一目均衡表は、過去・現在・未来の時間的要素を取り入れたテクニカル指標(インジケータ)の一つです。
価格の上げ下げを予測するテクニカル指標が多い中、一目均衡表をマスターすると、「いつ」相場が転換するかがつかみやすくなります。
一見、線がたくさんあって難しそうに見えますが、考え方はとてもシンプルです。
そこで、この記事では、一目均衡表の基本から実際のトレードでの活用方法まで解説します。なお、FXのチャートを使って説明しますが、株式投資にも使えるので、どちらのトレーダーも、ぜひ参考にして下さい。
執筆者
ぶせな
FXの専業トレーダー。認定テクニカルアナリスト。 本格的にFXを開始してから10年で1億6,500万円の利益を突破。著書に、『最強のFX 1分足スキャルピング』『最強のFX 15分足デイトレード』(共に、日本実業出版社)がある。ツイッターアカウントは、『@busena_fx』、ブログは『億トレーダーぶせなブログ』。
1.一目均衡表でできること
一目均衡表は、一目 山人(いちもく さんじん)こと、故・細田悟一氏が1937年に発表した、日本発のテクニカル指標です。80年以上にわたって使われており、世界的にも有名です。
考え方のベースになっているのは、「相場は、買い手と売り手の均衡が崩れた方向に動く」というもので、「均衡」が崩れれば相場が動くのは「一目瞭然」であることから、「一目均衡表」と名付けられました。つまり、売買ポイントを見つけるには均衡を測ればよいということです。
どういうことか、まずは、ローソク足しか表示していない次のチャートを使って説明します。

上昇トレンドの後に、レンジ(もみ合い)相場になっています。しかし、トレンドとレンジの流れはつかめても、どこで売買したらいいのかイマイチ分かりませんね。
それでは、先ほどのチャートに、一目均衡表を表示させてみます。

線がいっぱいあって、複雑に見えるかもしれませんが、読み方を覚えれば、まさしく一目(ひとめ)で売買ポイントが見えてきます。
そもそも、チャート分析は、価格そのものに焦点が当てられがちです。しかし、一目均衡表は、時間の経過によって価格が変動する、という考え方がベースになっているのが特徴です。
そして、一目均衡表をマスターすると、例えば、レンジ相場をブレイクするのは「いつ頃か」まで予測できるようになります。つまり、価格の上げ下げの予測だけでなく、「いつから」という時間的な要素まで考えると、最適なタイミングでポジションを取ることができるのです。
2.一目均衡表の表示方法
一目均衡表は有名なテクニカル指標なので、ほとんどのFX会社や証券会社の取引ツールに標準装備されています。
ここでは、私が使っているMT4を使って、一目均衡表を表示させる方法をお伝えします。
次の画像がMT4なのですが、①左上のナビゲーターをクリックすると、インジケータの一覧が表示されます。

そして、②「トレンド」の上から4つ目に、「Ichimoku Kinko Hyo(一目均衡表)」があるので、これを選択して、チャート上にドラッグ&ドロップするか、ダブルクリックします。
すると、パラメータ(数値)の設定画面が表示されますが、数値を変えずに「OK」をクリックすると、チャートに一目均衡表が表示されます。
ぜひ、お使いのFX会社や証券会社のツールで表示させてみて下さいね。
3.一目均衡表の5つの線の計算方法
一目均衡表は、次の5本の線から構成されています。計算方法と併せてご覧下さい。ただし、計算方法を覚えようとすると大変なので、期間が異なった移動平均線のようなものとお考え下さい。
名称 | 説明(計算方法) |
①転換線 | (過去9日間の高値+安値)÷2 |
②基準線 | (過去26日間の高値+安値)÷2 |
③遅行スパン | 現在の価格を26日前(過去)の位置に表示 |
④先行スパン1 | (転換線+基準線)÷2 |
⑤先行スパン2 | (過去52日間の高値+安値)÷2 |
名称 | 説明(計算方法) |
①転換線 | (過去9日間の高値+安値)÷2 |
②基準線 | (過去26日間の高値+安値)÷2 |
③遅行スパン | 現在の価格を26日前(過去)の位置に表示 |
④先行スパン1 | (転換線+基準線)÷2 |
⑤先行スパン2 | (過去52日間の高値+安値)÷2 |
そして、④先行スパン1と⑤先行スパン2の空間を「雲(くも)」といいます。
それでは、上の5つの線と雲を、チャートで確認してみましょう。

なんとなくイメージはつきましたか?
今度は、計算に使われている数字に注目してみましょう。出てきた数字は、①転換線、②基準線、③遅行スパン、⑤先行スパン2の「9、26、52」の3つだけでした。その中でも、①②⑤の3つの計算式は、「(過去◯日間の高値+安値)÷2」という形で共通です。
異なるのは、「9、26、52」の数字で、「短期・中期・長期」の3つのトレンドを捉えようとしていることが想像できます。
少し難しくなりましたが、計算方法を知らなくても、チャートで自動表示できますので、ご安心下さい。計算式を覚えるより、一目均衡表を見た時に、どこが売買ポイントなのかを瞬時に分かるようになることのほうが大切です。
ただし、「9、26、52」の数値は一目均衡表の中枢となる期間設定で、他のインジケータでもよく採用されるので、覚えておいて損はないでしょう。
4.一目均衡表の見方(売買シグナル)
この章では、一目均衡表の売買シグナルを整理してお伝えします。
《一目均衡表の買いシグナル》
- ローソク足が雲を上抜けたら買い
- 転換線が基準線を上抜けたら買い
- ローソク足が基準線より上なら強気
- 遅行スパンがローソク足を上回ったら買い
- 三役好転したら買い
ちなみに、売りの場合は、この反対になります。一つ一つ詳しく解説していきます。
4.1.ローソク足が雲を上抜けたら買い
一目均衡表を表示させて最初にやるべきことは、雲を見て、一番大きな相場の流れを把握することです。見方は簡単で、ポイントは、ローソク足が雲より上か下かです。
- ローソク足が雲より上にあるなら「上昇トレンド」
- ローソク足が雲より下にあるなら「下降トレンド」
- ローソク足が雲の中にあるなら「レンジ相場」
これなら、数秒で確認できますよね。次のチャートをご覧下さい。

ローソク足が雲より上でずっと推移して上昇トレンドでしたが、雲の中に入ってレンジ相場に移行したことがわかると思います。
また、雲は、相場の大局を示すだけでなく、相場転換のサインにもなります。具体的には、ローソク足が雲をブレイクするタイミングです。
- ローソク足が雲を下から上へ突き抜ければ「買い転換」
- ローソク足が雲を上から下へ突き抜ければ「売り転換」
- 雲は支持帯(サポート)と抵抗帯(レジスタンス)としても機能する
- 雲の厚みがあれば、支持帯や抵抗帯の力は強まる
- 雲を構成している先行スパン1と先行スパン2が入れ替わる時は、相場の転換点になる可能性がある
ちなみに、最後の、先行スパン1と先行スパン2の入れ替わりは「雲がねじれる」ともいいます。この雲のねじれを、実際のチャートで見てみましょう。

ご覧のように、黄色い丸の箇所で、先行スパン1と先行スパン2が交差していますね。この場合は、トレンド相場からレンジ相場に移行したと考えられます。
このように、雲だけでも、様々な相場のヒントが読み取れます。ただし、トレンド相場やレンジ相場に移行したのかなどの相場の転換は、相場状況によって見方が変わるので、慎重に判断するようにしましょう。
4.2.転換線が基準線を上抜けたら買い
転換線は、基準線と一緒に見ることがポイントで、考え方は移動平均線と同じです。
- 転換線が、基準線を下から上に突き抜けたら「買い(=好転、ゴールデンクロス)」
- 転換線が、基準線を上から下に突き抜けたら「売り(=逆転、デッドクロス)」
なお、強烈な上昇トレンドが発生した時は、転換線が押し目(上昇から一時的に下落すること)の限界になります。反対に、下降トレンドの場合は、戻り(下落から一時的に上昇すること)の限界になります。
強烈かどうかの判断は、転換線とローソク足の”乖離”に注目します。具体的には、上昇トレンドの場合、ローソク足が転換線から大きく乖離していれば、それだけ強烈なトレンドが発生していることになります。
4.3.ローソク足が基準線より上なら強気
基準線は、その名の通り、流れの基準で、相場が上昇するためには基準線の上昇が必須です。基準線の使い方は、ローソク足との位置関係に注目します。
- ローソク足が、基準線より上なら「強い相場」
- ローソク足が、基準線より下なら「弱い相場」
なお、強烈なトレンドでなくても、通常のトレンドが発生した時は、基準線が押し目の限界になります。
4.4.遅行スパンがローソク足を上回ったら買い
遅行スパンは、現在の価格を26日前(過去)の位置に表示させただけの線で、現在の価格と26日前の価格を比べて強弱を判断します。
- 遅行スパンが、(26日前の)ローソク足を上回ったら「買い」
- 遅行スパンが、(26日前の)ローソク足を下回ったら「売り」
4.5.三役好転したら買い
一目均衡表で最も期待値が高い注目すべき形は、「三役好転」です。この三役好転とは、次の3つの条件が揃った状態をいいます。上昇トレンドの場合、この3つの条件が揃ったら、迷わずに「買い」です。
- 転換線が基準線を上回り、基準線が上向きか横ばい
- 遅行スパンが26日前のローソク足を上回る
- 現在のローソク足が、雲より上にある
ちなみに、下降トレンドの場合は反対に読み替え、迷わずに「売り」になります。
それでは、先ほどと同じチャートを使って、三役好転を見てみましょう。

Aが、三役好転です。少し見にくいかもしれませんが、3つの条件を全て満たしています。ちなみに、Bが、遅行スパンが26日前のローソク足を上回った箇所です。三役好転が発生してから、実際に強い上昇トレンドになっていることがわかると思います。
5.一目均衡表の3大理論
次に、一目均衡表の3大理論といわれるものをお伝えします。
5.1.時間論
冒頭でお伝えしたように、一目均衡表は、時間の流れを重視しています。そして、時間の流れから、相場の転換点を予測することが一目均衡表を使う目的です。
時間論の基本は、「基本数値」である「9、17、26」で、これは、開発者の一目 山人(いちもく さんじん)氏が長年かけて編み出した、相場のリズム(幅)を測るカギになる数値です。
例えば、相場は、9日、17日、26日のリズムで上下に動いているともいわれており、天底を推測するヒントになります。詳しい説明は省きますが、実は、この基本数値が、基準線や転換線の計算、遅行スパンや先行スパンなどの配置にも関わっています。
興味がある方は、時間論についての理解も深めてみて下さいね。
5.2.波動論
波動論とは、簡単にいうと、「ローソク足の動き方」のことです。具体的には、ローソク足は、アルファベットの「I波動・V波動・Y波動・P波動・N波動・S波動」の6つの波動を描きながら推移するという考え方に基づいています。
次のイメージ図でご確認下さい。

波動論では、このようなローソク足の動き方(波動)をとらえて、「いつ」エントリーするかに重点を置きます。
5.3.水準論
水準論とは、簡単にいうと、「値幅の出し方」のことです。先ほどの波動論で「いつ」エントリーするかわかったら、水準論で「どこで」イグジット(利益確定)するかわかるようになります。
波動論と水準論は連動しており、この2つをとらえることで、相場の転換点で形成されるチャートパターンを見抜けようになります。
ちなみに、この値幅観測には「N計算・E計算・NT計算・V計算」の4つの計算方法があります。
次のイメージ図でご確認下さい。

6.一目均衡表の使い方のコツ
最後に、一目均衡表を使いこなすためのコツを2つお伝えします。
6.1.上位足ほど信頼が高い(日足が最適)
一目均衡表は、上位足ほどシグナルの信頼度が上がり、日足が最適です。
なぜ日足が最適なのかというと、週足や月足だと、期間が長いので売買ポイントが広くなり過ぎるからです。また、日足より短い1分足や5分足の分足だと、ダマシに合う確率が増えます。
特に、三役好転は、上位足ほど機能しやすくなります。
その理由は、長い時間をかけて一目均衡表を形成すると、それが否定されるのにも時間がかかるからです。また、節目となるような価格帯を見ているトレーダーが多くなると、実際にその通りの値動きをするケース多くなります。
もちろん、好みにもよりますが、デイトレードでは日足を中心にして、それよりも短い1時間足や15分足など、他の時間軸を細かく分析していくことをおすすめします。
6.2.他のテクニカル指標と組み合わせる
一目均衡表だけでも、相場の流れをつかむことはできます。しかし、高勝率トレードを目指すなら、一目均衡表と他のテクニカルを組み合わせることをおすすめします。
なぜなら、異なるテクニカルの根拠が2つ以上重なるポイントこそ、テクニカル分析がより機能しやすくなるからです。
このことについては、一目均衡表に限った話ではありません。その理由は、1つのインジケータに絞ってしまうと、そのインジケータ次第のトレードになってしまうからです。
複数のエントリーの根拠を探すのは大変かもしれません。しかし、習慣化することで、1つの根拠の時より自信を持って、大きな通貨量でエントリーして利益を伸ばせるようになります。
まとめ
この記事でお伝えした、一目均衡表のポイントを5つに集約すると、次のようになります。
《一目均衡表のポイント》
- 本質は時間論で、相場の転換点を予測できる
- 雲で相場の大局をつかむ
- 三役好転は最も期待値が高い売買タイミング
- 基本は日足で、他のテクニカル指標と組み合わせて使うと勝率アップ
- 特にデイトレードで有効
ぜひ、一目均衡表を活用して、投資で成功をグッと近づけましょう。