株式投資では最終的には勝つか負けるかの2つに別れます。もちろん勉強は必要ですが、それと同じくらい大切なことがあります。
それが「自分に合った証券会社を選ぶ」ということです。
専業投資家・兼業投資家の双方の立場を経験した私にとって、「どの証券会社の口座を使うか」は、
・利益を上げ続けられるか
・損失を被り続けるか
を大きく分けるものでした。
利益をとことん追求して証券会社を選ぶために、私が実際に使って「これだ!」と思える口座を特別に公開しています。
投資で稼ぐチカラがつくメディア
「株式分割」は、株式市場におけるビッグイベントの一つです。
投資家は株式分割を耳にすれば、それを行った企業への投資を検討するくらい影響力のある言葉なのです。
この記事では、そんな株式分割について、
事例を紹介しながら解説していきます。
また、株式分割と同じくらい大切な株式用語「株式併合」についても最後に解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
株式分割とは、文字通り、「企業が現在発行している株式を分割すること」をいいます。
たとえば、企業が1株を2株へ分割することを発表したら、発行している1株が2株に増えます(企業によって分割数は変わります)。それに伴い、一株あたりの株価は1/2の価格に下がります。詳しくは『2.2.2. 保有株の数量が増えることで売りやすくなる』で解説します。
では、株式分割は企業や投資家にとってどのようなメリットとデメリットをもたらすのでしょうか。
企業にとって株式分割をする理由は、大きく分けて2つあります。
それでは、この2つのメリットについて順番に解説していきますね。
人によっては、ある企業の株を本当は買いたいけど、最低取得額(最も安く買える金額)が高すぎるという理由から、買えないケースがあります。
たとえば、2018年8月時点ではファナック(6954)やキーエンス(6861)などが、最低取得額が他の銘柄に比べても高く、人によっては買いづらい銘柄になります。
例1【ファナック(6954)】
出所:Bloomberg
ファナックは20年4月21日の終値が14,625円です。最低単元が100株なので、同社の株の最低取得額は、以下のようになります。
14,625円 × 100株 = 1,462,500円
例2【キーエンス(6861)】
出所:Bloomberg
キーエンスは20年4月21日の終値が36,710円です。最低単元が100株なので、最低取得額は以下のようになります。
36,710円 × 100株 = 3,671,000円
このように最低取得額が高く企業がもっと多くの人に株を買ってほしいと考える場合、株式分割をすることで、最低取得額が安くなり、より多くの投資家が、株を買ってくれるようになるのです。
安い価格で株を買えるようになると、流動性が高まります。そして、より多くの人が株を買って、買い圧力が高まると、株価は上昇します。このような思惑から、株式分割発表後に短期的に上昇する傾向があります。
業績が良い場合には、その傾向がより強くなります。しかし、業績が悪い場合は、逆に株価が下がることもあります。
では、株式分割は、投資家にとってどのようなメリット(恩恵)があるのでしょうか。それは、大きく分けて以下の3つになります。
株式分割後は、1株1万円だったものが1株5,000円になったり、1株2,500円になったりします。そのため、投資資金が足りず買えなかった投資家が買えるようになります。
仮にA社の株価が1株1万円だとします。その株が100株単位でしか買えなかった場合で考えてみます。投資に必要な最低額は100万円(1万円 × 100株)となります。
次の図をご覧ください。
株式分割前の100万円のポートフォリオ
では、このA社株を1:2の比率で株式分割したらどうなるでしょうか。
1株1万円が1/2の1株5,000円になり、反対に保有している100株が2倍の200株に増えます。100株単位が売買条件の場合、最低投資金額は50万円となります。
それに伴い、投資家の行動に変化が出てきます。
投資家は、A社株を50万円分(半分)を売って、B株を50万円分買うという選択ができるようになります。
(※わかりやすく理解できるよう、日々の株価の値動きは考慮していません)
次の図がそれになります。
株式分割後の100万円のポートフォリオ
このように投資家は半分だけ売って、それを別の銘柄に投資することができます。つまり、その投資家は分散して株を持つことができるようになり、ポートフォリオを組めるようになります。
これは『2.1.2. 流動性が高まり、株価上昇を狙える』で解説したことと同じです。
株式分割をすると、株価が上昇する傾向があります。投資家もそこから利益を得ることもできます。ただしご注意ください。その発表が不発に終わるというデメリットもあります。
株式分割のデメリットは、主に投資家にあるといえます。それは、業績とは関係なく、株価が上昇するからです。
業績が良ければ、上昇しても、その銘柄を心配することなく保有を続けられますが、業績が悪い場合は、どこまで上昇が続くかわかりません。そのため、「だまし上げ」には注意して需要がどれだけあり、その需要がどれくらいの期間高まるのかを見極める必要があるのです。
見極めには、実例の値動きを見て知識をつけておく必要があります。
株式分割の実際の事例を見てみましょう。
株式分割が発表された後の、値動きは以下の3パターンあります。
それでは一緒に見ていきましょう。
【エムスリー(2413)】
エムスリーは、医療ポータルサイト「m3.com」の運営を行うソニーの関連会社です。
インターネットを通じて医療コストをカットするだけでなく、製薬会社のマーケティングを支援します。具体的には、接待費や印刷費等を大幅に削減することができます。そんなエムスリーですが、2018年7月25日に株式分割を発表(PDF)しました。
株式分割の発表直後の株価は、2日間上昇しましたが、その後は発表直後の値まで戻し、効果は限定的でした。その理由は主に以下の2点が考えられます。
【船井総研ホールディングス(9757)】
船井総研HDは、故船井幸雄が創業した中小企業をクライアントに持つ経営のコンサルティング会社です。2017年11月6日に株式分割を発表(PDF)しました。
同社は、業績成長を続けていましたが、業績上方修正を発表したにもかかわらず、コンセンス※1に届かなかったこと、また時価総額を利益率で割った倍率であるPERが30倍以上(投資額を30年かけて回収するイメージ)であることが、投資家に同銘柄を割高に感じさせ大きく下落しました。
また、株式分割が窓埋めをするきっかけにもなっています。
業績の上方修正をしたにも関わらずコンセンサス※1に届かなかったということは、アナリストが設定した目標株価が高すぎたということも考えられます。
※1. コンセンサス:証券会社のアナリストたちが設定した目標株価の平均値
株式分割をきっかけに株価がバブル化した銘柄があります。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(4661)です。
オリエンタルランドは、2011年3月の東日本大震災による急落で底値を付けた後、堅調に株価が推移してきました。
そんな同社は、東京ディズニーリゾート30周年効果で業績の上方修正、過去最高の純利益を記録するなど、断続的に好材料(投資家が買いたいと思わせる材料)を出してきた背景があります。
その状況での株式分割、そして新たな株主還元(長期保有者株主向け優待制度の導入)の発表(PDF)だったため、その発表を起点に急騰が始まりました。
以下は、オリエンタルランドバブル時の株価推移です。まずは、株式分割発表前後のチャートを見てみましょう。
【オリエンタルランド(4661)】
※縦軸は分割後の価格になっています。尚、吹き出し解説部分は分割前の価格を記載しています。
このオリエンタルランドの株式分割の場合、1:4の比率で分割するということで、価格は1/4になります。
多くの投資家が、株式分割を投資するきっかけとし、これまでの業績や増配の発表、そして今後の同社の展望などに対しても、総合面で期待するようになりました。投資家の間では「オリエンタルランドバブル」と言われるようになり、取引高も連日高いものになりました。
一般的には、権利付き最終日である3月26日まで持っていた人は優待や配当の権利を手に入れることができるので、翌日の権利落ち日3月27日に売ります。しかし、オリエンタルランドの場合、逆に上昇しました。これはバブル状態で、需要が供給を圧倒的に上回っていたからです。
次に、その後の株価推移を見てみましょう。
しかし、株式分割の効力発生日である4月1日を迎えると、投資家たちは持っていた株を売りはじめました。そして、株式分割の効力発生を起点に、サーっと資金が抜かれていきました。
ここまでで、株式分割後の値動き3パターンはおわかりいただけたでしょうか?
では、知識をつけたところで、株式分割を活用した4つの投資タイミングについて実例解説をしていきます。後少しですので、最後まで読んで活用してくださいね!
前章『3.株式分割で急変する値動き3パターン』では、株式分割が株価へ与える影響について、3つのパターンをご紹介しました。
企業が株式分割を発表して、私たちがその恩恵にあずかるためには、取引のタイミングが重要です。それでは、株式分割を利用して利益を得るには、どのようなタイミングで売買すれば良いのでしょうか。
これまで、株式分割に関する、私の投資手法は一度も公開をしてきませんでしたが、この度、私の4つの投資パターン(タイミング)をご紹介します。
株式分割を利用した投資手法を初級から超上級までご用意しました。
※ロングとは買いから始めて売りで損益を確定させる取引です。ショート(空売り)は、ロングとは逆に売りから始めて買いで損益を確定させる取引です。
難しく考えなくても大丈夫です。これから丁寧に説明していきますので、ご安心ください。
初級編は、企業から株式分割が発表された翌日の寄り付きで買う、最も簡単な手法です。
この手法で利益を出すには、そこから価格がすぐに上がるのか、下がるのかの見極めが重要になります。
通常、寄り付き(その日の前場と後場に初めて成立した取引)の時点では、既に価格が上がってしまっており、そこから価格が上昇しない可能性があります。また、上がり続けたとして、「いくらまで上がる」という約束もないため、需給(買いと売りの勢い)をよく観察して売る必要があります。
実例を見てみましょう。
【ストライク(6196)】
ストライクは株式分割後に上昇が続き、幾度か利益確定するチャンスが生まれました。
結果的に最大で1,000円を超える上昇を見せましたが、初心者の方に、もっとも注目して欲しいタイミングは、最初の急騰です。ここで売って利益を確定させるというのも負けない投資には必要です。
上級者になって、根拠を持って待てるようになってきたら、その後の売り時でも利益を出せるようになっていきます。ただし、ご注意ください。一度利益確定をさせた後に、もう一度ポジションを持つ場合は、権利落ち日や効力発生日を意識して早めの反対売買(この場合は売り)を行ってください。
初心者の時は、下落が始まってから売るのではなく、上昇しているときに売るのが投資で勝つ最も簡単な方法です。
分割発表後に乗り遅れてロングできなかった、あるいは、その手法に抵抗がある人向けの方法です。ただしショートのため、初心者の方はレバレッジを低めに抑えてリスクをコントロールすることを推奨します。
下のソラストの株価チャートをご覧ください。同社は、5月25日に株式分割を発表しました。その発表の直後、投資家が反応し、株価は上昇しました。
【ソラスト(6197)】
同社の業績は悪くないですが、特別急上昇するような業績でもなく、また目新しい情報が他にないため、株式分割の効果で上昇したことが確認できました。その後、効力発生日を迎える直前から、売りが強まることで下落基調へ突入しました。
この手法のポイントは、「株式分割」と「窓埋め」を組み合わせて分析し、ショートするところです。
株式分割発表直後にできた窓を埋めるために、株価が分割直後の株価水準まで戻ることが予測できます。
この手法には条件があります。それは、株式分割が発表されてから効力発生日までの期間中、明らかに分割効果で上昇したような銘柄を対象とすることです。
下の株価チャートをご覧ください。カプコンは3月6日に分割を発表し、時間外取引(PTS取引)で上昇。翌朝から値上がりし、一時的に上昇しました。
【カプコン(9697)】
効力発生日の数日前から下落し、分割発表直前の水準まで戻そうとする動きがうかがえます。これは窓埋め理論と移動平均線を組み合わせた例です。
まず、移動平均線は、一般的に5日線、25日線、75日線がチャートに描かれています。ローソク足は移動平均線と乖離すればするほど、移動平均線の方へと戻ろうとする性質を持っています(参考:『移動平均線乖離率とは|逆張り戦略で利益を出すコツ』)。
そのため、この場合は、
を確認した後に買うことで、その後の株価上昇による利益獲得を狙うことができます。
以上のように、株式分割の性質に、窓埋めと移動平均線の性質を組み合わせて分析をすることで、利益獲得を狙うことができます。
このケースでは業績も悪くないため、株価が発表直前の値まで下がってきたとしても、今後の株価上昇に期待することができます。ポイントは、どこまで株価が調整するかを見極めることです。
最後の超上級編では分割発表そのものを予測して投資する方法を解説します。
※この手法は、既に分割発表がされた銘柄のチャートを出しても、後出しジャンケンのようで説得力がないので、ここでは図を使わず文字を使った解説にあえて留めておきます。
上場企業が株式分割を行うタイミングの多くは、決算発表と同時です。そのため、決算シーズンを狙って分割しそうな企業を探します。
株式分割は、たとえば「増資」や「増配」、「自社株買い」、「IFRS適用」のように、経済・金融界の一種のブームのようなものがないため、予測しづらいです。しかし、予測して投資するができます。
私がこの手法で予測を的中させるときは、必ず以下の3つの条件のうち、2つ以上を満たしています。
上記の3つの条件に当てはまる銘柄の多くが、業績が堅調なので、もし分割発表がなくても株価の推移は悪い結果にはなりにくいです。ただし、株式分割の発表を予測し的中させることは、売買タイミングがの難易度が高いため、自信のある方は挑戦してみてください。
株式併合は「2株を1株にする」というように、複数の株を1つにまとめることです。
株式分割と逆のパターンです。
たとえば、1株5,000円のA社株を200株持っているとします。
5,000円の株が200株なので、100万円分の株を持っていることになります。ここで、A社が「2株を1株にする」という株式分割を行うと、株数は100株に減り、1株の株価は10,000円になります。
株数は半分になりますが、株価は2倍になりますので、100株 × 10,000円で、A社株を100万円持っていることに変わりはありません。
1株あたりの株価が安くなりすぎているような場合や、発行株式数が多すぎる場合に行われたりします。また、経営再建のため債務を抱えた企業が、減資や、それと同時に行う第三者割当増資と共に株式併合を行うこともあります。
さて、ここまで株式分割について解説をしてきました。
株式分割が企業から発表されたら、その銘柄を機械的に買うのではなく、その企業の業績の良し悪しを見ることも大切です。実際に株式分割のニュースが流れたらぜひ株価の値動きを見てください。
また、株式分割は、「増配」や「今後の業績向上への期待」、「今後の商品・サービスの需要の高まりへの期待」などが組み合わさることで、中期的な上昇に成り得ます。
ただし、権利落ちや効力発生日には気を付けなければなりません。どんなに業績が好調でも、分割の効力発生日直後に急落することは珍しくないです。
では、取引のタイミングを掴むために使える情報は以下のとおりです。
上記のように、上昇・下落要因はさまざまですが、難しく考える必要は全くありません。この記事で紹介してきたように、まずは初級レベルから株式分割を活用した取引を行って、勉強を積み重ねながら経験していってください。
あなたの投資ライフがより良いものになることを願っています。それでは、またお会いしましょう。
株式投資では最終的には勝つか負けるかの2つに別れます。もちろん勉強は必要ですが、それと同じくらい大切なことがあります。
それが「自分に合った証券会社を選ぶ」ということです。
専業投資家・兼業投資家の双方の立場を経験した私にとって、「どの証券会社の口座を使うか」は、
・利益を上げ続けられるか
・損失を被り続けるか
を大きく分けるものでした。
利益をとことん追求して証券会社を選ぶために、私が実際に使って「これだ!」と思える口座を特別に公開しています。
GDPとは、国内総生産(Gross Domestic Product)といい、経済を見る重要な指標の一つとされています。 GDPを理解することで、国内の景気の良し悪しがわかり、またなぜGDP指標が金融相場に反映された場合、迅速に対応することができます。こ
時価総額とは、企業の規模を表したもので、その企業の価値を示しています。また、時価総額が高ければ、その企業に期待をしている投資家が多いということになります。 企業を分析したり、投資をするときには、会社の規模を意識することが大切になります。 なぜなら、時価
キャピタルゲイン・インカムゲインの違い|株式投資の2つの収益
株式投資の利益には2種類あります。株の売却益である「キャピタルゲイン」と配当や株主優待などの「インカムゲイン」です。この2つの違いを詳しくご説明させていただきます。 そして、「インカムゲイン」の項では、「貸株」といって年率10%以上もの金利を得ることがで
「投資でお金を増やしたい」と思って調べると、株とFXがメジャーということは分かった。でも、どっちが自分に合っているのかは分からない。 こんなことで迷っていませんか? でも、ご安心下さい。この記事では、あなたにとって、どちらが本当に向いているのかを知るこ
株式投資を始めてみようと思っても、株の本質や、株価が動く仕組みを知っておかないと、何をチェックしたらいいのか分からず、売買の判断が曖昧になってしまいます。 この記事では、株とは何か?をはじめ、株価が動く要因を、初心者にもわかりやすく解説します。 最後ま
日本を代表する株価指数として、「日経平均株価」と「TOPIX」があります。日経平均株価の方が有名で、ご存知の方も多いでしょう。 しかし、機関投資家はTOPIXをベンチマーク(指標)にして運用を行っています。 大きな資金を運用している投資家が見ている株価
TOB(株式公開買付)とは|友好的・敵対的の違いと買収防衛策を徹底解説
株式市場には、TOB(株式公開買付)という用語があります。これは、企業が買収する時に使う手法の一つです。 では、このTOBは、一体どのようなものなのでしょうか。また、TOBをしかけられた企業の株価はどのような影響を受けるのでしょうか。それを知ることで、私
株のように売買できるETFという投資信託を知っていますか? ETFは、上場投資信託とよばれ、東京証券取引所(東証)など証券取引所に上場しています。 ETFの人気は高く、ソニーやトヨタなど有名企業が上場している東証一部の売買代金の上位10銘柄の中で2、3
株式分割とは|メリットとデメリット・値動き・売買タイミングを実例解説
「株式分割」は、株式市場におけるビッグイベントの一つです。 投資家は株式分割を耳にすれば、それを行った企業への投資を検討するくらい影響力のある言葉なのです。 この記事では、そんな株式分割について、 意味 メリットとデメリット 値動きの特徴
「株」と聞いたときに、未経験の方はきっと、「大きな資金がいるのでは?」「難しそう」と考えるでしょう。 しかし、ご安心ください。 デイトレードは、何度も取引を行い利益を積み上げていくため、資金量は少なくてもできるのです。ただし、少額でやる場合に気をつけな