ランダムウォーク理論|トレードで勝てる人の確率と期待値の考え方

ランダムウォーク理論とは、金融の世界では、「相場の価格は不規則(ランダム)に変動(ウォーク)しているので、将来の価格を先読みすることは不可能だ」という考え方です。

このランダムウォークは、確率論の立場から説明するもので、どんなに値動きに規則性があるように見えても、それは結果を見ていることに過ぎない、という考えが根底にあります。

これは、「私たちトレーダーが未来を予測することは不可能」という意味では正しいです。ただし、「相場の未来はどうせ分からないのだからトレードで勝つことはできない」という意味では間違いです。相場はランダムウォークだが、トレードで勝つことはできる、ということです。

そこで、ランダムウォーク理論を知り、そこから何かを得ようとする行為には、とても大きな意味があります。なぜなら、ランダムウォーク理論を正しく理解すると、

  • 勝てる人はなぜ勝てるのか?
  • 勝てない人はなぜ勝てないのか?

が、非常に深い部分まで見えてくるからです。そして、それは、あなたがトレードで勝てるようになるために絶対に必要なステップの1つです。

わかりやすく解説していきます。 

執筆者
ぶせな

ぶせな

FXの専業トレーダー。認定テクニカルアナリスト。 本格的にFXを開始してから10年で1億6,500万円の利益を突破。著書に、『最強のFX 1分足スキャルピング』『最強のFX 15分足デイトレード』(共に、日本実業出版社)がある。ツイッターアカウントは、『@busena_fx』、ブログは『億トレーダーぶせなブログ』。

1.相場がランダムウォークである理由

FXは、参加者の80%以上の人が負けて終わるという悲しい事実があります。それにはいくつか理由がありますが、そのうちの1つは、間違いなく、ランダムウォークに翻弄されてしまっているからです。この私も、そのうちの1人です。

それでは、これ以上、ランダムウォークに翻弄されない自分になるためにはどうするべきでしょうか?

孫子の言葉で「彼を知り己を知れば百戦して危うからず」というものがあります。これは、相手の実情を知り、同時に自分の実力をふまえて戦うことで、どんな戦いも負けなくなるという意味です。まさにこの通りだと思います。

そこで、まずは、相場がランダムである理由をしっかりと理解していきましょう。その理由を大別すると、次の2つがあります。

  • 相場にはトレーダーの数だけ考え方があるから
  • 投資心理に影響を与える要因は多種多様だから

それぞれ説明させていきます。

1.1.相場にはトレーダーの数だけ考え方がある

相場に参加している全てのトレーダーは、全ての情報を処理しているわけではなく、星の数ほどある相場を動かす材料のうち、自分と相性が良い、ごく一部の材料だけで判断をします。

例えば、私の場合は、エリオット波動理論を軸としたテクニカル分析がトレードルールの根幹をなしています。

その上で、エンベロープ移動平均線トレンドラインサポート/レジスタンスラインチャネルラインフィボナッチなどのテクニカルツールをメインに使い、スキャルピングデイトレードスイングトレードに分けてトレード判断をします。

私は、通貨の需給バランスや、クオンツ分析などのファンダメンタルを気にすることはありません。なぜなら、それらの情報は、「全て過去から現在までのチャートの動きに盛り込まれている」と考えているからです。

しかし、他の長期的に成功しているトレーダーは、私とは全く違う理論を軸として、ファンダメンタルを基にトレード判断をしています。

また、私のようにテクニカル分析派でも、実際に使っているテクニカルツールや考え方は違いますし、同じようなやり方でも、エントリーポイントが同じになることはありません。

それこそ、投資手法も考え方も驚くほど違います。

このような、星の数ほどいるトレーダーが、それぞれ別の角度から分析・判断して相場に臨んでいます。そして、そのような星の数ほどある、それぞれ別の考え方の集合体が、相場なのです。

そのため、相場を予測するには、それら全てのトレーダーが、いつ、どのような根拠を基に、どのようなポジションを持つのかを知らなければいけません。しかし、そんなことは不可能です。

実際には、FX業者の注文も考慮する必要がありますし、一部の注文はノミ行為だから、それは考慮すべきではないなど、本当に様々な材料があります。

だからこそ、相場はランダムウォークなのです。

ポイント!

相場はランダムウォークです。絶対にこうなる、という予測は不可能なので、相場をよく知り、自分のスキルと照らし合わせて参戦しましょう。

1.2.トレーダーの心理に影響を与える要因は多種多様

さらに、一人一人のトレーダー心理は、様々な要因によって右往左往しています。

それぞれの人たちが、細かい性格やリスク許容度、持っている情報が異なります。そのため、ある1つの出来事が起きた時に、その出来事に対して、どのように反応するのかもそれぞれです。さらに、どの情報が、誰に、どのような心理的影響を与えるのかも多種多様です。

それらの全ての情報を網羅するのは不可能です。そのため、将来予測が当たる確率は、理論的には常に50%になります。未来に関する全ての情報を知り得ない中での判断は、結局、予想に過ぎません。必要な情報を持っていない中、予想が当たる確率は常に50%です。

「投資の神様」ウォーレン・バフェットや、「冒険投資家」の異名を持つジム・ロジャーズ、「ウォール街のグレートベア」と呼ばれるジェシー・リバモアでさえ、相場に関する全ての情報など知り得ないのです。

投資の巨人たちは、相場の行方に言及することがありますが、私は、それは彼らは自分たちの発言力の大きさを知っていて、相場に何らかの思惑通りの影響を与える意図をもって発言していると考えています。

もし、彼らが相場の全てを把握していて、今後の動向を正しく予測できるのであれば、そんなことをする必要はありません。

しかし、これはあくまでも私がそう考えているというだけで、別の人は、違った考え方をしていることでしょう。考え方が違うので、投資の巨人たちの発言に対して、違った反応をします。自分以外の人の反応は予測できません。

このように、誰にとっても、やはり相場はランダム・ウォーク(=予測不可能)なのです。

ポイント!

同じ情報でも、トレーダーによって捉え方は多種多様です。自分の考えこそが正しい、という態度は論外です。

1.3.未来を予測しようとするなら相場はランダムである

ここまでで、相場の未来は、正確に予測できないことがお分りいただけたと思います。それでは、「FXで勝ち続けるなんてことはできないじゃないか!」と思われる方もいることでしょう。

いえ、できます。

しかし、発想の転換が必要です。次から言うことを絶対に覚えておいて下さい。

・勝てないトレーダーは、未来を予測しようとする
・勝てるトレーダーは、過去の統計から学ぼうとする

言い換えると、勝てるトレーダーは、どれだけ調べたり頭を悩ませたりしても分からないのなら、そこで時間を浪費するのではなく、「過去の統計から期待値が高いポイントを見つけ、そこでトレードする」ということです。別のアプローチを考えるということですね。

それでは、次の章から、ランダムウォークの本質に迫っていきます。

2.必要なのは未来の予測ではなく過去の統計

相場に限らず、私たちの未来は常にランダムです。そして、どのような賢人でも、未来を予測することは不可能です。

それにも関わらずトレードで勝ち続ける人は、世界中に多く存在します。しかも、ランダムな相場の中で、月単位・年単位でマイナスを出さずに勝ち続けています。

自分のことで恐縮ですが、私も過去10年間で、マイナスだった月は9回だけで、いずれもゼロに近い負けです。残りの110回は全てプラスです(月間勝率92.5%)。

それでは、勝てる人は、未来がランダムな中で何をやっているのでしょうか?

答えは、過去の研究です。

2.1.過去を知ることで規則性が分かる

相場の過去に目を向けると、相場のランダム性の中に、ある決まったパターン(=規則性)があることが分かります。そして、ランダム性の中の規則性が分かれば、期待値を計算できるようになります。

例えば、「こういうパターンの場合は、過去の規則性の中では上昇する確率の方が高い」などです。このような規則性の例として、以下のようなパターンが挙げられます。

これらのチャートパターンが出現した時、私は過去の統計値から期待値が高いと判断して、積極的にトレードをしていきます。

ただし、過去の統計がそのまま正確に未来の確率となる訳ではないので、履き違えないように注意して下さい。あなた自身で、過去を徹底的に分析して、見えてきた可能性が期待値です。そのため、一般的に言われる確率と期待値は、意味合いが全く異なります。

これを証明する有名な例えに、「2つの封筒問題」があります。具体的に説明していきます。

2.2.確率と期待値

トレードは、確率で考えると負けます。しかし、期待値で考えると勝てます。続きをご覧になって、このことをよくご理解下さい。

2.2.1.二つの封筒問題

私たちの目の前に、2つの封筒があります。一方の封筒には、片方の2倍の金額が入っています。

私は封筒Aを、あなたは封筒Bを選びました。あなたが封筒を開けると、そこには10,000円が入っていました。お互いに相手の封筒にいくら入っているのかは分かりません。

あなたに分かるのは、私の封筒には、

  • 50%の確率で5,000円入っている。
  • 50%の確率で20,000円入っている。

ということだけです。 

さて、ここで、あなたは私に封筒の交換を申し出ることができます。あなたはどうするべきでしょうか?

2.2.2.封筒の期待値

封筒を交換しないことを選んだなら、あなたは10,000円を100%手に入れることができます。つまり、期待値は《10,000円 × 100% = 10,000円》ですね。

それでは、封筒を交換した時の期待値はどうなるでしょうか?5,000円の確率が50%、20,000円の確率が50%なのですから、答えは《(5,000円 + 20,000円) × 50% = 12,500円》です。

交換した場合の期待値が12,500円で、交換しない場合の期待値が10,000円なのですから、交換を申し出た方が良いのです。

もしかしたら、「いくら交換時の期待値が高いとしても、今の10,000円を確実に確保したい」という方もいるはずです。

ただし、トレードは1回だけではありません。トレードで大きく稼ぐには、1,000回、10,000回、100,000回とトレードを繰り返し行っていきます。

期待値10,000円のトレードを1,000回行えば、10,000,000円(1千万円)得ることができます。一方、期待値12,500円のトレードを1,000回行えば、12,500,000円(1千2百5十万円)得ることができます。

トレードで勝ち続ける人は、迷いなく後者を選べる人です。そして、前者を選ぶ人は負けます。

ピンと来ないかもしれないですが、初心者を卒業したぐらいのトレーダーが勝てない理由は、ほとんどがこれに該当します。確率で考える方は、まず間違いなく、このような思考パターンになってしまいます(=プロスペクト理論)。

これを、小さな差だと思わないで下さい。このことが本当にトレーダーとして成功できるかどうかを、非常に大きく左右するのです。

2.2.3.負けるトレーダーは確率に頼り、勝てるトレーダーは期待値を貫く

確率と期待値が全く別物であることはご理解いただけたでしょうか?

負けるトレーダーは、確率に頼ろうとします。50%の道を選びます。そして、相場のランダム性の餌食になります。もし、50%の確率で予測が当たったとしても、常に確率に怯えているので利益を伸ばすことができず、予測が外れた時は損切りができずに大損することになります。

勝てるトレーダーは、相場のランダム性を超えたところにいます。ランダム性の中の規則性を見つけ、そこから期待値の高いパターンを見出して、その期待値に準じた行動を貫いています。

相場は確かにランダムウォークで、未来を予測しようとすれば、上昇する確率も下落する確率も50%です。ただし、ランダム性の中の規則性を発見すれば、ある状況では期待値がいくら、また別の状況では期待値がいくらというように期待値を算出することができます。

期待値が高ければトレードを行い、期待値が低ければトレードを行わない。

勝つために必要なのはこれだけです。相場がランダムウォークであることと、トレードで勝てるか勝てないかは別物なのです。

さて、あなたが判断の基準とするべきなのは、確率でしょうか?期待値でしょうか?

もう答えはお分かりですね。

ポイント!

トレードで勝ち続けるには、期待値が高い箇所をいかにして発見できるかが重要です。

2.3.期待値の高いトレード手法を構築するためのポイント

あなたが確率に翻弄されず、一貫して期待値に基づいたトレードができるようになるためには、まずは自分自身で期待値の高いトレード手法を構築することが大切です。

ここでは、そのヒントをお伝えしていきます。ヒントと言っても軽いものではなく、実践上、必須クラスのものです。

2.3.1.いちいち理由付けをしない

世の中には、ファンダメンタル派のトレーダーもいれば、私のようにテクニカル派のトレーダーもいます。どちらの方法でも勝ち続けられる人がいます。

そんな中で、「どちらが正しいのか?」という議論はナンセンスです。どちらかを否定したところで、勝てるようになるわけではありません。どちらも正しいし、どちらも正しくないのです。答えはありません。トレードで勝つために必要なのは、議論ではありません。

なぜこれをお伝えしたのかというと、「なぜ相場が動いたのか?」といちいち理由付けをしようとしたらキリがない、ということを知ってほしかったからです。

相場が動く理由は、相場が決めます。

トレーダーがあれこれ言うことはできません。相場が動いた理由は謎のままにしておきましょう。相場を尊重し、相場に対して持論を押し付けない姿勢が重要です。トレードにおいては、相場が常に正しいです。

自分の行動は、相場を深く理解してそのメカニズムを解明した上のものではありません。相場のメカニズムなど、いくら考えても分からないのですから、あくまでも期待値だけを考えた行動を取ります。

また、期待値とは、ある意味でトレード手法なのですから、同じ局面でもトレーダーによって期待値は異なります。そのため、他の勝っているトレーダーの手法が自分と違うからと言って、「自分のほうが優れている」と考えるのは傲慢なのです。

大切なことは、深く理由を追求しようとし過ぎずに、「この場合は勝てる」というポイントを増やすことです。

私自身、リーマンショック以降の10年間、毎年勝ち続けています。それなりに自信があるポイントが複数存在します。もちろん、損切りは毎日のようにありますが、トータルの期待値は、必ずプラスになるトレードを心掛けています。

「今エントリーすれば勝てる」というポイントもありますし、「ここでブレイクするな」「ここでトレンドが終わるな」というポイントの的中率も50%ではなく、60%にも70%にもなります。ただし、なぜそうなるのかと理由を聞かれても、私自身謎だらけです。

私が分かっていることは、あるチャートパターンが出た時は、期待値が非常に高くなるということ、そこでトレードすれば長期的には勝てる、ということだけです。

このように、勝てるトレーダーというのは、自分にとって期待値が高いと信じられるポイントだけでトレードをします。

2.3.2.ランダム性の中の規則性(=期待値)に気付くポイント

私は、相場が動く理由は考えませんが、チャートパターンが形成される理由は存在すると考えています。

似たように聞こえますが、これが分かることは重要です。

相場は、数え切れないほど多くの人間の心理が反映されているものです。私たちは、相場に参加している人間の心理(=群集心理)の全てを把握することはできません。たった1人の心理さえ、100%理解することは不可能でしょう。

ただし、ある特定の状況になった時の行動パターンは、1人の人間心理より群集心理の方が単純で一貫しています。

例えば、1人の人間であれば、ちょっとしたきっかけがあれば、行動パターンが変わることがあります。いつも同じルートで通勤している人がいたとしても、その道路が工事で通行禁止になれば、ルートは変わりますよね。

ただし、多くの人間の心理が集まった集団心理であれば、余程のきっかけがなければ、行動パターンは変わりません。1万人の人間がいたとして、ある道路が通行禁止になったとしても、その道路を通っている人が10人しかいないとすれば、その出来事は群集心理に影響は与えません。

つまり、群集心理は変わらないのです。

このことを知っているだけで、ランダム性の中の規則性に気付きやすくなるでしょう。

そして、ある状況下では群集心理はある程度決まった動きをします。それが、チャートパターンです。つまり、チャートパターンは群集心理の動きのパターン、と言い換えることができます。

そして、そのチャートパターンが形成されるまでに、より長い時間がかかるものであればあるほど、規則性の通りに動く可能性が高くなります。

私がポジションを長く保有する時は、ローソク足単体で判断するよりも、ヘッドアンドショルダーダブルトップやダブルボトムでエントリーする場合のほうが多いのは、これが理由です。

チャートパターンのほうが規則性が強く、期待値が大きいのです。

ポイント!

1人の心理より、多くの人が集まった集団心理のほうが行動は単純で、パターンが決まっています。相場でもこれを活用しましょう。

3.ランダムウォークの中で独自の相場哲学を持とう

ランダムウォーク理論を考えることは、相場とはどんなものなのかを考えることです。

そして、あなたがランダムウォーク理論について調べてこのページに辿り着いたということは、「相場という正解のない世界で自分がどう立ち向かうのかを、様々な視点から塾考する機会を得た」ということです。

このような機会を上手く活かせば、独自の手法に繋がる大きな発見があるはずです。カギを握るのは、相場のランダム性の中の規則性を発見することです。

それが分かれば、

  • 期待値ではなく、相場観を重視したトレードになっていなかったか?
  • 相場に合わせるのではなく、相場に理論を押し付けていなかったか?

というように、今までの投資における思考プロセスを正すことができるはずです。

相場の過去の歴史を検証し、規則性を発見するという努力を続けることで、最初は自信が持てず何度も揺れていたものが、段々と揺るぎのない、あなただけの相場哲学となります。

して、自分だけの相場哲学に則り、一貫性のあるトレードができるようになると、あなたは既に勝てるトレーダーになっていることでしょう。

他の人が自分と違うやり方で儲けていると、どうしても隣の芝が青く見てしまいます。それは、あなたの相場哲学がまだ浅いからだと理解して下さい。

きちんとした相場哲学を持てるようになっていれば、自然と勝っていますし、隣の芝も青くは見えません。

ポイント!

あなただけの相場哲学を持つことも大事です。そうすれば、他人から何を言われようが、一貫性のあるトレードが可能になるでしょう。

まとめ:稼ぎ続けるトレーダーの思考

稼ぐトレーダーとは、常に自分の手で発見した期待値の高いトレードを行なう人です。たとえ、その手法が人から否定されようが、揺るぎなく、簡単に崩れない。それが本当のトレーダーです。

もし、あなたの相場哲学が簡単に崩れてしまうようなら、今の理解に対して、それだけの思い入れしか持てていないということになります。今回のランダムウォーク理論を含めて、「相場とは何か」ということを常に考えましょう。それが、億を稼ぐトレーダーの思考です。

私自身も、自分の相場哲学に絶対の自信を持ち、しかし、現状に甘えず、いつも新しい気持ちで相場に臨むようにしています。

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