移動平均線とは、FXや株式のチャートで、ある一定期間の終値の平均値を線にしたテクニカル指標(インジケータ)で、ローソク足と合わせて見ると、相場の流れがわかりやすくなります。
この移動平均線は、多くのトレーダーが見ているので、法則通りに動くことが多く、投資を始めたら、最初に知っておくべきテクニカル分析といっても過言ではありません。
そのため、初心者をはじめ、これから投資で勝てるルールを作りたいと考えている方は、ぜひ最後までお読みいただき、基本から活用方法までしっかり習得して下さいね。
執筆者
ぶせな
FXの専業トレーダー。認定テクニカルアナリスト。 本格的にFXを開始してから10年で1億6,500万円の利益を突破。著書に、『最強のFX 1分足スキャルピング』『最強のFX 15分足デイトレード』(共に、日本実業出版社)がある。ツイッターアカウントは、『@busena_fx』、ブログは『億トレーダーぶせなブログ』。
1.移動平均線の基本
まず最初に、移動平均線の基本をしっかり押さえましょう。
1.1.移動平均線の役割
移動平均線は、「ある一定期間」の終値の平均値をつなぎ合わせた線です。
実際のチャートで見てみましょう。下図はローソク足チャートで、青い線が移動平均線です。

ローソク足だけのチャートより、移動平均線を表示したほうが、相場の流れがわかりやすくなると思いませんか?
チャートを見る時は、このように、ローソク足と移動平均線をワンセットで見て相場の流れを確認することで、チャート分析の精度を高めることができます。
このローソク足と移動平均線は、“価格の推移”を表している点は共通ですが、厳密には、次の点で異なります。
《ローソク足と移動平均線の違い》
- ローソク足:設定した期間の価格の推移(始値・終値・高値・安値)を表したもの
- 移動平均線:一定期間の終値の平均値を点で示し、線で繋いで価格の推移を表したもの
ただし、両者の違いについてあまり詳しく考える必要はなく、チャート上で、ローソク足と移動平均線をセットで見て、相場の流れを把握できれば大丈夫です。
1.2.計算方法と表示方法
移動平均線の本質を理解するために、計算方法を確認しておきましょう。
ここでは、5日移動平均線を作ってみます。過去5日の終値の平均値が、今日の移動平均線の価格になります。まず、7営業日分の終値が、次の通りだったと仮定します。
日数 |
終値 |
5日間の平均 |
1日目 |
100円 |
|
2日目 |
110円 |
|
3日目 |
115円 |
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4日目 |
120円 |
|
5日目 |
115円 |
①112円 |
6日目 |
120円 |
②116円 |
7日目 |
130円 |
③120円 |
最初に、はじめの5日間(1日目から5日目)の終値の平均値を計算します。
(100+110+115+120+115)÷5=112…①
そして、次の5日間(2日目から6日目)の終値の平均値を計算します。
(110+115+120+115+120)÷5=116…②
同様に、次の5日間(3日目から7日目)の終値の平均値を計算します。
(115+120+115+120+130)÷5=120…③
このように、直近の5日間の終値の平均値を計算し、①112円と②116円と③120円の点を滑らかにつなげた線が、移動平均線です。
この計算を繰り返し行うと、移動平均線は完成します。ただし、いちいち計算しなくても、チャートソフトが自動で作成してくれるので、心配する必要はありません。
1.3.期間別の種類
チャートソフトで、ローソク足の時間軸を変更することで、それに応じた移動平均線が表示されます。そして、複数の線を表示させることで、様々なトレード判断が可能になります(詳しくは後述)。
ここでは、よく使われる移動平均線の時間軸(期間)を紹介します。
《よく使われる移動平均線の期間設定》
・分足:5分、10分、15分、20分など
・日足:5日、25日、75日、200日
・週足:13週、26週、52週
・月足:12ヶ月、24ヶ月
分足・日足・週足・月足のどの期間の移動平均線を表示させるかは、トレードスタイル次第です。ここでは、トレードスタイルごとによく使われる足を見てみましょう。
ちなみに、分足の中にも、1分足・5分足・15分足・30分足などがあります。また、「時間足」といって、1時間足や4時間足、8時間足という足もあるので、いかに最適な時間軸を見つけられるかがポイントになってきます。
ただし、1つのローソク足だけを見るより、複数の時間軸のローソク足を見ることで、短期・中期・長期のトレンドが把握しやすくなります(=マルチタイムフレーム)。
ちなみに、上記の5日や25日という期間は、チャートソフトによって、10日や20日などに変更可能です。どの数字が良いというものはなく、任意に設定できます。
1.4.三種類の移動平均線
移動平均線には3種類あり、計算方法が若干異なります。一つ一つ解説します。
①単純移動平均線(SMAまたはMA)
文字通り、ある一定期間の終値の平均値を単純につないだ移動平均線です。
移動平均線といったら、通常、この単純移動平均線を指します。先ほど、計算例で示したのもこちらです。
②加重移動平均線(WMA)
単純移動平均よりも、直近の価格に重点を置いた移動平均線です。
計算方法と詳しい意味は、トレードウィザードの加重移動平均線の解説ページがわかりやすいので、参考にして下さい。
③指数平滑移動平均線(EMA)
単純移動平均線や加重移動平均よりも早く動くのが特徴の移動平均線です。
計算方法と詳しい意味は、ヒロセ通商の指数平滑移動平均線の解説ページがわかりやすいので、参考にして下さい。
ちなみに、私は、この指数平滑移動平均線(EMA)を使っています。なぜなら、より直近の値動きを重視したいからです。このEMAを使うことで、スキャルピングとデイトレードの両方の手法を構築することができました。
しかし、どれを使うのが正解というのはなく、自分のトレード手法に合っていて、最も優れたパフォーマンスが出せるものを探して使うことをおすすめします。正直、どの移動平均線を使っても、そこまで大差はないでしょう。
ポイント!
移動平均線がどのようなものか、興味を持つことが使いこなすために重要です。まず、基本を押さえておきましょう。
2.移動平均線でまず見るべきポイント
ここでは、チャートを開いた時に最初にチェックすべき移動平均線のポイントを2つ解説します。
2.1.ローソク足が上か下か
チャートを開いたら、まず、ローソク足と移動平均線の位置関係を見てトレンドを確認します。
基本的な見方は、次の通りです。
《ローソク足と移動平均線の位置関係》
・ローソク足が移動平均線より上:強気相場(上昇トレンド)
・ローソク足が移動平均線より下:弱気相場(下落トレンド)
・ローソク足と移動平均線が重なっている:横ばい相場(もみ合い)
《ローソク足と移動平均線の位置関係》
・ローソク足が移動平均線より上
⇒ 強気相場(上昇トレンド)
・ローソク足が移動平均線より下
⇒ 弱気相場(下落トレンド)
・ローソク足と移動平均線が重なる
⇒ 横ばい相場(もみ合い)
次のチャートで確認しましょう。

実際にそうなっていますよね。
このように、ローソク足だけを見るよりも、移動平均線と組み合わせて位置関係を見たほうが、トレンドが把握しやすくなります。
移動平均線は、ある一定期間の価格の平均なので、移動平均線より上で価格が推移しているということは、その期間で買った人のほとんどが儲かっている状態です。そのため、売りが少なく、買い注文がどんどん入って上昇トレンドを形成しやすくなります(下落トレンドは、この逆)。
2.2.傾きでトレンドの強さを確認
移動平均線とローソク足との位置関係を確認したら、次に、移動平均線の傾きを見てトレンドの強さを把握します。
基本的な見方は、次の通りです。
《移動平均線の傾きによる判断》
・移動平均線が右肩上がりで角度が急:上昇トレンドの力が強い
・移動平均線が右肩下がりで角度が急:下降トレンドの力が強い
・移動平均線が水平:横ばいでトレンドの強弱は判断できず
《移動平均線の傾きによる判断》
・移動平均線が右肩上がりで角度が急
⇒ 上昇トレンドの力が強い
・移動平均線が右肩下がりで角度が急
⇒ 下降トレンドの力が強い
・移動平均線が水平
⇒ 横ばいでトレンドの強弱は判断不可
何か突発的な材料(ニュース)が出て、急騰もしくは急落した場合は、移動平均線も少し遅れて急な角度になります。この傾きが、トレンドの強さの目安になります。
ポイント!
- ローソク足と移動平均線の位置関係を見る
- 移動平均線の傾きでトレンドの強さを把握する
3.移動平均線の活用法
この章では、移動平均線を使って相場のトレンドを判断する方法をお伝えします。
3.1.短期・中期・長期の3本を使う
トレンドには、短期・中期・長期の3つがあります。これに合わせて、移動平均線も短期・中期・長期の3本を表示させることで、1本で使うより相場の流れが把握しやすくなります。
実際に、私のデイトレード手法のチャートでも、次の3本の移動平均線を表示しています。
《私のデイトレードのチャート設定》
・短期:25日移動平均線(EMA)
・中期:75日移動平均線(EMA)
・長期:200日移動平均線(EMA)
これが絶対というわけではありませんが、多くの投資家が同じ組み合わせで相場を見ています。そのため、同じものを見たほうが、市場参加者が何を考えているかを察知しやすい上、法則通りに動く確率が高くなります。
ちなみに、私が移動平均線を4本以上使わないのは、チャートがごちゃごちゃして見にくくなり、チャート分析をしていて疲れるからです。私の考えでは、チャート分析は、上記の3本の移動平均線(EMA)で充分です。
3.2.移動平均線による判断
次に、3本の移動平均線を使った相場の見方を解説します。次のチャートをご覧下さい。

大きな白いボックスで囲んだAでは、ローソク足が3本の移動平均線よりも上にあるので、短期でも中期でも長期でも、上昇トレンドであることがわかります。
このような(上昇)トレンド相場では、相場の流れに乗って、安く買って高く売る「買い戦略」が有効です。
一方、右側の白いボックスのBでは、ローソク足が25EMA(黄色)と75EMA(青色)よりも下に、そして、200EMA(赤色)より上にあります。
したがって、長期では強気相場ですが、短期・中期では弱気相場だと判断できます。
このBのような、はっきりトレンドが出ていないレンジ相場の時に買い戦略で短期トレードをしても、勝てる可能性は低いです。
そのため、私がFXのデイトレードをする時は、最初に3本の移動平均線からトレンドを把握し、トレンド相場で売買することを前提にしています。
ポイント!
移動平均線を、短期・中期・長期組み合わせで見るという視点を身に付けると、相場をより正確に分析できるようになります。
3.3.レンジ相場のシグナル
先ほどのAのトレンド相場のように、3本の移動平均線が角度をつけて上昇していればわかりやすいのですが、判断に迷うのは、BやCなどのレンジ相場の時だと思います。
そこで、この項では、レンジ相場を形成するシグナルをお伝えします。早速、次のチャートをご覧下さい。

白いボックスの局面では、3本の移動平均線が収束して水平になり、レンジ相場になっていることがわかります。ローソク足は移動平均線の間に挟まれ、ボラティリティ(価格変動の度合い)も小さくなり、行き場を失っている状態です。
このように、トレンドが弱まり、移動平均線の角度が緩やかになると、3本の移動平均線が行き場を失うかのように収束して水平になり、レンジ相場になります。
特に、長期の200EMA(赤色)が水平の時は、レンジ相場の強いシグナルとなり、私は積極的な売買は控えるようにしています。
では、私がなぜ200EMAに注目するかというと、一番長い200EMAが水平ということは、それだけ長い期間もみ合い相場が続いており、一番大きな相場の流れを表す移動平均線だからです。
このように、長期の200EMAの”傾き”に注目すると、トレンドかレンジか、すぐに判断できるようになります。
ぜひ、改めてご自身のチャートで確認してみて下さい。
3.4.短期と中期を使った売買判断
次に、こちらのチャートをご覧下さい。

Aでは、ローソク足が25EMA(黄色)に触れて反落しています。
Bも同様に、接触して反落しています。
そして、Cでは、ローソク足は25EMA(黄色)では反落しませんでしたが、75EMA(青色)に接触して、その後、下降トレンドを強めています。
また、Dでは、ローソク足は75EMA(青色)を上に突き抜けそうになりましたが、長期の200EMA(赤色)の傾きが下向きで下落トレンドが強いためか、やはり反落してしまいました。
このように、短期と中期の移動平均線は、ローソク足が反転するポイント(=支持帯/抵抗帯)として機能しやすくなります。
相場に絶対はありませんが、トレンドが強いほど、この傾向が強くなります。
3.5.長期を使った売買判断
もう1つチャートをご覧下さい。

短期の25EMA(黄色)と中期の75EMA(青色)の傾きはずっと上向きで、相場は上昇トレンドでした。
しかし、右側の白丸の箇所で、ローソク足が長期の200EMA(赤色)を下抜けると、ローソク足全てが移動平均線の下になり、それまでの上昇トレンドは終了しています。
この時、200EMAは水平になっていますね。
200EMAが水平になった時、そのトレンドは終了したと考えて良いでしょう。このように、長期の200EMAは、トレンド終了の根拠として機能しやすい特徴があります。
ただし、注意したいのは、これは上昇トレンドが終了したというシグナルであって、下降トレンドが始まるシグナルではないということです。
そのため、このような局面で安易に売り注文を出してはいけません。あくまでも、「上昇トレンドがいったん終わったのではないか?」という程度の意識に止め、レンジ相場になる可能性も排除してはいけません。
ポイント!
ローソク足と合わせて、3本の移動平均線の傾きを見る習慣を付けましょう。慣れてくると、チャートを見た時にすぐに相場の流れがつかめるようになります。
4.移動平均線のチャートパターン
最後に、トレードで特に有効な移動平均線のチャートパターンを4つご紹介します。
4.1.ゴールデンクロスとデッドクロス
ゴールデンクロスとデッドクロスは、移動平均線の交差から読み取る相場転換のシグナルです。それぞれの意味は、次の通りです。
- ゴールデンクロス:短期MAが長期MAを下から上に突き抜ける
- デッドクロス:短期MAが長期MAを上から下に突き抜ける
次のチャートで確認してみましょう。

AとCの黄色い丸の箇所でゴールデンクロスが現れ、上昇トレンドの起点になっています。
また、Bの白い丸の箇所でデッドクロスが現れ、下落トレンドの起点になっていますね。
ただし、これらはあくまでも相場転換の可能性を示すシグナルであり、確実に相場転換するとは限らないので、ご注意下さい。実際の相場転換より遅れてサインが発生したり、発生してもまた元のトレンドに戻るような”ダマシ”も多いので、他の根拠も考慮して使う必要があります。
4.2.パーフェクトオーダー
パーフェクトオーダーとは、短期・中期・長期の3本の移動平均線が順番にキレイに同じ方向に並んで、トレンドが発生している状態のことです。
このパーフェクトオーダーが現れると、下のチャートのように、典型的なトレンドが発生して、売買チャンスになりやすく、私が信頼しているチャートパターンの一つでもあります。

4.3.移動平均線乖離率
移動平均乖離率とは、現在の価格が移動平均線からどれぐらい離れているかをパーセンテージ(%)で表したものです。
下のチャートのAの白丸の箇所のように、価格が移動平均線から大きく乖離(オーバーシュート)すると、バネのように元の水準に戻ろうとする力が働きます。

この乖離具合いを、移動平均線乖離率で客観的に判断するのです。
上記のような相場の特性を利用すると、逆張りで勝率の高いトレード戦略を立てることも可能になります。詳しくは、私のスキャルピングの具体的な手法を解説した『FXのエンベロープで1億円以上稼いだ具体的な使い方』をご覧下さい。
4.4.グランビルの法則
グランビルの法則とは、移動平均線と価格の位置関係に着目して売買のタイミングを探る、昔からある有名な法則です。チャートの法則なので、どのトレード手法も基本となるものです。例えば、トレード手法にルールを追加するなど、色々と応用できます。
知ったところですぐ勝てるようになるものではありませんが、値動きの原則として知っておいて損はありません。詳しくは、こちらの大和証券のサイトの解説を参考にして下さい。
ポイント!
移動平均線の基本を知り、その上で他のテクニカル指標も合わせることで、より確度が高いトレードが可能になります。
まとめ
最後に、この記事のポイントを5つに集約すると、次のようになります。
《この記事の5つのポイント》
1. ローソク足と移動平均線の位置関係に注目する
2. 短期・中期・長期の3本の移動平均線を使う
3. チャートを開いたら、最初に3本の移動平均線の傾きを見る
4. 長期の200EMAは、3本の中で簡単に流れがつかめる
5. 他のテクニカル指標と組み合わせて使う
ぜひ、移動平均線を活用してトレンドを把握し、トレードに活かして下さい。