第1章 お金の土台 1-1・読む時間 約6分・最終更新 2026年10月28日
投資にいくら回せる?|毎月いくら残るかを知る、家計のざっくり把握のしかた


「投資を始めたいけれど、毎月いくらなら回してよいのか分からない」。そう思って、証券会社のページや投資の本を開いたまま止まっていませんか。
その答えは、投資の本ではなく、自分の家計の中にあります。このコースの最初の回では、毎月いくら残るかを知る方法をまとめます。家計簿をきっちりつけなくても、給与明細と通帳(ネットの明細)があれば、30分ほどでざっくりつかめます。
この回でわかること
- 投資に回せる額の上限が、どこから決まるのか
- 給与明細から手取りを知り、出ていくお金を固定費と変動費に分ける方法
- 毎月のお金を、先に取り分けて残す仕組みの作り方
結論
- 投資に回せる額の上限は「手取り − 毎月出ていくお金」です。まずこの差を知ります
- 出ていくお金は、毎月決まって出る固定費と、月によって変わる変動費に分けます。見直すなら、一度で長く効く固定費からです
- 残ったら回すのではなく、先に取り分けます。取り分けたお金は「使う」「貯める」「増やす・備える」の3つに分けて考えます
投資に回せる額は、家計から決まる
投資の話というと、「何を買うか」から始めたくなります。けれども、はじめての人が最初に決めるべきなのは、いくらなら投資に回しても暮らしが困らないかです。
投資したお金は、値上がりすることもあれば、値下がりすることもあります(くわしくはリスクとは「値動きの幅」のこと)。暮らしに必要なお金まで投資に回していると、値下がりしたときに、生活費のために売らざるをえなくなります。投資で一番多い失敗は、この「下がったところで売ってしまう」ことです(はじめての人のよくある失敗)。
だから順番は、次のとおりです。
- 毎月の手取りを知る
- 毎月出ていくお金を知る
- その差(毎月残るお金)を知る
- 残るお金の中から、生活防衛資金を貯める分と、投資に回す分を決める
この回では1〜3と、4のための「先に取り分ける仕組み」までを扱います。生活防衛資金の額は次の回で、投資に回す毎月の額は毎月いくら、どちらの枠でで決めます。
手取りを知る:給与明細の「差引支給額」を見る
会社員なら、給与明細を1枚用意します。見るところは、総支給額と、そこから引かれているお金です。
手取り = 総支給額 − (社会保険料 + 税金)
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の教材には、次のような例が載っています。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 総支給額(基本給・時間外手当・通勤手当) | 270,000円 |
| 社会保険料(雇用保険・健康保険・厚生年金保険) | 41,000円 |
| 税金(所得税・住民税) | 14,000円 |
| 手取り | 215,000円 |
総支給額が27万円でも、自由に使えるのは21万5,000円です。投資に回せる額を考えるときの出発点は、総支給額ではなく手取りです。40歳からは介護保険料も引かれるので、明細の「控除」の欄を一度見ておくと安心です。
ボーナスがある人は、毎月の手取りとは分けて考えます。ボーナスは額が決まっていないことも多いので、毎月の暮らしや毎月の積立をボーナスに頼らない形にしておくと、減ったときにあわてずにすみます。
自営業の人は、売上ではなく、経費や税金・社会保険料を払ったあとに手元に残るお金で考えます。月によって波があるなら、1年分を12で割ってならします。
出ていくお金を知る:固定費と変動費に分ける
次に、毎月出ていくお金を知ります。家計簿をつけていなくても、通帳やカードの明細を2〜3か月分並べれば、だいたいの姿は見えます。
出ていくお金は、2つに分けると整理しやすくなります。
| 中身の例 | |
|---|---|
| 固定費(毎月ほぼ同じ額) | 家賃・住宅ローン、水道光熱費、通信費(スマホ・ネット)、保険料、ローンの返済、サブスク・習いごと |
| 変動費(月によって変わる) | 食費、日用品・衣料品、交通費・ガソリン代、交際費・娯楽費、医療費 |
もう1つ、忘れやすいのが年に1回や数回だけ出ていくお金です。自動車税や車検、帰省、冠婚葬祭、家電の買い替えなどです。毎月の明細には出てこないので、1年分を思い出して12で割り、毎月の出ていくお金に足しておきます。これを入れずに「毎月これだけ残る」と考えると、その月に投資のお金を取り崩すことになりがちです。
見直すなら、固定費から
出ていくお金を見て「多い」と感じたら、見直すのは固定費からです。J-FLECの教材も、まず固定費、次に変動費の順で減らすことをすすめています。
- 固定費は、一度見直すと、その後は何もしなくても毎月効きます(スマホのプラン、使っていないサブスク、内容が重なっている保険など)
- 変動費は、毎日の我慢が要るので、続きにくい面があります
また、「必要なもの(ニーズ)」と「欲しいもの(ウォンツ)」を分け、欲しいものの中でも順位をつけると、削っても満足度が下がりにくくなります。
毎月残る額を知り、先に取り分ける
手取りと出ていくお金が分かったら、その差が毎月残るお金です。これが、生活防衛資金を貯めたり、投資に回したりできる額の上限になります。
ここで大事なのは、「月末に余ったら貯める・投資する」にしないことです。余ったお金を回すやり方は、思ったほど残りません。J-FLECの教材でも、お金に余裕ができたときに貯めるのは案外難しく、先に差し引くことがポイントだとしています。
教材の例では、手取り21万5,000円から、給与天引きや口座引き落としで先に1万円を差し引き、生活費は残りの最大20万5,000円でやりくりします。先に取り分ける方法には、次のようなものがあります。
- 勤め先の財形貯蓄など、給与天引きの仕組み
- 給料日に、貯める用の口座へ自動で振り替える(自動入金・定額自動振替など、銀行のサービス)
- 証券口座での毎月の積立設定(投資を始めてから)
最初から大きな額にする必要はありません。無理のない額で仕組みを作り、続けられたら増やしていくほうが、途中でやめずにすみます。
お金を3つに分けて考える
取り分けたお金は、何に使うかで3つに分けておくと、迷いにくくなります。J-FLECの教材の分け方です。
| 分け方 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 使うお金 | 日常生活に必要なお金 | 水道光熱費、通信費、食費、衣料品 |
| 貯めるお金 | 近い将来に使う予定のお金 | 車や住宅の購入、教育費、旅行 |
| 増やすお金・備えるお金 | 当面使う予定のないお金 | 老後のお金、大きなけが・病気への備え |
投資に向いているのは、3つめの当面使う予定のないお金です。数年以内に使う予定のあるお金は、値下がりしたときに待てないので、預金などで「貯める」側に置きます。
よくある質問
家計簿は、きっちりつけないとだめですか?
はじめは、きっちりでなくて大丈夫です。給与明細と、通帳・カードの明細を2〜3か月分並べて、固定費と変動費のだいたいの額が分かれば十分です。年に数回だけ出ていくお金を忘れずに足すことのほうが大切です。
毎月ほとんど残りません。投資はあきらめたほうがいいですか?
まずは固定費を見直して、毎月少しでも残る形を作るのが先です。残るようになったら、先に生活防衛資金を貯めます。投資は、そのあと少額からでも始められます。順番は借金の返済・預金・投資は、どの順番で考えるかでまとめています。
夫婦や家族の家計は、どう考えればいいですか?
手取りは世帯の合計で、出ていくお金も世帯でまとめて考えます。どちらかの収入が止まったときに暮らせるかどうかも、世帯で見ておくと、次の回の生活防衛資金を決めやすくなります。
毎月いくら残るかが分かったら、次は、収入が止まっても暮らせるお金「生活防衛資金」をいくら、どこに置いておくかを決めます(生活防衛資金:いくら、どこに置いておくか)。
出典:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「社会人として知っておきたいお金の話(若手層社会人向け)」2026年6月版(手取りの計算例、固定費と変動費、見直しの順番、天引きの例、お金を3つに分ける考え方。2026年10月28日確認)
この回のまとめ
- 投資に回せる額の上限は「手取り − 出ていくお金」。まず毎月いくら残るかを知る
- 出ていくお金は固定費と変動費に分け、見直すなら一度で効く固定費から
- 残ったら回すのではなく、先に取り分ける。お金は「使う」「貯める」「増やす・備える」に分ける
確かめ問題
Q1. 投資に回せる額の上限を決めるのは、何と何の差ですか?
答えを見る
手取りの収入と、毎月出ていくお金の差
投資に回せるのは、暮らしに使うお金を払ったあとに残る分だけです。まずこの差を知ります。
Q2. 支出を見直すとき、先に手をつけると効きやすいのは固定費と変動費のどちらですか?
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固定費
家賃・通信費・保険料・サブスクなどの固定費は、一度見直すと毎月ずっと効きます。
Q3. 「余ったら貯める・投資する」は、続けやすいやり方である。○か×か
答えを見る
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余ったお金を回すやり方は、なかなか残りません。給与天引きや自動の引き落としで、先に取り分けるほうが続きます。