第1章 お金の土台 1-2・読む時間 約6分・最終更新 2026年10月28日
生活防衛資金はいくら必要?|目安の決め方と、置いておく場所


「生活防衛資金を貯めてから投資を、とよく聞くけれど、いくらあればいいの?」「せっかく貯めたお金を、預金に寝かせておくのはもったいない気がする」。そんなふうに迷っていませんか。
生活防衛資金は、増やすためのお金ではなく、投資を続けるためのお金です。前の回(毎月いくら残るかを知る)で毎月の生活費が分かっていれば、額は簡単な計算で決められます。この回では、額の決め方と置き場所を、公式の情報で確かめながらまとめます。
この回でわかること
- 生活防衛資金が、なぜ投資の前に要るのか
- 「毎月の生活費 × 何か月分」で、自分の額を決めるやり方
- 置いておく場所の条件と、預金保険で守られる範囲
結論
- 生活防衛資金は、病気やけが、失業、急な出費で収入が足りなくなっても、投資を売らずに暮らすためのお金です。投資とは分けて持ちます
- 額は「毎月の生活費 × 何か月分」。何か月分にするかに決まった答えはなく、仕事の安定度・家族・公的な支えで自分で決めます
- 置き場所は、すぐ引き出せて元本が減らない預金です。利息の付く預金は、1つの金融機関ごと・預金者1人あたり元本1,000万円までと利息等が預金保険で守られます
生活防衛資金は、投資を続けるためのお金
生活防衛資金とは、収入が止まったり、急な出費があったりしたときに、暮らしを支えるためのお金です。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の教材でも、ライフイベントの1つとして、けがや病気、身内の不幸などの「望まない・想定外の緊急支出」をあらかじめイメージしておくよう書かれています。
これが投資の前に要る理由は、とてもはっきりしています。
- 投資したお金は、値下がりしているときもあります
- そのときに生活費が足りなくなると、値下がりした投資を売るしかありません
- 売ると、その時点の損が確定します。値段が戻るのを待てません
生活防衛資金があれば、相場が下がっているときに収入が止まっても、投資には手をつけずにすみます。つまり、生活防衛資金は「投資を下がったところで売らないための保険」の役目をします。はじめての人のよくある失敗の1つめ「下がったところで売ってしまう」を防ぐ、いちばん確かな方法です(はじめての人のよくある失敗)。
いくら持つか:毎月の生活費 × 何か月分
額の出し方はシンプルです。
生活防衛資金 = 毎月の生活費 × 何か月分
ここで使うのは、手取りではなく**毎月出ていくお金(生活費)**です。前の回で出した固定費と変動費、年に数回の出費を12で割った分の合計です。
たとえば、毎月の生活費が25万円の家庭なら、次のようになります(計算の例です)。
| 何か月分 | 生活防衛資金 |
|---|---|
| 3か月分 | 75万円 |
| 6か月分 | 150万円 |
| 12か月分 | 300万円 |
何か月分にするかは、自分の事情で決める
何か月分が正解、という公式の決まりはありません。次のようなことを考えて、自分で決めます。
- 仕事の安定度:収入が月によって大きく変わる人、自営業の人、転職を考えている人は、多めにしておくと安心です
- 家族:共働きで、どちらかの収入が止まっても暮らせるなら、少なめでも回ります。家族を1人の収入で支えているなら、多めに考えます
- 公的な支え:会社員などで健康保険に入っている人は、病気やけがで働けないときに傷病手当金を受け取れることがあります(下で説明します)。失業したときには雇用保険の給付もあります。こうした支えがあるかどうかで、自分で用意する額が変わります
- 近い予定の出費:車の買い替えや子どもの進学など、数年以内に使う予定のお金は、生活防衛資金とは別に「貯めるお金」として持ちます
迷ったら、まず少なめの月数を目標にして貯め、貯まったら投資を少額で始める、という進め方もできます。全部そろうまで何もしないより、続けやすい形です。
会社員の「傷病手当金」とは
会社員などが入る健康保険(協会けんぽなど)には、病気やけがで仕事を休み、給料を受けられないときの傷病手当金があります。協会けんぽの案内によると、要点は次のとおりです。
- 仕事以外の病気やけがの療養で休んでいること(仕事中や通勤中のけがは労災保険の対象)
- 連続して3日休んだあと、4日目以降の休んだ日が対象
- 1日あたりの額は、支給開始日以前の12か月の標準報酬月額の平均を30で割り、3分の2を掛けた額
- 受け取れるのは、支給を始めた日から通算して1年6か月まで
つまり、会社員が長く休んでも、給料のおよそ3分の2にあたる額が一定の期間出ます。その分、自分で用意する生活防衛資金は少なくてすむ、という考え方ができます。自営業の人などが入る国民健康保険では扱いが違うため、加入先で確かめてください。
どこに置くか:すぐ引き出せて、元本が減らない場所
生活防衛資金の置き場所には、3つの条件があります。
- すぐ引き出せる:必要になったその日に使える
- 元本が減らない:使うときに値下がりしていない
- 投資のお金と混ざらない:ふだん使う口座や投資の口座と分けておく
この3つを満たすのは、銀行などの預金です。普通預金に置くか、一部を定期預金にするかは、引き出しやすさで決めます。
投資信託や株は、生活防衛資金の置き場所には向きません。値下がりしているときに売ると損が確定しますし、売ってから現金が手元に届くまでに日数がかかることもあります。
預金保険で守られる範囲
銀行が破綻したときのために、預金には預金保険制度があります。金融庁の案内によると、守られる範囲は次のとおりです。
| 預金の種類 | 守られる範囲 |
|---|---|
| 当座預金や利息の付かない普通預金など(決済用預金) | 全額 |
| 定期預金や利息の付く普通預金など(一般預金等) | 預金者1人あたり、1つの金融機関ごとに合算して、元本1,000万円までと破綻日までの利息等 |
1,000万円を超える部分は、破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われるため、一部が支払われない可能性があります。生活防衛資金が1,000万円を超えることはあまりないと思いますが、ほかの預金と合わせて1つの金融機関に1,000万円を超えて預けている人は、金融機関を分けておくと安心です。個々の預金が預金保険の対象かどうかは、金融機関の窓口で確かめられます。
なお、外貨預金は預金保険の対象外です(金融庁)。生活防衛資金は円の預金に置きます。
貯まるまでと、使ったあと
生活防衛資金が貯まるまでは、毎月残るお金を、まず生活防衛資金に回します。貯まったら、毎月残るお金を投資に回し始めます。
使ったときは、使った分をまた貯め直します。投資の積立を一時的に減らしてでも、生活防衛資金を先に元に戻しておくと、次の「まさか」にも投資を売らずにすみます。
よくある質問
生活防衛資金を預金に置いておくのは、もったいなくないですか?
預金の利息は多くありませんが、生活防衛資金の役目は増やすことではなく、投資を値下がりのときに売らずにすませることです。このお金があるから、投資のほうで値動きを待てます。
生活防衛資金が貯まるまで、投資を始めてはいけませんか?
決まりではありません。ただ、生活防衛資金がないまま投資を始めると、急な出費のときに投資を売ることになりがちです。まず少なめの月数でも貯めてから、少額で始めると安心です。借金がある人の順番は、次の回でまとめています。
NISAの口座に入れておけば、いざというとき引き出せますか?
NISAで買った投資信託や株は、売れば現金にできますが、そのときの値段で売ることになります。値下がりしていれば損が確定します。NISAは「当面使わないお金」を置く場所で、生活防衛資金は預金に分けておきます(NISAのしくみ)。
生活防衛資金の額と置き場所が決まったら、次は、借金の返済・預金・投資をどの順番で考えるかです(借金の返済・預金・投資は、どの順番で考えるか)。
出典:金融庁「預金保険制度」(保護される預金の範囲)、金融庁「金融サービス利用者相談室 預金・融資等に関する相談事例等」(外貨預金は預金保険の対象外)、全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」、金融経済教育推進機構(J-FLEC)「社会人として知っておきたいお金の話(若手層社会人向け)」2026年6月版(いずれも2026年10月28日確認)。制度は変わることがあります。
この回のまとめ
- 生活防衛資金は、収入が止まったり急な出費があったりしても、投資を売らずにすむためのお金
- 額は「毎月の生活費 × 何か月分」。何か月分にするかは、仕事の安定度や家族、公的な支えで決める
- 置き場所は、すぐ引き出せて元本が減らない預金。1つの金融機関で元本1,000万円までが預金保険で守られる
確かめ問題
Q1. 生活防衛資金は、値上がりが見込める投資信託で持っておくのがよい。○か×か
答えを見る
×
必要なときに値下がりしていると、損を確定させて売ることになります。すぐ引き出せて元本が減らない預金に置きます。
Q2. 預金保険で守られる一般の預金は、1つの金融機関ごとに、預金者1人あたり元本いくらまでとその利息等ですか?
答えを見る
1,000万円
利息の付く普通預金や定期預金は、1金融機関ごと・預金者1人あたり、元本1,000万円までと破綻日までの利息等が守られます(金融庁)。
Q3. 毎月の生活費が25万円で、6か月分を生活防衛資金にするなら、いくらですか?
答えを見る
150万円
25万円 × 6か月 = 150万円です。手取りではなく、出ていくお金(生活費)で計算します。