AIで伸びる業種・変わる業種。国の推計と調査で見る、社長が知っておきたい見取り図
· 投資の教科書 編集部

この記事で手に入るもの
- AIで「伸びる仕事」「変わる仕事」を、国の推計と国際機関の調査で整理した見取り図
- 業種ごとのAI導入率と、導入した会社が感じている効果
- 自社の仕事をAIで仕分ける、そのまま使える頼み方の文例
- 中小企業が次の1か月で打てる、具体的な一手
結論
- AIで減るのは「仕事」より「机の上の決まった作業」で、人と向き合う仕事と現場の仕事は残ると国は見ています
- 2040年の日本では、事務職が約437万人余り、AI・ロボット等を使いこなす人材が約339万人、現場人材が約260万人足りないと推計されています
- 業種より「自社の中にどの型の仕事がどれだけあるか」が大事で、事務の作業をAIに移し、浮いた人と時間を人手不足の仕事に回せる会社が得をする側に回れます
「AIで仕事がなくなる」という話はよく聞きます。ただ、公的機関の推計や調査をていねいに見ると、見えてくるのは別の姿です。
なくなるのは「仕事」より「作業」。そして、人が足りない仕事のほうが多い。
この記事では、経済産業省、厚生労働省、内閣府、世界経済フォーラム、IMFの数字をもとに、AIで伸びる仕事と変わる仕事を整理します。読み終えるころには、自社のどの仕事をAIに任せ、どこに人を回せばよいかの見当がつくはずです。
結論:仕事は3つの型に分けて考える
経済産業省は2026年3月の「2040年の就業構造推計(改訂版)」で、仕事を大きく3つの型に分けて、AI・ロボットの影響を整理しています。
| 型 | 代表的な仕事 | AI・ロボットの影響 |
|---|---|---|
| 事務型 | 書類づくり、調整、データ入力 | 代わりにやってもらえる作業が多い |
| 現場型 | 運搬、機械の操作、保守・点検 | 操作や点検などの決まった作業で置き換えが大きく進む |
| 対人業務型 | 医療・介護、接客、管理 | 仕事そのものは置き換わりにくい。AIで補うことで生産性が上がる可能性 |
経産省の試算では、生成AIなどの進歩が速まった場合、2040年に必要な事務従事者は約680万人になります。生成AIなどを入れない場合の約1,530万人の半分以下です。一方、保健医療サービスの仕事は、同じ比較で約62万人から約52万人と、減り方が小さくなっています。
つまり、「人と向き合う仕事」と「体を動かす現場の仕事」は残り、「机の上の決まった作業」はAIに移っていく、というのが国の見立てです。
日本の2040年:事務は余り、AIを使える人と現場は足りない
同じ推計で、2040年の職種ごとの人の過不足は次のようになっています(十分な国内投資と産業構造の転換が進む場合)。
| 職種 | 2040年の過不足 |
|---|---|
| 事務職 | 約437万人の余り |
| 専門職(専門的・技術的な仕事) | 約181万人の不足 |
| うちAI・ロボット等を使いこなす人材 | 約339万人の不足 |
| 現場人材(生産工程、建設、サービスなど) | 約260万人の不足 |
ここでの「AI・ロボット等を使いこなす人材」は、機械の技術者や情報処理・通信の技術者などを数えたものです。
働く人の数は約6,706万人(2022年)から約6,303万人(2040年)に減りますが、AIやロボットの活用と学び直しが進めば、全体としては大きな人手不足にはならない、としています。
ポイントは、**全体の数ではなく「中身のずれ」**です。事務の人は余り、AIを扱える人と現場の人は足りない。地域で見ると、東京圏は全体が余り、地方では現場の人も大きく足りなくなるとされています。
→ 雇用への影響をもっと詳しく知るなら:AIで仕事はなくなるのか? 雇用への影響を数字で見る(社長のAIの教科書)
世界の見通し:伸びる仕事と減る仕事
世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」(2025年1月公表)は、世界の雇用主1,000社以上への調査をもとに、2025〜2030年の変化を予測しています。
- 新しく生まれる仕事:1億7,000万
- なくなる仕事:9,200万
- 差し引き:7,800万の増加(AIだけでなく、すべての要因を合わせた数字)
伸びる仕事と減る仕事は、次のように整理されています。
| 主な仕事 | |
|---|---|
| 増える割合が大きい | ビッグデータの専門家、フィンテックの技術者、AI・機械学習の専門家、ソフトウェア開発者 |
| 増える人数が多い | 農業の働き手、配送ドライバー、建設作業員、販売員、食品加工の働き手、看護師、介護の仕事、教員 |
| 減る | レジ係・チケット係、事務アシスタント・秘書、郵便窓口、銀行の窓口係、データ入力 |
日本の推計と同じく、定型の事務は減り、技術と現場と人のケアは伸びるという形です。
また、IMF(国際通貨基金)は2024年1月、世界の雇用の約40%、先進国では約60%の仕事がAIの影響を受けると推計しました。ただしIMFは、影響を受ける仕事のおよそ半分はAIを取り入れることで生産性が上がる側だとしています。「影響を受ける」は「なくなる」と同じ意味ではありません。
業種別に見ると:AIの入り方には大きな差がある
厚生労働省の「労働経済動向調査(令和8年2月)」は、従業員30人以上の事業所に、AIを有料で導入しているかを聞いています(社員が個人で使っている場合は数えていません)。
| 業種 | AIを導入している事業所 | 導入した事業所のうち「効果があった」 |
|---|---|---|
| 金融業・保険業 | 64% | 89% |
| 情報通信業 | 58% | 87% |
| 学術研究・専門・技術サービス業 | 56% | 76% |
| 卸売業・小売業 | 40% | 80% |
| 製造業 | 37% | 78% |
| 不動産業・物品賃貸業 | 36% | 78% |
| 建設業 | 26% | 71% |
| 生活関連サービス業・娯楽業 | 23% | 77% |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 18% | 61% |
| 運輸業・郵便業 | 17% | 71% |
| 医療・福祉 | 17% | 73% |
| 全体 | 31% | 78% |
読み取れることは2つです。
- 書類やデータを扱う業種ほど、導入が早い。 金融、情報通信、専門サービスは5〜6割に達しています
- 導入が遅い業種でも、入れた会社の7割前後は効果を感じている。 建設、運輸、医療・福祉はまだ2割前後ですが、効果ありは7割を超えています
規模による差もはっきりしています。導入しているのは、従業員1,000人以上の企業の事業所で48%、30〜99人の企業の事業所では16%でした。
業務別に見ると:まず変わるのは「定型の書類」
内閣府の「令和8年度 年次経済財政報告(経済財政白書)」(2026年7月)は、企業への調査をもとに、どの業務がAIに置き換わりつつあるかを分析しています。
- 定型的な書類作成、スケジュール調整、会計・財務・税務:すでに大部分または一部がAIに置き換わる傾向
- 定型的な書類作成:将来の置き換えまで含めると、7割程度の企業がAIの利用を検討
- 運送・配送、研究開発:将来の置き換えまで含めても、検討している企業は3〜4割程度
あわせて白書は、すでにAIで置き換えている割合は大中堅企業と中小企業でそれほど差がない一方、中小企業では「置き換えない」「わからない」と答える割合が高いと指摘しています。
すでに手をつけている会社の割合は同じくらい。差がつくのは、これから考えるかどうか、ということです。
見取り図:伸びる・変わる仕事のまとめ
ここまでの調査を、編集部で1枚にまとめると次のようになります。
| 仕事の例 | 社長がとる手 | |
|---|---|---|
| 伸びる(人が足りなくなる) | AIやITを扱う人、現場の技能者、医療・介護、教育、営業・販売 | 採用と育成に力を入れる。AIで現場の負担を軽くして、定着率を上げる |
| 変わる(AIで補う) | 接客、管理、企画、専門サービス | AIを相棒にして、1人あたりの仕事量と質を上げる |
| AIに移る(作業が減る) | 定型の書類、データ入力、日程調整、経理の定型作業 | AIに任せて、浮いた人と時間を「伸びる仕事」に回す |
大事なのは、「自社がどの業種か」より**「自社の中にどの型の仕事がどれだけあるか」**です。建設会社にも事務はあり、IT企業にも営業はあります。
自社が得をする側に回るには
調査から見える「得をする側」の条件は、シンプルです。
- 事務の作業をAIに移し、人を人手不足の仕事に回せる会社:経産省の推計どおり、事務は余り、現場とAI人材は足りなくなります。採用で取り合うより、社内で人を動かすほうが早くて確実です
- 導入が遅い業種で、先に始める会社:建設、運輸、医療・福祉などは導入率が2割前後です。同業の中で先に動けば、それだけで差になります
- 「AIを使える社員」を社内で育てる会社:不足すると見込まれる約339万人を、外から採るのは簡単ではありません
次の1か月でやること
- 社内の仕事を3つの型に仕分ける。 部署ごとに、主な仕事を「事務型」「現場型」「対人型」に分けて書き出す
- 事務型の仕事を1つ選んで、AIに任せてみる。 見積書や報告書の下書き、議事録、日程調整のメール文など、毎週くり返す作業が向いています
- 浮いた時間の行き先を、先に決めておく。 営業、現場の応援、お客様対応など「伸びる仕事」に回すと決めてから始めます
仕分けをAIに頼む文例
1の仕分けは、AIに手伝ってもらうと早く終わります。ChatGPTやClaudeに、次の文面を貼り付けてください。【 】の中だけ書き換えます。
当社は【業種・従業員数・主な事業を1〜2行で】の会社です。
次の部署ごとの主な仕事を、3つの型に仕分けてください。
【部署名】:【主な仕事を箇条書きで】
【部署名】:【主な仕事を箇条書きで】
型の定義:
- 事務型:書類づくり、データ入力、日程調整など、机の上で決まった手順でできる仕事
- 現場型:運搬、機械の操作、点検、施工など、体や現場を使う仕事
- 対人型:接客、営業、相談、管理など、人と向き合う仕事
出力は表にして、次の列を入れてください。
仕事 / 型 / AIに任せられる部分 / 人が残すべき部分 / 最初に試すならどの順番か
最後に、月に何時間くらい浮きそうかの目安を、根拠つきで1行添えてください。
出てきた表は、たたき台です。現場をよく知る社員と一緒に見直すと、精度が上がります。
→ これからの5年をもっと先まで見通すなら:AI将来予測|第一人者10人の予測から見える「これから5年」と、社長がいま打つ手(社長のAIの教科書)
よくある質問
AIで仕事はなくなりますか?
公的機関の推計や調査を見ると、なくなるのは「仕事」より「作業」です。IMFは世界の雇用の約40%がAIの影響を受けると推計していますが、そのおよそ半分はAIを取り入れることで生産性が上がる側だとしています。「影響を受ける」は「なくなる」と同じ意味ではありません。
AIで伸びる仕事は何ですか?
世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」では、増える割合が大きいのはビッグデータの専門家、AI・機械学習の専門家、ソフトウェア開発者などです。増える人数が多いのは、農業の働き手、配送ドライバー、建設作業員、看護師、介護の仕事などとされています。経済産業省の推計でも、2040年にAI・ロボット等を使いこなす人材や現場人材が足りなくなると見込まれています。
AIで減る仕事は何ですか?
世界経済フォーラムの予測では、レジ係・チケット係、事務アシスタント・秘書、郵便窓口、銀行の窓口係、データ入力などが減るとされています。経済産業省の推計でも、2040年に事務職は約437万人の余りになります。定型の事務が減る、という点で日本と世界の見通しは同じ形です。
AIの導入率が高い業種・低い業種はどこですか?
厚生労働省の「労働経済動向調査(令和8年2月)」では、導入率が高いのは金融業・保険業の64%、情報通信業の58%です。低いのは運輸業・郵便業と医療・福祉の17%、宿泊業・飲食サービス業の18%でした。ただ、導入が遅い業種でも、入れた会社の7割前後は効果を感じています。
中小企業はまず何から始めればいいですか?
まず社内の仕事を「事務型」「現場型」「対人型」の3つの型に仕分けます。次に、見積書や報告書の下書き、議事録など、毎週くり返す事務型の仕事を1つ選んでAIに任せてみます。浮いた時間を営業や現場の応援など「伸びる仕事」に回すと、先に決めてから始めるのがポイントです。
まとめ
- AIで減るのは「仕事」より「机の上の決まった作業」。人と向き合う仕事と現場の仕事は残る
- 2040年の日本では、事務職が約437万人余り、AIを使いこなす人が約339万人、現場の人が約260万人足りないと国は推計している
- 業種別のAI導入率は、金融64%に対し、運輸・医療福祉は17%。ただ、入れた会社の7割前後は効果を感じている
- 得をするのは、事務の作業をAIに移し、浮いた人と時間を人手不足の仕事に回せる会社
- 次の1か月は、社内の仕事を3つの型に仕分け、事務型の仕事を1つAIに任せてみる
業種で未来が決まるわけではありません。自社の中の仕事の組み合わせを変えれば、AIは人手不足を埋める味方になります。
※ この記事は、AIが仕事や業種に与える影響についての調査を紹介するもので、特定の銘柄の売買をおすすめするものではありません。
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