ROA(総資本利益率)とは|投資家なら知っておくべき重要指標
(更新 ) · タカシ

この記事は2015年に公開したアーカイブ記事です。制度・数字・サービスの内容は当時のものです。
あなたは、企業の株を安心して買えていますか?
当たり前かもしれませんが、株式投資は、大きく利益を得られる一方で、大きく損をするリスクもあります。
そこで、ROAを知っておくことで企業の経営状況がわかり、よりリスクを透明化した上で投資ができるようになるでしょう。
また、私たち投資家は、精神力を維持することも必要です。ROAは、冷静な視点で投資を行うことにも役立ちます。
これからお伝えする分析方法を使って、あなたも堅実な投資を実現させましょう!
目次
1. ROA(総資本利益率)とは
ROA(Return on assets = 総資本利益率)とは、企業業績を分析するときに用いる重要な指標で、資産効率の良さを示します。これは、一般の個人投資家から、証券会社・運用会社に所属する機関投資家やアナリストまで、幅広い人たちから重要視されています。
なぜなら、ROAを分析することで、企業が「過去の投資をどれだけ利益に結びつけることができているか」が分かるからです。投資家にとっては、ROAを知ることで、手堅い投資を行うことができます。
効率よく利益を生み出せている企業は、株価も上がりやい傾向にあります。そうしたことを徹底することで、総合的な投資リターンを実現することができます。
ちなみに私は、ROAだけで企業の投資判断を下すことはありません。複数の指標を用いて総合的に判断し、投資決定をします。
以下の表はその一例になります。

私は投資をするときに、このような表を作って企業に投資をするか決めます。なぜなら、多くの指標をもとに慎重な判断で投資することで、負けない投資(勝つ投資)に一気に近づくからです。
その中でも、重要な指標の一つであるROAについて、これからじっくり丁寧にご説明しますので、是非読み進めてください。
2. ROAの使い方
繰り返しになりますが、ROAは、「資産を使って投資した結果どれだけ利益を出せているか」、つまり「安定性」を調べる指標です。
これから、
- ROAを「使う場面」
- 方程式を利用した数値の「求め方」
- 実際の企業を例に計算をしてみる「実例」
の3つのセクションに分けてお伝えします。
2.1. ROAを使う場面
ROAはそれだけでも安定性の判断に役立てることができます。
例えば、大企業だからといって安定だと思い込んではいけません。ROAを通して、企業が安定しているかを調べることは、投資をしているあなたの資産価値が安定しているかを知ることに繋がります。ROAは、まさにそのためにあります。
ただし、企業を分析する際には、一つの指標だけでは不十分です。様々な指標を総合的に評価するべきです。
2.2. ROAの求め方
2.2.1.ROAの一般的な式
ROAは、「総資本」を分母に「純利益」を分子において計算します。以下がその式になります。

純利益は、利益から全ての費用を差し引いたもので、最終的にいくら利益が残ったのかを確認するための数字です。そこからは、税金も差し引かれています。そのため、グローバル企業と比較する際には、国によって税率が異なることから、分析の正確性に劣ります。
そこで私は、次の方法で国際比較を可能にし、正確性を上げることをしています。それは、「純利益」の代わりに「事業利益」を分子におく方法です。
以下でご説明しましょう。
2.2.2.グローバル企業分析もできるROAの式

※「持分法による投資利益」は、グループ会社を表す「連結」で考えた場合にのみ使います。
上記をご覧ください。
このように、私は事業利益を用いてROAを計算することを推奨しています。グローバリゼーションが高まり、企業間の国際比較が重要となった近年では、税引き前である事業利益を用いることが望ましいからです。実は、証券会社のアナリストも、こちらを使用しています。
一般的な見方ですが、ROAは5%を基準にその良し悪しを判断します。
5%を上回っていれば企業の財務の安定性が高いと考えることができますし、下回っていれば安定性が低いと考えることができます。あくまで一般的の基準ですので注意してくださいね。
それでは、総資本利益と事業利益の値はどこで知ればいいのでしょうか。
答えは、上場企業のホームページにあります。
上場企業のホームページには、「IR(投資家情報)」という項目があるので、アクセスしてみましょう(※企業によって多少表現が違うところがあります)。そして、「決算短信」、または「有価証券報告書」を開きます。
ROAの計算式の分母「総資本」にあたる項目は、貸借対照表の赤枠で示した箇所、「負債純資産合計」になります。期首・期末の平均値を使います。
ここでは日本M&Aセンター(2127)の財務諸表を使用します。

続いて、分子の事業利益にあたる項目は、以下の表に示したように、損益計算書の赤枠と青枠が重なった箇所になります。損益計算書の数値を利用する場合は期末の値を使います。

さて、これでROAの分子と分母の値がそろいましたね。
これらの数値をあてはめて計算をすることでROAを求めることができます。
3. ROAを使った分析を実例解説
それでは、ROAを使った方程式を学んだところで、実際に企業の財務諸表を使って分析をしてみましょう。
実例では、私が複数の指標を実際に用いて企業を分析してみます。なお、ここでは、
- 借入依存度
- 事業利益マージン
- 総資本回転率
という用語も出てきます。それらについても後ろで解説しているので、安心して読み進めてくださいね。
くらコーポレーション(2695)
分析には以下の3つを使います。
- ROA
- 借入依存度
- ROAの分解(事業利益マージン、総資本回転率)
使用財務諸表は、29年10月期有価証券報告書を使います。
3.1. ROA分析

ROA(事業利益÷総資産)は12.9%となります。
3.2. 借入依存度
企業の借入金がどのくらいの割合かを調べるために、「総資産に対する借入額」を出します(総資産は資産 から負債を引いた額)。

この借入依存度はROAと同じく分母が総資産になるので、一緒に求めることで健全性が見えてきます。
それでは計算してみましょう。

借入金には一般的に有利子負債項目が当てはまります。
有利子負債とは、会社に返済しなければならない利子を含む負債を指します。
- 借入金
- 社債
- 転換社債
- コマーシャル・ペーパー(CP)
が主な有利子負債です。
くら寿司の場合は、4項目当てはまります。
- 1年以内に返済義務が生じる「短期借入金」(流動負債)
- 調理ロボット等の調達から生じる「リース債務」(流動負債)
- 利払い金の勘定科目である「未払い金」(流動負債)
- 1年を超えた期間で返済義務のある「リース債務」(固定負債)
最初の頃は判別が難しいものもあると思います。ただし、学習を進めていくうちに、どんどん分かるようになっていきますので、現時点では焦る必要はありません。
さて、これら借入金を分子に置き、分母に総資産をおいて計算すると、29.04%になります。
借入依存度の判断基準は、50%を基準として小さければ小さいほど健全であると判断します。今回は50%を大きく下回っていますので、健全であると評価できます。
3.3. ROAの分解
ROAは分解することで、ROAの値がなぜ高いのかがわかります。

上の式のようにROAを分解すると、
- 事業利益マージン
- 総資本回転率
の2つに分けることができます。
引き続き、くら寿司(2695)の「29年10月期有価証券報告書」を例に見ていきましょう。
3.3.1. 事業利益マージン
「事業利益マージン」は、営業利益などを含む事業利益が、売上高に対しどのくらい出せているかという収益指標になります。これを知ることで、企業の金融収益(※金融収益=事業利益=営業利益+受取利息+受取配当金+持分法投資損益)を含めた稼ぐ力を知ることができます。
難しく考える前に、実際に計算をしてみましょう。以下が方程式になります。
(営業利益+受取利息) ÷ 売上高 = 事業利益マージン(%)
それでは計算してみましょう。
(6341956+60938) ÷ 122766464 = 0.05215
= 5.22%
計算した結果、売上高を超えて利益は出せていますが、連結損益計算書を見ると、原価と販管費(人件費などの費用)が重く感じます。売上高が前年度より伸びているにも関わらず、売上原価と販管費が増加したことにより、営業利益を押し下げている結果となっています。
3.3.2. 総資本回転率
総資本回転率は資産(資本)を効率よく使えているかを知るための指標となります。1回を上回っていれば効率性が高いと判断してよいでしょう。
計算式は次の通りです。
売上高 / 総資本(期首 + 期末)÷ 2 = 総資本回転率(回)
それでは計算してみましょう。
12766464 / (46526743 + 52745387) ÷ 2 =2.47333…
= 2.47回
※総資本は、貸借対照表の負債純資産合計の期首・期末平均を用います。
この場合、2.47回ですので、資本(資産)を使って効率よく利益を出せていることを確認できました。
3.4. ROA分析の総合評価
上記のとおり、くら寿司のROAは一般的な基準である5%を超えていることや、総資本回転率が基準を大きく上回る2.47回であることからも、過去の投資が着実に利益に結びついていて、株価にも底堅さがあります。
また、新規の出店を継続的に行っている企業なので、「リース債務」と「未払い金」が増加していることや、それに伴う「借入依存度」が30%弱あることは現時点では許容できる内容といえます。
加えて、「短期借入金」が流動負債全体に対して限りなく少ないことも、経営安定性に対して説得力を高めています。
ただし、原価の高騰、販管費の増加などの費用が増加することによる営業利益等の押し下げが今後の懸念点です。原価には為替レートも大きく影響しているため、利益をどれだけ伸ばせるかに注目が集まるところでしょう。
以上の理由により、財務は健全であるといえます。
4. まとめ
ここまでROAについて、基礎から応用までお伝えしました。
冒頭でもお伝えしましたが、ROAは、複数の指標と組み合わせることによって、より正確に評価することができます。この記事を見ながら何度でも分析をしてみてください。
また、株式投資は、原因を知って納得してから行うことが何よりも大切です。自分の投資に自信を強く持つためにも、根拠を持った投資を心がけてみてください。
この記事を書いた人
タカシ
Twitterで世界経済に対する見解を発信中!
世界中の株式、暗号資産、FX、コモディティ、外貨で運用する投資家。高校在学中に起業し経営の道へ。大学入学後に株式投資を開始し証券アナリスト資格を学びながら独自の手法を生み出す。その後専業投資家を経験。投資手法は、割安な銘柄を買う「バリュー投資」と、マクロ経済と時代の変化に着目した「パラダイムシフト投資」。お金にまつわる講師も務めた経験あり。動物が好き。





