あなたのROE分析は正しいですか?収益が格段に安定する分析とは

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企業の活動をみるうえで重要な視点の一つとして、「収益力の評価」があります。

企業が持つ収益力は、言い換えれば、「株主に還元可能な利益を生む力」です。企業が保有する資産や資本が、一定期間に「どれだけの利益を生み出したか」を、資本利益率の尺度で推し量ることができます。

その重要な指標の一つとされるのが、自己資本利益率(ROE:return on equity)です。

これは企業分析の中でも特に重要なものです。最後まで読んで、ここに書いているとおりにしっかり身に着けてください。

はじめに

これは「ROA」の記事でもお伝えしているのですが、私は企業に投資をするときは、以下の表のように、複数の指標を総合的に判断して投資決定をします。

ファンダメンタル

このように、多くの指標をもとに慎重な判断することで、負けない投資(勝つ投資)に一気に近づきます。

そんな数々の指標の中で、政界や経済界、金融界から特に注目されているものがROEです。そのROEについて、これからじっくり丁寧にご説明します。

1. ROE(自己資本利益率)とは

ROEとは、企業の自己資本(純資産の部)に対して毎年どれだけの純利益をあげているかを見る指標のことをいいます。

ROEを計算する癖をつけておくことで、どの企業がしっかり堅実に経営しているかの判断をしやすくなります。これによって、ある株式に投資するときの不安を下げることができます。

それではさっそく計算をしてみましょう。

2. ROEの求め方

ROE式

※株主資本は期首・期末平均値を使用します。

上の式は、ROEで基礎となる計算になります。判断基準は10%と言われており、それを超えていれば、経営が上手にできていると判断することができます。

※ただし、分子の純利益には特別損益が含まれています。ですので、将来の収益予想をするにあたり、特別損益の影響が大きい場合は、純利益の代わりに「経常利益  ×(1-税率)」を使用します。

そこで、あなたが投資家である場合、ROEを見る上で注意しなければならない点が1つだけあります。それは、ROEが高いからという理由だけで株式投資をしてしまうと、損をする可能性が高まることです。

そのために、ROEをさらに深く見ていく必要があります。それでは次章でじっくり見ていきましょう。

3. ROEの分解「デュポン・システム」

ROEを深く分析するために、分解して考える「デュポン・システム(デュポン分解)」があります。デュポン・システムは米化学系大手のデュポン社が開発した分析方法ということからそう呼ばれています。

ROEを分解して考えることで、複数の視点から経営の健全性を見ることが可能となります。それによって、分析の正確性がより高まります。それでは、さっそく以下の式を使って解説をしていきます。

デュポン・システム

ROEは分解することで以下の3つの指標に分けることができます。

・売上高総利益率
商品の利益率、企業の競争力を知るための大切な指標です。固定費の削減など、フロー面での収益性を知ることができます。純利益には当期のものを使います。

総資本回転率
「売上によって総資本が何回入れ替わったか」を表す、経営の生産効率を知るための指標です。

財務レバレッジ
企業の資本効率を知ることができる指標です。自己資本の何倍の総資本を活用できているかを表します。

それでは、実際にどのように分析をするか、企業の業績を使って見てみましょう。

3.1. 実例「日本マクドナルド」の場合

日本マクドナルド(2702)を例に見てみましょう。日本マクドナルドは、国内最大手ハンバーガーチェーンです。ここでは、47期 有価証券報告書(2017年1月1日~2017年12月31日)を使って分析します。※有価証券報告書はこちらから

使用する指標は4つです。

  • ROE
  • 売上高利益率
  • 総資本回転率
  • 財務レバレッジ

それでは順番に分析をしていきましょう。

3.1.1. ROE(実例)

ROEには自己資本と純利益の値が必要です。

自己資本は、貸借対照表に『株主資本合計』と記載されています。期首・期末平均を使います。

株主資本 貸借対照表

純利益は、損益計算書に記載されています。期末の数字を用います。

これを計算すると以下のようになります。

ROE
= 純利益 / (期首・期末平均自己資本) ÷ 2
= 24024 / ( 112570 + 132605 ) ÷ 2
= 0.19597…
19.60%(前期:4.8%

ROEは判断基準の10%を大きく上回り、稼ぐ力はあると評価できます。それでは分解していきます。

3.1.2. 売上高利益率(実例)

売上高純利益率
= 当期純利益 / 売上高
= 24024 / 180524
= 0.1330…
13.3% (前期:2.4%

前期から大幅な収益向上が見られます。明らかにROEを押し上げているのはこの純利益の回復力です。

3.1.3. 総資本回転率(実例)

総資本回転率
= 売上高 / 期首・期末平均総資本 ÷ 2
= 180524 / (180499 + 196254) ÷ 2>
= 0.95…
1.0回(前期:1.3回

回転率は前期より多少落ちたものの、1回を維持できているため、安定した効率性の高さを実現できています。

3.1.4. 財務レバレッジ(実例)

財務レバレッジ

= 期首・期末平均総資本
    / 期首期末平均自己資本

= (180499 + 196254) ÷ 2
    / (112570 + 132605) ÷2

=1.53…
1.5倍(前期:1.6倍

財務レバレッジは、1.5倍と問題ありません。適度な負債(借入金)が成長スピードを緩めることなく経営の効率を後押しします。

3.1.5. 総合評価(実例)

日本マクドナルドは、2012年に売上が低迷、その後に社長が交代、2014年には上海工場で、賞味期限切れの食肉が使われていたことが発覚しました。それからカサノバ新社長が新たな改革を進め、黒字へとV字回復させました。

それを裏付けるかのように、マクドナルドの売上高純利益率は、前期の2.4%から13.3%へと急回復しています。ROEが、収益が安定して伸びており、健全な高さであることを証明しています。財務レバレッジは問題なく、総資本回転率も、回復期から成長期へとビジネスをシフトさせることに成功しているといえます。

マクドナルドは、従来の安値志向から高品質志向へとビジネスモデルをシフトさせています。カサノバ社長の起死回生逆転劇です。

それでは、ここで気になる株価への反応を見てみましょう。

マクドナルド株価 ROE

マクドナルドの株価上昇の最大要因は、収益力の改善です。カサノバ社長による改革で、早期に赤字から黒字転換を実現しました。収益指標である「売上高利益率」が大幅に改善されたことから、結果としてROEが上昇、投資家の買い需要が高まりました。

このように、ROEを分解して調べることで、収益力が問題なのか効率性が問題なのかが見えてきます。

4. ROEとROAの関係「財務レバレッジ効果」

また、ROEの分解式に「財務レバレッジ効果」というものがあります。

デュポン分析が、ROEの中身を細かく見ていく指標であることに対し、こちらの財務レバレッジ効果では、ROAや負債利子率を使うことで、ROEの変動要因を分析することができます。

この関係性を理解することで、収益力を伴ったROEの高さ判断することができます。

財務レバレッジ効果

この式で投資家が読み取るべき点は、ROAが負債利子率に対して大きいか小さいかということです。

ROAが負債利子率より大きい場合は、負債の自己資本に対する比率(負債/自己資本)が高いほど、株主に対するリターンとなるROEは高くなります。

対して、ROAの方が負債利子率より小さい場合は、負債の自己資本に対する比率(負債/自己資本)が高いほど、株主に対するリターンとなるROEは低くなります。

 つまりROEは、ROAが負債利子率を上回る条件を満たすことで大きくなります。

このROEとROAの関係式には、成立するための条件が3点あります。以下がその条件になります。

  1. 営業外収益は受取利息・配当金のみ
  2. 営業外費用は支払利息のみ
  3. 特別利益、特別損益は双方がゼロ

尚、この財務レバレッジは、より高度な分析手法になるため、焦らずゆっくり学んでいってください。

5. ROE基準で変わる金融

2014年から算出が始まった株式指数に「JPX日経インデックス400(以下JPX日経400)」があります。3年平均で40%以上のROEを記録している企業を集めて指数化したものです。

同時に、ETFや先物などの証券化もしており、年金積立金管理運用独立行政法人GPIFも、同指数の関連商品を運用に利用しています。

日本証券取引所は、グローバルな投資に求められる基準を満たすという理由から、「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される株価指数ということでJPX400を作りました。

ただし、現在のところ、残念ながらその指数に関連した証券の魅力は乏しいもので、その理由として、日本企業全体におけるROEが伸び悩んでいることが挙げられます。

なぜ、日本企業のROEは伸び悩んでいるのでしょうか。この問題について、次章で解説します。

6. 政界・経済界が警告、日本企業の課題

政府が2014年6月に公表した成長戦略「日本最高戦略(改訂版)」において、グローバル企業に打ち勝つ稼ぐ力を向上させるために、グローバル水準のROE達成を目指していくことを盛り込みました。

また、2014年8月には経済産業省が、企業の収益力向上や成長のために公表した「伊藤レポート」でも、国際比較(対欧米)で、ROEが低すぎると指摘されています。

同レポートでは、企業が心理的に損失の回避を意識しすぎるあまり、保守傾向が強まっていることが指摘されています。その上で、適切なリスクを取って挑戦することで、ROEや株式リターンを高めることができるという提言が記されており、経済界・金融界では注目されています。

7. 高ROEを維持できる企業の秘密

「5. ROEを意識した取り組み」で記した、「JPX400の誕生」と、「政府の成長戦略」、「伊藤レポートによるROEに対する提言」を受け、企業もROEを高める動きを活発化しました。その代表例が財務レバレッジを高める方法です。

その方法を使った高ROEの実現は簡単です。自己資本を減らす、或いは総資産(負債)を増やすことで達成できます。代表的な施策は「自己株式の取得(自己資本の減少)」と「新株予約権付き社債の発行(負債の増加)」

2014年に諸機関から公表された高ROE推奨発言は、経済界に大きな影響力を与え、

大手企業では、

  • 日本電信電話(9432):約2500億円
  • NTTドコモ(9437):約5,000億円
  • トヨタ自動車(7203):約3,600億円

などが続々と自社株買いを発表しました。

しかしながら、残念なことに現在まで高ROEを維持できている企業は少なく感じざるを得ない状況です。それはなぜでしょうか。

その理由は、売上高利益率が低いからです。ここでおさらいです。もう一度デュポンシステムを見てみましょう。

 

デュポン・システム

ROEを上げるために、特に重要視されるべき点は、「売上高利益率」です。国際比較をすると日本はROEで欧米に劣ります(参考:みずほ総合研究所「リサーチTODAY」/ 2017年11月13日)。

そして、ROEを分解してみると、収益性が低いことが日本企業のROE低下を招く大きな要因であることがわかります。

つまり、私たち投資家が、企業の財務を評価する上で着目しなければならない点は、

  1. 企業が負債、或いは自己資本を使い、
  2. 売上高を高め、
  3. 資本回転率を良くし、
  4. 無駄なコストを削減をこなすことで、
  5. 売上高利益率の向上に結びつけていけるか、

ということです。

おわりに

ここまでROEの求め方から特徴、分析方法まで詳細に取り上げてきました。政府機関の取り組みが民間企業に影響を与えるほど、強く意識されている指標であることがお分かりいただけたでしょうか。

上記でも述べましたが、ROEはただ高いだけでは意味がなく、中身を知って始めて株式投資で有用な指標と成り得ます。

私自身、企業へ投資をする際にROEは重視しますし、多くの証券会社や運用会社の専門家たちも、その分解は重宝しています。是非、使ってあなたの投資に役立ててくださいね。

それではまたお会いしましょう。

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