FXの最大の特徴は、「レバレッジ(Leverage)」です。
この記事では、単なるレバレッジの用語解説や仕組みに止まらず、FX初心者がレバレッジについて理解しないままトレードを始めて、思わぬ損失を被らないためのコツをお伝えします。
ぜひ、最後までお読みいただき、FX取引に活かしていただければと思います。
執筆者
山下 耕太郎
一橋大学経済学部卒業。証券会社で営業、アナリスト、ディーラー職の経験を経て、個人投資家に転身。現在は、日経225先物やオプションを中心に、株式、CFD、FXを取引している。ブログ『日経225先物オプション奮闘日誌』を運営。ツイッターアカウントは「@yanta2011」。趣味は、ウィンドサーフィン。
1.レバレッジとは
まず最初に、レバレッジの仕組みから、日本国内のレバレッジの背景について学びましょう。
1.1.レバレッジ効果とは
レバレッジとは、「テコの原理」のことをいい、これを利用すると、FX口座に預けた資金の何倍もの取引を行うことができます。
例えば、1ドル=100円の時に「銀行」で1万ドルの外貨を買おうとすると、100万円の資金が必要になります。一方、「FX会社」に預けると、預けた資金の25倍までの運用ができます。つまり、1万ドル欲しい場合、わずか4万円の資金で買うことができるのです。
これを、「レバレッジ効果」といいます。

出典:楽天銀行
1.2.国内FXのレバレッジは最大25倍
レバレッジは、元手資金の何倍もの取引ができるということですが、レバレッジには上限があり、国内FXの場合、レバレッジは最大25倍と決まっています。
レバレッジが25倍の場合、10万円の元手で250万円の外貨を買ったり売ったりできます。そして、この10万円の元手のことを「証拠金」といいます(詳細は後述)。
レバレッジを活用すれば、少ない元手で大きな取引が可能になりますが、当然リスクもあります。それは、レバレッジを上げれば上げるほど、ハイリスク・ハイリターンになることです。
仮に、1ドル100円の時に、レバレッジ1倍で10万円でドルを1,000ドル買ったとします。この場合、1円上がれば1,000円の利益にしかなりません。
しかし、同じ1ドル100円の時に、レバレッジ25倍で10万円を250万円にすると、25,000ドル分買えることになります。この場合、1円上がれば25,000円の利益になります。逆に、1円値下がりしただけで、25,000円の損失になります。
ここで、1ドル100円の時に証拠金10万円で取引した場合、レバレッジによって利益がいくらになるか、表に整理してみましょう。
レバレッジ |
取引可能額 |
1ドル101円になった場合の利益 |
1倍 |
1,000ドル(10万円) |
1,000円 |
5倍 |
5,000ドル(50万円) |
5,000円 |
10倍 |
1,0000ドル(100万円) |
10,000円 |
25倍 |
2,5000ドル(250万円) |
25,000円 |
イメージはできましたか?
このように、レバレッジを上げると、その分だけ取引可能額も大きくなりますが、損益の変動も大きくなることを忘れてはいけません。しかし、レバレッジは必ず25倍にする必要がなく、適宜変更可能です。
取引経験や資金量に応じて1~25倍の中で設定し、きちんとリスクを管理するようにしましょう。なお、FXの資金管理については、次の記事がおすすめです。
≫ FXの資金管理で利益を上げるために必要なノウハウの全て
参考かつてFXにはレバレッジ規制がなく、FX会社によって100倍や300倍といった独自のレバレッジを定めていました。しかし、2008年のリーマンショックで大きな損失を出した投資家が多かったので、投資家保護のために法律が改正されました。
具体的には、2010年に50倍、2011年に25倍と下がっていき、現在に至ります。しかし、株式投資の信用取引のレバレッジは約3.3倍ですので、FXはそれと比べたらまだ高いといえます。
2.証拠金の種類
この章では、レバレッジの仕組みを理解するために重要な「証拠金」について説明します。
まず、FX取引を始めるには、FX口座に資金を預け入れる必要がありましたね。この元手のことを「証拠金」といい、担保金のようなものです。そして、この証拠金には、
の2種類があります。どう違うのか、詳しく解説していきます。
2.1.必要証拠金は最低限必要となる担保金
必要証拠金とは、ポジションを取るために最低必要となる資金のことです。必要証拠金は、通貨ペアによって異なり、計算式は、次のようになります。
必要証拠金 = 為替レート × 通貨数 × 4%
最後の「×4%」はレバレッジ比率25倍のことで、「÷25」と表す場合もあります。
そして、1万通貨単位での必要証拠金の目安は、次の表のようになります(2019年2月時点)。
通貨ペア |
為替レート |
必要証拠金 |
米ドル/円 |
110円前後 |
44,000円 |
ユーロ/円 |
125円前後 |
50,000円 |
豪ドル/円 |
78円前後 |
31,200円 |
英ポンド/円 |
143円前後 |
57,200円 |
ユーロ/ドル |
1.14前後 |
45,600円 |
上の表は1万通貨のFX会社の場合ですが、1,000通貨単位のFX会社だと、必要証拠金は10分の1で済みます(参考:「FX口座おすすめ10社を徹底比較!億トレーダーのレビュー付き」)。
このように、必要証拠金は通貨ペアごとに異なります。そのため、自分が取引しようと思っている通貨ペアを売買するにはいくら必要なのかを確認しておくといいでしょう。
調べ方は簡単で、FX会社のホームページに書かれていることが多いです。ヒロセ通商の場合、こちらのページの「ヒロセニュース一覧」の中に、「必要証拠金一覧のお知らせ(○月○日~○月○日適用分)」というニュースが定期的に流れるので、そこのPDFファイルから確認できます。
2.2.有効証拠金はトレードできる余力金額
有効証拠金とは、証拠金にポジションの含み損益を反映させたもので、あといくらトレードに回すことができるかという余力を表します。計算式は、次のようになります。
有効証拠金 = (必要)証拠金 – 含み損益
例えば、必要証拠金が10万円で、含み益が2万円の場合、有効証拠金は12万円となります。
2.3.証拠金維持率で安全度をチェック
証拠金維持率とは、必要証拠金に対する有効証拠金の割合のことで、簡単にいうと、あなたがどれぐらい危険な水準でトレードをしているかを示す値です。この数字が高ければ高いほど安全です。計算式は、次のようになります。
証拠金維持率=有効証拠金÷必要証拠金×100
例えば、証拠金10万円でドル円を1万通貨保有していて、含み益が2万円あった場合の有効証拠金は、12万円になります。ドル円1万通貨の必要証拠金は44,000円なので、この場合の証拠金維持率は、次のように計算できます。
証拠金維持率 = 120,000円 ÷ 44,000円 × 100 = 272%
ここで、証拠金維持率とレバレッジの関係を整理してみましょう。
レバレッジ |
証拠金維持率 |
1倍 |
2,500% |
2倍 |
1,250% |
5倍 |
500% |
10倍 |
250% |
25倍 |
100% |
先ほど、証拠金維持率は高いほど安全とお伝えしました。レバレッジを1倍から25倍に上げていくと、証拠金維持率は100%に下がっていきます。そして、証拠金維持率が100%を切ると、追証(追加で資金を入れること)やロスカットに引っ掛かります。
次の章では、FXのロスカットについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
3.FX口座10社の証拠金維持率を比較
FXは、レバレッジを上げれば大きな利益を狙えますが、損失も大きくなるとお伝えしました。そこで、証拠金維持率があるレベル以下に達した場合、更なる損失の拡大を未然に防ぐために、ポジションを強制的に決済する制度があります。これを「ロスカット」といいます。
このロスカットのルールがないと、預け入れた資金(証拠金)を全部失うばかりか、追加で資金を払わなければなりません。ただし、ロスカットルールがあるからといって、自分で損切りしなくていいということではありません。
ロスカット・ルールにより、最低限の資金は保たれます。ただし、相場変動が大きい場合は、預けた資金以上の損失が発生する可能性があるので、注意しましょう。
そして、このロスカット・ルールは、FX会社によって証拠金維持率が異なります。
主なFX会社の証拠金維持率を確認してみましょう。比較したのは、次の記事で紹介している10社です。ここに書いてある証拠金維持率を下回った場合、ロスカットが執行されます
≫ FX口座おすすめ10社を徹底比較!億トレーダーのレビュー付き
※外為どっとコムは、2019年1月26日より100%~50%の間で10%刻みに設定
このように、証拠金維持率は各社異なります。しかし、ロスカットが50%の会社でも、100%を割り込むと、必要証拠金を維持するために追加の資金(追証)を入れる必要が出てきます。
ロスカットや追証に引っ掛からないためには、資金を多めに入れておく必要があります。初心者の場合は、証拠金維持率は500%以上(レバレッジ5倍以下)であることが望ましいです。
4.手法別のおすすめレバレッジ倍率
レバレッジは、トレード経験に応じて適切な倍率を決める考え方もありますが、取引手法によってレバレッジを変えて、リスクをコントロールする方法もあります。
次の2つの投資手法について、おすすめのレバレッジの目安を考えてみましょう。
4.1.スキャルピングは最大10倍
超短時間で数pips(ピップス)の利益を繰り返し狙うスキャルピングは、損切りをしっかり行えば、損失の幅を限定することができます。その分、少ない資金でもレバレッジをかけて大きく稼ぐことも可能です。
適切なポジション管理をし、損切り注文を必ず設定するようにすれば、高レバレッジでも問題ありません。しっかりリスク管理できる投資家にとっては、少額の資金で大きな利益を狙えるレバレッジは、強い味方になってくれます。
ただし、スキャルピングの場合でも、25倍のフルレバレッジをかけるのは控え、最大でも10倍程度を目安にするといいでしょう。
4.2.スワップポイント狙いは最大3倍
スワップポイント狙いは、あくまでもインカムゲインが目的なので、大きくレバレッジをかける必要はありません(参考:「スワップポイントとは|FX初心者が失敗しないために知っておくべき全知識」)。
レバレッジをかけるほど多くのスワップポイントをもらえますが、相場が下落した場合、ロスカットに引っ掛かってしまいます。
スワップは、長期でポジションを維持することが基本になるので、ロスカットになるようなポジションを持つべきではありません。そのため、スワップによる運用は、出来ればレバレッジをかけずに1倍で、最高でも3倍程度に抑えることをおすすめします。
スワップ運用でレバレッジをかけることがいかにリスクが高いかは、次の記事にわかりやすく書かれているので、ぜひお読みいただければと思います。
≫ FXのスワップ運用で初心者が大損する5つの理由
まとめ
少ない資金で大きな利益を狙えるレバレッジは、FXの大きな特徴です。
高過ぎるレバレッジは避けるべきですが、損切り注文を入れる、適切なポジション量にするなどのリスク管理をしっかり守れば、レバレッジは強い味方になってくれます。
この記事が、みなさまの今後のFX取引の参考になれば幸いです。