通貨ペアとは、各国が発行する通貨を交換する際の組み合わせのことです。
「米ドル/円」のように書かれ、「1ドルを購入するのに円がいくら必要か」を表します。なお、スラッシュ(/)の左側の通貨を「基軸通貨」といい、購入する通貨を意味します。一方、右側の通貨を「決済通貨」といい、売買する通貨を意味します。
FXで稼ぐためには、どの通貨ペアを売買するかは非常に重要です。
適切な通貨ペアを選ぶと、一回一回のトレードの勝率や利益が安定するようになります。しかし、通貨ペアの選択を誤ると、予想もできなかったような事で相場が動き、気が付いた時には大損をしてしまうことにもなりかねません。
全てのトレードは、通貨ペアを選ぶことから始まります。そして、どの通貨ペアを選ぶかで、あなたが勝ち続けられるかどうかが決まると言っても過言ではありません。これは、成功しているFXトレーダーにとっては常識です。
それにも関わらず、通貨ペアの選択の重要性をきちんと解説している人はほとんどいません。そこで、この記事では、あなたがFXで稼ぐために、絶対に押さえてほしい通貨ペアの選び方のルールを解説させていただきます。ぜひ、参考にして下さい。
執筆者
ぶせな
FXの専業トレーダー。認定テクニカルアナリスト。 本格的にFXを開始してから10年で1億6,500万円の利益を突破。著書に、『最強のFX 1分足スキャルピング』『最強のFX 15分足デイトレード』(共に、日本実業出版社)がある。ツイッターアカウントは、『@busena_fx』、ブログは『億トレーダーぶせなブログ』。
はじめに :通貨ペアとは?
2種類の通貨の組み合わせのことを、通貨ペアと言います。例えば、米ドルと日本円の通貨ペアの取引であれば、「米ドル/円」と表します。そして、例えば、1ドル=100円の時に、円でドルを買う(=円をドルに両替する)ことを、「ドル円を買う」と言います。
FX市場には、以下のように、様々な種類の通貨ペアがあります。
英語表記 |
日本語表記 |
英語表記 |
日本語表記 |
USD/JPY |
米ドル/円 |
NZD/USD |
ニュージーランドドル/米ドル |
EUR/JPY |
ユーロ/円 |
TRY/JPY |
トルコリラ/円 |
EUR/USD |
ユーロ/米ドル |
ZAR/JPY |
南アフリカランド/円 |
GBP/JPY |
英ポンド/円 |
HKD/JPY |
香港ドル/円 |
GBP/USD |
英ポンド/米ドル |
SGD/JPY |
シンガポールドル/円 |
AUD/JPY |
豪ドル/円 |
NOK/JPY |
ノルウェークローネ/円 |
AUD/USD |
豪ドル/米ドル |
USD/CHF |
米ドル/スイスフラン |
CAD/JPY |
カナダドル/円 |
GBP/CHF |
英ポンド/スイスフラン |
CHF/JPY |
スイスフラン/円 |
EUR/GBP |
ユーロ/英ポンド |
NZD/JPY |
ニュージーランドドル/円 |
EUR/CHF |
ユーロ/スイスフラン |
数十種類の中から、どれかの通貨ペアを選んでトレードをすることになります。
なお、スラッシュ(/)の左側の通貨を「基軸通貨」、右側の通貨を「決済通貨」といいます。「米ドル/円」で見れば、米ドルが基軸通貨で、円が決済通貨ですね。
それでは、FXで効率よく稼いでいくために、通貨ペアはどのように選べば良いのでしょうか?
3つのルールがありますので、しっかりと押さえておきましょう。
- 取引量の多い通貨ペアを選ぶ
- ドルストレートを選ぶ
- トレードスタイルに適した通貨ペアを選ぶ
それぞれ、詳しく解説させていただきます。
1.取引量の多い通貨ペアを選ぶ
FXで稼ぐための大前提は、「取引量の多い通貨ペアを選ぶこと」です。なぜなら、取引量の多い通貨ペアでは、精度の高いテクニカル分析ができるからです。取引量が多いということは、世界中のトレーダーが、その通貨ペアに注目していることを意味します。より多くのトレーダーが注目しているということは、それだけテクニカル分析が機能しやすくなります。
なぜなら、相場はあくまでも、市場参加者の欲(通貨に対する需給)を反映しているからです。取引量が少ない通貨ペアの場合、突発的な要因で、突然、価格が大きく動いてしまいます。これでは、テクニカル分析どころではありません。単なるギャンブルになってしまいます。
「ギャンブルでも勝てればいい」という方もいるかもしれません。止めはしませんが、ギャンブラーの行き着く先は破産です。そもそも、FXは運に頼らなくても、大きな利益を得られる世界です。この記事を一生懸命読んで勉強してくれている方なら、きっとできます。ここで書かれているようなことも、一切調べずに始める方が大半なのですから…。
1.1.世界の通貨ペアと日本の通貨ペア取引量の割合
それでは、次に、どの通貨ペアの取引量が多いかを統計的に確認しておきましょう。
世界の通貨ペア取引量ランキング
|
月間取引量(10億ドル) |
シェア |
ユーロ/米ドル |
1.173 |
23.05% |
米ドル/円 |
902 |
17.72% |
英ポンド/米ドル |
470 |
9.24% |
豪ドル/米ドル |
266 |
5.24% |
米ドル/カナダドル |
218 |
4.29% |
出展:国際決済銀行
グローバルな視点で見ると、「ユーロ/米ドル」と「米ドル/円」が突出していますね。世界における円の強さも分かります。日本人のトレーダーなら、「米ドル/円」がメインの通貨ペアでしょうから、「米ドル/円」の取引量が大きいのはプラス材料といえます。
日本の通貨ペア取引量ランキング
次に、日本における割合を見てみましょう。
|
月間取引量(単位10億ドル) |
国内シェア |
世界シェア |
米ドル/円 |
902 |
70.7% |
17.72% |
豪ドル/円 |
31 |
9.16% |
0.62% |
英ポンド/円 |
3以下 |
8.84% |
0.06%以下 |
ユーロ/米ドル |
1173 |
4.55% |
23.05% |
ユーロ/円 |
79 |
3.54% |
1.56% |
出展:国際決済銀行
「米ドル/円」のシェアが圧倒的に高いですね。また、「ユーロ/米ドル」を除くと、全て円を含む通貨ペアです。日本での取引量ランキングトップ5のうち、「豪ドル/円」「英ポンド/円」「ユーロ/円」の取引量は、世界で人気のある通貨ペアの数十分の一に過ぎません。このことから、日本では、取引量が少ないにも関わらず、慣れ親しんだ円絡みの通貨ペアを選ぶ傾向にあることが分かります。
1.2.初心者トレーダーの大半がダメな通貨ペアを選んでいる
繰り返しになりますが、通貨ペアを選ぶ上でまず重要なのが、絶対的な取引量の多さです。しかし、日本人トレーダーの多くは、このルールを破り、取引量が非常に少ない通貨ペアを選択してます。
これは、日本人は、ギャンブルのような気持ちでトレードしている人が多いということを表しています。特に、FX初心者は、本人も知らない間に投機的な取引を行っている場合が非常に多いです。それでは、最終的に行き着く先は大損です(参考:『FXで失敗して1000万円以上の大損をした事例と重要な教訓』)。
FXは、ギャンブルではありません。確かなトレードルールに基づいてトレードする方は、確実に勝てるようになり、サラリーマンの時には考えられなかった利益を得られるようになる世界です。1年、2年と経つと、驚くほど資金が増えています。3年、5年経つと、自分の生活が全く変わっています。
そのような夢を手に入れるためにも、通貨ペアの絶対的取引量は考慮しなければなりません。
ポイント!
取引量のある通貨ペアを選ぶと良いでしょう。そうすると、テクニカル分析が機能しやすくなります。
2.ドルストレートを選ぶ
通貨ペアには、「ドルストレート」と「クロス円」というものがあります。この2つは、特性も違いますし、動きの傾向も違います。結論から言うと、FXで稼ぐためには、ドルストレートを選ぶ必要があります。
2.1.ドルストレートは自然な値動きで分析がしやすい
FX市場では、米ドルが世界の基軸通貨として君臨しています。そのため、「米ドル/円」や「ユーロ/米ドル」など米ドルを含む通貨ペアは全て「ドルストレート」と言います。ドルストレートは、クロス円と比べて自然な値動きをして、投機的な動きをすることは少ないです。
そのため、テクニカル分析を土台にするデイトレーダーは、ドルストレートを手がけるといいでしょう。テクニカル分析をしているとき、変な値動きがないので、エントリーからイグジットまで、戦略を立てやすくなります。
2.2.クロス円は値動きが激しく突然暴騰暴落する
一方、「クロス円」は、「米ドル/円」以外の円絡みの通貨ペアのことです。FX市場で世界の基軸通貨は米ドルで、円はマイナーな通貨です。そのため、クロス円の通貨の売買の時には、必ず円をドルに変えて取引されます。例えば、あなたが「ユーロ/円」の買いポジションを持ったとします。この時、実は、最初にマイナー通貨である円を、基軸通貨であるドルに交換(クロス)してから、ドルとユーロを交換するという手間が発生しています。
つまり、クロス円の為替レートは、以下のように2つの通貨ペアを掛け算して算出されているということです。
- ユーロ/円 = 米ドル/円 × ユーロ/米ドル
- ポンド/円 = 米ドル/円 × ポンド/米ドル
もし、今チャートを開いているなら、現在のレートで計算機で算出してみてください。
これは、クロス円は2つの通貨ペアの値動きに影響されることを意味します。例えば、「米ドル/円」と「ユーロ/米ドル」がどちらも急上昇したとしたら、その2つの通貨の掛け算で求められる「ユーロ/円」はさらに上回る勢いで上昇します。一方、「米ドル/円」と「ユーロ/米ドル」のどちらもが急落したとしたら「ユーロ/円」はさらにすごい勢いで急落します。このように、クロス円は必然的に値動きが激しくなります。
また、クロス円は2つの通貨ペアを経由することから、スプレッドも広くなるのが特徴です。
2.3.通貨ペアはドルストレートを基本に選ぶ
日本のFXトレーダーは、「ユーロ/円」や「ポンド/円」「豪ドル/円」を好む傾向があります。しかし、これらはクロス円なので取引量も限られており、さらに、値動きが激し過ぎます。そして、予期せぬ出来事で暴騰・暴落もしやすいです。
「何となく円が絡んでいるから安心感がある」と言う曖昧な理由で、クロス円の通貨ペアに手を出してしまうと痛い目に遭いますので、初心者のうちは注意が必要です。
トレードしてはダメ、ということではありません。クロス円は難しいので、最初から難易度の高い通貨ペアをやる意味はないということです。また、難しいという認識も必要です。
以下をご覧下さい。これは1分足チャートですが、3つの通貨ペアの全てが下落していますね。下落幅を見ると、クロス円である「ポンド/円」が一番大きいことがわかります。

このような時にクロス円の「ポンド/円」を売買する場合、私は、他の2つの通貨を必ず一緒に見ています。そして、全ての通貨でテクニカル分析を行い、全てにおいて明確な根拠が一致している場合に、トレードを行います。
ただし、クロス円は突然思わぬ動きをすることがあり、その値動きに対応できなくなることがあります。すぐに損切りできればいいのですが、それでも短期間で損失が拡大してしまいます。この恐怖はとてもメンタルに響くので、私も基本はドルストレートの通貨ペアを扱っています。
ポイント!
初心者がいきなりクロス円をトレードするのは、リスキーです。ドルストレートとクロス円の違いを頭に入れ、慣れてからでも遅くありません。
3.通貨ペアの特徴を押さえておく
なお、それぞれの通貨ペアには値動きの特徴があります。
通貨ペアの値動きの特徴に関しては、最初にデモトレードを行って押さえておくことが重要です。『FX初心者がデモトレードで必ずやるべき6つのコト』を改めて確認しておきましょう。
また、ファンダメンタルズについては、統計については発表の時期が決まっています。
例えば、アメリカは、6週間ごとの火曜日の3時15分(日本時間)に政策金利に関する発表がありますし、毎月第1金曜日の21時30分(日本時間)には雇用統計の発表があります。このようなファンダメンタルズに影響を与える経済発表がいつ発表されるかをメモしておいて、そのような時に、それぞれの通貨ペアに、どのような動きが現れるのかも観察しておきましょう。
ポイント!
まずは、実際にトレードしてみて値動きを見てください。その時、通貨ペア毎の特徴を意識すると良いでしょう。
4.トレードスタイルに合わせる
次に、トレードスタイルごとに、通貨ペアをどのように合わせるかについて見てみましょう。
4.1.スキャルピングはスプレッドが狭い通貨ペアを選ぶ
スプレッドとは、簡潔に言うと、「FX会社が受け取る手数料」です。これは一回一回のトレードで支払わなければいけません。スキャルピングは、1日の中で数十回から時には百回を超える取引を行ない、利益を細かく積み重ねていくトレードスタイルです。何百回もトレードを重ねるため、スプレッドもバカにはならない金額になっていきます。
そして、スプレッドは通貨ペアによって違います。そのため、スキャルピングでは、狭い通貨ペアを優先的に選ぶことが必要なのです(参考:「初心者にもおすすめ!人気FX会社の13口座を9つの項目で徹底比較」)。
「米ドル/円」は、スプレッドが0.3銭程度と狭いFX会社が多いので、スキャルピングには最適と言えます。一方で、スプレッドが1.0銭を超えるような通貨ペアでは、スキャルピングは不利です。ただし、たとえスプレッドが広い通貨ペアだとしても、1回当たりの期待値が高いトレードを行えるなら利益になります。スプレッドと期待値のバランスを見て、通貨ペアを選べるようになったなら、トレードに慣れてきたと言えるでしょう。
4.2.デイトレード・スイングトレードはトレンドにある通貨ペアを選ぶ
デイトレードやスイングトレードは、スキャルピングと違い、取引回数が少なく、ポジションの保有時間も長いです。また、1回当たりのトレードの平均利益も大きいため、スプレッドは気にする必要はありません。
これらのトレードで、私が通貨ペアの選択基準にしているのは、「その通貨ペアでトレンドが発生しているかどうか」です。FXは、基本的にトレンドが出ている時にトレードを行なうことで、多くの利益を得られる取引です(参考:「FXのトレンド相場の3つのパターンと2つのルール」)。
しかし、レンジ相場ではそこまで利幅を出すことができません。少なくとも私は、レンジ相場で大きな利益をねらうトレードは行ないません(参考:「レンジ相場の2つのルールと3つのブレイクパターン」)。
どの通貨ペアも、トレンド相場とレンジ相場を繰り返します。しかし、その時期はそれぞれです。「ユーロ/米ドル」に注目が集まっていてトレンドが発生している時、ポンド絡みの通貨ペアはレンジ相場かもしれません。この場合は、トレンドが発生している「ユーロ/米ドル」を選択します。
ポイント!
トレードスタイルにより、不利な通貨ペアがあるので注意してください。また、注目される材料は変わるので、その時期に注目されている通貨ペアを選ぶといいでしょう。
まとめ
今回の記事では、トレードで適切な通貨ペアを選ぶため必要なルールを紹介しました。最後に、私が常に監視している10個の通貨ペアを紹介しておきます。
- 米ドル/円
- ユーロ/米ドル
- ポンド/米ドル
- 豪ドル/米ドル
- ユーロ/円
- ポンド/円
- 豪ドル/円
- ポンド/豪ドル
- ユーロ/豪ドル
- ユーロ/ニュージー
私は専業トレーダーですので、プロとして毎日稼がなければいけません。毎日稼ぐためには、トレンドが発生しているかどうか、大きな値幅が狙えるかが大事です。そのために、どうしても監視通貨が多くなります。ただし、初心者の方が、私と同じ10通貨ペアを監視する必要はありません。
最初は、ドルストレートである「米ドル/円」と「ユーロ/米ドル」から始めると良いでしょう。この2つの通貨ペアからでも、十分な利益を得ることは可能です。そして、これらのトレードに慣れてきたら、他の通貨ペアを試してみてください。
ただし、クロス円に手を出す場合は気を付けて下さい。
しばらく経験を積めば、各通貨ペアの特徴が次第に分かってきます。そうしたら、どの通貨ペアが自分に向いているか、ベストな通貨ペアを自然に選択できるようになるでしょう。