FXで利益が出た場合、確定申告が必要です。
しかし、FXの税金についてイマイチ知らなかったり、確定申告書類の書き方が複雑でさっぱりわからない、という方は多いと思います。
そこで、この記事では、
- FXの税金の基礎知識
- 損失の繰り越し控除
- 確定申告書の作成手順
について、実際の書類を使って初心者にもわかりやすく説明します。活用して、確定申告シーズンに備えていただければと思います。
ちなみに、2019年分の確定申告の申告期間は、2020年2月17日から3月16日※です(終了)。
※2020年は、新型コロナウイルスの影響で、申告期限が4月16日(木)まで延長されました。
執筆者
投資の教科書 FX事務局
投資の教科書FX事務局では、FXで稼ぐ力を身につけるために必要な基本的な知識をはじめ、おすすめFX口座の特徴などを、FX億トレーダーぶせな氏の監修のもと、初心者にもわかりやすくお伝えしています。
1.FXの税金の基礎知識
FXで利益をあげると、給与所得や事業所得などの他の収入と同様、税金を払う必要があります。
同じ投資の利益でも、株式の場合は特定口座では証券会社が源泉徴収してくれ、確定申告の必要はありません。しかし、FXの場合は自分で確定申告をする必要があります。 申告しないと、税務署から連絡があり、場合によっては大きなペナルティが課されることもあります。
そうならないように、この章でFXの税金に関する疑問をクリアにしましょう。なお、FXの税金の知識はある程度あって、確定申告書の作成方法が知りたい方は、4章からお読み下さい。
1.1.FXにかかる税金は約20%
FXの利益は、「先物取引に係る雑所得等」という所得の区分になります。FXの他に、先物取引やオプション、CFDなども同じ所得区分となりますので、これらを合算したものが「先物取引に係る雑所得等」になります。
この「先物取引に係る雑所得等」は、申告分離課税となります。申告分離課税の場合、他の所得と合算せずに「先物取引に係る雑所得等」だけ分離して税金を計算します。
ちなみに、税率は所得の金額にかかわらず、一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)です。
したがって、税額は「先物取引に係る雑所得等」×20.315%となります。例えば、ある年にFXで100万円の利益を出した場合の税金を計算すると、次のようになります。
100万円×20.315%=203,150円
1.2.所得の計算方法
まず、「先物取引に係る雑所得等」のカテゴリーに含まれる損益を全て合算します。例えば、ある年にFXで100万円の利益、先物で80万円の利益、CFDで30万円の損失があった場合、所得は次のようになります。
100万+80万-30万=150万円
このように、同じカテゴリ内で損益を合算することを「損益通算」といいます。
1.2.1.スワップポイントの取り扱い
スワップポイントについては、FX会社によって取り扱いが異なります。具体的には、決済するまで課税対象にならない場合と、決済しなくても課税対象になる場合があります。
1.2.2.経費の取り扱い
次に、上記で算出した金額からFX取引にかかった経費を差し引きます。主な経費には、次のようなものがあります。
- FX口座への振込み手数料
- FX取引で使うパソコンやモニターの購入費用
- FX取引で使うスマートフォンの購入費用
- 情報収集のための雑誌代、新聞代
- FXセミナーの受講料
- プロバイダー費用
上記の費用のうち、FX取引に必要と認められる金額が経費になります。経費は、利益から引くことができるので、適正な経費を計上することが税金の節約につながります。
なお、経費については、上記に該当するものであっても、税務署によって見解が異なる場合がありますので、迷ったら税務署や税理士に相談することをおすすめします。
1.3.確定申告が必要かどうかの基準
確定申告が必要かどうかは、給与所得の有無によって違いがあります。給与所得がある場合とない場合に分けて解説します。
1.3.1.給与収入がある場合
FX等の利益が20万円以下の場合は、確定申告をする義務はありません。
ただし、給与収入が2,000万円以上ある場合は、確定申告をする必要があります。
1.3.2.給与収入がない場合
専業主婦や家事手伝いなどの給与収入がない方は、FX等の利益が38万円を超える場合に確定申告が必要となります。
2.損失の繰り越し控除
この章では、将来支払うかもしれない税金を減らせる「損失の繰り越し控除」の仕組みと、利用する場合に確定申告で必要になる書類の記入方法をお伝えします。
2.1.損失の繰り越し控除の仕組み
FXで発生した損失は、3年間繰り越すことができます。
例えば、ある年が100万円の損失だった場合、3年間損失を繰り越して、利益と相殺できます。そして、翌年の利益が30万円だった場合、繰り越した100万円の損失のうち、その30万円を使って利益と相殺することができます。
その結果、その年の利益はプラスマイナスゼロになり、税金はかかりません。損失は3年間繰り越すことができるので、翌年以降も、残りの70万円分の損失を利益と相殺できます。
整理すると、次のようになります。
ただし、損失のあった年に確定申告をしないと、損失の繰り越し控除は使えません。
この損失の繰り越し控除は、ノーリスクで合法的に節税できる方法なので、損失が出た年に確定申告をすれば、将来払うかもしれない税金を払わなくて済みます。そのため、FXで損失が出た年も必ず確定申告をしておくようにしましょう。
2.2.損失の繰り越し控除で必要な書類の書き方
FXの損失の繰越控除で必要な書類が、次の「所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」書類です。この用紙は、税務署でも配布していますが、こちらの国税庁のページからもダウンロードできます。

この用紙を入手したら、まず、一番上の欄に住所と氏名を記入しましょう。

続いて、先物取引に係る雑所得の金額と、繰越したい損失の金額を記入します。 次の見本は、今年25万円の損失があり、前年からの損失の繰越がない場合の記載例です。
《損失の繰越控除の書類の記入ポイント》
- ①本年のFX(先物やオプション、CFDも含む)の損失額を記入します。
- ①と同じ金額を、④、⑧、⑫にも記入します。
- ㉒、㉖には、⑫の金額の△(マイナス)を消した金額を記入します。
- ㉖には、⑦、⑪、㉒の合計金額を記入します。
※ここでは⑦、⑪は空欄なので、㉒の金額をそのまま記入します。

FXで損失を出した場合、以上のように作成した書類と、次の章からお伝えする、確定申告で必ず提出する3種類の書類(確定申告書B、申告書第三表、先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書)と一緒に税務署に提出します。
※記入した書類は、翌年以降に利益が出て控除を行う場合に参照するので、控えは保管しておきましょう。
3.FXの確定申告に必要な三つの書類の記入方法
先ほどの「所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」は、FXで損失を出した場合に追加で用意する書類でしたが、FXの確定申告で必ず必要な書類は、次の3点です。
《FXの確定申告の書類の3点セット》
1.確定申告書B(第一表、第二表)
2.申告書第三表(分離課税用)
3.先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
+
(損失が出た場合)「所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」
以上の書類は、税務署で配布している他、国税庁のホームページからもダウンロードできます。以下をクリックすると、同じものが表示されるので、印刷してお使い下さい。
さらに、添付書類として、次の2点が必要になります。
年間取引報告書は、1月以降になると、FX会社から書面で郵送されてくるか、自分でFX会社からダウンロードします。どちらの方式かは、ご利用のFX会社にお尋ね下さい。
また、源泉徴収票は、サラリーマンなどで給与所得がある場合は添付する必要があります。これは、年末から翌年の1月中には会社から配布されますので、該当部署にお問い合わせ下さい。
さて、FXの確定申告で必要な書類が準備できたら、実際に記入していきましょう。その際、先ほど紹介した書類を上から順番に記入していくより、以下の順番で書くとスムーズにいきます。
まずは、大きな流れをつかみましょう。
・先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
↓
・確定申告書B(第二表)
↓
・確定申告書B(第一表)
↓
・申告書第三表(分離課税用)
一つ一つわかりやすく解説するので、しっかり付いてきて下さいね。
3.1.先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
最初に、「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」から作成します。
下の用紙が、実際の「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」の記入用紙です。

まず、書類の上部に年度と氏名を記入し、「雑所得用」を丸で囲みます。

ここでは、記入上のポイントを補足します。
・取引の内容
「種別」に「為替取引」、「決済の方法」に「仕切」と記入します。なお、同一口座で複数の取引がある場合は、「決済年月日」と「数量」は空欄で構いません。
・総収入金額
「差金等決済に係る利益又は損失の額」の欄に、FXの年間損益とスワップポイントの合計金額を記入します。 その金額を、そのまま「計」の欄に記入します。表の一番右側の合計欄にはⒶⒷⒸの合計金額を記入します。
続いて、「必要経費等」の欄は、次のように記入していきます。
FXは、株式のような売買代金に応じた手数料はかかりませんので、「手数料等⑤」の欄は空欄にします。手数料がかかるFX会社を利用する場合は、年間の手数料金額を記入します。
次に、「その他経費」の⑦⑧⑨に、FX取引をするためにかかった経費を記入します。また、「小計⑩」には「その他経費」の合計金額を記入します。そして、「計⑪」には(⑤+⑩)または(⑤+⑥+⑩)の合計金額を記入します。
最後に、一番下の「所得金額⑫」には、「総収入金額計④」から「必要経費等計⑪」の金額を差し引いた金額を記入します。
以上の記入が終わったら、それぞれの項目の一番右側の欄にⒶⒷⒸの合計金額を記入します。
3.2.確定申告書B(第一表、第二表)
続いて、確定申告書Bを作成します。この書類は、第一表と第二表から構成されていますが、第二表から作成することがポイントです。なぜなら、第二表で計算した数字を第一表に記入する箇所があるので、この順番のほうがスムーズに書くことができるからです。
それでは、第二表の記入方法から解説していきます。
まず、用紙の左上に住所氏名を記入します。
次に、「所得の内訳」の欄は、給与収入などのFX以外の収入がある場合、「所得の内訳」の欄に所得の種類と支払者、収入金額、源泉徴収税額を記入します。上記の例は、給与所得収入がある場合で、所得の種類には「給与」、支払者には給与の支払いを受けた会社名を記入しています。
続いて、収入金額と源泉徴収税額を記入します。これは、会社から受け取った源泉徴収票から転記するだけです。
次は、用紙右側の「所得から差し引かれる金額に関する事項」です。この欄には、社会保険料控除や生命保険料控除など、所得から控除できる項目を記入します。上記の例では、社会保険料控除を記入しています。この金額は、源泉徴収票に記載されている金額を転記するだけでOKです。
第二表の記入が終わったら、第一表を記入します。

まず、一番上の欄に住所氏名等の情報を記入しましょう。
次に、表の左側の「収入金額等」の「給与」の欄に、源泉徴収票の給与金額を記入します。そして、「所得金額」の「給与」の欄には、給与所得控除後の給与所得金額を記入します。なお、給与所得控除後の給与所得金額は、国税庁のこちらの資料で調べられます。

続いて、「所得から差し引かれる金額」の欄に各種控除の金額を記入します。

上記の例では、「社会保険料控除」と「基礎控除」の金額を記入しています。その他、医療にかかった費用は「医療費控除」となり、生命保険の保険料は「生命保険料控除」に記入します。また、配偶者や扶養親族がいる場合は、「配偶者控除」「扶養控除」の欄にそれぞれ記入します。
ここまで完成したら、最後の用紙に移ります。
3.3.申告書第三表(分離課税用)
申告書第三表(分離課税用)を作成します。まず、一番上の欄に住所氏名を記入しましょう。
次に、「収入金額」の「先物取引」の欄に、「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」の「④総収入金額計」の金額を記入します。また、「所得金額」の「先物取引」の欄に、「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」の「⑫所得金額」の金額を記入します。

続いて、「税金の計算」の欄を記入します。
まず、⑨総合課税の合計額の欄に、第一表の⑨の金額を記入します。続いて、㉕所得から差し引かれる金額の欄に、第一表の㉕の金額を記入します。そして、(70)の⑨対応分には⑨の金額から㉕の金額を引いた金額を記入します。
なお、(70)の(67)対応分には(67)先物取引の金額をそのまま記入します。

最後に、税額を計算します。まず、給与所得分の税額計算をします。(70)の「⑨対応分」の金額から、下の表を参照して税額を算出します。
(出典:国税庁ホームページ)
この事例の場合、(70)の⑨対応分
1,102,000円 × 5% – 0円 = 55,100円
が税額になります。この金額を、(78)の「(70)対応分」に記入します。
続いて、FX分の税額を計算します。まず、(75)「(67)対応分」の金額に税率15%をかけて税額を算出します。
955,000×15%= 143,250円
そして、(78)と(83)の金額を合計し、(86)に記入します。
この例では、次のようになります。
55,100円 +143,250円=198,350円

ここまで作成したら、先ほど途中まで作成した第一表に戻ります。
【確定申告書B(第一表、第二表)】

まず、(27)(38)(40)の3箇所に、第三表の (86)の税金額をそのまま記入します。続いて、復興特別所得税を計算します。そして、(40)再差引所得税額の金額に2.1%をかけます。
この例では、
198,350円 × 2.1% = 4,165円
となります。この金額を、(41)復興特別所得税額に記入します。
続いて、(40)「再差引所得税額」と(41)「復興特別所得税額」の合計金額を、(42)「所得税額および復興特別所得税」の額に記入します。
そして、(44)「所得税および復興特別所得税の源泉徴収税額」に源泉徴収票に記載されている源泉徴収税額を記入します。
最後に、申告する納税額を計算します。申告納税額は、(42)「所得税額および復興特別所得税」から(44)「所得税および復興特別所得税の源泉徴収税額」を引いた金額です。
202,515円-63,240円 = 139,275円
この金額を、(45)「所得税額および復興特別所得税」に記入します。
この金額が、プラスの場合は(47)「納める税金」の欄に、マイナスの場合は(48)「還付される税金」の欄に記入します。
以上で、確定申告書は完成です。
4.確定申告書の二つの提出方法
記入した確定申告書の提出方法には、次の2つがあります。都合がいい方法をお選び下さい。
4.1.書面で提出する方法
1つ目の方法は、書面の確定申告用紙を提出する方法です。
提出先は、お住まいの住所を管轄している税務署に提出します。また、確定申告の期間中は税務署外に確定申告会場が設けられる場合もあるので、こちらの国税庁のページで管轄の税務署を調べてお問い合わせ下さい。
なお、書類は、直接提出することもできますし、郵送でも可能です。余裕を持って、期限までに提出しましょう。
4.2e-Taxでインターネットで提出する方法
2つ目の方法は、『e-Tax(イータックス)』でインターネットで申告する方法です。e-Taxは、国が運営しているサービスで、正式名称は「国税電子申告・納税システム」といいます。

このe-Taxを利用して、確定申告を行う手順を説明します。
4.2.1.必要なものを準備する
e-Taxを利用するためには、次の3点が必要です。
①電子証明書
「個人番号カード(マイナンバーカード)」が電子証明書になります。以前に発行されていた住民基本台帳カードも、電子証明書の有効期限が残っていれば使うことができます。全員に送られる「通知カード」では申告ができないので、別途、「個人番号カード」の交付を申請する必要があります(「個人番号カード」の交付申請の方法については、『マイナンバーカード総合サイト』をご参照下さい)。
②ICカードリーダライタ
先ほどの「個人番号カード」を読み取るための機器で、家電量販店等で3,000円程度で購入できます(利用可能な機器については、『マイナンバーカードに対応したICカードRW一覧』でご確認下さい)。
③パソコン
インターネットに繋がったパソコンが必要になります。パソコンのスペックやOS、ブラウザ等のバージョンについては、『システム利用のための環境等』をご参照下さい)。
4.2.2.e-Taxの開始届出書を作成する
e-Taxを利用するためには、「電子申告・納税等開始届出書」(開始届出書)を事前に提出し、利用者識別番号を取得する必要があります。開始届出書は、『e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー【事前準備】』で作成して提出できます。
開始届出書の提出が完了すると、利用者識別番号が通知されます。開始届出書をオンラインで提出した場合は、利用者識別番号がオンラインで即時に通知されます。また、書面で提出した場合は、約1週間後に「利用者識別番号等の通知書」が税務署から郵送で送られてきます。
4.2.3.e-Taxで確定申告書を提出する
ここまでの準備が整ったら、いよいよ確定申告書を電子送信します。送信は、下記の手順で行います。流れだけ確認して、詳しい操作方法は、『e-Tax操作マニュアル』を参考にして下さい。
1.ルート証明書の組み込み
↓
2.e-Taxソフトのインストールと起動
↓
3.利用者ファイルの作成
↓
4.利用者情報の登録
↓
5.申告データの作成
↓
6.申告データへの電子署名
↓
7.申告データの送信
↓
8.受付結果の確認
まとめ
この記事では、FXの税金の知識と確定申告書の書き方について具体的に解説しました。
書類の記入方法は初めは難しく感じるかもしませんが、一度コツをつかんでしまえば意外と簡単で、やることは毎年同じなので、徐々に慣れていきましょう。わからない箇所は税務署に問い合わせるれば丁寧に教えてくれますので、曖昧にせず、正確に記入しましょう。