「暴落はチャンス!」は本当か?
· 増田 丞美

この記事は2022年に公開したアーカイブ記事です。制度・数字・サービスの内容は当時のものです。
次のSQは2026年11月13日、取引最終日は2026年11月12日です。SQ日カレンダーを見る →
興味深いデータがあります。
“Compounding Capital Advisors”
が提供しているデータによると、米国株式マーケットではは想像以上に頻繁に急落・暴落が起きているのが分かります。
株式マーケットの下落は株式投資家にとって愉快なものではありませんが、それは決して稀な出来事ではなくごく普通に起きています。それも思っている以上に頻繁に。
マーケットの急落・暴落はチャンス!
以下のデータは1928年以来の米国株式マーケットの歴史に基づいています。
それによると、
S&P500は1.6年毎に高値から10%の下落を見せています。
同指数は4年毎に部マーケットの目安とされる同20%の下落、10年毎に30%、さらに、14%毎に同40%もの下落を見せています。
思っていた以上に頻繁に且つ大きな下落を見せているのに驚かれると思います。
しかし、それ以上に驚異的なのは株式マーケットの回復力です。そのような数々の急落・暴落を経験しても新高値を更新してきたのは凄いことです。
以上のことから、「マーケットの急落・暴落はチャンス!」というのは真実だというだけではなくマーケットに臨む上での自信になるだろうと思います。
マーケットは今年に入ってS&P500ベースですでに10%以上下落し、また、ナスダック指数ベースでは高値から20%以上の下落を見せました。「今、チャンスか?」と問われれば、私は長い目で見ればチャンスであろうと感じています。多くの人たちはそのように感じていないかもしれません。私はこの先にS&P500がさらに10%下落しようとも今がチャンスというスタンスととっています。オプションマーケットを見ればチャンスと言わざると得ない要因(根拠)を多く見出すことができます。
例えば、SPYはS&P500に連動している株式(株式と同じ仕組みなので株式とみなします。)です。それには長いオプションがあります。2024年満期のオプションがあります。現在の株価水準の2分の1の権利行使価格のオプションが現在でも取引できるのです。それによって十分な収入を得ることができます。これは今年株価が大幅に下落したことでもたらされた恩恵です。
ナスダック100指数に連動している株式もあります。それはすでに高値から20%も下落しています。さらに、20%下落した時の水準をもとに今からオプションを利用して取引して収入を稼ぐことができます。
冒頭の質問に戻ります。
「暴落はチャンス!」は本当か?
イエス、それは本当です。
それだけではありません。オプションマーケットは、とりわけ、宝の山になります。
オプションは収入を得る最強の武器
オプションを株式や先物あるいは通貨(FX)の売買のように売りと買いの差額によって利益を上げるための商品としてみるとこれほど難しいものはありません。
一方、オプションを金利収入や利息収入を得る債券投資や定期預金としてみれば収入を得るための最強の武器になります。私が勧めるオプションはまさにそれです。
株価変動を一切気にせずに長くロール(月を跨いだ乗り換え)を繰り返していくととっても大きな収入が蓄積されていきます。
オプションの場合、管理して収入を分けてみないとそれが見えません。そのため、株式の売買のように“相場“と区別がつきにくいのです。それを区別して時間から入る収入を管理していけばオプションの優れた点やオプションの凄さに気づきます。
例えば、ZYXというシンボルの銘柄があります。
株価は現在36ドルです。この株式を100株36ドル(1株あたり)で買って期限1ヶ月の36コール(権利行使価格36ドルのコールオプション)を1単位売ると400ドル取得できます。その後の変動に関係なく400ドルは収入として手に入れることができます。1ヶ月後に30ドルまで下がってしまったとします。それでも400ドルは手に入れたままで収入です。
株式の保有分は36ドルで購入したので600ドルの評価損になっています。そのまま放っておくとそれ以上の収入が入らないのでさらに期限が1ヶ月の30コールを売ります。このとき300ドル取得したとします。株価は保有したままなので30コールを得ることで得た300ドルは確実に収入として残ります。
さらに1ヶ月後に株価が25ドルに下がっても同じです。その時は25-コールを売ります。今度は200ドルを手にしました。
今度は株価は30ドルまで回復したとします。この時に25コールは権利行使され保有していた株式100株を手放します。1株あたり36ドルで買った株式を同25ドルで売り差額11000ドルの実現損です。コールからの収入の合計は900ドルです。
しかし、ここでさらに、株式を100株25ドルで買い、1ヶ月の25コール売り200ドル手に入れます。これをずっと繰り返し最終的に株価が上がっていくとどうなるか・・・・・収入が株価の損失を上回り収入が蓄積していくことになるでしょう。
簡単なオペレーションです。継続していく根気と収入を管理することが最も重要なポイントです。
以上のことはプットを利用してもできます。
オプションは配当よりずっと高い収入を受け取れる
ここまでオプションとオプションの優れた機能や魅力について述べました。
アメリカは世界で最もオプションマーケットが発達しています。
株式オプションは米国ではポピュラーで多くの投資家がオプションを取引しています。オプションには収入を生み出す機能があり、配当よりもずっと高い利率の収入を受け取ることができます。
日本に居住している日本人でもアメリカのオプションマーケットに容易にアクセスすることができます。しかし、オプションは日本では馴染みがなく多くの日本人にとってとっつきにくく難解な金融商品であろうというイメージが定着しているかもしれません。
そこで実質的には“オプション“であるのに仕組みとして株式と同じように作られ株式と同じ方法で取引できる証券を紹介します。そのような証券は、日本人投資家の間でもよく知られているETF(“Exchange-Traded Fund”:「上場投信」)です。
ETFの詳細な仕組みは知らなくてもそれが株式銘柄と同じように扱え、株式と同じように売り買いできることは知っていると思います。数量も「株数」で表示され、価格も「株価」と同じように扱うことができます。
そのようなETFの価格(株価)を特定の株価指数に連動させたり、同株価指数と逆の変動を見せるように設計された(作り変えられた)ETFもあります。さら、同株価指数の変動の大きさを変えて例えば変動率を元の株価指数の3倍に作り変えられたETFもあります。
例えば、ABCというシンボルのETFがあるとします。
ABCは米国株価指数ダウジョーンズに連動するETFです。
XYZはABCの逆に連動し変動率は3倍です。例えば、ABCの株価が前日比1%上昇したとします。XYZの株価は前日比3%下落します。反対に、ABCの株価が前日比1%下落するとXYZの株価は同3%上昇します。XYZはABCに対して逆連動型3X(変動率3倍)のETFです。
もう一つの例を挙げます。
上述の通りABCは米国株価指数ダウジョーンズに連動するETFです。
ZYXはABCの同じ方向に連動し変動率は3倍です。例えば、ABCの株価が前日比1%上昇したとします。ZYXの株価は前日比3%上昇します。反対に、ABCの株価が前日比1%下落するとZYXの株価は同3%下落します。ZYXはABCに対して順連動型3X(変動率3倍)のETFです。
上述のXYZやZYXはETFの仕組みを利用して株式として設計されています(作り変えられています)が、実質的にはオプションです。数学的原理を利用して価格変動の方向や変動の方向が意図的に作り変えられているのです。XYZはABCのプットオプション、一方、ZYXはABCのコールオプションのそれぞれの原理を利用して株価が上述のように変動するよう作り変えられました。
以上をまとめると、
XYZ = ABCのプット
ZYX=ABCのコール
プットやコールではなくそのようなETFを利用することで一定の範囲でオプションと同じ効果を出すことができます。
例えば、
ABC(米株価指数に連動しているETF)を買って、株価下落時に局面をヘッジするために通常はABCのプットを買うところを、その代わりに、XYZを買うことでプットと同じ効果を出せます。
ABCの株価が上がることを予想しているときに、限られた金額で3倍の”レバレッジ”(限定された資金でより大きな利益を期待した取引効果)の効いたコールを買う代わりZYXを買うことができます。
「“本物の“オプション」とは違いがありますが、上記のXYZやZYXには「“本物“のオプション」にはない利点もあります。第一に、期限がないことです。全てのオプションには期限があります。一方、そのようなETFには期限がありません。第二に、そのようなETFは1株から取引ができるので非常に限られた資金で取引ができます。
XYZとZYXの2つを組み合わせてコール/プットの組み合わせに類似した取引もできます。
アメリカではそのようなETFも多く開発され活発に取引されています。
長期的に現金収入や資産の増加をもたらす“仕組み“
米国の特殊なETFに触れました。
株式と同じように取引できるように設計された証券で中身はオプションです。
なぜそのようなことが可能なのか。それは数学の技術によるものです。
オプションを難しく考えずに広く「数学的な技術が施された有価証券」
(“securities”: 「セキュリティズ」)とみなすといいでしょう。
そして、相場(売り・買い)の対象物(株式)ではなく長期的に現金収入や資産の増加をもたらす“仕組み“とみなすといいでしょう。そして、事実、そのように作られているのです。
例えば、前回掲げたSDOWはDIA(米国株価指数ダウジョーンズ連動型ETF)のプットオプションとして設計されDIAの株価と反対方向に変動します。すなわち、実際に、DIAのプットを買う代わりにSDOWを買うことで同じ効果を出すことができます。
では、DIA のプットを売ってプレミアム収入を稼ぐ代わりに、SDOWを売ることができるでしょうか。
結論を先に言えば、それが可能なのです。
一見して、「SDOW をショートする」ことは“株の空売り“に類似しておりDIAの「プット売り」によってプレミアム(現金)収入を得るような行為には見えません。図解して“SDOWショート“によって現金が入る仕組み(キャッシュフロー)とSDOWのメカニズムとDIAとの関係が見えれば、それ(“SDOWショート“)が「DIAプット売り」と原理的に同じであることに気づくと思います。
株式のショート(空売り)は通常リスクの高いと考えられ多くの投資家に敬遠されていますが、“SDOWのショート“を「DIAのプット」とみなし、「プット」売りの原理を理解すれば、そのようなショートの行為について積極的に取り組んでみたいと思われるかもしれません。
まず、そのようなETF(仕組みとしては株式と同じ)のショートによって現金を受け取ることができます。それは「プット売り」によってプレミアム(現金収入)を受け取るのと同じです。
プットと現金の交換(スワップ)をETF と現金の交換(スワップ)と同じようにイメージするとカラクリが見えてくると思います。
さらに、上記例のSDOW(価値がDIAの株価と反対方向に変動するETF)は長期的にゼロに向かうということを知っておくといいでしょう。
SDOWは、実質的に且つ本質的に、「DIAプット」と同じです。SDOWが実際の「DIAプット」より優れている点をあげると期限がない、より限られた資金で実行できるという点です。
さらに、SDOWにもオプションがあります。それはいわば、「DIAオプション」のオプションです。
この記事を書いた人
増田 丞美
現在、WBP,LLC/Wish & Brains Partners代表(CEO)兼社長。
「オプション・キャッシュフロークラブ」主宰。
米国コロンビア大学を卒業後、野村証券(東京・ロンドン)、米国投資銀行モルガンスタンレー(ロンドン)などを経験。
現在、国内外の事業会社の経営の傍ら、日本において幅広い個人層にオプションの実践を指導している。
オプションに関する著書・訳著多数。





