。理解を深めれば、ナンピンで大損することはなくなります。実際に、私はナンピンで大損を経験してから今日に至るまで、同じような失敗はしていません。
まずは、ナンピンのメリットとデメリットをよく理解する必要があります。そして、あなたがどうやってナンピンを活用するのかを決めましょう。
3つの選択肢からナンピンをする具体例を挙げ、リスクと対処法について、私の経験を踏まえて説明してます。シミュレーションもありますので、ポジションの建て方の参考にして下さい。
1.ナンピンしたらどうなるかを理解する
ナンピンをすることで、トレードでどんなことが起こるのか、可能性を考える必要があります。ここでは、ナンピンのメリットやデメリットなど、基本について理解を深めて下さい。
1.1.ナンピンとは損失を無くすこと
ナンピンは、漢字で「難平」と書きます。「難」とは損失のことで、「平」は、たいらにする、平均化することを意味します。良く言うと、含み損を無くそうとすることです。
難平は、相場以外でも使われますが、あまりいい意味ではありません。コトバンクで難平を調べると、次のように書かれています。
【難平】
1.取引で、損失を平均化すること。買ったあとに相場が下落しても買い増して買値の平均を下げておき、逆に売ったあとに相場が騰貴したら売り増して売値の平均を上げておくことによって、損失を回復しようとすること。「難平買い」
2.《見通しもなく難平をして大損をする意から》愚かなこと。また、その人。
このように、ナンピン自体に良い意味はないですね。
1.2.ナンピンすると平均価格が有利になる
「価格を平均化する」とは、含み損を抱えた時に、ナンピンすることで平均価格を良くすることです。良くするとは、買いの場合と売りの場合では次のようになります。
《ナンピンの効果》
- 買いの場合:平均価格を下げること
- 売りの場合:平均価格を上げること
例えば、ドル円の価格が105.00円で1枚(1万通貨)の買いポジションを持ったとします。100pips下げて104.00円になると、含み損は1万円になりますね。
この時、104.00円で1枚ナンピンしたとします。そうすると、ポジションは合計2枚(2万通貨)になり、それぞれのポジション損益は次のようになります。
①105.00円:1枚の損益は、-1万円
②104.00円:1枚の損益は、±0円
そして、2枚の平均価格は、104.50円になります。平均価格とは、全てのポジションを合わせて損益が±0円になる価格だとお考え下さい。ナンピンしたことで、損益が±0円になる価格が104.50円だということです。
整理すると、105.00円から104.00円に下落し、104.50円に戻した時、105.00円で最初に建てたポジションは-5,000円、104.00円でナンピンしたポジションは+5,000円になります。合計すると、±0円ですね。平均価格が、105.00円から104.50円に下がったということです。
数字だけ考えても、実際のトレードでどうなるのかイメージが沸かないと思いますので、実際にチャートを見てみましょう。
次のチャートは、2008年のリーマン・ショックの時のドル円の日足チャートです。

Aの価格帯がサポートラインになっています。このサポートラインで反発して上昇トレンドになると予測し、買いポジションを持ったとします。その後、サポートラインを下抜けて、Bまで急落しました。つまり、Aで買ったポジションは含み損となっています。
この時、あなたには、次の3つの選択肢があります。
- 損切りする
- 何もせずポジションを持ったまま
- ナンピンする
このチャートの場合、サポートラインで反発すると予測していたのに、サポートラインを下抜けて違う値動きになってしまいましたね。そのため、後付けになりますが、「損切り」をするのが適切です。
大事なのは、最初に描いていた想定と違う相場展開になった時に、損切りできるかどうかです。
もし、サポートラインを下抜けることまで想定の範囲内として、損切り幅を決めていたならば問題ありません。しかし、今回は、サポートラインを下抜けない、というのが当初の想定でした。
では、Bまで下落した時に1.の損切りでもなく、2.の様子見でもなく、3.のナンピンを選択したとします。この時、「ナンピンは、損切りと真逆の行動である」ということを理解しているかどうかが重要です。
さらに詳しく解説します。
1.3.ナンピンは本来の行動とは真逆になる
FXの注文には、「買い」と「売り」の2種類しかありません。
「買い」ポジションを損切りする(決済する)場合、マーケットに出す注文は「売り」です。決済ボタンをクリックするだけなので、売り注文を出している感覚がない方もいるかもしれません。しかし、買いを決済するための注文は売りになります。
新規で売りポジションを建てる時の「売り」と、買いポジションを決済する時の「売り」は、どちらも同じ「売り」です。しかし、意味は全然違いますので、混同しないようにして下さい。
あなたが、Bで損切りする場合、マーケットへ出すのは決済するほうの売り注文になります。ただ、今回は、損切りせずにナンピンをします。ナンピンするということは、買い注文ですね。新たに買いポジションを持つわけです。
本来、損切りするために「(決済の)売り」注文を出すタイミングで、その逆の「(新規の)買い」注文を出すということです。つまり、ナンピンは適切な行動とは正反対のことをしているわけです。
実は、このBのポイントは、大きな分かれ道に差し掛かっているということを認識しなければなりません。なぜなら、損切りするかナンピンするかで注文が逆になり、勝敗がはっきりするポイントだからです。
このような時に、負けを認めたくない、戻るかもしれない、という安易な気持ちでナンピンという判断を下していいのかどうか、もう一度よく考えてみて下さい。ほとんどの方は、重大なポイントである認識をあまり持っていないのではないでしょうか?
ここで、あなたが道に迷った時をイメージしてみて下さい。その時、次の3つの選択肢があるとします。
損切りするかナンピンするかは、1.そのまま進む、3.反対方向へ戻るのどちらかを選択するようなものです。正しいかどうかは別として、この時の選択が、目的地へ辿り着けるかどうかの分かれ道になります。反対の道を選ぶのですから、吉と出るか凶と出るかしかありません。
さて、もう一度先ほどのチャートをご覧下さい。

Bでナンピンし、さらにCまで下落しました。Bの後、少し反発したタイミングで決済していれば、損失は少なくなったかもしれません。しかし、それは時間が経ってみないとわからないことで、いいタイミングで決済するのは至難の業です。
損切りせずにCまで下落してしまった場合、ここで損切りするかナンピンするか、再度分かれ道になります。Bでナンピンしたにも関わらず、今さらCで損切りすることは、損失額も増えているのでメンタル的に難しいのではないでしょうか。
また、急落してCではローソク足の下ヒゲを形成し、一番安いところでナンピンできた想定です。しかし、実際に大底でポジションを取ることはまず不可能です。計画的なナンピンなら、底近辺で冷静にポジションは取れるでしょうが、ここではそうではありません。
そもそも、Cでは、AとBで買ったポジションの含み損が最大になって、冷静でいられません。
たとえCでナンピンしたとしても、B付近まで戻した時に売って全決済していなければ、再度下げて本当の大底のDでロスカットして大損ということになりかねません…。
AとBで2回ナンピンをしてさらに安値を下抜けると、ものすごい焦りとプレッシャーになります。少ない枚数でエントリーしていればいいですが、ナンピンすると枚数が必然的に増えていくので、気付いた時には想定よりも大きな枚数に膨らんでいることが多いです。
以上のことは、ある例えに過ぎません。
自分はそんな風にはならないと思うかもしれませんが、実際にナンピンすると、本当にこのような悪い流れになります。もし、Aで買ってBでナンピンせずに損切りをしていれば、損失は最小限になっていたでしょう。
Bで「売る」選択ではなく、真逆の「買い」の選択をして招いた結果です。
ちなみに、私は、このチャートのリーマンショックの時に1,000万円の大損をしました。実際に建てていたポジションと、上述のABCでのポジションの説明は異なりますが、ナンピンして底で損切りした事実は同じです。ぜひ、教訓にしていただければと思います。
1.4.いいイメージだけではなくリスクも認識する
ナンピンしてさらに逆行すると、大損しかねません。逆に、上手く値が戻れば、含み損がなくなるどころか、短期間で大きな利益になります。これは、ナンピンの魅力と言えます。まさに、最初に説明した「損失を無くす」という難平の文字通りの結果になります。
このように、ナンピンは、大損する可能性もある一方、大きな利益になる可能性もある、とてつもない破壊力がある注文であることは間違いありません。この判断を、含み損を抱えて冷静さを失った状態で行う必要があります。
ナンピンが上手くいった時のいいイメージだけを想像してはいけません。必ずリスクも認識する必要があります。
1.5.勝率の高いと味を占めてクセになる
損切りせずにナンピンをすると、勝率だけは高くなります。なぜなら、相場は一方向へ動くことは少なく、一時的に反発や反落する動きを見せることがよくあるからです。ちなみに、これを「揺り戻し」といいます。
ナンピンして平均価格が良くなった後にこの揺り戻しがあると、最初に建てたポジションはマイナスでも、ナンピンしたポジションがプラスになるため、損失が回復しやすくなります。
反対に、ナンピンをしないでトレンドに逆らって最初のポジションを持ち続けた場合だと、元の値に戻ってこないことが多々あります。ナンピンなしの場合は、ずっと含み損のままです。これを考えると、心理的にナンピンしたくなるのではないでしょうか?
ナンピンして少し反転してくれれば、損益は±0円付近には回復するわけです。つまり、全戻しはないにしても、少しくらいは反転してくれるだろうと期待してしまいますね。
確かに、ナンピンを続けていれば、どこかで反転して損失は少なくなります。ナンピンの枚数とタイミングが良ければ、すぐに含み益になることもあるでしょう。
しかし、これは期待値の高いトレードルールではなく、運が良かっただけです。何回目のナンピンかはわかりませんが、いつかは反転します。ナンピンし続けていれば、反転の確率は高くなるのは当然ですよね。
ナンピンは依存性が高いと言われている理由は、このような心理が働くからです。ナンピンして一度成功すると、同じことをやればまた勝てる感覚になるので、本当に注意が必要です。トレードルールが優れていたわけではないのに、トレードが上手になったと勘違いしてしまいます。
味を占めると、次のトレードから、含み損が出る度にナンピンするようになります。勝てるまでナンピンするのですから、助かる確率のほうが高いのです。これがクセになると要注意です。
ポイント!
ナンピンは、損失を先延ばしにできるため、心理的にやりたくなる方法です。しかし、ナンピンで勝つと、それがクセになるので要注意です。
2.ナンピンで大損する2つのパターンを知る
ここまでお読みいただき、ナンピンがどのような手法か、お分かりいただけたと思います。
次に、ナンピンで失敗する2つのパターンを紹介します。ナンピンがどのような注文かを知るだけでなく、初心者が陥りやすいパターンを知ることができます。これを理解することで、失敗しないように注意したり、ポジションの建て方を試算できるようになります。
具体的には、次の2つのパターンに注意して下さい。
それぞれ解説します。
2.1.無計画ナンピンは一発で大損する
ナンピンの1つ目の大損パターンは、無計画ナンピンです。これは、先ほどのリーマンショックの例が該当します。
最初に新規でエントリーする時は、先ほどのチャートのAの箇所のように、「ここから反発しそうだ」「この価格帯は下抜けないだろう」などと値動きを予測しています。

問題は、Bのような損切りのポイントまで下落した時、損切りをしないでナンピンすることです。ためらいがあり、損切りが遅れるのは仕方ないと思います。ショックですし、感情がありますからね。
ナンピンのポジションを建てることは、当初は計画していなかったはずです。もうこの時点で、戦略から外れているのですから、戻るのを祈るしかありません。
上述のように、ナンピンして逆行した場合、損失を埋めるためにはさらにナンピンするしかありません。次のナンピンをする時は、損失がさらに拡大して余計に冷静な判断ができなくなっているので、チャート分析からテクニカル的な根拠を持つことなど、もはや無理でしょう。
無計画なナンピンは、このような悪循環に陥るので極めて危険な行為です。
ここで注目すべきは、最初はしっかりルールを決めてエントリーしていたことです。損切りするつもりだったにも関わらず、今回だけは戻るだろうと魔が差してナンピンしてしまいました。
誰にでも、損切りできずに損失が拡大してしまった、という経験はあるのではないでしょうか?
ルールを決めてトレードしていても、ちょっとした感情の揺さぶりで、真逆の行動を取ってしまうパターンです。一度ナンピンを始めると、その後はメンタルが崩れて滅茶苦茶なトレードになってしまいます。
この悪循環は、ルールに曖昧な部分があったり、トレード経験が少ない初心者が陥りやすいパターンといえます。
また、少ない資金でトレードする人も注意しなければなりません。なぜなら、含み損を抱えた時、ここで損切りすると取り返せないと思ってしまうからです。逆に、ナンピンして値が戻れば、一気に資金が増えるのではないかと錯覚してしまいます。
現実には、ちょっとした逆行で証拠金不足になって強制ロスカットされる場合がほとんどです。
以上のような理由で、ナンピンして助かる場合もあると考えてしまう人は危険です。なぜなら、一度成功すると、何度もナンピンするようになるからです。
含み損を抱えたらナンピンするクセがつき、資金が増える前に一発で大損することになりますので、注意して下さい。もちろん、計画的なナンピンなら問題ありません。上述のように、最初は計画的なトレードでも、途中から無計画になる時が危険だということを認識しておいて下さい。
2.2.スワップ目的ナンピンは計画していても注意
ナンピンの2つ目の大損パターンは、スワップ目的ナンピンです。ちなみに、スワップとは、2国間通貨の金利差益のことです。
ナンピンを前提にするということは、計画的な投資になります。先ほどの1つ目の例は無計画でしたので、この時点ではクリアしています。
ここでは、実際にナンピンする値幅と含み損を想定して、表で説明していきますね。
2.2.1.値幅を決めてナンピンした時のシミュレーション
さて、シミュレーションで使う通貨ペアは、業界最高水準のスワップポイントが特徴の、ヒロセ通商のトルコリラ円です。1枚(1万通貨)の買いポジションを持っていれば、1日で80円のスワップポイントが受け取れます。
次の表をご覧下さい。これは、29円で1枚(1万通貨)買い、その後ナンピンし続けた場合の含み損の合計を表したものです。

【表の見方】
29円で1枚買い、スワップ運用スタートする。
ナンピン回数:10回
表中の金額:全て含み損
表の左側:価格(26円、24円、22円・・・と2円下落ごとにナンピン)
表の上側:ナンピンする枚数(1枚、2枚、3枚・・・と1枚ずつ増加)
青い枠:ナンピンする価格帯と枚数
赤い四角が、最初に29円で建てた1枚です。26円になると、3円(300pips)のマイナスで30,000円の含み損になります。それからは、2円(200pips)下落するごとの含み損が積み上がります。
例えば、26円だと含み損-30,000円で、1枚ナンピンします。表の右側が、含み損の合計です。
20円まで下落すると、最初に建てたポジション1枚に加えて、ナンピンを3回(26円で1枚追加、24円で2枚追加、22円で3枚追加)することになり、合計7枚で含み損は-29万円になります。
この表では、トルコリラ円の価格がゼロになるまで想定しています。ゼロになる可能性はほとんどありませんが、最大の下落幅までを考慮しています。
もし価格が2円になると、表の右下にある通り、含み損は6,870,000円まで膨らみます。この時のポジションは、合計56枚(56万通貨)まで膨らんでいます。最初が1枚だったので、56倍ものポジション量になっていますね。
なお、このナンピン方法をするために必要な資金は、最大の下落幅・枚数・含み損を考慮しても1,000万円です。逆に、1,000万円あれば、トルコリラ円の価格がゼロにならなければ、永続的にスワップを受け取ることができます。
ちなみに、1年間で受け取れるスワップポイントは、枚数毎におおよそ次のようになります。
【トルコリラ円で1年間に受け取れるスワップポイント】
枚数 |
1年間のスワップポイント |
1枚 |
29,000円 |
5枚 |
145,000円 |
10枚 |
290,000円 |
20枚 |
580,000円 |
30枚 |
870,000円 |
40枚 |
1,160,000円 |
50枚 |
1,450,000円 |
※ヒロセ通商の2019年8月のスワップポイントを元に試算
ここでは、「スワップポイントの額がいつ含み損の額より大きくなるか」が重要です。そうなるまでは、ポジションをホールドする必要があります。
どんなにスワップポイントが高くても、価格が下落していたらキャピタルゲイン(値上がり益)は得られず、トータルでマイナスになってしまいます。含み損に耐えながらコツコツとスワップを受け取り、何年もホールドしておけるだけの資金とメンタル的な余裕が必要です。
先ほどの例では、ナンピンする枚数を1枚ずつ増やしていきましたので、今度は、ナンピンする枚数を全て1枚(1万通貨)の場合を想定してみます。
次の表をご覧下さい。見方は、先ほどと同じです。

ナンピンを1枚しかしないと、ポジションの合計は最大でも11枚(11万通貨)で、運用資金は200万円あればできます。先ほどの場合の必要資金は1,000万円でしたので、こちらのほうが現実的な運用です。
さて、表を見ると、2円まで下落した場合の最大含み損は177万円です。この場合も、先ほどと同じように、含み損とスワップポイントの追いかけっこになります。
以上の2つの例を見てお分かりいただけたと思いますが、ナンピンする枚数によって、計画がだいぶ変わってきます。
FXに限らず、投資にはハイリスク・ローリターンのものはありません。ハイリスクなら、必ずハイリターンです。ローリスクならローリターンになります。ポジションの取り方で、ハイリスク(・ハイリターン)にもローリスク(・ローリターン)にもなりえます。
2.2.2.資金効率が悪くメンタルが維持できない
ナンピンするということは、価格が下落している証拠です。そして、下落しているということは、必ず含み損を抱えた状態になっているため、スワップポイントが毎日つくのを楽しみにしながら値上がりを待つしかありません。
こうなると、資金効率がとても悪くなります。価格が下落し続け、仮に5年間戻らなければ、スワップポイントが含み損を上回るまで5年間待つことになります。
待てばいい、と最初は考えるかもしれません。しかし、それはメンタルへの影響を一切考慮していません。実際にやってみると分かりますが、資金が拘束されたまま含み損を毎日見ていると、ボディブローのように少しずつメンタルへ悪影響を及ぼしてきます。
そして、スワップ運用なんていいや、と途中で投げ出してしまうのがオチです。このように、ナンピンをするなら、
- 潤沢な証拠金
- リスクが少ない資金管理
- メンタルへの影響
を必ず考慮する必要があります。そうしないと、どんなに余裕資金でナンピンしたとしても、含み損を抱える期間が長くなるにつれてメンタルの維持が難しくなります。
2.2.3.上昇トレンドでのスワップ運用は期待値が高い
ここまでの説明だと、スワップ運用に対してマイナスのイメージをお持ちになるかもしれません。リスクばかり取り上げていますからね。しかし、それだけナンピンには注意していただきたいということです。
繰り返しになりますが、投資というのはリスクとリターンは同じです。そして、期待値を上げることはできます。
これまでは、期待値が低い時の想定でした。ここでいう期待値が低いとは、下落相場の時です。ナンピンが続くということは、下降トレンドの最中ですね。
その逆に、上昇トレンドの時に買いポジションを持てば、値上がり益とスワップポイントの両方が狙えます。上げ方にもよりますが、メンタルへの影響も少ない上、手間があまりかからないのに利益も上がる、面白味のある運用になります。
ナンピンとは少し話が逸れますが、私はスワップ運用自体を否定するつもりはなく、次のような運用をすれば期待値が高くなると思っています。ぜひ覚えておいて下さい。
《期待値が高いトレードをするポイント》
- 上昇トレンドの時に絞る
- 下降トレンドの時は様子見をする
- 上昇トレンドの押し目で下げた時だけナンピンする
- ナンピンの回数を決めて、上昇トレンドが終了したら決済する
このように、値上がり益(キャピタルゲイン)が期待できる時に、インカムゲイン(スワップポイント)を狙う戦略を取ることができれば、期待値は高くなります。
ポイント!
ナンピンで大損するパターンは決まっています。それを認識するだけでも、大損を避けることができます。
3.ナンピンを回避するための心得
計画外のナンピンをしてしまうのは、損したくない感情があるからに他なりません。損失を確定させると、少なからずショックを受けますからね。毎日トレードしていれば負けもそれなりにあるので、損切りも淡々と行っていかなければなりません。
しかし、頭では分かっていても、最初から感情を排除するのは難しいですよね。そこで、無計画ナンピンをしない環境を作ると良いです。ここでいう環境とは、ある程度のルールのことです。自分だけのルールもあれば、テクニカル的なトレードルールに関することもあります。
ルールがないからナンピンしたくなるのです。それならば、先に作ってしまいましょう。そのポイントをお伝えします。
3.1.機会損失を受け入れる
機会損失を受け入れることは、私が決め事にしているおすすめの考え方です。ちなみに、機会損失とは、本来ならば稼げたにも関わらず、機会を逃すことで生じた(心理的な)損失のことです。
今日勝ちたいという思いが強過ぎると、出来ないことまでやろうとしてしまいます。よくあるのが、天井や底でエントリーして最大の利益を叩き出したいという感情です。価格が上昇し始めた時に乗り遅れて、損した気分になったことはありませんか?
「やっぱり買っておけばよかった!」「上がると思っていた!」などと、自分の考えが正しかったかのように思ってしまうこともあるでしょう。これを「後知恵のバイアス」と言い、要は、自分に都合良く解釈してしまうことです。これは、相場の世界でよく陥ってしまう心理状態です。
これは、トレードにおいて、ストレス以外の何物でもありません。
これが続くと、大きな機会損失感に打ちひしがれ、勝てるようになる前に心が折れてしまいます。上手くなれば、天底を取れるようになると思う方もいるかもしれません。しかし、どんなにトレードの経験を積んでも、天底を取るのは難しいです。
私は15年以上トレードしていますが、今でも毎回チャートの天底を取るのは非常に難しいと思っています。もちろん、イメージ通りの値動きになって天底を取れる時もあります。
ただ、結果的にそうなったのであって、最初から「絶対に天底を取りに行く!」「わずかなチャンスも逃さない!」という思いは全くありません。むしろその逆で、欲張らずに「天底を取ろうとしない」ことを意識しています。コツは、機会損失を完全に受け入れてしまうことです。
そうすると、メンタルの維持が可能になります。「あの時エントリーしておけばよかった!」と、機会損失感を持ってしまうと、その後のトレードに焦りが出てしまいます。そして、不要なエントリーが増加する、いわゆる「ポジポジ病」になってしまいます。
その日負けると、翌日には勝たなければならないと焦り、さらにポジポジ病になっていく…という負のスパイラルに陥ります。この焦りが、実は無計画ナンピンの根源になるのです。
そうならないために、最初から機会損失を受け入れてしまいましょう。すると、ナンピンするという行動が自ずと減ります。このように、ナンピンする心理状態と機会損失感は、実はどこか通じるものがあるのです。
3.2.ポジションが順張りか逆張りか認識
計画的なナンピンをする場合、今の相場がトレンド相場かレンジ相場なのかによって、ナンピンする値幅やタイミングは異なります。さらに、リスクや損切りすべきポイントも違ってきます。
大切なのは、ナンピンする前の最初のポジションが、順張りと逆張りのどちらの方向へポジションを持ったのかを認識することです。
例えば、現在の相場が上昇トレンドで、本来なら順張りでエントリーしなければならないタイミングで逆張りのショート(売り)をして、含み損を抱えてしまったとします。こうなった場合は、入口の段階で間違っていたと認め、ナンピンせずに速やかに損切りしなければなりません。
このような判断が適切に行えるようになるためにも、根拠を持って最初のエントリーができるようになる必要があります。
順張りか逆張りか、どちらのトレードをやったかを認識するだけでも、ポジションが含み損になった時に負けを受け入れやすくなります。よく分からないトレードをするから、負けを受け入れられなくなるのです。
3.2.1.押し戻しでナンピンするのが有効
ナンピンをするとしたら、トレンド相場の「押し目買い」と「戻り売り」のタイミングです。
上昇トレンドの場合、上昇→反落(押し目)→上昇(トレンド回帰)という流れが一般的です。どこまで押し目をつけるか自信が持てない場合、まずお試しで「打診買い」をして、さらに下げたらナンピン買いをする戦略が有効です。
「この価格帯より下げたらトレンドが否定される」というラインを見つけることが前提で、そのサポートラインを下抜けるまでは、トレンドフォローの戦略が適切です。
下降トレンドの場合は、この逆になります。具体的には、まず「打診売り」をして、一時的に戻る動きを見せたらナンピン売りをする戦略が有効です。下降トレンドが否定される価格帯を上抜けたら、損切りします。
このように、ナンピンするタイミングは、トレンドフォロー中の押し目や戻りで行うのが良いでしょう。もちろん、ナンピンは必ずしも行う必要はなく、打診買いや打診売りも無理にする必要はありません。
もっと大事なことは、損益率(リスクリワード比率)、ナンピンの値幅や枚数に期待値があるかどうかです。なお、損益率については、『バルサラの破産確率でトレード技術を飛躍的にアップさせる方法』で解説しています。
ナンピンすると、この期待値の算出が非常に難しくなるので、高度なテクニックであることは間違いありません。トレンドに乗っている間はナンピンしていれば良い、という甘い考えで、とりあえず買っておくというのは危険です。頭に入れておいて下さい。
3.2.2.ナンピンする回数も決めておく
先ほど、ナンピンをするならトレンドフォローの押し戻しのタイミングが有効であるとお伝えしました。これに加えて、ナンピンする回数まで決めておくことをおすすめします。
なぜなら、ナンピンすることに慣れてしまうと、どんどんポジションを持とうとしてしまうからです。これでは、テクニカル的な計画はあっても、ナンピンの建て方のルールがないので、結局は無計画ナンピンと同じになってしまいます。
回数を決めておかないと、すぐにポジション量があなたの許容範囲をオーバーしてしまいます。そして、ちょっと逆行しただけで含み損に耐えられなくなります。
こうなると、まだ押し目の範囲内で価格が推移しているにも関わらず、大損してしまう可能性があります。損切りした箇所が絶好の押し目となり、そこから上昇したら悔しいですよね。
テクニカル的にナンピンの戦略が正しかったとしても、回数を決めずに狭い値幅でナンピンをし過ぎると、全て台無しになる恐れがあります。そうならないためにも、予めナンピンの回数を決めておき、ここまで押し戻さないとナンピンしない、という決め事をしておくことが必要です。
3.2.3.トレンドに逆らった無計画ナンピンは最も危険
重要なのでもう一度お伝えしますが、トレンドに逆らってポジションを持ってしまった時は、ナンピンせずに損切りしましょう。
ナンピンすればするほど、どこかで反転する確率も高くなるのは確かです。しかし、そのトレンドが値幅と継続性を伴った強烈なものだった場合、反転する前に資金が枯渇してしまいます。
特に、逆張りのナンピンは冷静さを失った無計画なことが多いので、注意が必要です。1回ナンピンすると、下げたらナンピン、また下げたら次もナンピン、という判断に固執するようになってしまいます。こうなると、底なし沼状態で、今さら損切りできないですからね。
無計画のナンピンが成功すると、味を占めて次も同じように無計画ナンピンを繰り返すので、結局は大損するまでやり続けることになります。
繰り返しになりますが、無計画ナンピンは、勝てるまでポジションを建てるので、勝率は良いかもしれませんが、極めて依存性が高い方法です。そのため、資金が枯渇するまでナンピンしてしまうので、トレンドに逆らっていると気付いた時点で、損切りすることを強くおすすめします。
3.3.ルールに自信があるとナンピンしなくなる
FXで失敗しないためには、次の3つを徹底することが大切です。
《FXで失敗しないためのポイント》
- 本格的にトレードを始める前に損切りルールを決める
- 期待値の高いトレードルールを作る
- FXの正しい知識をインプットする
この3つのポイントは、ナンピンに限ったことではなく、FXの全てに当てはまることです。裏を返すと、無計画なナンピンをしてしまうのは、上の3つがないからではないでしょうか。
ナンピンに走ってしまう行動を根源から断ち切り、勝ち続けるトレーダーへ進化するため、上の3つを実行するようにして下さい。毎日少しずつでもいいので、進めて下さいね。
自信のあるルールを構築すれば、自ずとナンピンはしなくなります。というのも、私が専業トレーダーとして生計を立てられるようになったのも、無計画ナンピンをしなくなってからです。1発で大損することを避けられれば、FXはかなり優位性のある投資だと思います。
ポイント!
しっかりとルールを決めることが、上手くナンピンを活用するコツです。
まとめ
ナンピンには、メリットもデメリットもあります。大事なことは、大損する前に、取り決めをしているかどうかです。私の場合、運用資金が多過ぎたことや、損切りのルールがなかったため、1回目のナンピンからドツボにはまって大損してしまいました。
みなさんには、そうなっていただきたくないので、いくら位の資金で、どれ位のポジションが持てるかを試算してみて下さいね。決して、損失を無くすための、「難を平らにする」という意味でのナンピンはしないようにしましょう。