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AIを使っている会社は業績が伸びているのか。データで見る現在地と、自社で効果を測る3つの指標

· 投資の教科書 編集部

AIを使っている会社は業績が伸びているのか。データで見る現在地と、自社で効果を測る3つの指標

この記事で手に入るもの

  • 「AIで効果が出た」と答える会社の割合と、その中身
  • 売上・利益まで効果が届いている会社がどのくらいあるか
  • うまくいかなかった例から分かる、効果が出る条件
  • 投資家が企業のAI活用をどう見ているか(決算説明でのAI言及)
  • 自社でAIの効果を測る3つの指標と、そのまま使える頼み方

結論

  1. AIを使う日本企業の8割前後が「効果あり」と答えていますが、中身のほとんどは時短で、「業績の改善」まで挙げた事業所は約2割です
  2. 効果を業績に届かせる差は、AIの性能より「浮いた時間を何に使ったか」「効果を数字で測っているか」で生まれています
  3. 自社では「1件あたりの作業時間」「浮いた時間の行き先」「1人あたり粗利」の3つを測ると、効果が業績まで届いているかがわかります

「AIを入れた会社は、本当にもうかっているのか」。社長なら、いちばん知りたいところです。

先に答えを言うと、「時間が浮いた」はほとんどの会社が実感している。でも、それが売上や利益にまで届いている会社は、まだ一部です。

そして、その差を分けているのは、AIの性能より**「浮いた時間を何に使ったか」「効果を測っているか」**でした。逆に言えば、ここを押さえるだけで、中小企業でも効果を業績につなげやすくなります。

日本企業の実感:8割前後が「効果あり」

活用企業の86.7%が「効果が出ている」

帝国データバンクの調査(2026年5月14日公表、1万312社が回答)では、生成AIを業務で活用している企業のうち、「大いに効果が出ている」が25.2%、「やや効果が出ている」が61.5%で、**合わせて86.7%**でした。

「大いに効果が出ている」は、小規模企業(29.7%)が大企業(20.8%)を上回っています。会社が小さいほど、効果を強く感じているという結果です。

ただし、効果の中身はほとんどが「時短」

厚生労働省の「労働経済動向調査(令和8年2月)」では、AIを有料で導入している事業所の78%が「効果があった」と答えています。効果があった事業所に、その中身を聞いた結果(複数回答)は次のとおりです。

効果の中身 割合
作業負担の軽減や作業効率の改善 91%
品質の向上 33%
労働時間の短縮や休暇・休日の増加 25%
人手不足の解消 22%
業績の改善 21%
経費の削減 16%

「楽になった」は9割を超えますが、「業績の改善」まで挙げたのは約2割です。ここが、いまの日本企業の現在地です。

中小企業では「新しい価値づくり」も

中小企業基盤整備機構の調査(2026年3月)では、中小企業がAIで得た効果は「業務効率化・作業時間の短縮」が83.2%で最多でした。一方、「付加価値の創出」は22.3%で、これまでのIT導入(7.4%)を約15ポイント上回っています。

また、直近3年間で売上が増えている企業は、AIを入れる目的として「品質向上」を挙げる割合が38.6%と、減収の企業(26.4%)より高くなっていました。伸びている会社は、AIを「時短」だけでなく「質を上げる道具」として使っていることがうかがえます。

→ 効果の数字をもっと見るなら:AIを入れると、どのくらい得するのか? 効果の数字と、効かなかった例(社長のAIの教科書)

実際に測った効果:経験の浅い人ほど伸びる

アンケートではなく、実際の仕事の成果を測った研究もあります。

研究 対象 結果
コールセンター(米国の研究者、経済学の学術誌に2025年掲載) サポート担当5,179人 1時間あたりの解決件数が平均14%増。新人や経験の浅い人は34%増。ベテランへの効果は小さい
スタンフォード大学「AI Index 2026」が集めた研究 分野ごと カスタマーサポートで14〜15%、ソフト開発で26%、マーケティングの成果物で50%の向上

効果が大きいのは、経験の浅い人が、決まった型のある仕事をするときです。人を育てる時間が足りない中小企業ほど、恩恵を受けやすい形と言えます。

うまくいかなかった例

効果が出なかった例も、同じくらい大切です。

  • ベテランの開発者が19%遅くなった:研究団体METRが2025年7月に公表した実験では、経験豊富な開発者16人が慣れた仕事にAIを使ったところ、かえって時間が19%長くかかりました。本人たちは「24%速くなる」と予想していました(METR自身が、この結果は古くなったと注記しています)
  • 国全体の賃金や労働時間は、まだ動いていない:デンマークの行政データを分析した研究では、ChatGPTの登場から2年たっても、賃金や記録上の労働時間への影響は2%を超えるものではないと結論づけています(全米経済研究所のワーキングペーパー、2026年3月改訂)
  • 時短しても、労働時間は減っていない:パーソル総合研究所の調査(2026年2月3日公表)では、生成AIを使った作業の時間は平均16.7%短くなりました。しかし、労働時間が実際に減った人は利用者の約25.4%。浮いた時間の61.2%は別の仕事に使われ、その4分の3は日常業務でした

3つめが特に大事です。浮いた時間を決めずにいると、いつもの仕事に吸い込まれて、業績には表れません。

日本と海外の差:「効果を測っているか」

PwC Japanグループの6か国調査(2026年6月10日公表、売上高500億円以上の企業が対象)は、この差をはっきり示しています。

日本 米国
生成AIを活用・推進している 87% 90%
「期待を大きく上回る効果」が出ている 9% 38%
効果を財務的な成果に結びつけている(PwCの言う「財務的還元」) 40% 75%
効果を「まだ評価できていない」 13% 0%

使っている割合はほぼ同じなのに、成果には大きな差があります。PwCは、期待を大きく上回る効果を出している企業の特徴として、経営に近い推進体制、業務の手順への正式な組み込みなどを挙げています。

大企業の調査ですが、教訓は中小企業にもそのまま使えます。社長が旗を振り、効果を数字で測る会社が、成果を出しているということです。

投資家はAI活用をどう見ているか

米国の決算説明会では、3分の2の会社がAIに言及

米国の金融データ会社FactSetの集計(2026年9月18日公表)では、2026年6月15日〜9月14日に開かれたS&P500採用企業の決算説明会のうち、331社(67%)が「AI」という言葉を使っていました。65%を超えるのは3四半期連続です。過去5年の平均は178社でした。

同じ集計で、2025年末から2026年9月17日までの平均株価上昇率は、AIに触れた会社が15.7%、触れなかった会社が8.1%でした。ただし、これはAIに触れた会社の株価の動きを並べただけで、AIに触れたから株価が上がった、という意味ではありません。業種ごとの言及率は情報技術が97%、金融が91%と高く、業種の偏りも含まれています。

いま投資家が見ているのは「数字で示せるか」

決算説明でAIに触れること自体は、もう珍しくありません。差がつくのは、AIでどれだけ時間やコストが減り、売上や利益がどう変わったかを示せるかです。

米国では、7〜9月期の決算発表がすでに始まっています。FactSetの10月9日時点の集計では、S&P500採用企業のうち19社が発表を終え、7〜9月期全体の増益率は29.6%と見込まれています。取引先や競合が上場企業なら、決算説明資料でAIの効果をどう数字で説明しているかを見ると、自社の参考になります。

→ 世界の企業がどのくらいAIを使っているかは:企業はどのくらいAIを使っているのか? 日本と世界の導入率まとめ(社長のAIの教科書)

自社で効果を測る3つの指標

上場企業でなくても、考え方は同じです。AIの効果を「なんとなく便利」で終わらせず、業績につなげるために、次の3つを測ってください。

指標 測り方 目安の見方
① 1件あたりの作業時間 AIに任せる作業を1つ決め、導入前と後で「1件に何分かかったか」を記録する 何%短くなったか。調査では平均16.7%の短縮
② 浮いた時間の行き先 浮いた時間を「営業」「お客様対応」「現場の応援」など、使い道ごとに週1回記録する 売上につながる仕事に、浮いた時間の何割が回ったか
③ 1人あたり粗利 月の粗利を社員数で割る。外注費・残業代の変化もあわせて見る 3か月ごとに前年同期と比べて、上がっているか

①だけでは「楽になった」で止まります。②で時間の使い道を決め、③で業績に表れたかを確かめる。この3段で見ると、AIの効果が業績まで届いているかどうかが分かります。

記録をAIにまとめてもらう文例

毎月の記録は、表計算ソフトに書きためておき、月末にAIに渡してまとめてもらうと楽です。

添付したのは、当社でAIを使い始めてからの記録です。
次の3つの指標で、効果をまとめてください。

1. 1件あたりの作業時間:導入前と後の平均、短縮率(%)
2. 浮いた時間の行き先:使い道ごとの時間と割合
3. 1人あたり粗利:月ごとの推移と、前年同月との差

最後に、
- 効果が業績に届いていると言える点
- まだ届いていない点と、その理由として考えられること
- 次の1か月で変えるとよいことを1つ
を書いてください。

数字は、添付の記録にあるものだけを使ってください。
記録にないことは「記録なし」としてください。

最後の2行を入れておくと、AIが推測で数字を作るのを防げます。

よくある質問

AIを導入した会社は効果が出ていますか?

帝国データバンクの調査(2026年5月14日公表)では、生成AIを業務で活用している企業の86.7%が「効果が出ている」と答えています。厚生労働省の「労働経済動向調査(令和8年2月)」でも、AIを有料で導入している事業所の78%が「効果があった」と答えました。「大いに効果が出ている」は小規模企業(29.7%)が大企業(20.8%)を上回っています。

AIで売上や利益は上がりますか?

効果の中身はほとんどが時短です。厚生労働省の調査で、効果があった事業所が挙げた中身は「作業負担の軽減や作業効率の改善」が91%だったのに対し、「業績の改善」は21%でした。売上や利益にまで届いている会社は、まだ一部です。

AIで時間が浮いても、なぜ業績につながらないのですか?

浮いた時間の使い道を決めずにいると、いつもの仕事に吸い込まれてしまうためです。パーソル総合研究所の調査(2026年2月3日公表)では、生成AIを使った作業の時間は平均16.7%短くなりましたが、浮いた時間の61.2%は別の仕事に使われ、その4分の3は日常業務でした。

AIの効果はどうやって測ればいいですか?

この記事では3つの指標を紹介しています。①AIに任せる作業の「1件あたりの作業時間」を導入前後で記録する、②「浮いた時間の行き先」を使い道ごとに週1回記録する、③「1人あたり粗利」を3か月ごとに前年同期と比べる、の3つです。①だけでは「楽になった」で止まるので、②と③まで見ることが大事です。

まとめ

  1. AIを使う日本企業の8割前後が「効果あり」と答えている。小さな会社ほど効果を強く感じている
  2. ただ、効果の中身はほとんどが時短。「業績の改善」まで挙げた事業所は約2割
  3. 実験では、経験の浅い人ほど効果が大きい。一方、慣れた仕事でかえって遅くなった例もある
  4. 浮いた時間を決めずにいると、日常業務に吸い込まれて業績に表れない
  5. 投資家の関心は「AIに触れているか」から「効果を数字で示せるか」に移っている
  6. 自社では「1件あたりの作業時間」「浮いた時間の行き先」「1人あたり粗利」の3つを測る

次の1か月は、AIに任せる作業を1つ決めて、①の作業時間を測るところから始めてみてください。

※ この記事は、企業のAI活用と業績に関する調査を紹介するもので、特定の銘柄の売買をおすすめするものではありません。

参考

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