土地活用をする前に考える「立ち退き」と「明け渡し」まとめ

土地活用を今すぐしたい。

しかし、今ある土地や建物にはすでに賃借人(入居者)がいるために、なかなか次の行動に移せないと思っている方も多いのではないでしょうか。

・老朽化した建物を取り壊したい

・新たな土地活用をしたい

・建替えをしたいが何からはじめればよいか分からない

これまでに建替えや立ち退きに関わってきた専門家や経験者の意見を基に、土地活用を行うまえに、まず立ち退きや退去に関する基礎知識やノウハウをまとめました。

結論からいいますと、すぐに弁護士に相談するのではなく、まずはできることからはじめましょう。さらに具体的な事例を知りたい、建替えの相談をしたい場合は、以下をご覧ください。

はじめに. 立ち退き(たちのき)とは?

立ち退きとは、土地や建物のオーナーが、賃借人(入居者)に対して何らかの事情を説明したうえで、建物の明け渡しをお願いすることです。

その目的としては、

建物が老朽化しているので立ち退いてほしい 
・家賃を滞納しているので退去してほしい
・契約解除しても入居者が退去しない
・入居者や保証人から家賃を回収したい
・ビルの入居者が賃料を払わない

など様々な明け渡しの目的があります。

立ち退きの交渉から明け渡し請求を行うまでの過程において、立退きの解決の手段の選択肢の一つとして「立退き料の提示」があります。

つまり、オーナーが金銭を支払う代わりに、入居者は明け渡しに承諾することです。

ただし、日本では、立退き料には決まった相場はないと言われています。実際に明け渡し請求を行う過程では、弁護士への相談費用や、賃借人とのトラブルが長引くことを心配される方も多いのが現状でしょう。

また、立退き交渉では法律的な解釈や判例を探したり、明け渡しの正当事由を整えたとしても、最終的には賃貸人(オーナー)と賃借人(入居者)の気持ち次第で成果が左右されます。言いかえれば、両者に大きなストレスや精神的な負担を強いるため、理屈よりも、配慮や気遣いの方が大切なのです。

つまり法律的な解釈や正当事由の有る無しよりも、現場の経験則が成果を左右すると言われています。

そこで、まずは立ち退きの簡単な流れを説明します。

  <立ち退きの流れ>
1 立ち退きをはじめるまでの事前調査及び準備
2 立ち退きの正当事由への理解
3 明け渡し請求と解約予告通知
4 立ち退き交渉
5 明け渡しもしくは裁判へ

そこで、立ち退きや明け渡し請求に関わったことのある複数の専門家に聞いたところ、立ち退きで裁判にまで発展する確率は3%くらいとのことでした。

つまり100件に対して3件ほどしか裁判にまで至るケースはないとのことです。

ですから、まずは立ち退きをするうえで適切なステップを踏み、賃借人に対して真摯な対応を心がけて行うことで、賃借人から過剰な立ち退き料を提示されたり、裁判にまで発展することはないと分かりました。

そこで、今回は立ち退きに関する基礎知識からまずはお伝えします。

1. 立ち退きをはじめるまでの事前調査及び準備

立ち退きをはじめるまでの事前調査は、2年以上前から始めることをお勧めします。

なぜかといいますと、

・賃借人(入居者)の状況把握

・賃借人(入居者)の移転先想定

・借地借家法への理解

などの事前調査及び準備を行うことで、立ち退きがはじまってからのトラブルやリスクを未然に防ぐことができるからです。

実は私もこれらの経験をした不動産オーナーの1人です。私は5年以上まえから、この事前調査や準備を行い、かつ借地借家法をしっかり理解した上で立ち退きを行ったため、想定費用の1/3まで抑えることができました。

1.1 賃借人の状況把握

賃借人(入居者やテナント)の現在の状況を把握しておきましょう。

契約者名 代表者氏名 業務内容 入居年数 契約形態 経営状況 交渉難易度
入居者A 〇〇 63歳 美容院 25年 普通借家 去年、今年とベテランの美容師2人が退職し、契約者の次男が家業を手伝うも仕事量が負いつかず待ち時間が長くなっている。お客が減少。契約者は収支が合えば続けていくつもりか?調査が必要。
入居者B 〇〇 54歳 学習塾

33年

普通借家 数年前に大先生が亡くなられ、娘さんが継いだが生徒の進捗レポートなどの作成で夜遅くまで大変な様子。生徒数は250名程だったと聞いていたが、現在は150名程度と思われる。すでに契約面積の縮小を希望している。

たとえば、このような表を作ります。

賃貸人(オーナー)と賃借人(入居者)との関係が良好であれば、長年入居頂いたことへの感謝の気持ちを込めて、移転先の提供、謝礼金や賃料減額などを提示することで、賃借人から理解をいただけることが半数以上であるとのことです。

無理にお金で立ち退きを解決しようと思えば思うほど、賃借人との関係が悪化するケースが多いようです。

1.2 賃借人の移転先想定

賃借人の移転先想定をしておきましょう。

移転先想定とは、賃貸人(オーナー)から明け渡し請求と解約予告通知を出してから、明け渡しを行うまでに、賃借人(入居者)がいつ、どこに、どんな手段で引越しをするかを想定することです。

解約意思確認→引越し先の紹介(仲介会社を介する等)

・引越しまでの準備時間
・引越し先の賃料、敷金、礼金
・引越し費用
・その他の連帯保証人や役所変更手続き

実際には比較的スムーズに引越し時期が決まる人もいれば、引越しに時間がかかる人もいます。たとえば行政関係の入居者ですと、国からの予算、手続き、条件などで引越し日の1年前までに申請を出さなければならないという事例もありました。

1.3 借地借家法への理解

借地借家法とは、賃貸人よりも弱い対場にある借主を守るための制度です。

まずは賃貸人(オーナー)として、借地借家法を理解する2つの要点を紹介します。

まず1つは、借地借家法が適用される対象者及び建物を把握しておきましょう。

<借地借家法が適用される対象者>
(1)一戸建てやマンション・アパートの部屋など居住用建物。
(2)店舗や事務所、工場や倉庫など営業用建物。
(3)借地権や借地権の成立要件を満たす建物や工作物。
<借地借家法が適用されない対象者>
(1)建物を無償で貸している等の「使用賃借」。
(2)駐車場や、借地権が成立しない建物の使用契約。
(3)不法占拠者や契約の事実を知らない入居者がいたなど。

※借地権や借家権の成立要件については弁護士と相談の上となります。

2つめは、普通借家契約と定期借家契約の違いを抑えておきましょう。

  定期借家契約 普通借家契約

1.契約方法

(1)公正証書等による契約に限る

(2)「更新がなく期間満了により契約終了する」旨を、契約書とは別に書面にて交付・説明する。

定めなし。

書面あるいは口頭でもよい。

2.契約更新 期間の満了により終了。※1年前~6カ月前までに契約終了通知が必要。 正当事由がなければ、原則更新。
3.期間の定め 制限はない。 2000年3月1日より前の契約は1年~20年まで。それ以後は1年~制限はない。
4.途中解約

以下の条件をすべて満たす場合に中途解約可。

(1)床面積200㎡未満の居住用建物に賃借。

(2)やむを得ない事情がある。

特約がなくても法律により、中途解約ができる

原則不可。

中途解約による特約があれば、その定めに従う。

※現在の入居者に対しては定期借家契約への切り替えをおすすめします。

2.立ち退きの正当事由への理解

立ち退きの正当事由とは、賃借人(入居者)に対して、なぜ立ち退いて頂くのかの明確な根拠と理由のことです。

賃借人(入居者)に対して何らかの事情を説明し、建物の明け渡し請求をする上では、「正当事由」が必要となります。

つまり、明け渡し請求には、賃貸人(オーナー)に正当事由がなければ裁判ではほとんど勝てません。

正当事由をもって、明け渡し請求を行うためには3つの理由が必要だとされています。

明け渡し請求を行うために必要な3つの理由
①賃貸人及び賃借人が建物使用を必要とする事情
②建物賃貸借に関する従前の経過
③建物の利用状況 

たとえば、

①賃貸人:築40年を経過し、老朽化による修繕の限界や、耐震性やや耐火性の問題がある。賃借人:同店舗には一定の顧客がいるために直ちに別の場所で同様の売上を上げることは困難。

②賃借人は度々、家賃を滞納している。

③賃借人は建物利用に際して度々トラブルを起こしてきた。

このように必要な3つの理由のうち、これらの事情を考慮した上で、この3つの理由では不十分な場合には、「立退き料」の支払いを申し出ることによって正当事由を補完(ほかん)できるとされています。

こちらについては、弁護士への相談や専門家のコメントをご覧ください。

3.明け渡し請求と解約予告通知

明け渡し請求と解約予告通知とは、賃借人(入居者)に対して、いつまでに、どんな形で明け渡しをして頂くのかという理由と時期を通知することです。

土地・建物明け渡しに関する内容証明郵便などで通知を行い、明け渡しの6カ月前から1年前以上の期限を定めて通知することが一般的です。

内容としては、この3つをまずは抑えておきましょう。

・明け渡しの理由

・明け渡しの時期(解体時期)

・明け渡しの条件

3.1 明け渡しの理由

明け渡しの理由とは、賃借人(入居者)に対して、なぜ明け渡して頂かねばならないのかの理由のことです。

・建物の維持管理が厳しい 
・ビルの安全性が低い(耐震、耐火)
・経済的な利益追求ではない
・滞納をしている  
・不法占拠をしている 
・周囲に迷惑をかけている

このような明け渡し理由を参考にし、過去の立ち退き事例の中から、どのような場合に判例があったのかを弁護士と共に探していくのがよいでしょう。 

3.2 明け渡しの時期

明け渡しの時期とは、賃借人(入居者)が建物の使用をやめて、退去が完了する日のことです。

明け渡しの時期は、解約予告通知の際に、たとえば6カ月前から1年前以上の期限を定めます。

ただし、ビルやマンションなど複数の入居者がいる建物となると、さすがに6カ月ですべての入居者が明け渡しを完了することは難しいでしょう。

そこで、明け渡しの時期の想定としては+1年を見込みましょう。その理由は次に説明します。

3.3 明け渡しの条件

明け渡しの条件とは、明け渡す代わりに何らかの対価を、賃借人(入居者)に与えたり、条件をつけることです。

・明け渡しまでの賃料の減額
・原状回復の免除や敷金返還
・引越し代の提供
・引越しに伴う諸費用(仲介料、移転手続き費用)の提供

→上記で納得しない場合は「立ち退き料」の交渉へ

たとえば、「建物の明け渡し日までの家賃を減額したり、なくすこと」です。

オーナーとしては、「1年分の家賃」を先に入居者に渡すことで、入居者にメリットが生まれるために明け渡しの承諾を得やすくなります。加えて原状回復の免除や敷金を返還することで、引越し代に充ててもらうように交渉もできます。

これらの方法で、うまくいかなかった場合に備えて、立ち退きの交渉について説明します。

4.立ち退き交渉

立ち退き交渉とは、立ち退きの解約予告通知に対して応じない賃借人(入居者)に対して、明け渡しをして頂くために交渉を行うことです。

そこで、ポイントとなるのが「立ち退き料」です。

立ち退き料とは、賃借人(入居者)が借りている物件を明け渡す場合に、その代償として賃貸人(オーナー)が支払う費用のことです。

もうひとつのポイントが「弁護士と非弁行為」です。

また、賃貸人(オーナー)だけでなく、賃借人(入居者)にも、弁護士費用や裁判費用がかかることを覚悟しましょう。たとえ示談となった場合でも、これらの交渉する場合は本人か弁護士でなければできないからです。

非弁行為(ひべんこうい)
「弁護士でない者は報酬を得る目的で法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない」(弁護士法72条抜粋)

この立ち退き交渉とはどのようなものか?について

・立ち退きの成功確率

・立ち退き料の相場

・立ち退きの条件設定

このようなことが皆さんの悩まれるところではないでしょうか。

まずはこの要点について簡単に説明しましょう。

4.1 立ち退きの成功確率

これまで数多くの立ち退きに関わったプロや弁護士に聞いた結果、このような統計値となりました。

成功確率 賃借人(入居者)の対応
50% 移転先はあり、その場で応諾頂ける
20% 移転先はあるが、移転するかどうかは時期次第
20% 移転先はあるが、移転するかどうかは金銭次第
10% 移転先がない

これまで数多くの立ち退きに関わった意見として、賃貸人の約7割の方は、しっかりとした対応をすれば、その場で応諾頂けるそうです。ただし、引っ越しをする時期や、その人の個別の事情等も考慮して、最低でも6カ月前~1年前から建物の状況を説明することで、明け渡しへの理解を頂くことができます。

そして残りの賃貸人の約3割の方は、賃貸人との対応やフォロー次第となります。特に移転先がない10%の事情としては、生活困窮者等で移転先が見つからない、廃業しなければならない、この場所でなければ営業売上が見込めないなどの場合です。

いずれにせよ、立ち退きで裁判になることを想定している方は、交渉が長引くことや、裁判や弁護士にかかる費用を覚悟していることも多いため、オーナー側も覚悟をするとよいでしょう。

4.2 立ち退き料の相場

立ち退き料の算出根拠としては、以下の3つがよく用いられます。

①借地権や借家権の買取価格
②月額賃料の〇カ月分
③実費の積算価格

①は、路線価を基にして土地価格や建物価格を算出して、面積割合に応じて権利を買い取るという方法です。

②は、立ち退き料の相場として住居でれば月額賃料の3カ月~6カ月分、事務所であれば6カ月分、店舗であれば2年~3年分という賃料を基にした方法です。

③は、内装費、引越し代、仲介料、店舗補償といった実際の損失額を計算する方法です。

4.3 立ち退きの条件設定

立ち退き料の条件設定とは、立ち退き交渉をする際に、賃借人(入居者)に対してどのような条件をもって明け渡しをして頂くかという設定のことです。

  立ち退き料でそうていされる費用と項目一覧
(1) 借家権買取費用
(2) 移転費用
(3) 営業補償費用
(4) 慰謝料
(5) 造作買取費用
(6) その他諸費用

といった費用を計算します。

分かりやすくいいますと、立ち退き費用の6つの条件を参考にしましょう

・賃料 
・引越し代、仲介料
・店舗補償(休業補償)
・その人の生活費など
・原状回復費用+新たな場所での店舗内装費用 
・弁護士費用など

と置き換えるとよいでしょう。

これらの費用に対して適切な回答をすることで、裁判にまで至る場合は少ないといえます。

5.明け渡しもしくは裁判へ

明け渡しとは、土地・建物明け渡しに関する合意書・協定書を賃借人と締結して、賃借人(入居者)が建物を明け渡すことです。

立ち退き交渉の結果、明け渡しに応じない場合には、

・契約解除

・明け渡し請求訴訟

・強制執行

という裁判への流れを考えていきましょう。

5.1 契約解除

賃借人(入居者)に対して、内容証明郵便で契約解除※を通知し、建物の明け渡しを求めます。入居者と示談で交渉して和解によって解決する場合もあります。

※契約解除するためには、民法541条(債務不履行解除)の要件を満たす必要があります。判例上、1回の賃料不払い(債務不履行)ではなく、家賃3ヶ月程度の不払いが必要です。

5.2 明け渡し請求訴訟

賃借人(入居者)が建物の明け渡しや請求に応じない場合には、裁判所に訴訟を提起します。

家賃の滞納などであれば1~2回の裁判で集結します。

私の経験上、建替えの1年~2年前に、立退き交渉に応じない賃借人とはすぐに裁判を行いました。特に店舗の場合は、(3)営業補償費用、(4)慰謝料、には立証及び調査に時間がかかるからです。

5.3 強制執行

賃借人(入居者)が判決もしくは裁判上の和解に従わない場合には、裁判所に対して強制執行を申し立てます。

出来る限り、ここまでの状況に至らないようにしたいものです。

6. さいごに

私は実際に立ち退きを経験しました。

そして、立ち退き戦略を立てたことで、想定立ち退き費用を1/3まで抑えることができました。

そのためには、最初から弁護士に相談するのではなく、「本人」が立ち退きを行うことです。

この本人は、必ずしも「個人」ではなく、「法人」の場合もありますから、自社のチームで行うことが費用圧縮への第一歩です。

実際に、私は再開発組合を作り、9割は自社で交渉妥結し、1割は弁護士に交渉及び裁判を依頼しました。その結果、ビルの入居者100社の立ち退きでも2年程度で完了しました。

相談窓口としては一般的に、

オーナー(本人)が直接行う(弁護士等を相談窓口に)
管理会社や仲介会社(ちょっとグレー)
建設会社やデベロッパー(お金で解決)
再開発組合(オーナー、地権者、弁護士、管理会社等)

などがあります。ぜひ参考にしてください。

実際の計画書などが見たい、土地活用を考えていきたい方はぜひご相談ください。

無料EBook: 駐車場経営の具体的な成功ノウハウと、ノウハウをもとにした成功した駐車場オーナーの3つの事例

もしあなたが駐車場経営を検討している、または利益改善をお考えなら、本書はそれに対する、あらゆる疑問や不安を全て具体的に解決します。


本書の著者『REIBS 不動産経営学院』は、


・全国1万人以上の不動産オーナーへのインタビュー
・5年で1,000名を超える受講生の事例


から、当ノウハウを作り上げ、多くの駐車場オーナーを成功に導いてきました。本書は、机上の空論ではなく、実践に基づいた本物のノウハウと情報です。


ぜひ無料ダウンロードして、駐車場経営にお役立てください。



無料Ebookを今すぐダウンロードする

執筆者
横山篤司

横山篤司

一般社団法人不動産オーナー経営学院の代表理事/学長。宅地建物取引士、事業承継マネージャー、マンション管理業務主任者の資格を保有。 これまで日本で10,000人以上のオーナーと話し、事例や成功体験を研究。創業80年名古屋の三代目地主の家系に生まれる。ニューヨークでの大学院留学、東京で外資系投資銀行のモルガンスタンレーに勤め、プロの不動産投資を学び、家業再生に活かしたことで事業再生、借金を数年で完済することに成功。現在はビルやマンション、商業施設、駐車場等を経営。 中小企業庁主催「事業承継セミナー2017」モデル企業登壇/不動産オーナー後継者の会/JFMA「不動産MBA」研究員/週刊ビル経営「建替え経営学」連載/全国賃貸住宅新聞/住宅新報/月刊不動産流通(宅建協会)ほか。

TOPに戻る