投資の教科書

取引先の「次の一手」はIR資料でわかる。決算説明資料と中計をAIで要約する方法

· 投資の教科書 編集部

取引先の「次の一手」はIR資料でわかる。決算説明資料と中計をAIで要約する方法

この記事で手に入るもの

  • 決算説明資料・中期経営計画・招集通知など、IR資料の種類と無料の入手先
  • AIに要約させる、そのままコピーして使える頼み方の文例4つ
  • 要約を営業の提案や仕入れの交渉に生かす使い方
  • 公開資料だけを使う、数字は原本で確かめる、などの注意点

結論

  1. 上場している取引先の「次の一手」は、決算説明資料・中期経営計画・招集通知などのIR資料に書いてあり、誰でも無料で読めます
  2. 資料は、その会社のIRページか、JPXの「東証上場会社情報サービス」で手に入ります
  3. PDFをAIに渡して「増やす・減らす・投資の配分」とページを書かせ、大事な数字は原本で確かめてから営業や仕入れの交渉に使います

取引先が「来年から何に力を入れるのか」。営業の担当者が何度も足を運んでやっと聞ける話が、上場企業なら資料として誰でも読める形で公開されています。

それが、決算説明資料や中期経営計画などのIR資料です。IRは「投資家向けの広報」という意味で、会社が株主や投資家に向けて、考えていることや目標を説明するための資料です。

スライド形式で数十ページあることが多いですが、要点を抜き出すのはAIに任せましょう。 PDFを渡して頼み方を貼るだけで、「相手が増やしたいもの・減らしたいもの」が数分でわかります。

IR資料の種類

決算の数字そのもの(決算短信)や、法律で決まった報告書(有価証券報告書)とは別に、会社の「これから」が書かれた資料があります。

資料 どんなものか 「次の一手」の手がかり
決算説明資料 決算の内容をスライドで説明する資料。決算発表や決算説明会に合わせて出す会社がある 好調・不調の理由、今期の重点施策、来期の見通し
中期経営計画 3〜5年先までの目標と、そのための打ち手をまとめた計画 数値目標、力を入れる事業、投資の配分、やめる・縮める事業
株主総会の招集通知 株主総会の案内。事業報告や、議案(役員の選任など)が載る 会社が認識している課題、役員の顔ぶれの変化
統合報告書 お金の数字と、人材・環境などへの取り組みをまとめた冊子 長い目で見た戦略、人への投資の考え方
適時開示 証券取引所のルールにもとづく、重要な決定や出来事の発表 提携、設備投資、組織の変更などの「決まったこと」

このうち、決算説明資料・中期経営計画・統合報告書は、会社が任意で出している資料です。出していない会社もありますし、中身の詳しさも会社によってちがいます。

目標を示す資料を出す会社がある背景には、上場企業向けの「コーポレートガバナンス・コード」の原則5-2が、収益計画や資本政策の方針、収益力・資本効率の目標、そのための経営資源の配分をわかりやすく説明するよう求めていることがあります。東京証券取引所も2023年3月31日に、プライム市場とスタンダード市場の会社に「資本コストや株価を意識した経営」に向けた対応を要請しています。

招集通知は「3週間前」にはウェブで読める

上場会社は、2023年3月1日以降に開かれる株主総会から、株主総会資料を自社のウェブサイトなどに載せる「電子提供制度」を使うことになりました。載せ始めるのは、株主総会の日の3週間前の日か、招集通知を出した日のどちらか早い日です。

株主総会資料には、株主総会参考書類(議案の説明)や事業報告などが含まれます。

手順1:資料を手に入れる

手に入れる場所は主に2つです。どちらも無料です。

場所 手に入るもの
その会社のホームページの「IR情報」「投資家情報」「IRライブラリー」 決算説明資料、中期経営計画、統合報告書、招集通知など。いちばん確実
日本取引所グループ(JPX)の「東証上場会社情報サービス」 会社名やコードで探して、適時開示(決算情報は121か月分)、株主総会招集通知・株主総会資料(61か月分)、ESGに関する報告書(61か月分)、コーポレート・ガバナンス情報、EDINETに出た有価証券報告書など

迷ったら、「会社名 中期経営計画」「会社名 決算説明資料」で検索すると、たいていIRページが出てきます。

見つかったら、PDFをパソコンに保存します。**資料の日付(いつ発表されたものか)**もファイル名に入れておくと、あとで古い資料と取りちがえずにすみます。

手順2:PDFをAIに渡す

ChatGPTかClaudeを開いて、保存したPDFを添付します。

  • Claude:1つの会話に20ファイルまで添付できます。PDFは100ページまでなら、文字に加えて図やグラフも読み取ります
  • ChatGPT:ファイルの添付ができます。無料版は回数などに上限がある場合があります

※ 機能と上限は変わるのが早いので、使う前に各社のサイトで確かめてください(2026年10月時点)。

IR資料はグラフや図が多いので、図も読めるかどうかは大事です。グラフの数字を使うときは、とくに原本で確かめてください(後で説明します)。

→ どちらを使えばいいか迷ったら:ChatGPTとClaude、社長はどっちを使えばいい?(社長のAIの教科書)

手順3:頼み方を貼り付ける

PDFを添付したら、次の文面をコピーして貼り付けます。【 】の中だけ書き換えてください。

文例1:中期経営計画を1枚にまとめる

添付したのは【〇〇株式会社】の中期経営計画です。
社長が3分で読めるように、次の形でまとめてください。

1. 計画の期間(何年度から何年度まで)
2. 最終年度の数値目標(売上高、営業利益、ROEなど、書いてあるものすべて)
3. 力を入れる事業・分野(3つまで)と、その理由として会社が書いていること
4. 縮める・見直す事業・分野(書いてあれば)
5. 投資の配分(設備投資、M&A、人への投資、株主還元などの金額や割合)

数字は資料に書いてあるものだけを使い、何ページにあったかを添えてください。
書いていないことは「記載なし」としてください。

中期経営計画は、**4番目の「縮める・見直す」**がいちばん大事な情報になることがあります。取引先が縮める分野に、自社の売上が乗っていないかを確かめられるからです。

文例2:決算説明資料から「計画の進み具合」を見る

添付した2つのPDFは、【〇〇株式会社】の中期経営計画と、最新の決算説明資料です。

1. 中期経営計画の数値目標に対して、最新の実績や今期の見通しはどのくらいか(表にしてください)
2. 計画より進んでいる取り組みと、遅れている取り組み
3. 遅れについて会社が説明している理由と、これからの対策
4. 中期経営計画にはなく、決算説明資料で新しく出てきた話題

数字と説明は資料に書いてあるものだけを使い、資料名とページを添えてください。

計画が遅れている分野があれば、会社は残りの期間で取り戻す打ち手を考えるはずです。そこに自社の提案が入る余地がないかを考えるきっかけになります。

文例3:営業の提案のネタを探す

添付したのは、当社の取引先【〇〇株式会社】の中期経営計画と決算説明資料です。
当社は【業種・商品・サービスの説明を1〜2行】の会社です。

1. 取引先が「増やしたい」「減らしたい」「変えたい」と書いていることを、それぞれ箇条書きで
2. そのうち、当社の商品・サービスで役に立てそうなものを3つ。理由も1行ずつ
3. 次の商談で、取引先の担当者に確かめるとよい質問を3つ

資料に書いてあることと、あなたの考えは分けて書いてください。

最後の行が大事です。AIの「考え」は提案のヒントにはなりますが、相手の会社が言ったことではありません。商談で確かめてから使います。

文例4:仕入れの交渉に備える

添付したのは、当社の仕入先【〇〇株式会社】の決算説明資料と中期経営計画です。

次の観点で、仕入れの交渉に関係しそうな記載を抜き出してください。

- 値上げ、価格改定、価格転嫁についての方針
- 原材料・エネルギー・人件費などのコストの見通し
- 生産能力の増強や縮小、拠点の統廃合
- 力を入れる顧客・業界と、見直す顧客・業界
- 利益率の目標

それぞれ、資料の言葉をなるべくそのまま引用し、資料名とページを添えてください。
最後に、当社が交渉の前に準備しておくとよいことを2つ書いてください。

仕入先が「利益率を上げる」と計画に書いていれば、値上げの話が来る前に準備ができます。逆に「この業界の顧客を増やす」と書いていれば、まとまった量を約束する代わりに条件を相談する、といった話もしやすくなります。

→ 要約をもとに、経営判断の壁打ちまでAIでする例:稲盛和夫さんの著書などをAIに読ませたら、いつでも相談できる経営の壁打ち相手になった(社長のAIの教科書)

営業や仕入れの交渉に生かす使い方

AIの要約は、社内で回すと効き目が大きくなります。

場面 やること
大口の取引先との年1回の面談の前 文例1と3の結果を、担当者と共有しておく
取引先の決算発表の後 文例2で計画の進み具合を見て、次の提案の時期を決める
仕入先との価格交渉の前 文例4の結果をもとに、こちらの条件と落としどころを決めておく
取引先の株主総会の後 招集通知で役員の顔ぶれの変化を見て、あいさつ先を確かめる

商談の場で「御社の中期経営計画で、〇〇に力を入れると拝見しました」と切り出せると、相手の話を事前に読んでいる会社として、話が早く進みます。

注意点

1. 使うのは公開されている資料だけ

この記事の方法は、会社が誰にでも公開しているIR資料を使うものです。

  • 取引の中で相手から聞いた未公表の話をAIに入れて分析するのは避けましょう。相手との秘密保持の約束に反するおそれがあります
  • 取引の中で知った未公表の重要な情報をもとに、その会社の株を売買すると、インサイダー取引規制に触れるおそれがあります
  • 自社の売上や取引条件などをAIに入れるときは、社内のルールを決めてからにしましょう

2. 数字は原本で確かめる

IR資料は、グラフや図で数字を見せることが多い資料です。AIはグラフの読み取りや、単位(億円・百万円)の読み違いをすることがあります。

  • 文例のとおりページを書かせておき、大事な数字だけはPDFを開いて確かめる
  • 実績の数字は、できれば決算短信や有価証券報告書の数字とも照らし合わせる
  • 合わないときは「〇ページでは〇〇億円です。もう一度確認してください」と返す

3. 計画は「約束」ではない

中期経営計画や業績の見通しは、会社のその時点の考えです。資料の多くには、「将来の見通しは、さまざまな要因で変わりうる」という注意書きがあります。計画が途中で見直されることもあります。

資料の日付を必ず確かめ、新しい資料が出ていないかを見てから使いましょう。

よくある質問

IR資料とは何ですか?

IRは「投資家向けの広報」という意味で、会社が株主や投資家に向けて、考えていることや目標を説明するための資料です。決算説明資料、中期経営計画、株主総会の招集通知、統合報告書、適時開示などがあります。このうち決算説明資料・中期経営計画・統合報告書は会社が任意で出している資料なので、出していない会社もあります。

中期経営計画や決算説明資料はどこで見られますか?

その会社のホームページの「IR情報」「投資家情報」「IRライブラリー」がいちばん確実です。日本取引所グループ(JPX)の「東証上場会社情報サービス」でも、会社名やコードで探して適時開示や招集通知などを見られます。どちらも無料です。迷ったら「会社名 中期経営計画」で検索すると、たいていIRページが出てきます。

株主総会の招集通知はいつから読めますか?

上場会社は、2023年3月1日以降に開かれる株主総会から、株主総会資料を自社のウェブサイトなどに載せる「電子提供制度」を使っています。載せ始めるのは、株主総会の日の3週間前の日か、招集通知を出した日のどちらか早い日です。

IR資料をAIで要約するときの注意点は何ですか?

使うのは会社が公開している資料だけにし、取引の中で聞いた未公表の話はAIに入れないようにします。AIはグラフの読み取りや単位の読み違いをすることがあるので、ページを書かせておき、大事な数字はPDFを開いて確かめます。また、計画は会社のその時点の考えなので、資料の日付と新しい資料が出ていないかを確かめてから使います。

まとめ

  1. 決算説明資料・中期経営計画・招集通知には、取引先の「これから」が書いてある
  2. 入手先は、その会社のIRページと、JPXの東証上場会社情報サービス。どちらも無料
  3. PDFをAIに渡し、「増やす・減らす・投資の配分」と「ページ」を書かせる
  4. 公開資料だけを使い、大事な数字は原本で確かめ、資料の日付を見る

まずは、売上の大きい取引先1社の中期経営計画をAIに渡してみてください。次の1か月で、その会社の担当者に確かめたい質問が3つそろいます。

※ この記事は、開示資料の読み方とAIの使い方を説明するもので、特定の銘柄の売買をおすすめするものではありません。

参考

「AIで投資を調べる」の関連記事