オプション取引のボラティリティの特性を利用して利益をあげる方法
(更新 ) · 投資の教科書 デリバティブ事務局

この記事は2017年に公開したアーカイブ記事です。制度・数字・サービスの内容は当時のものです。
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ボラティリティは、オプション取引をする上で必須の概念です。
なぜなら、オプション価格が決まる大切な要素の一つで、ボラティリティを理解することが、オプション取引の攻略につながるからです。
- ボラティリティって何?
- インプライドボラティリティって何?
- ヒストリカルボラティリティとの違いは?
- オプションでボラティリティを実際にどうやって活用するの?
という方は、ぜひ最後までお読みいただき、オプション取引のヒントにして下さい。
1.ボラティリティ
ボラティリティとは、「価格が一定の期間にどの程度変動するかの度合い」のことをいいます。そして、価格変動の度合いによって、次のように表現します。
- 価格の変動が大きい:ボラティリティが大きい
- 価格の変動が小さい:ボラティリティが小さい


ボラティリティは、何らかの材料で株式市場が不安定になると大きくなる傾向があり、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックなどが起こると、急激に大きくなります。
それでは、実際にボラティリティはどのような動きをするのか、アメリカのS&P500指数のチャートを見てみましょう。
下の画像は、S&P500のチャートです。

ご覧のように、比較的なだらかに上昇していますが、2008年~2009年のリーマンショック時に大きく下落していることがわかります。
また、S&P500のボラティリティを表す指標であるVIX(恐怖指数)のチャートを見ると、次のようになっています。

VIX指数チャートは、数値が大きいほどボラティリティが大きいことを表します。
ほとんどの期間で10~20ポイントの間で推移していますが、2008年~2009年のリーマンショック時には、80ポイント近くまで跳ね上がっていることがわかります。
このように、市場参加者がパニックになると上昇することから、VIXは別名「恐怖指数」とも呼ばれています。ボラティリティは、市場参加者の心理状態を反映している鏡のような存在といえます。
2.ヒストリカルボラティリティ
ボラティリティには、「ヒストリカルボラティリティ」と「インプライドボラティリティ」の2種類あり、ここでは、ヒストリカルボラティリティについて簡単に解説します。
ヒストリカルボラティリティは、過去の値動きを基に算出されます。過去の数値なので、現時点のボラティリティを把握したり、将来のボラティリティを予想するものではありません。あくまでも、過去の一定期間の株価の変動はこれくらいだった、という結果です。
ちなみに、ヒストリルボラティリティ(HV)は、日本経済新聞の市況ページの日経平均オプション表・大証で確認できます。
3.インプライドボラティリティ
インプライドボラティリティは、市場参加者の将来の値動きの変動を予測を基に算出した変動率です。どのように市場参加者の予測を把握するのかというと、実際の市場で取引されているオプションの価格から逆算するのです。
具体的には、 「オプションの理論価格」を計算するために「ブラック・ショールズ式」という複雑な数式を使います。次の式が、ブラック・ショールズ式です。難しいので、覚える必要はありません。

ただし、オプションの理論価格は次の6つの要素で計算されることだけは理解しておいて下さい。
《オプション価格を決める6つの要素》
- 権利行使価格…原資産の権利行使価格
- 残存期間…オプションの満期までの期間
- 原資産価格…オプションの原資産の価格
- 原資産利回り…原資産の配当利回り
- 短期金利…無リスク資産の市場金利
- インプライドボラティリティ
これらの要素のうち、1.~5.は、次の項目がわかれば計算できます。
- どの銘柄のオプションか
- 権利行使価格はいつなのか
- いつの時点の価格を求めたいのか
そして、1.~6.の数字を先ほどの複雑なブラック・ショールズ式に当てはめてオプションの理論価格が計算できるのですが、このオプションの理論価格は、実際の市場での取引価格から求めることができるのです。
ということは、6.インプライドボラティリティの値は、市場の取引価格から1.~5.の項目とオプションの実際の取引価格がわかれば、逆算できるということになります。
もう一度頭の中を整理してみて下さいね。
このようにして求められるインプライドボラティリティは、わかりやすく言うと、市場参加者がどのようなスタンスで市場に臨んでいるかを暗示する数値です。
具体的には、インプライドボラティリティの数値の高低で、次のように判断できます。
- 低い→将来の値動きに安心感を持っている
- 高い→将来の値動きに不安感を持っている
別の言い方をすると、インプライドボラティリティは、市場参加者の空気感を表わしていると言ってもよいでしょう。
さて、このインプライドボラティリティの数値とチャートは、こちらのオプション道場というサイトで見ることができます。
※クリックすると拡大します
これを見ると、インプライドボラティリティは、大体10%~30%の間で推移していることがわかります。
しかし、2008年のリーマンショック時には90%以上まで急激に上昇しており、今後も起こる可能性は大いにあります(コロナショックでは60%くらい)。
そのため、インプライドボラティリティが30%を超えてきたら、市場に不安が広がっていると考え、警戒することをおすすめします。
4.ボラティリティの特性を利用したオプション取引例
最後に、ボラティリティの”ある特性”を利用したオプションの取引例を1つご紹介します。
結論からいうと、市場が急落してボラティリティが一時的に跳ね上がったタイミングで、SPXSという米国ETFのコールオプションを売る方法です。
詳しく解説していきますね。
次のチャートは、ボラティリティ指数(VIX)とS&P500(SPX)を比較したものです。

よく見ると、SPX(青色)が急落すると、VIX(オレンジ色)が跳ね上がっていることがおわかりいただけると思います。
しかし、VIX(オレンジ色)は、一時的に急騰しても、しばらくすると元の30%以下の水準に戻っていることにも気付きます。
このように、ボラティリティは、市場の動揺で一時的に跳ね上がってもその状態は長くは続かず、市場が正常化すると元の水準に戻るという特性があります。
イメージとしては、次のような感じです。

そして、このボラティリティの水準は、オプション価格に影響を与えます。
どういうことかというと、ボラティリティとオプション価格には、次のような関係があります。
- ボラティリティが上がる→オプション価格は上昇
- ボラティリティが下がる→オプション価格は下落
このボラティリティの特性とオプション価格の関係性を理解して利用することで、オプションから継続的に利益をあげていくことができるのです。
そこで登場するので、この章の冒頭で紹介した、米国市場に上場しているSPXSというETFです。
ETFは上場投資信託のことで、通常の株式と同じように売買できるのが特徴です。そして、SPXSは、米国株の代表的な指数S&P500に連動したETFです。
ただし、SPXSはベア型と呼ばれ、S&P500とは反対の動きをするように設計されています。つまり、S&P500が上昇すると下落し、S&P500が下落すると上昇するといった具合いです。さらに、S&P500の値動きに対して3倍の動きをするように設計されています(=レバレッジドETF)。
このSPXS(赤色)を、VIX指数(青色)と比較したものが、次のチャートです。

先ほどのSPXはVIX指数と正反対の値動きをしていましたが、ベア型のSPXSを使うと、上のようにVIX指数とほぼ同じ動きをすることがわかります。
そこで、このSPXSをVIX指数の代替として利用することで、ボラティリティを収益化することが可能になります。
具体的には、SPXSが跳ね上がったところで、SPXSのコールオプションを売るのです。コールオプションは、原資産の価格が上がると価格が上昇しますが、原資産の価格が下がると下落する特性があります。
例えば、2015年の6月のSPXSは18ドルを超えました。
この時、SPXSの権利行使価格は18ドル、期日が2017年1月のコールオプションは4.5ドルで取引されていました。米国のオプションは100株で1単位なので、コールオプションを1枚売ることで、450ドル(=約45,000円)の収入を得ることができます。
その後、ボラティリティが低下したタイミングで買い戻して利益を確定させても良いですし、満期日まで持ち続けても構いません。
ただし、この場合、売った金額の50%くらいは証拠金(リザーブ資金)として口座内に残しておくことをおすすめします。具体的には、18ドルの半分の9ドル×100株=900ドル(約90,000円)です。
しかし、株価が急落するとVIX指数もSPXSのコールオプションも上昇するので、その度に追加入金して、資金がショートしないように注意しましょう。
《参考》
ボラティリティの価格チェックは、「I volatility.com」というサイトがおすすめです。英語ですが、右クリックして「日本語に翻訳」を選択すると、日本語で読むことができます。
まとめ
この記事では、オプション取引のカギとなるボラティリティ、特にインプライドボラティリティに焦点を当てて解説しました。ボラティリティとその使い方を理解できれば、オプション取引で成功できる可能性がグッと近づきます。
その際、文字やチャートだけで理解するのではなく、実際の株式市場とオプション価格の動きを観察するようにしましょう。頭だけではなく、感覚で理解していくのです。そして、少しでも構いませんので、実際にポジションを持ってみて、値動きを体感してみることをおすすめします。
自分のお金でポジションを持つことで真剣度が増し、オプションの売主や買主がどのような心理状態になるかが、理屈抜きで理解できるようになるはずです。
粘り強く取り組んで下さい。
この記事を書いた人
投資の教科書 デリバティブ事務局
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