「株の勉強は何から始めればいいの?」と迷う初心者の方も多いと思います。確かに学習範囲が広いので、最初からすべてを理解することは難しいでしょう。
私はディーラー時代を含め、投資歴は20年になります。ITバブルやリーマンショック、アベノミクスなど様々な相場環境を経験しながら株の勉強を続けてきました。今回は、私が株を学んできた勉強法をお伝えします。
執筆者
やんた
一橋大学経済学部卒業。証券会社で営業、アナリスト、ディーラー職の経験を経て、個人投資家に転身。現在は、日経225先物やオプションを中心に、株式、CFD、FXを取引している。ツイッターアカウントは@yanta2011で、ブログ『日経225先物オプション奮闘日誌』を運営。趣味は、ウィンドサーフィン。
1.株の勉強のための入門書はこれだ!
最初に何で勉強を始めればいいか迷うと思いますが、書籍から学ぶことをおすすめします。内容が体系的にまとめられていて、重要な箇所には線を引きながら、繰り返し読むことができるからです。
私が株の勉強を始めた20年前と違い、現在はブログやツイッター、投資サイトなど様々な情報をネットから仕入れることができます。ただ、ネットの情報は玉石混合で誤った情報もあるので、初心者の方は書籍から始めるようにしましょう。おすすめの入門書をご紹介します。
『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ZAiが作った「株」入門 改定第2版』(ダイヤモンド社)

最初に株の入門書を読んで全体像を把握しましょう。株とは何か?から始まり、ファンダメンタル分析やチャートの読み方など基本が網羅されています。株の世界は専門用語が多く、PERやPBRなど突然でてきても戸惑いますよね。ですから、初心者の方は文章だけでなく、図やイラストで視覚的に読みやすい入門書から勉強を始めましょう。
2.まずはファンダメンタル分析を知ろう
『株の入門』を読み終えたら、次は「ファンダメンタル分析」について学んでいきましょう。投資手法には、大きく分けてファンダメンタル分析とテクニカル分析があります。
最終的には、どちらかの分析手法に偏って投資で勝つ人もいますし、2つの手法を使って勝つ人もいます。
私の場合は、株式投資をする場合
①ファンダメンタル分析で銘柄を選定
②テクニカル分析で売買タイミングを決定
という順番で行っています。
最終的に行き着く手法は様々ですが、最初に両方の分析手法を知っておかないと、どういう手法が自分に良いのかわからないですよね。
ですから、次はファンダメンタル分析を勉強しましょう。
2.1.ファンダメンタル分析とは
株のファンダメンタル分析とは、業績や財務諸表から企業価値を分析し、株価を判断します。「企業価値に見合う価格まで株価は上昇(下落)する」というのがファンダメンタル分析の基本的な考え方です。次の3つの指標が代表的な指標です。
- PER(株価収益率) 利益の何倍まで株価が買われているかを表す指標
- PBR(株価純資産倍率) 企業の持つ資産に対して何倍まで株価が買われているかを表す指標
- ROE(株主資本利益率)株主のお金をどれだけ有効に使っているかを表す指標
では、これらを深く理解していくために必要な書籍を以下でご紹介していきます。
2.2.ファンダメンタル分析おすすめ書籍
『株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書』(ダイヤモンド社)

PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)など基本的な指標の解説から、四季報の裏ワザや決算短信の活用法まで幅広く網羅しています。ファンダメンタル分析をじっくり学びたい投資家におすすめです。
また、本書のユニークな所は、ファンダメンタル分析をベースとしながらも、テクニカル分析で売買ポイントを説明している点です。ファンダメンタルとテクニカルをどう結びつけて売買するのか参考になりました。ページ数が多いので、最初は気になるファンダメンタルの指標をチェックするという読み方でいいと思います。
私は決算短信の読み方、そして業績がいいのになぜ株価が下がるのかなどをこの本から学びました。実際にファンダメンタル分析を行うには『四季報』が便利です。
『四季報』(東洋経済)

四季報にはファンダメンタル分析に必要な財務諸表のデータがわかりやすくまとめられていています。また、上場企業全社の情報がまとまっているので、同業種の企業との比較も簡単にできます。ファンダメンタル分析を行う際の強い味方が四季報です。
『株で富を築くバフェットの法則』(ダイヤモンド社)

ファンダメンタル分析で最も有名な投資家はご存知でしょうか。それは、ウオーレン・バフェットです。ファンダメンタル分析を徹底して行い、株式を長期保有することで知られています。また「下げ相場は買いのチャンス」と他の投資家と反対の行動を取ることでも知られています。
2008年10月のリーマンショック。金融危機の真最中、バフェットは積極的に米国株を買っていました。長期的な見通しがあるからできることです。
ただ、暴落で買うというのはかなりの信念がなければできないことです。日頃から企業の研究を怠らない姿勢が報われるのでしょう。ファンダメンタル分析を行うならバフェット関連の本は必ず読んでおきましょう。
以上の本で銘柄選定のためのファンダメンタル分析を学んだら、次に売買タイミングをつかむためのテクニカル分析を学んでいきましょう。
3.テクニカル分析で売買タイミングをつかもう
ファンダメンタル分析で割安な銘柄を見つけたものの、実際に投資するには過去の値動きを分析して判断する必要があります。その分析手法が「テクニカル分析」です。
3.1.テクニカル分析とは
チャートを使うことから「チャート分析」とも呼ばれます。過去の値動きをチャートで表し、今後の値動きを予想します。値動きの方向性を見極める「トレンド分析」と、値動きの過熱感を見極める「オシレーター分析」があります。
例えばトレンド分析には「移動平均線」「一目均衡表」「ボリンジャーバンド」が、オシレーター系は「RSI」「ストキャスティックス」などがあります。名前だけ聞いてもよくわからないですよね。これらの指標の説明が詳しく書かれているテクニカル分析の決定版をご案内します。
3.2.テクニカル分析おすすめ書籍
『マーケットのテクニカル分析』(パンローリング)

トレンド系、オシレーター系のほとんどを網羅しているテクニカル分析の決定版です。分厚い本なので最初から読んでいくというよりは、気になるテクニカル指標の解説を読むなど辞書的な使い方をするのがいいでしょう。私は投資を始める際、まずはテクニカル分析を極めようと、この本から勉強を始めました。
分厚い本ですが、テクニカル分析にはどのような種類があるのか、そして実際の取引にどう応用できるのかを学び、注目している株のチャートを本書で確認しながら検証しました。もちろん、テクニカル分析は万能ではありません。相場環境により有効な手法は異なってきます。
しかし、実際にトレードしながら有効なパターンを確認し、合わせて株価やニュースなども記録していく。そういった日々の積み重ねがパフォーマンス向上につながります。次に、投資手法から相場心理まで詳しく書かれた本をご紹介します。
『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』(日経BP社)

デイトレードとは買った銘柄をその日のうちに決済する取引手法です。1日の値動きで利益を狙うのでファンダメンタル分析よりもテクニカル分析を重視します。うまくいけば高収益を獲得することも可能ですが、利益の値幅が中長期投資より小さいので頻繁に取引する必要があります。
「正しいトレーディングとは何か」「安定的に利益を得るにはどうしたらいいのか」などデイトレードを始める際に、どのようにすれば勝てる投資家になれるかが書かれています。特に、デイトレードを行う際の心構えがまとめられています。デイトレードでは毎日勝ち負けがはっきりするので、心理的な要素が利益を左右します。
「己を知る、己の敵を知る」など孫子の兵法にも通じる所があります。実際にトレードを行うと、決めたルール通りに取引することは困難です。まったく同じ展開はありませんし、損切りをためらうこともあります。そういった時はこの本を見返して、トレードにおいてルールを守ることや、必ず決めたポイントで決済することの重要性を思い出すようにしています。デイトレーダー必須の本です。
4.資金管理と相場心理学を学ぼう
ファンダメンタル分析とテクニカル分析で、銘柄選定と売買タイミングを学んできましたが、次は資金管理と相場心理学について学んでいきましょう。実際に投資を始めると、リスクとリターン(損失と利益)をどの程度にするのか、決めたルール通りに売買するといった規律が重要になるからです。まずは、資金管理から見ていきましょう。
4.1.資金管理を徹底しよう
ファンダメンタル分析で銘柄を選定し、テクニカル分析で売買タイミングをはかりますが、それでは十分ではありません。「株数はどれぐらいにすればいいのか」「損失はいくらまで大丈夫なのか」といったリスクコントロール、つまり資金管理が次の課題となります。
「資金管理といっても難しそうでよくわからない」とお考えの方も多いと思います。そこで、私が資金管理を学ぶのに役立った書籍をご案内します。
4.2.資金管理おすすめ書籍
『投資苑』(パンローリング)

投資苑の資金管理では「まずサバイバルすることを第一の目標とせよ」と書かれています。投資をする目的は利益を得ることですが、損失をだす時もあります。利益目標を立てた時に、どの程度の損失まで許容できるのか、どのように損切りをすればいいのかが書かれています。この本で学んだうえで、自分の資金でどのぐらい株数を買ったらいいのか、損失はいくらにすればいいのかを決めるようにしましょう。資金管理を学んだら、次は相場心理学です。
4.3.相場心理学を学ぼう
実際に投資を始めると、ルール通りに取引ができない、損失をだすと冷静な判断ができなくなるなど、様々な壁にぶつかります。株式投資においてはルールを守る、感情をコントロールするなど心理的な要素が取引手法より大切だと気づきます。取引がうまくいっていても、スランプの時期は必ず来るので、投資心理学の本は必ず読んでおきましょう。おすすめの本をご紹介します。
4.4.相場心理学おすすめ書籍
『ゾーン』(パンローリング)

相場心理学の本です。恐怖や悩み、結果を気にせずに淡々と取引だけする、つまり「ゾーン」に達した人が勝つ投資家になる。そして、マーケットよりも自分自身を知ることが大切だと書かれています。株式投資でうまくいかない時は必ず読み返してほしい本です。スポーツの世界でも極限の集中状態をゾーンと呼んでいます。「ボールが止まって見える」や「周りの選手の動きがゆっくり見える」などといわれています。
さすがに相場の値動きがゆっくり見えたことはありませんが、集中していると個別株の材料やチャートなどを頭に入れながら、複数の銘柄を取引することもできます。最近ではほとんどしませんが、以前はスキャルピング(数秒で決済する取引)で1日に何十回も取引していると、気づいたら何時間もたっていたということがありました。そういう時はパフォーマンスも良好でした。常に集中するのは難しいものの、朝の1時間は集中するとか、値動きが緩慢になる昼前後はリラックスするなどメリハリをつけるようにしています。
次に、実際にトップトレーダーがどのように資金管理を行い、マーケットに対峙しているかが分かる本をご紹介します。
『マーケットの魔術師』(パンローリング)

トップトレーダー達のインタビュー集です。米国市場がメインであることや、インタビュー時期が古いので直接使えるトレード手法を見つけるというのは難しいものの、マーケットに対する考え方や、取引手法の開発方法など参考になる部分が多くあります。
後に伝説の投資家集団タートルズを育成したリチャードデニスが特に印象に残っています。トレンドフォロー(順張り)を得意としていて、資金管理の重要性を説いています。読み返すたびに新たな発見がある本です。トップトレーダー達の資金管理や投資家心理について学ぶことができます。
以上、株の勉強に役立つ書籍をご紹介してきました。次の章では、実際に株取引を行う時に参考にしている新聞や雑誌、サイトなどをお伝えします。
5.株の勉強のための情報収集
株の勉強に役立つ情報収集の方法をお伝えします。書籍では株のことを体系的に学ぶことができますが、最新の相場動向を把握することは難しいですよね。新聞や雑誌、ネットなどで常に最新の情報を仕入れていきましょう。そうすることで自分の投資手法の改善点や相場感が身についていきます。
私も投資歴は20年になりますが、今でも多くの情報に接することで、新たな投資アイデアやトレード手法の改良点を見つけることができています。マーケットは生き物です。常に最新情報に接するようにしましょう。最初は情報の信頼性が高く、速報性もある新聞です。
5.1.新聞で株価を動かす材料を見つけよう
日本経済新聞

まずは日本経済新聞をしっかり読むようにしましょう。マーケットがどう動いたのか、個別株の材料は何なのかを意識するようにします。やはり日本経済新聞は多くの人が見ているので、チェックが必要です。それは、日本経済新聞の記事が株価を動かす材料になることが多いからです。
私もツイッターなどネットで個別株の材料を見ていますが、日本経済新聞の記事なのか、会社が正式に発表したものなのかを必ず確認して売買するようにしています。きちんとした情報源で株価材料をチェックするようにしましょう。
なお、楽天証券で口座を開くとマーケットスピードで日本経済新聞の記事が無料で読めるのでおすすめです。次に雑誌をご案内します。
5.2.雑誌で業界展望や中長期の見通しをたてよう
dマガジン

雑誌はdマガジンがおすすめです。「東洋経済」や「週刊ダイヤモンド」「エコノミスト」といった週刊誌の他、「ダイヤモンドZai」や「日経マネー」など月刊誌も読むことができます。雑誌にも投資のヒントが満載ですのでチェックするようにしましょう。
私は特にエコノミストを参考にしています。AIやフィンテックなどテーマ株について詳しく書かれています。雑誌は新聞やネットなどと異なり速報性はありませんが、業界動向や中長期の見通しを立てる際に役立ちます。次は、毎日見ているテレビ番組です。
5.3.テレビで投資情報を整理しよう
テレビ東京系列
BS
テレビはじっくり見るというよりは、音声を聞き流しています。そして、気になったテーマの時だけ見るようにしています。難しいテーマでもテレビのニュースではわかりやすく解説してくれるので参考になります。モーニングサテライトやワールドビジネスサテライトは多くのマーケット関係者が見ているので、取り上げた企業が翌日注目されることがあります。私はテレビ以外にも、インターネット放送を毎日聞いています。
5.4.インターネット放送でリアルタイムの相場の値動きを把握しよう
取引時間中になりますが、無料なのでおすすめです。個人的にはストックボイスの中島健吉キャスターを一番参考にしています。長年の証券会社勤務時代の経験に加え、マーケットに対する深い洞察力は色々勉強になります。
インターネット放送も聞き流しがメインです。両方同時に聞くこともできますが、私の場合は集中力散漫になってしまうので午前は8時30分からストックボイス、午後はラジオNIKKEIを聞いていることが多いです。
5.5.投資サイトで投資に役立つ情報をゲットしよう
次に、私が株式投資を行う際に参考にしている投資サイトを2つご紹介します。
四季報オンライン

四季報の内容に加え、個別企業のニュースやおすすめ銘柄などが掲載されています。同時にチャートや適時情報なども確認できるので非常に便利です。日経新聞と並び、四季報の情報は最も信頼性が高い情報の1つと考えています。気になる銘柄があれば、必ず四季報オンラインでチェックするようにしています。
株探(kabutan)

企業の決算速報や注目ニュースが掲載され、テーマ株などの特集記事も役立ちます。特に決算時期は「本日のサプライズ決算」を参考にしています。適時情報開示も「決算」や「自社株取得」「エクイティ」等にわかりやすく分類されていて便利です。これらの投資サイト以外にもネットではブログ・ツイッターを参考にしています。
5.6.ブログ・ツイッターで他の投資家の見方を学ぼう
利益を上げている投資家のブログやツイッターをチェックするのも大切です。他の投資家がどの銘柄に注目しているのか、どのように投資しているのかを学ぶようにしましょう。
を参考にしてみてください。
これらの情報をすべて覚えておくことは困難です。ですから、私はエバーノートを利用して情報を整理しています。
5.7.エバーノート(Evernote)に保存して情報を整理する
情報整理にはエバーノートが便利です。
多くのサイトや新聞・雑誌があるので、すべての記事に目を通すことは難しいと思います。私は気になるタイトルがあったらとりあえずエバーノートに保存して、時間があるときに後で見るようにしています。また、投資アイデアが浮かんだ時に検索機能も充実しているので、まとめて関連記事を読むこともできるのでおすすめです。
まとめ
ファンダメンタル分析やテクニカル分析のすべての分野を学ぶことは大変なことかもしれません。しかし、自分の投資スタイルを決めるためにも幅広い分野の知識は必要です。
まずは全体像を入門書で把握し、自分の気になった投資手法で実際に投資を始めてみましょう。ただ、それと並行して他分野の勉強も継続したほうが投資力の向上につながります。私も20年近く投資をしていますが、勉強することはまだまだあります。しかし、それを大変だとは思っていません。これからも投資の勉強を続け、さらなるパフォーマンス向上を目指していきます。