株式投資の両建てとは|同じ銘柄を買いと売り同時にトレードする方法
(更新 ) · 投資の教科書 FX事務局

この記事は2017年に公開したアーカイブ記事です。制度・数字・サービスの内容は当時のものです。
両建てとは、株式投資の場合で簡単に言うと、「同一銘柄の買いと信用売り(空売り)のポジションを同時に持つ取引」をいいます。
一見すると、この取引を行うことに何の意味があるのかわからないと思うかもしれません。しかし、テクニックとして知っておくと、役に立つ場面があります。
それを当記事で紹介しますので、ぜひ最後までお読み下さい。
目次
1.両建てとは
1.1.株価の変動を受けなくなる
両建ては、クロス取引ともいい、同じ銘柄で買いと信用売り(=空売り)の両方のポジションを保有する取引をいいます。
例えば、ビックカメラ(3048)を1,200円で100株買い、同時に1,200円で100株空売りをするような取引をいいます。買いと空売りを同じタイミングで行うか、時間差で行うかの厳密な決まりはありませんが、株数は同じにする必要があります。
上記の例で、ビックカメラの株価が1,300円に上昇した場合、買いポジションは、(株価1,300円-買値1,200円)×100株=10,000円の利益となります。一方、空売りポジションは、(空売り値1,200円-株価1,300円)×100株=▲10,000円の損失となります。
このように、両建てをすることで、買いと空売りの合計損益は±0円となり、両方の注文が成立した時点からの価格変動の影響を受けなくなります(手数料を除く)。
1.2.決算発表などのイベントの株価変動を回避する場面で有効
では、どのような場面で両建てを使うのでしょうか?
例えば、保有している株が決算発表を迎える時、空売りのポジションを一緒に持っておくと、決算発表による株価の変動を回避(ヘッジ)することができます。なぜなら、通常、決算発表の数字の良し悪しによって、翌日の株価は前日終値から大きく上か下に離れて始まるケースが多いからです。
保有している株の業績見通しがあまり良くないと予想される場合、事前に売却しておく選択肢もあるのですが、どうしても売却したくない時は、両建てすると有効です。しかし、当然、決算が良くて翌日の株価が上昇した場合は、買いだけを持っていれば利益を得られたであろう恩恵を受けることはできなくなります。
ちなみに、どうしても売却したくない場合とは、長期保有することで株主優待の内容が良くなるケースなどが考えられます。例えば、ビックカメラ(3048)は、8月の決算時に100株保有していると、通常1,000円の買物優待券がもらえますが、1年以上2年未満保有している場合は2,000円、2年以上保有している場合は3,000円と、保有株数に応じて優待の内容が充実してきます。
このような銘柄は、いったん売却してしまうと、株主である期間がリセットされてしまいます。そのため、両建てすることで、株価の下落リスクを回避すると同時に、株主期間を継続させることができるのです。
1.3.株主優待をタダで入手することができる
両建てをすることで、株主優待をタダで入手する方法が有名です。
通常、株主優待や配当金を得るには、その企業の権利付き最終日(営業日ベースで数えて月末から4日前)の15時までに対象銘柄を購入する必要があります。そして、翌日は、権利落ち日といい、理論上は配当金と株主優待の金額分だけ株価が下落して始まります。
そこで、両建てをすることで、どうしても発生するこのような株価の下落分の損失を回避することができます。
事例を見てみましょう。
2017年8月28日は、ビックカメラ(3048)の権利付き最終日でした。その日の終値は1,287円で、翌日8月29日の権利落ち日の始値は1,272円で、15円下落して始まりました。ビックカメラの(中間)配当金は1株につき7円で、100株保有していると、700円もらえることになります。
また、株主優待は100株で1年未満保有の場合は1,000円分の買物優待券がもらえます。理論上は、配当金700円+株主優待分1,000円を合わせて1,700円分(100株単位で17円分)の価値分は翌日から下落することは想定できたので、15円の株価下落は妥当だといえます。
この、15円分の下落で損したであろう金額を、両建てで空売りを100株しておくことで回避するのです。
しかし、ここで注意が必要です。
この手法はあまりにも有名になり過ぎて、株主優待をタダで取得するために、多くの投資家が権利取りの直前に両建てをするようになりました。そうすると、証券会社が空売りのために調達する株券が極端に不足して空売りができなくなったり、逆日歩という追加の手数料を支払う必要が出てきます。
個人投資家に人気の株主優待銘柄になると、高額な逆日歩がつき、優待の価値以上の逆日歩手数料を支払う必要も出てきます。
例えば、過去には、アドアーズ(4712)というゲームセンターを運営している銘柄で、44,000円相当分のリラクゼーションサロンチケット(22,200円分×2枚)の株主優待を獲得するために、なんと84,000円の逆日歩手数料を払わないといけないケースもありました。
また、逆日歩の厄介なところは、いくらになるか事前にわからない点にあります。ただし、対策はあります。それは、過去の同じ時期にいくらの逆日歩がついたかを調べることができるので、その株主優待を両建てで獲得してもトータルで利益が出るかを事前に検証することができます。
ちなみに、上記のビックカメラの場合、1株につき1.1円の逆日歩が発生したので、100株だと110円余計に支払う必要が出てきます。(中間)配当金700円と株主優待分1,000円の合計1,700円を取得するために、110円の逆日歩手数料と証券会社に(通常の)売買手数料を数百円払うことになりますが、両建てして権利落ちの下落分の損失を回避できた上、ほぼ配当金と株主優待の金額分の恩恵を受けることができました。
おわかりいただけましたか?
このように、両建てをして配当金と株主優待を獲得したほうがいいのか、純粋に現物買いだけで配当金と株主優待を獲得したほうがいいのか、よく考える必要があります。
ちなみに、日々の逆日歩は、日本証券金融株式会社(日証金)のホームページで調べられます。また、人気優待銘柄の獲得の際に過去に発生した逆日歩は、イベント投資法で有名な夕凪氏のブログで調べることができますので、参考にして下さい。
2.両建ての注意点
ここまで読んで、これからは両建てを積極的にしてみよう思われた方もいるかもしれませんが、リスクも知っておく必要があります。注意点を2点お伝えします。
2.1.資金効率が悪くなる
両建てをすると、余計に投資資金が必要になりますので、元手が少ない人は他の銘柄に投資できなくなってしまいます。
2.2.空売りのコストがかかる
空売りには、証券会社に株券を貸してもらうための手数料である「貸株料」と、毎回発生するとは限りませんが、「逆日歩」のコストがかかります。信用取引の制度信用を利用した空売りの最大決済期限は最長6ヶ月なので、保有期間が長くなると、その分コストもかかって利益が出にくくなります。頭に入れておきましょう(参考:「信用取引とは?|初心者が知っておくべき3つの注意点」)
まとめ
これは私の考えですが、両建てをむやみに行うことはおすすめしません。
なぜなら、両建てをして、株価が上昇した時に買いポジションを売却して、その後株価が下落した時に空売りポジションを買い戻せば利益は出せますが、そのように株価の変動を正確に予想して器用に売買することは特に初心者には困難だからです。
記事内でも紹介しましたが、両建ては、株主優待の長期優遇の権利を継続させるために一時的に行う方法に一番利用価値があると思います。また、株主優待のタダ取りを狙う場合は、逆日歩の過去のデータを検証して、有名な投資家がどのような銘柄を両建ての対象としているのかをよく研究した上で実行するようにしましょう。
両建てをすれば、株価変動のリスクをゼロにすることができますが、この状態を続けても永遠に利益を出すことはできず、かえって資金効率が悪くなってコストがかかるだけです。株式投資で自分が有利になるための”一時的なテクニック”として、計画的に活用するようにして下さい。
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