第6章 株を知る 6-1・読む時間 約7分・最終更新 2026年10月28日
株とは何か|株価が動くしくみを、仮の会社の例でやさしく


「NISAの積立は始めた。でも、ニュースで聞く会社の株にも少し興味が出てきた」「株価って、だれが決めているの?」「業績がよかったのに株価が下がった、という話がよく分からない」。そんな疑問を持っていませんか。
第2部では、NISAで投資信託を積み立て、続け、使うところまでを見てきました(前の回:使うときのこと:取り崩し方と、売る順番)。ここからの第3部は「もう一歩」の話です。読まなくても、NISAの積立は続けられます。そのうえで、毎月積み立てている投資信託の中身でもある「株」を知っておくと、ニュースの見え方が変わります。
株の基本(会社の持ち主の一人になること、配当があること)は、投資とは何かで見ました。この回は、その先です。株を持つと何ができるのか、株価はどうやって決まり、何で動くのかを、仮の会社「A社」の例で見ていきます。
この回でわかること
- 株主になると受け取れるものと、持てる権利
- 株価は、取引所で「売りたい人」と「買いたい人」の注文が合ったところで決まること
- 株価を動かす3つのもの(会社の成績と見通し・世の中の動き・人の気持ち)
結論
- 株主は、持っている株の数に応じて配当を受け取れます。100株(1単元)以上なら、株主総会で議決権も使えます
- 株価は、取引所で売りの注文と買いの注文が合った値段で決まります。買いたい人が多ければ上がり、売りたい人が多ければ下がります
- 売り買いの量を動かすのは、会社の成績と見通し・世の中の動き・人の気持ちの3つです。1社の株は、たくさんの会社に分けた投資信託より大きく動きやすくなります
株主になると、何ができるのか
株を買うと、その会社の株主になります。株主ができることは、大きく2つです。
- もうけの分配を受け取る:会社は、もうけの一部を株主に分けることがあります。これが配当です。日本取引所グループ(JPX)の用語集では、株主は持株数に応じて利益の分配を受ける権利を持つ、と説明しています。たくさん持てば、受け取る配当も多くなります
- 会社の決めごとに参加する:会社のいちばん大事なことは、株主が集まる株主総会で決めます。1単元(多くの会社は100株。次の回でくわしく見ます)以上を持つ株主は、株主総会で議案に賛成・反対の意思を示せます。これを議決権といいます
配当は、必ずもらえるものではありません。もうけが少なかった年は減ったり、出なかったりします。もうけを配当に回さず、新しい工場や研究に使って会社を大きくすることを選ぶ会社もあります。
株を持つ人の「もうけ」は2つ
株でお金が増えるのは、次の2つです。
- 持っている間に受け取る配当
- 買ったときより高く売れたときの値上がり益
この2つのうち、多くの場合に金額が大きく動くのは値上がり益のほうです。そして値上がり益は、株価がどう動くかで決まります。ここからは、その株価の話です。
株価は、だれが決めているのか
株価は、会社が決めているわけでも、取引所が決めているわけでもありません。売りたい人と買いたい人の注文が合ったところで決まります。
株の売り買いは、証券取引所(株を売り買いする市場。日本では東京証券取引所など)で行われます。私たちは証券会社を通じて「この株を、この値段で買いたい」「売りたい」という注文を出し、その注文が取引所に集まります。
JPXの説明では、取引所の売買は次のルールで決まります。
- 売りの注文は、安い値段のものが先
- 買いの注文は、高い値段のものが先
- 同じ値段なら、先に出した注文が先
そして、いちばん安い売りの注文と、いちばん高い買いの注文の値段が合ったところで、売買が成立します。その値段が、その時点の株価です。
仮の会社「A社」で考える
たとえば、A社の株がいま1,500円で売り買いされているとします(仮の例です)。
- A社の新しい商品がよく売れそうだ、というニュースが出た → 「1,520円でも買いたい」という人が増える → 売る人は高い値段でも売れるので、株価は上がっていく
- 反対に、A社の工場が止まった、というニュースが出た → 「1,480円でもいいから売りたい」という人が増える → 株価は下がっていく
買いたい人が多いか、売りたい人が多いか。株価は、この綱引きで毎日動いています。
1日に動ける幅には上限がある
株価が一気に動きすぎないよう、取引所は1日に動ける幅(制限値幅)を決めています。前の日の終わりの値段(基準値段)によって幅が決まっていて、たとえば基準値段が1,500円以上2,000円未満なら、上下400円までです(JPX)。上限まで上がることをストップ高、下限まで下がることをストップ安といいます。
株価を動かす3つのもの
では、売り買いの量は何で変わるのでしょうか。大きく3つあります。
1. 会社の成績と、これからの見通し
いちばんの元になるのは、会社がどれだけもうけているか、これからもうけそうか、です。もうけが増えそうな会社の株は、配当も増えそうですし、会社の値打ちも上がりそうなので、買いたい人が増えます。
ここで大事なのは、株価は「今の成績」よりも**「これからの見通し」**で動きやすいことです。たとえば、A社のもうけが前の年より増えても、みんながもっと増えると思っていたなら、「思ったほどではなかった」と売られることがあります。「業績がよかったのに株価が下がった」というニュースは、たいていこれです。
会社の成績は、決算書という書類で発表されます。読み方は2回あとの会社の成績表:決算書をざっくり読むで見ます。
2. 金利・景気・為替など、世の中の動き
A社に何もなくても、世の中全体の動きで株価は動きます。景気がよくなりそうなら多くの会社のもうけが増えそうなので、株全体が買われやすくなります。金利や円安・円高も、会社のもうけや、株を買う人の考えに影響します。これは第7章(金利が上がると株はどうなるなど)でくわしく見ます。
3. 人の気持ち
株を売り買いするのは、個人や、機関投資家(年金や保険会社など、大きなお金をまとめて運用する会社)など、結局は人です。不安なニュースが出ると、会社の中身が変わっていなくても、まとめて売られることがあります。反対に、話題になった会社の株が、成績以上に買われることもあります。短い期間の株価は、この気持ちの動きに大きく左右されます。
1社の株は、大きく動きやすい
毎月積み立てている投資信託は、何百、何千という会社の株に分けて投資しています。1社に悪いことがあっても、ほかの会社がそれを薄めてくれます。
1社の株を持つと、その会社のよいことも悪いことも、そのまま自分のお金に響きます。だから1社の株は、投資信託より値動きが大きくなりやすいのです(値動きの幅についてはリスクとは「値動きの幅」のこと)。個別の株で大きく失敗しないための考え方は、個別株で大きく失敗しないためにで見ます。
会社の大きさは「時価総額」で見る
株価が高い会社が、大きな会社とはかぎりません。株価は、会社が発行している株の数によって変わるからです。会社の大きさを株の市場の目で見るときは、時価総額を使います。
JPXの用語集では、時価総額は「株価に株式数を乗じたもの」です。株価×株の数で、その会社の株を全部合わせた値打ちが分かります。
たとえば、株価1,500円のA社と、株価3,000円のB社があるとします(どちらも仮の例です)。A社の株の数が1,000万株、B社が200万株なら、時価総額はA社が150億円、B社が60億円です。株価はB社のほうが高くても、会社の値打ちはA社のほうが大きいことになります。
株価が「高い」「安い」は、株価の数字だけでは決まりません。会社のもうけや持っている財産とくらべて高いか安いかを見るものさしは、割安・割高のものさし:PER・PBR・配当利回りで見ます。
よくある質問
個別の株も、NISAで買えますか?
買えます。NISAの成長投資枠では、個別の会社の株にも投資できます(金融庁)。成長投資枠は年間240万円までです。つみたて投資枠で買えるのは、決まった条件を満たす投資信託などです(NISAのしくみ)。
配当が多い会社の株を選べば、損はしませんか?
そうとはかぎりません。配当を受け取っても、株価がそれ以上に下がれば、全体では損になります。また、配当はもうけが減れば減ったり出なくなったりします。配当の多さを株価とくらべて見る方法は、割安・割高のものさしで見ます。
株価が何で動くかが分かれば、上がる株を当てられますか?
当てられるとはかぎりません。会社の成績や見通しは、たくさんの人がすでに知っていて、株価に入っていることが多いからです。この回で知っておきたいのは「当て方」ではなく、「株価がなぜ動くか」のしくみです。それが分かると、値動きのニュースにあわてずにすみます。
株価がどう決まるかが分かったら、次は、実際にどうやって株を買うかです。100株という単位や、値段を決めて買う注文と決めずに買う注文のちがいを見ます(株の買い方:単元・指値と成行・手数料)。
出典:日本取引所グループ「売買成立の方法」(価格優先・時間優先の原則)、日本取引所グループ「制限値幅」、日本取引所グループ 用語集「配当」、同「議決権」、同「時価総額」、金融庁「NISAを知る」(いずれも2026年10月28日確認)。この回の「A社」「B社」とその数字は、説明のための仮の例です。実在の会社や銘柄をすすめるものではありません。
この回のまとめ
- 株主は、持っている株の数に応じて配当を受け取り、100株(1単元)以上なら株主総会で議決権を使える
- 株価は、取引所で売りの注文と買いの注文が合った値段で決まる。買いたい人が多ければ上がり、売りたい人が多ければ下がる
- 売り買いの量を動かすのは、会社の成績と見通し、金利や景気など世の中の動き、人の気持ち。1社の株は、投資信託より大きく動きやすい
確かめ問題
Q1. 株価は、会社が毎日決めて発表している。○か×か
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×
株価は、取引所で売りたい人と買いたい人の注文が合った値段で決まります。会社が決めるものではありません。
Q2. 株価1,500円で、発行している株の数が1,000万株の会社の時価総額はいくらですか?
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150億円
時価総額は「株価×株の数」です。1,500円×1,000万株=150億円です。
Q3. 会社の成績がよくても、株価が下がることはある。○か×か
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○
株価は「これから」への期待で動きます。成績がよくても予想より悪かった、世の中全体が下がった、といったときには下がることがあります。
もっとくわしく
- 株とは?株価が動く仕組みを初心者にも分かりやすく解説(基礎アーカイブ・2015年)
- 証券取引所とは|株式投資のための基礎知識(基礎アーカイブ・2016年)
- 時価総額とは?世界ランキングと仕組みを解説(基礎アーカイブ・2018年)
- 機関投資家とは|強み弱みと対抗策(基礎アーカイブ・2015年)
- 株の買い方:単元・指値と成行・手数料