公募割れを狙って利益を得るIPOセカンダリーの戦略

IPO投資は抽選に当選する以外にも大きく利益を得られる方法があります、その方法とはIPOが上場してから売買を行う「セカンダリー投資」です。このセカンダリー投資には様々な方法があります。私はIPO投資の際にセカンダリーも実践して、毎年利益をあげています。

今回では、このセカンダリー投資の種類の中から「初値買い」「公募割れ」を狙う投資方法をご紹介します。実践しやすい方法なので参考にしてください。

執筆者
柳橋義昭

柳橋義昭

兼業投資家。 証券会社在籍時に営業、ディーラー、ネット株部門の立ち上げを行い、 2008年からエンジュク株式会社に従事。 証券会社でIPOの業務の経験を活かし、2008年に独自の投資手法を確立。 その後は毎年、IPOの獲得とセカンダリー投資にて利益を積み上げる。 また、これまで述べ20,000人の投資家に自身の投資手法を伝授。 著書に、『いつでも、何度でも稼げる! IPOセカンダリー株投資』(すばる舎)がある。 証券外務員資格一種保有。

1.IPOセカンダリーとはどんな方法?

IPOは証券会社の抽選に当選した方しかもらえません。もし、そのIPOをどうしても買いたい方は、上場日に買わなければなりません。このIPOが上場した後に売買することを「セカンダリー」といいます。

人気のあるIPOの株価は上場後も値上がりしていきますので。その流れに乗るという方法もとれます。また、上場直後のIPOは株価がパターン化した値動きをしますので、そのパターンに注目して投資することも可能です。

下記で事例を1つご紹介します。

上記は2018年10月12日に東証マザーズへ上場したDelta-FlyPharma(4598)という銘柄です。同社は公募価格4,770円に対して初値が4,385円で決まりました。公募価格を8.1%下回っていますので、IPOを獲得している方々は初値で売却しては損失になります。

私は同社を初値で400株買い付け、4,850円で売却し、18.6万円の利益をあげることができました。このセカンダリーは「公募割れ」を狙った投資手法ですが詳しくは後述します。

一般的に知られているIPO投資とは「IPO株を抽選で獲得して初値で売却する投資」になりますので、ただ、IPOは初値が掲載されてからも収益機会があります。セカンダリーはそういうチャンスを狙っていきます。

私のセカンダリーには、いくつかパターンがありますので、そのパターンをそれぞれ抑えるだけで実は非常に効率よく投資をすることが実現できます。

2.IPOセカンダリー投資の勝率を上げる2つのテクニック

まずは下記をご覧ください。こちらは2018年10月3日に東証マザーズに上場したブリッジインターナショナル(7039)の上場後のチャートです。

同社は公募価格2,310円に対して、初値は4,920円でした。私は初値の4,920円で300株買い付け、その後、6,120円で売却しました。このセカンダリーは保有期間が3日間ですが、36万円の利益をあげています。

先程のセカンダリーは「公募割れ」に注目したものでしたが、このセカンダリーは「初値買い」に特化したやり方です。どちらも複雑なことをしているわけではありません。IPOの情報(公募価格)を調べることができれば誰にでもできるシンプルな方法です。

そこで、この2つのパターンを事例を含めてご紹介します。

2.1.初値買い

セカンダリーで一般的に行われる投資手法が「初値買い」です。

「初値買い」とは文字通りIPOの初値が形成されてから買い付けしていくことをいいます。IPOは上場当日、公募価格を起点にして特別買い気配、特別売り気配のいずれかでスタートします。そして、買い株数と売り株数の注文数が一致した時に初値が決まります。

※上場日の特別買い気配の例

(この場合、買いが売りよりも約9万株多いので初値はこの時点では決まらない)

「初値買い」はIPOを初値で買うことですので、初値で買い付けるということは「このIPOは初値がついてからでも値上がりするだろう」という見方による買いになります。そのため、IPOが初値をつけてから値上がりする銘柄なのか見極めなくてはなりませんが、この見極めには騰落率に注目します。

ここでいう騰落率とは、ある期間の始めと終わりとで価格がどれだけ変化したかを表すものです。例えば、価格が100円の運用商品が110円になれば10%の上昇、90円になれば10%の下落となります。

●初値買いの考え方
「初値買い」のスタンスはIPOが初値をつけてからも値上がりすることに先読むすることで、IPOを買い付けしにいきますので上場日に初値がいくらで決まるのか最も注目されます。なぜ、この初値が注目されるかについてはこちらをご覧ください。

※初値買いのイメージ(赤線は株価の動き)
20170630_03

<A>初値が公募価格に対して100%未満だった銘柄

銘柄名 上場日 初値 高値 安値 終値 上値幅
安江工務店 2017年2月10日 1,300 1,600 1,272 1,490 300
日宣 2017年2月16日 3,000 3,030 2,580 2,706 30
レノバ 2017年2月23日 1,125 1,425 1,103 1,425 300
ロコンド 2017年3月7日 2,625 2,800 2,574 2,735 175
ビーバンドットコム 2017年3月9日 3,530 3,640 2,850 2,850 110
うるる 2017年3月16日 3,330 3,750 3,150 3,480 420
ビーグリー 2017年3月17日 1,881 2,139 1,860 2,078 258
JESHD 2017年3月17日 890 1,040 870 1,040 150
ソレイジアファーマ 2017年3月24日 234 279 226 272 45
TKP 2017年3月27日 10,560 10,800 9,850 9,970 240
ズーム 2017年3月28日 2,278 2,331 1,855 1,885 53
ネットマーケティング 2017年3月31日 1,552 1,667 1,534 1,630 115


<B>初値が公募価格に対して100%以上だった銘柄

銘柄名 上場日 初値 高値 安値 終値 上値幅
シャノン 2017年1月30日 6,310 6,500 5,430 5,760 190
ユナイテッド&コレクティブ 2017年2月24日 4,500 5,200 4,500 5,200 700
ファイズ 2017年3月16日 4,010 4,550 3,630 3,950 540
ほぼ日 2017年3月17日 5,360 5,480 4,780 5,020 120
力の源HD 2017年3月22日 2,230 2,632 2,158 2,630 402
インターネットインンフィニティ 2017年3月22日 5,040 5,730 4,420 4,450 690
オロ 2017年3月24日 4,750 4,825 4,165 4,390 75
ナンバー・ワン 2017年3月28日 3,460 3,780 3,150 3,220 320
ユーザーローカル 2017年3月31日 12,500 13,350 12,130 12,470 850
テモナ 2017年4月7日 8,050 8,480 7,020 7,800 430
旅工房 2017年4月19日 3,750 4,185 3,500 4,140 435
アセンテック 2017年4月26日 5,950 6,950 5,630 6,950 1,000

それぞれ上場日当日の初値、高値、安値、終値を記載しています。

初値:IPOが上場日に初めにつけた株価
高値:上場日に最も高かった株価
安値:上場日に最も安かった株価
終値:上場日の最後につけた株価
上値幅:上場日に初値から値上がりした株価の幅

上値幅というのは初値からいくら値上がりしたのかを表しています。
(※上記は2017年に上場した東証マザーズとJASDAQのIPOから抜粋しています。)

AとBを見て頂くと上値幅に違いがあることを感じて頂けたと思います。Aを見ると上値幅の平均値が183円ですが、Bを見ていただくと上値幅が大きくなっており平均が479円です。この差は296円になります。

このAとBの違いですが、公募価格と初値の騰落率に違いがあります。Aの銘柄は公募価格に対して初値の騰落率が100%未満の銘柄です。そして、Bの銘柄は公募価格に対して初値の騰落率が100%以上の銘柄です。つまりBは公募価格に対して初値が2倍以上になっている銘柄ということになります。

(公募価格とは証券取引所に新規に公開する株式を投資家が購入する際の価格。)

初値買いには、このAとBの違いが収益をあげるために大事になります。

IPOの初値は一種の人気投票のように決まりますので、人気のあるIPOは公募価格に対して、初値が100%以上の水準で決まることがあります。そして、その後もさらに値上がりする傾向があります。一方、100%以未満の銘柄は公募価格に対して値上がりもなく初値が決まってしまいますので、そこまで人気化しなかった可能性があります。人気化しなかったIPOは初値形成後に大きく値動きしない傾向があります。

実は、この点が「初値買い」のポイントになります。

初値が公募価格の100%未満:IPOが人気化しなかったことが考えられるので、初値が決まってからも大きく値上がりしないかもしれない。

初値が公募価格の100%以上:IPOが人気化しているので初値が決まってからも、継続的に買いが入ることが予想される。初値で買いに行っても利益を出せる状況。

私はこのポイントに注目し、さらに利益確定については3~5%の値上がりで一度利益確定の判断を致します。前述したブリッジインターナショナルの事例も公募価格2,310円に対して初値は4,920円なので、公募価格の100%以上の結果となっています。

なお、初値が公募価格をあまりにも大きく上回った場合(3倍以上など)は見送ります。

2.2.公募割れ

もう1つのパターン「公募割れ」をご紹介します。

公募割れとは公募価格より安い値段で初値が決まることです。IPOは公募価格が割安に設定されていますが、公募売出数の多い銘柄や人気化しない銘柄は買いが入らないため、公募価格を下回って初値がつくケースがあります。

下記に過去の公開数に対するIPOの結果を記載するのでご覧ください。

※過去の上場企業数と公募割れになったIPOの数

  公開数 公募より高い 公募と同じ 公募割れ 公募割れ率
2004年 175 165 3 7 4.0%
2005年 158 151 4 3 1.9%
2006年 188 159 9 20 10.6%
2007年 121 89 3 29 24.0%
2008年 49 20 3 26 53.1%
2009年 19 13 2 4 21.1%
2010年 22 10 3 9 40.9%
2011年 36 19 3 14 38.9%
2012年 46 36 0 10 21.7%
2013年 54 52 1 1 1.9%
2014年 77 60 1 16 20.8%
2015年 92 83 1 8 8.7%
2016年 83 67 0 16 19.3%
2017年 90 82 0 8 9%

公募割れ率は公募割れ数を年間のIPOの数で割ったものです。過去の14年を見ると公募割れ率の平均は19%ですので、年間で約2割のIPOは公募価格を下回ることが考えられます。

公募割れのIPOは初値が公募価格を下回っていることで、IPOをもらっている人がみんな損をしているということです。そのため、公募割れする銘柄は我先に売却して損切りをするために予想外に公募価格を下回るケースがあります。

実は、この公募割れが収益機会になります。なぜなら、IPOは新規上場時の公開価格の決定において、想定される時価総額に対して、一定のディスカウント(割引)を行い公開価格を決定するため、同業他社よりも割安な株価を形成する傾向があるのに公募価格を下回ったら、その割引率が更に高まるからです。

●公募割れ狙いの考え方
IPOは公募価格の時点において一定のディスカウントをしていたにも関わらず、初値が公募価格を下回るということは、さらに割引率が大きくなってしまうため、この部分に注目する投資家が多い。

※公募割れのIPOを狙うイメージ(赤線は株価の動き)

20170630_01
公募割れをしたIPOは一方的に下げ続けることはなく、拾いに来る投資家もいるために上場日は一時的に株価が戻るケースが多い。この戻すタイミングを狙っていきます。

前述したDelta-FlyPharmaの事例は公募価格4,770円のところ、初値は8%下落して4,385円で決まりました。公募価格を8%も下回っていますので、投資家の注目を集めて、最終的にはストップ高で取引を終えています。

いかがでしょう。初値買いは公募価格より初値が高く決まれば買いに行きます。一方、公募割れは初値が公募価格を下回ることで買いに行きます。どちらも上場日の初値次第ですが、収益機会になりますので、是非、上場日の状況に注目して下さい。

まとめ

今回はIPOのセカンダリーで利益をあげるために約立つ2つのパターン「初値買い」「公募割れ」をご紹介しました。

「初値買い」は公募価格より騰落率が高い銘柄を狙い、「公募割れ」は公募価格を下回る幅が大きいほど期待値が高くなりますので、2つの投資手法は真逆のロジックであるといえます。

でも、このパターンだけでも知っているとIPOが落選ばっかりだとしてもセカンダリーとして利益を狙いにいくことができるはずです。2つのパターンはヒントにしか過ぎませんが、是非、どういう銘柄を狙い、どのように投資をするかを考えてみて実践してみてください。

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著者:柳橋


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