駐車場経営の3大リスクと対処法まとめ

駐車場経営は、リスクの少ない不動産運用や土地活用として、イメージされている方は少なくないと思います。

私は、私が不動産オーナーとなって10年ほど、実務経験を修めてきました。そこから言えるのは、駐車場経営も、一般的な事業と同じように、当然リスクは存在しますし、満足のいく収入を得られるようにするには、それらのリスクを把握した上で、最適な戦略を練ることが重要だということです。

そして、駐車場経営に成功するかどうかという観点で言うと、考慮すべきリスクは次の3点に集約される、ということです。

  • 土地に関するリスク
  • 土地を購入する時のリスク
  • 駐車場会社と契約する時のリスク

もちろん、他の情報誌やサイトなどでよく見るように、駐車場内での事故などのリスクや、災害リスクもあります。しかし、それらは保険に加入したり、管理会社と協力したりして、解決することができます。そして、それらは、そもそも収益が十分に得ている場合に、はじめて対処を考えられるものです。

それに対して、上記3つのリスクは、収益を十分に得られるかどうか、という駐車場経営の根幹に関わるリスクです。そして、これらを知らなかったことで、駐車場経営がうまくいかない方も、実際に多くおられるのです。

そこで、このページでは、一般的なリスクは最後に簡潔に触れるに留め、この3つのリスクと対策を重点的に解説していきます。

これらのリスクの中でも、土地に関するものは、既に駐車場を検討している土地をお持ちの方は、興味が湧かないかもしれませんが、本当にその土地を駐車場にすべきなのか、その前にクリアするべきことがあるかどうか、などの確認にもなりますので、ぜひ上から順番にご覧頂ければと思います。

執筆者
横山篤司

横山篤司

不動産オーナー経営学院代表理事兼学長。 宅地建物取引士、事業承継マネージャー、マンション管理業務主任者の資格を保有。 創業80年名古屋の三代目地主の家系に生まれる。父の代で相続争い、不動産売却が続き、10年前より残された数名の従業員と共に築40年を超えたビルや空き家の再生に取り組む。ニューヨーク留学帰国後、東京で外資系投資銀行のモルガンスタンレーに勤め、プロの不動産経営を学び、家業再生に活かしたことで本社建替え、借金も数年で完済することに成功。現在は東京・名古屋でビルやマンション、商業施設、駐車場等を経営。

1. 土地に関するリスク一覧

駐車場に限ったことではありませんが、投資用不動産を買ったり借りたりする上では、様々なリスクがあります。例えば、

  • アスファルトが劣化していて、再舗装のために想定外の出費がかかる。
  • 入口が予想外に狭かったり想定外の段差があったりして、駐車場にしても車路を確保できない。
  • 買ってから気づいたのだが、近隣との争いを抱えている土地だった。

などなど、です。

このような、土地に関する潜在的リスクには、大きく分けて、

  • 土地の権利関係のリスク(ヒトのリスク)
  • 土地の状態に関するリスク(モノのリスク)
  • マーケットリスク(カネのリスク)

の3種類があります。

1.1. 土地の権利関係のリスク(ヒトのリスク)

土地の権利関係には様々なリスクがあります。ややこしい場合には、次のような場合もあります。

土地の権利関係のリスク
・その土地に関する権利義務関係が異常に複雑になっている。
・その土地が第三者の権利を侵害していて係争中になっている(境界線やフェンスの位置など)。
・その土地が行政法規等により制限を受けている。

こうなると、当初想定していたような運用は、ほとんど不可能になってしまいます。そこで、検討している土地の権利関係を不動産登記簿から調べておきましょう。登記簿からは、土地の所有者が入れ替わった推移や、金融機関からの借入状況(担保状況)などを調べることができます。法務局またはオンライン登記情報提供サービスで入手できます。

登記簿を見てみて、その土地が、例えば、次のような状態だったら要注意です。

  • 土地所有者が大きな借金をしている。
  • 土地所有者が転売目的で何回も入れ替わっている。
  • 土地所有者が複数人いる。

権利関係の調査は、絶対に怠らないようにしてください。

1.2. 土地の状態に関するリスク(モノのリスク)

土地の状態については、次のようなリスクがあります。

土地の状態に関するリスク
過去、ガソリンスタンドであったため土壌汚染の可能性がある。
・過去は埋め立て地であったため地割れの可能性がある。
・傾斜地や崖地のため整地・土壌改良するのにお金がかかる。

これらは、将来不動産を売買する際や、土地の運用を始めた後にトラブルに発展するリスクがあります。そこで、検討している土地が現在あるいは過去にどのような利用がされていたかは、納得がいくまで、売り主や、業者、必要であれば近隣住民に聞くようにすると良いでしょう。

こうしたことは「地歴調査」と言います。地歴調査がどういうものかに関しては、「地歴調査において入手・把握すべき資料の種類(PDF)」が参考になります。また、プロは専門業者に土壌汚染の調査を依頼することもあります。

<プロは土壌汚染の調査をすることもある>

1.3. マーケットリスク(カネのリスク)

最後にマーケットリスクです。

マーケットリスク
マーケット調査が不十分だったために、駐車場経営を始めたものの、赤字を垂れ流すか、よくてもトントンの状態になってしまうリスク。

駐車場経営の利益や利回りは、以下のページで解説しているように、マーケットリサーチと、そこからのアイデア次第で大きく変わります。

土地の購入から、駐車場経営を始めようと考えている場合に知っておきたいのは、「駐車場経営を土地購入から始める時の土地の探し方や購入の注意点」で述べているように、

  • 狭小地や変形地で建物が建たない
  • 傾斜地などで建物が建たない

などの、物理的に問題がある土地の方が良いことが多々あるということです。駐車場経営の場合は、通常の土地にとっては致命的なこうした問題を、逆に活かせる場合があります。こうした建物が建たない土地は激安な場合があり、それなら、土地から購入しても十分な駐車場ビジネスができる可能性は十分あります。

2. 土地を購入(賃借)するときのリスク

続いて、土地購入におけるリスクについてプロの観点から解説します。

2.1. 土地の売買(賃借)契約リスク一覧

土地を購入(賃借)するときは、現在の土地の利用者や関係者を調べて、契約書を確認しましょう。ここで手を抜いてしまうと、次のようなトラブルを防ぐことができません。

土地の売買(賃借)契約リスク
・土地の所有者が変わったら、急に土地の利用契約を反故にされた。
・前所有者と契約している駐車場会社からいきなり訴えられた。
・現在の駐車場利用者が利用を止めてくれなかった。

このようなトラブルでどうしたらいいか私の所に相談に来られる方も、実際におられますので、契約には慎重に挑みましょう。

2.2. 売買(賃借)契約書のチェックポイント

私が契約書でチェックしているポイントは、

  • 現在の契約者情報
  • 売買成立までの質問履歴
  • 不動産引渡時の特記事項

の3つです。

一般的には、不動産の売買契約書の内容や、売買にかかる税金を全てチェックすべきという記事が多いと思いますが、すべてを把握するのはとても困難です。そこで、私は、ポイントを絞ってリスクを潰していくという観点から考えることをおすすめしています。

2.2.1. 現在の契約者情報

これをしっかりと理解するために、土地と契約者の関係について説明したいと思います。土地の契約者関係は、下図のように3層構造でとらえます。

  • A:土地所有者(底地)
  • B:現在の契約者(借地、駐車場会社)
  • C:現在の利用者(駐車場利用者)

Aは「土地所有者」です。これは、購入する場合だけでなく、借りる場合にも必ず確認してください。

Bは「土地の契約者」です。現地では誰も利用している形跡がないのに、実際には、書類上、誰か土地を借りている人がいたという場合があります。この場合、土地の購入(賃貸)後に、その契約者と揉めてしまうトラブルが多いです。

Cは「土地の利用者」です。これは、土地の契約者が、さらに土地の利用者に「又貸し」をしている場合です。この場合、例えば、現地ですでに月極駐車場として借りている人がおり、その人が、契約の変更や解除に応じてくれない可能性があります。

このように、A、B、C の三者を絶対に調べておいたうえで、土地の売買(利用)契約へへと進めていきましょう。

2.2.2. 売買成立までの質問履歴

その土地を購入するまでに行った、不動産会社との話し合いや売主との質疑応答は、できる限り文書化することをおすすめします。それによって、売買契約をしたのちに「言った、言わなかった」というトラブルを回避することができるからです。

私は、以下のように、必ず売主への質問に対して「質問表」を作るようにしています。

また、現在の土地の利用者や関係者を調べ、彼らが結んだ契約書も取り寄せましょう。なぜなら、基本的に買主は売主の権利をすべて引き継ぎますので、契約関係も引き継ぐからです。

2.2.3. 不動産引き渡し時の特記事項(特約条項)

不動産会社より売買契約書の雛形を受け取ったら、特記事項(特約条項)を確認しましょう。特記事項とは、不動産の売買契約書の中で、「この不動産には〇〇の問題があることをお互いに確認した」ということが書かれています。

不動産取引に不慣れな不動産会社の多くは、この特記事項には何も書きません。つまり、不動産取引におけるリスクをまったく考えずに売買を行うということです。原則として、不動産の売買では、売主や不動産会社は知っていたことをすべて買主に伝える義務がありるとされています。

しかし、結局のところ、買主(こちら)が質問して、特記事項を漏れなく書いていかなければ、後になって「売主や不動産会社は知っていた」と主張したくても、それを立証するのが難しいのです。日本では、売主責任というものはありますが、結局、金銭的負担が重くのしかかるのは買主です。そのため、買主の方が、注意しなければいけません。

ですから必ず、特記事項(特約条項)を見てください。

3. 駐車場経営を始める時のリスク

駐車場経営をはじめるうえでは、駐車場会社へ相見積を取り、条件を比較した上で、契約を結ぶ必要があります。この時に、よく見られるのが、単純に一番賃料を高く提示してきた会社を選ぼうというものです。

しかし、駐車場経営は、「経営」ですから、当然、駐車場会社と契約時にも、たくさんのリスクがあります。駐車場会社によっては、

  • 初期契約料や初期投資がかかる
  • 特別な条件や制約がある
  • 地域によって得意不得意がある

というように、様々な違いがあります。そのため、提示金額だけで会社の良し悪しをはかることはできません。また、駐車場の運営方式によって収入の分配方法が異なるため、ただ収入がよければよいというわけでもありません。

そこで、ここでは、駐車場会社との契約時に、どのようなリスクがあるのか、そうしたリスクと収入とのバランスをどのように考えれば良いのかなどをお話します。

3.1. 収入リスク

駐車場経営をはじめる上で、収入は、「どれだけリスクをとって駐車場経営を行いたいか?」により大きく異なります。次のように分けると、理解しやすいと思います。

  • 安定した収入がほしい → リスクは低いが収入も低い
  • 多少リスクはあっても収入を上げたい → リスクをある程度許容する
  • 2箇所、3箇所と増やしていきたい →リスクは高いが、高い運用利回りが得られる

これらは、駐車場会社との契約方式で変わってきます。まずは、以下の表に簡潔にまとめているので、目を通してみてください。

  初期投資リスク 収入変動リスク 収入上限
借上げ方式
一部借上げ方式 低 ~ 中
販売運営
共同運営方式 中 ~ 高 中 ~ 高
自主運営

例えば、借上げ方式(すべて運営会社にお任せする)の駐車場経営であれば、収入の変動リスクは低くなりますが収入自体が少なくなります。つまり、空室時に家賃が入らないというリスクを保証して毎月一定額が入るかわりに、収入自体は少ないということです。

詳細は、「駐車場経営で成功するためのノウハウまとめ」で解説していますので、ご確認ください。それでは、表中に書かれている初期投資リスクと収入変動リスクを見ていきましょう。

3.1.1. 初期投資リスク

初期投資リスクとは、駐車場経営をはじめる際に必要となる投資に対するリスクです。「リスク」という言葉を使うと、違和感があるかもしれませんが、初期投資は、事業にとっては明確なリスクの一つです。

駐車場経営をはじめる時は、駐車場会社と契約をするのですが、その際、交渉によって、初期費用をどちらがいくら負担するかは大きく変わります。そうしたことを知らなければ、極端な話、次のような、初期投資に必要な費用の大半が、特に何の見返りもなく、オーナー(あなた)負担となってしまう可能性があります。

  • 舗装費用
  • 外構費用
  • 土地測量費用
  • 境界確定費用
  • 諸経費

しかし、こうした費用は、賃料などとのバランスを考えて交渉していくものです。例えば、私が経験した例では、舗装費用をオーナー負担とする場合には月額賃料15万円アップという値上げ条件を引き出すことができた、というものもあります。

つまり、こうしたことを知らない新人オーナーにとっては、初期投資リスクは甚大なものになる可能性があります。『駐車場経営の初期費用の項目と相場目安の一覧とまとめ』をご確認ください。

3.1.2. 収入変動リスク

収入変動リスクとは、駐車場経営をするなかで、収入に対してどこまでリスクとリターンを求めるかということです。ここで「収入変動リスク」という言葉を使っているのは、初期投資の額に対する適切なリターンの水準を守らずに、駐車場経営に失敗する方がいるからです。例えば、ミドルリスクを取っているのに、ローリターンしか得られないような契約をしているのです。

事業でも投資でも、一般的に、リスクとリターンは比例します。そのため、リスク(初期投資)を高くなるなら、それに見合うリターンを設定して追求する必要があります。

借上げ方式は、基本的に、初期投資の費用が最も低く(=ローリスク)、契約期間、毎月安定した収入が得られますが、その分、収入の上限も低くなります(=ローリターン)。

逆に自主運営方式では初期投資費用は最も高くなりますが(=ハイリターン)、一度契約者が決まれば、その後の収入は高くなります(=ハイリスク)。私の経験上、駐車場の自主経営は、アパート経営やマンションの経営よりも事業難易度が高いため、敬遠しがちですが、一度駐車場の利用者が決まってしまえば、固定客になるので高い収益を安定して確保することができます

全ての方式を敬遠せずに、冷静に考えた上で、リスクとリターンのバランスが取れた決断をするようにしましょう。それこそが、駐車場経営で成功するかどうかを決める最重要ポイントです。駐車場経営を始めると、他にも小さなトラブルは起こり得ますが、それでも、ここの条件交渉さえしっかりしておけば大丈夫と言っても過言ではないくらい重要です。

真剣に交渉に取り組まず、初期費用が高いにも関わらず、収入を妥当な水準に引き上げることができなかったとしたら、それは大きな経営リスクになります。細部にこだわって、契約に臨みましょう。

3.2. 駐車場会社との契約時のリスク

また、駐車場会社と契約する時には契約リスクもあります。契約リスクを把握せずに、契約してしまうと、後になって思わぬトラブルに見舞われることもあります。

3.2.1. 契約リスク

契約リスクとは、駐車場会社と契約する際に、条件交渉によってトラブルが起こるリスクです。以下の点については、特に入念に話し合って、しっかりと決めておきましょう。

駐車場会社との契約リスク
・初期契約料はかかるのか?
・契約時に仲介料を払うのか?
・初期設置費用をどのぐらい負担するべきか?
・屋内か屋根付きか平置きか?
・自走式かタワー式か機械式か?
・保守、管理料は安くならないか?

詳細と対処法については、「駐車場経営で成功するためのノウハウまとめ」と「駐車場経営に失敗しないために知っておくべき11のトラブルを参照ください。

3.2.2. 撤退リスク

撤退リスクとは、万が一駐車場経営がうまく行かなかった場合や、他の形で土地活用したい場合に、起こりうるリスクです。ここでの焦点は、駐車場経営がうまくいかなかった場合に、すぐに駐車場経営をやめることができるかどうかです。

これの確認が不十分だと、やはりトラブルに発展します。

駐車場会社との契約リスク
・契約の途中解除はできるかできないか?
・設備の修繕代は請求されるかされないか?
・設備の買取請求を求められるか?
・契約終了時に現状有姿のまま引き渡しを受けるか?
・土地の返還は認められるか?

駐車場会社の運営がうまくいかなかった場合に、どのようにして次の駐車場会社へ切り替えるかが焦点となります。こちらも、駐車場経営で成功するためのノウハウまとめ」と「駐車場経営に失敗しないために知っておくべき11のトラブルを参照ください。

4. その他(駐車場運営後)のリスク

ここでは、その他のリスクとして、駐車場経営を始めた後に起こりうるものについて簡単に触れておきます。よくあげられるものは以下の3つ程度です。

その他のリスク
・滞納のリスク(月極め)
・駐車場内の事故リスク
・災害リスク

これらは、対処法もわかりやすいです。

まず事故リスクや災害リスクに関しては、損害保険に加入することで防ぐことができます。こうした損害保険は、そもそも事故や災害は頻繁に起きるものではないので、保険料も安く済みます。

滞納リスクについては、そこまで頻繁に起きるものではありません。駐車場運営を駐車場会社に任せている場合は、その駐車場会社が対処してくれます。自己運営方式の場合でも、契約時に、契約者の身元をしっかり確認しておくことでほとんど起こらなくなります。

やはり、駐車場経営で成功するには、まずは、

  • 土地に関するリスク
  • 土地を購入する時のリスク
  • 駐車場会社と契約する時のリスク

の3つの大リスクを把握し、対応することが重要です。

5. まとめ

私は、不動産運用を行う前、投資銀行に勤め、全国様々な物件の資産管理をしていました。そこでわかった「プロ」と「素人」の大きな差は、「リスク」に対する考え方の違いです。

プロは必ず毎年利益を上げなければならないため、1年後、3年後、5年後の計画をしっかりと立てます。その前提として、契約の時点であらゆるリスクを想定して契約書を作成します。もし、その運営期間内でトラブルや損失が出た際は、リスクをとって撤退する勇気も問われます。

そして、その結果として、投資利回りを15%~30%近くまで引き上げることができるのです。もちろんプロとしては取り分を得て、投資家に対して利益を還元しますので、やはり経営方法が大きく異なります。

まずは皆さんもリスクを考えて、徹底的に経営を見つめなおしてみましょう。

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