TOB(株式公開買付)とは|友好的・敵対的の違いと買収防衛策を徹底解説

株式市場には、TOB(株式公開買付)という用語があります。これは、企業が買収する時に使う手法の一つです。

では、このTOBは、一体どのようなものなのでしょうか。また、TOBをしかけられた企業の株価はどのような影響を受けるのでしょうか。それを知ることで、私たち投資家は自分の判断でその企業の株を買うことができます。

この記事では、TOBについて最近の事例を用いて詳しく解説していきます。

執筆者
遠藤 タカシ

遠藤 タカシ

Twitter@investerETで世界経済に対する見解を発信中!
世界中の株式、FX、商品先物を運用する兼業投資家。高校在学中に起業し経営の道へ。大学入学後に株式投資を開始し証券アナリスト資格を学びながら独自の手法を生み出す。その後は専業投資家、財産構築アドバイザーとして活動。運用では日々数億円規模の取引を行い、数々の金融ショックから資産を守り膨張させる。投資手法は、割安な銘柄を買う「バリュー投資」と、マクロ経済と時代の変化に着目した「パラダイムシフト投資」。お金にまつわる講師も務めた経験あり。好きなものはアニメと映画。

1.TOBとは

TOB(株式公開買付)は、対象の企業の株式を買い集めるために投資家に直接呼びかけ、結果的に買収、あるいは経営権を取得することを目的として行われる手法です。つまりこれは、対象企業の経営をコントロールするために使われます。

この企業を買収する、経営権を取得する場合、大きく分けて以下の2つの方法があるので理解しておきましょう。

  1. 証券市場内で買い進める方法
  2. 証券市場外でTOBにより買い集める方法

次にこれらのメリットとデメリットについて順番に解説します。

1.1.証券市場内で買い進める方法

証券市場内で買い進める方法を採用した場合、企業は対象企業の株を市場で買い進めます。

メリット

 

証券市場内で買い進めるメリットは、水面下で買い進めることができる点です。また複数の法人と連携して少しずつ買い進めていく方法もあります。

デメリット

 

買収するためには、50.1%以上取得する必要です。しかし、5%取得した時点で金融庁へ大量保有報告書の提出が義務付けられているため、何らかの意図で取得していると対象企業が警戒します。そして、買収の対策をされ、阻止されることがあります。これについては後述します。

1.2.証券市場外でTOBにより買い集める方法

証券市場外でTOBにより買い集める方法を採用した場合、TOBを投資家に向けて宣言します。投資家は提示された価格を見て株の購入の判断をします。TOBのような市場外取引とは、投資家に直接呼びかけ、証券市場を通さないことをいいます。

メリット

 

TOBをしかける企業が提示した価格通りに株を買えるため、予算が決められます。TOBが成立するまでお金を払い込む必要がなく、不成立ならコストはかかりません。そのため、リスクは少ないといえるでしょう。

デメリット

 

対象企業が反対している場合、買収防衛策を取られたり、対抗的なTOBが実施される可能性があります。

1.3.TOBは持ち株比率の理解が不可欠

市場で買い進める方法とTOBで買い集める方法の違いがわかったところで、次に企業がどのくらい取得すれば企業を買収できるのか等、詳しく見ておきましょう。

そのTOBを理解する上で知っておかなければならない、とても重要な仕組みがあります。それが以下の表です。

持株比率 株主権限
100% 完全子会社化
50.1%以上 子会社化(取締役選任、決算承認等を単独で議決可能)
33.4%以上 拒否権
20%以上 関連会社化(連結対象化)

※この持ち株比率に応じた株主権限は、表に載せているもの以外にもありますが、ここではTOBに主に絡む知っておくべきものに絞って掲載しています。

企業が買収を目指す場合、対象企業の50.1%の取得を目指します。また、買収まで買い進めず、対象企業に対し影響力を持つなど関係強化を求めている場合は、33.4%の取得を目指すことがあります。

TOBという話があった場合は、どのくらいの持株比率を目指しているのかもIR等で必ず確認しましょう。それによってその企業の本気度や、株価への影響が変わってきます。

主なデメリットは、買収を実施する者が100%の株式取得を目指している場合、対象企業の株式をそのまま保有することができなくなるところです。

2.友好的TOBと敵対的TOBの違い

TOBの対象となっている企業の経営陣の賛成を得て実施するTOBを「友好的TOBといいます。

一方で、TOBの対象企業の経営陣の賛成を得ないで実施するTOBを「敵対的TOBといいます。

日本で行われるTOBは、友好的TOBがほとんどで、敵対的TOBの事例はそれほど多くありません。

2.1.友好的TOBの実例

最近の友好的TOBの事例では、ヤフーによるZOZOの買収が最も有名です。

これは、筆頭株主の前澤氏がZOZOが発行している株式のうち、37%の保有株式すべてを手放しヤフーが取得。それとは別に13%分をその他の株主からTOBで買い集めることで最終的に50.1%を達成させるというものです。つまりヤフーがZOZOを子会社化(買収)するという話です。

この友好的TOBの場合、事前にTOB対象企業から同意を得ている状態なので、スムースに事態が収束します。株価への影響はやや上昇程度で落ち着きました。以下がZOZOの株価です。

2.2.敵対的TOB実例

最近の敵対的TOBでは、2019年7月から始まったホテル事業を行うユニゾHD(3258)に対するHISが行ったことが注目を浴びています。

このような敵対的TOBの場合、対象企業の株価は、TOB価格が引き上げられるのではないかという思惑や、第三者が対抗TOBを仕掛けてくるのではないかという思惑などにより株価が変動しやすくなります。

では、HISがユニゾHDに対するTOBを発表した後の株価の動きを見てみましょう。

 

ユニゾHD(3258)に対するTOBでは以下のような経緯を辿り株価は急騰しました。

では買収戦争の中身を見てみましょう。

ユニゾHD(3258)買収戦争の時系列

7/10 HIS、3,100円で45%目標のTOB発表(5%)

8/6 米エリオット、大量保有報告書提出(5.51%)

8/14 米エリオット、買い増し(9.90%)

8/16 フォートレス(ソフトバンクG系)、ホワイトナイトとして4,000円でTOB発表

8/20 いちごアセットM、大量保有報告書(5.56%)

8/24 HIS、TOB「応募ゼロ」発表 一時撤退

9/5 フォートレス 公開買付代理人にSMBC日興証券を追加(当初は大和証券のみ)

9/25 米エリオット、買い増し(13.14%)

9/26 米バークレイズ・キャピタル大量保有報告書(5.08%)

※カッコ内はその時点での持株比率

上記の例で、HISは一時撤退と発表したものの、ソフトバンクG系のファンド、フォートレスのTOBが不成立に終わり、価格が低くなった場合に、再度TOBを実施する可能性を匂わせたIRを出しました。

ちなみに、いちごアセットマネジメントは、保有目的を「純投資」としており、複数のTOBの成り行きを第三者の観点からモニタリングすると発表しています。

このように企業・ファンドが多数参戦しています。この買収戦争はHISのTOBに対抗する形で荒々しく展開されています。

実際に敵対的買収戦争の場合は、事態が収束するまで株価が釣り上がっていきます。事態が収束する時は、TOBが完全に終わる時でしょう。

3.買収防衛策

敵対的TOBの対象となった企業は、しかけた企業に対して買収防衛策をとります。

当然、企業側にとっては経営権を奪われるかどうかにかかってくるので、必死に防衛策を練ります。

では、どのような買収防衛策があるのでしょうか以下をご覧ください。

買収防衛策 内容
ポイズンピル 新株を安く発行し、敵対企業の株式シェアを下げること
ゴールデンパラシュート 取締役の退職金の額を高額に設定しておくこと
ホワイトナイト 有効的な第三者(企業)に自社株を買収してもらうこと
パックマンディフェンス 自社を買収しようとする敵対企業に逆に買収をかけること
クラウンジュエル 価値ある事業や資産を第三者に譲渡して自社の魅力を下げること
セルフテンダーオファー 自分で自分の株式を取得し、市場の株式を減らすこと
ゴーイングプライベート 上場企業から、非公開企業に変わってしまうこと

ここでは、上記の中でも買収防衛策として有名なポイズンピルとホワイトナイトについて解説します。

3.1.ポイズンピル

ポイズンピルは、別名ライツプランと呼ばれ、敵対的買収に対抗するために、企業側が防衛手段として用意する最も知名度ある戦術です。

敵対的買収を受けた企業が、市場価格よりも低い価格で新株を発行し、敵対者の持ち株の比率を下げる防衛策です。

つまり、敵対者の株式比率が過半数を超えないように新株を発行するということです。なので、敵対的TOBの対象企業は、新しい株を粗製濫造することで、結果的にしかけた敵対者の持つ株式比率を下げていきます。

しかし、ポイズンピルは既存株主の正当な権利を踏みにじる可能性があるため、会社の最高決定機関である株主総会で、特別決議を経なければ実行が難しいという側面を持っています。また、ポイズンピルを行うための特別決議には、会社の株式比率の三分の二以上(66.7%以上)が必要なので、実際のところポイズンピルの発動は困難といえます。

3.2.ホワイトナイト

敵対的買収を仕掛けられた企業の経営陣が、友好的な第三者の企業に買収してもらうことで会社を守ろうとするものをいいます。先ほどご紹介したユニゾHD(3258)のTOBではソフトバンクG系のファンド、フォートレスがホワイトナイトとして登場しました。

ホワイトナイトは、多くの場合資金力が足りない場合に現れます。そして、ホワイトナイトの役割を担う企業は、現在提示されているTOB価格よりさらに高い価格を提示することで投資家を自陣に呼び込みます。

4.投資家がTOBに応募する方法

投資家がTOBに応募するためには、買付代理人(証券会社)の口座を持っている必要があります。買付代理人の口座を持っていなければ、TOB価格で買うことができません。

買付代理人は、TOBを発表した主体によって違います。

上記のユニゾの買収戦争を例に解説をすると、フォートレスの4,000円のTOBに応募するためには、買付代理人である大和証券とSMBC日興証券の2社の口座どちらかを開設していなければなりません。もしまだ口座をお持ちでない場合は、新たに開設し、入金をしてから応募する必要があるのです。

もし対象企業の株式を既に保有していて、TOBの応募をする場合は、買付代理人の証券口座に株式を預けることで応募手続に進むことができます。実際の手続きは、買付代理人のお取引口座の有無ならびに、対象株式等のお預かりの状況により以下のケースに大別されます。

以下がそのイメージです。

買付代理人の証券会社の口座を持っていて、その口座に対象株式が預かりになっている場合は、「公開買付応募申込」を行うだけで済みます。

公開買付応募申込は、買付代理人のホームページ上で、銘柄毎に申込数量を入力して応募するだけです。

一方、買付代理人の証券会社の口座を持っているものの、他の証券会社に対象株式が預かりになっている場合は、まず、口座振替手続を行い、対象株式を買付代理人の証券会社の口座に移動する必要があります。その上で、公開買付応募申込みを行います。

買付代理人の証券会社の口座を持っていない場合、まず、買付代理人の証券会社の口座開設を行い、次に口座振替手続を行い、対象株式を買付代理人の証券会社の口座に移動します。その上で、公開買付応募申込みを行います。

いずれの場合も、TOBに応募した場合、そのTOBが成立すると、買取りされた株式の対価が支払われます。

5.投資家がTOBで利益をあげる方法

それでは、TOBが発表された株式を保有していない場合に、TOBが発表された株式の売買で利益をあげるにはどうすればいいのでしょうか。

ここでは、TOBが発表された株式の売買で利益をあげる方法を2つご紹介します。

5.1.全部買取のTOBのサヤ取り

これからご紹介する方法は、全部買取のTOBで、TOB終了後に金銭交付による強制取得が予定されている場合に使える方法です。マネックス証券の公開買付銘柄一覧において、「上場廃止予定(金銭交付予定)」との記載がある銘柄が対象になります。

全部買取のTOBでは、期間中、TOB価格より0.1%~0.5%くらい低い価格で推移しますので、市場で株を買ってTOBに応募すれば、0.1%~0.5%くらいの利益を出すことはできます。しかし、この利益の幅では、あまり魅力的ではありません。そこで、もう少し大きな利幅を狙います。

全部買取のTOBでは、TOB期間最終日の2営業日前から、株価が1%ほど下落することがあります。この株価の下落は、このタイミングで株を買っても、TOBの応募に間に合わないことによって生じます。

その株価下落のタイミングで、購入して、そのまま保有して金銭交付による強制取得されると、市場での購入価格と、TOB価格との差が利益になります

<事例紹介>

2017年2月10日にTOBが発表されたニッコウトラベル(9373)の場合

  • TOB価格は390円
  • TOB期間は2017年2月13日(月)から3月23日(木)まで

TOB期間最終日の3月23日の2営業日前の3月21日から23日まで3日連続して安値385円を付けています。

ここで、385円で株を買うと、TOBに応募することはできませんが、強制取得されて、5月10日に1株あたり390円の交付を受けることができます。

仮に、350円で買って390円の交付を受けると、1.4%の利益を出せたことになります。

5.2.ディスカウントTOBの逆張り買い

通常のTOBは取得する企業の株価に一定のプレミアムをつけて(経営に影響力を持つだけの割合の株式を取得する場合に支払う対価の上乗せ分)買い付けるのが一般的ですが、市場の株価よりも低い価格で買い付けるTOBを「ディスカウントTOB」といいます。

これは、特定の売り手からまとまった株式を買い付けるために利用されます。ディスカウント率は以下の計算式で計算します。

100-(TOB価格/TOB発表前の株価)×100

例えば、2018年7月10日に発表された、ヤフー(4689)の自社株に対するTOBの価格は、360円、発表前の株価が401円なので、

ディスカウント率は100-(360円/401円)×100=10%となります。

プレミアムがついているTOBは、株価の上昇要因になりますが、ディスカウントTOBは、株価の下落要因になることが多いです。

しかし、ディスカウントTOBが実施されたからといって、その株式の価値に変化が生じるわけではないので、株価の下落は一時的なものになることが多いです。

この習性を利用して、ディスカウントTOBが発表された後の株価下落局面で、株式を購入し、株価が戻ってきたところで売却するという方法で利益をあげることができます。

下記の表は過去1年間の主なディスカウントTOBの事例をまとめたものです。

  TOB価格 株価 割引率 発表後安値 発表後3ヶ月間の高値
ヤフー 360円 401円 10% 361円 435円
フレンドリー 100円 207円 52% 195円 219円
コカコーラ 3,275円 4,005円 18% 3,855円 4,770円
三菱自動車 749円 835円 9% 734円 889円
国際チャート 258円 435円 41% 263円 330円

いずれの案件もTOB発表後、株価が下落し、その後株価が上昇していることがわかると思います。そのため、ディスカウントTOBが発表された後の株価下落局面で、株式を購入し、株価が戻ってきたところで売却すれば利益になります。

6.まとめ

TOBについて理解は深まりましたか?

ここでTOBのおさらいをしましょう!

  • 買収の仕方は、市場で買い進める方」とTOBで買い集める方法の2通りある。
  • TOBには友好的TOB敵対的TOBの2通りある。
  • 買収防衛策は複数あるが、その中でもポイズンピルホワイトナイトが有名。
  • 投資家がTOBに応募するためには決められた証券会社(買付代理人)の口座が必要。
  • 投資家がTOBで利益を上げる方法は、割安になった対象企業の「サヤ取り」と「逆張り買い」。

この記事でお伝えした内容を是非投資に活かして見てくださいね。きっと楽しく相場に迎えるはずです。

また、これを読んだ人の中から、TOBに冷静に対処でき、利益を出せる投資家が一人でも生まれてくれたら幸いです。

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