投資の教科書

ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト(日本銀行、JPモルガン・チェース銀行出身)

佐々木融の発言録|「円安は構造的、実質金利がマイナスのうちは止まらない」為替の見通しを時系列で

立ち位置:構造的円安発言の記録 13件最終更新 2026年10月23日

1992年に日本銀行に入り為替市場介入などを担当し、2003年からJPモルガン・チェース銀行で為替調査部長、市場調査本部長などを務め、2023年12月からふくおかフィナンシャルグループ(FFG)のチーフ・ストラテジストを務める為替の専門家です。円が何年も主要通貨でほぼ最弱なのは循環ではなく構造の問題だと一貫して述べ、物価高対策の減税・給付はインフレを強めると批判しています。介入は対症療法で、本当に必要なのは日銀の利上げと、企業が日本に投資したくなる環境づくりだという立場です。

利害について:所属先のFFGが運営するYouTubeチャンネルで定期的にライブ配信をしています。著書に『弱い日本の強い円』、『インフレ・円安・バラマキ・国富流出』などがあります

THINKpod /シンクポッド「【なぜ円安は止まらないのか?】円安の構造的理由/日本企業の決定が円安を招く/キャリートレード巻き戻しはあるのか/2026年と2027年のドル円/株式相場と債券相場の見通し/THINKpod」 → この回の要点を読む

佐々木氏はふくおかフィナンシャルグループ(金融機関)のチーフ・ストラテジストで、為替の本も出しています。ドル円の数字は、本人が「日銀がこれだけ利上げできれば」などの条件を付けて示した見通しで、約束された数字ではありません。

ひとことで言うと

「円安は構造的。実質金利がマイナスのうちは止まらない」。2025年1月には、円は4年連続でほぼ最弱通貨で、2025年は170円に届く可能性が高いと述べました(PIVOT)。2026年1月には年末165円を予想し、日本は「大幅な金利上昇か、さらなる円安か」を選ばなければならないとしています(PIVOT)。2026年10月には、日銀しだいで170円方向もありうるとの見方を示しました(文藝春秋PLUS)。

一貫して言っていること

円が弱い理由は「実質金利のマイナス」と「対外直接投資」

2025年1月、インフレ率より金利が低い実質金利の大幅なマイナスと、円安でも続く企業の対外直接投資を、円が構造的に弱い2つの理由に挙げました(PIVOT)。2026年3月には、対内直接投資残高のGDP比で日本は世界で下から3番目だと紹介し、企業がなぜ日本に投資しないのかを問うべきだと述べています(日経ビジネス)。

金利差だけでドル円は語れない

2024年はFRBが利下げし日銀が利上げしたのに円安が進んだとして、金利差は短期では効くが長期では当てにならないと述べました(PIVOT)。2024〜25年に利上げしたのは日銀だけなのに円が最も弱かったことから、多少の利上げでは通貨のプラスにならないとしています(PIVOT)。

物価高対策の減税・給付はインフレを強める

2025年7月、インフレで困っているところにお金を配ればインフレはさらに上がるとし、供給側の議論をすべきだと述べました(PIVOT)。2026年3月には、配られたお金は最後は資本家や投資家の口座に入り、貧富の差が広がるとも指摘しています(日経ビジネス)。

利払い費の急増が、日銀の利上げを難しくする

2026年1月、金利が1%上がってその水準が続くだけで2034年度に利払い費が25兆円増えるとし(PIVOT)、9月には、財源がなければ政府はインフレで賄おうとし、日銀に利上げさせない圧力がかかるのではないかと述べました(THINKpod)。日銀が国債を買い支えれば、しわ寄せは円に来るとしています(文藝春秋PLUS)。

介入は対症療法。一番のリスクは家計の円離れ

2026年5月、介入の効果は一時的で、本当に必要なのは日銀の利上げだと述べました(PIVOT)。家計の円預金は1000兆円を超え、介入に使える外貨準備は160〜180兆円ほどしかないので、日本人が円を不安に思って外貨に動き始めたら止められないとくり返しています(THINKpod)。

見方の変化

時期 ドル円の見通し・相場観
2025年1月 2025年は150〜170円、170円に届く可能性が高い(PIVOT)
2025年4月 関税ショックで目先は140円ぐらいまでの円高も。長い目では円売り要因で、170円は後ずれも(PIVOT)
2025年7〜10月 日本売りの兆し。円買いの巻き戻しで155円、高市トレードで年内155円へ(PIVOT、PIVOT)
2025年11月〜2026年1月 2026年は米経済が強く165円ぐらいへ。利上げは4月と10月の2回と予想(FFG、PIVOT)
2026年3〜6月 金利の引き上げか円安かの選択。介入は一時的。日経平均7万円はバブルではないが過熱感(日経ビジネス、PIVOT、FFG)
2026年9月 米国の圧力と利上げ期待で円高も、当面155〜163円のボックス圏。年内155〜162円、2027年は日銀しだいで165〜170円(PIVOT、THINKpod)
2026年10月 長期金利3%は新しいレンジの下限。AI企業の信用不安は一時的で、大きく動くなら円安方向(文藝春秋PLUS、FFG)

「円安は構造的」という見方は一貫しています。変わったのは目先の水準と時期で、関税ショックや介入、米国の圧力で円高に振れた場面でも、構造の問題は変わらないという説明を続けています。2026年後半は、日銀がインフレに追いつく利上げをできるかどうかを分かれ目として強調するようになっています。

読むときの注意

  • 佐々木氏はふくおかフィナンシャルグループ(金融機関)のチーフ・ストラテジストで、所属先のYouTubeチャンネルでも定期的に発信しています。為替に関する著書もあります
  • 日本銀行で為替介入を担当した経験があり、介入や日銀の情報発信の仕方について、具体的で踏み込んだ意見を述べることが多い人です
  • 円安の見立ては「日銀が十分に利上げできない」「米国経済が強い」といった前提つきです。日銀が本格的に利上げすれば状況は変わると本人も述べています。財政や長期金利の見方は論者によって大きく異なるので、反対側の意見とあわせて読むと理解が深まります

はじめての人が受け取れること

  • 預金の金利よりインフレ率が高いと、お金の価値は少しずつ目減りします(実質金利のマイナス)。この考え方を知るだけで、円安や物価のニュースが読みやすくなります
  • 佐々木氏は、外貨や株などに一度にではなく、時間を分散して少しずつ投資するのがよいと述べています。お金の置き場所を一つに偏らせないことの大切さが分かります
  • 為替の動きは「投機筋のせい」とだけ考えず、貿易や企業の投資、家計の動きといった実需の流れにも目を向けると、短期と長期を分けて考えられるようになります

佐々木融の発言の時系列

動画・記事の日付の新しいものから順に並べています。

2026年

  1. 2026年10月16日・FFG公式チャンネル(YouTube)

    佐々木融「AI企業の信用不安は一時的、動くなら円安方向」|FFG公式チャンネル(2026年10月)

    FFGのライブ配信「マーケットLIVE!」で、米ネオクラウド企業の信用不安から日経平均が5%近く下がった翌日に語った回です。佐々木氏は、AI関連の資金需要は実需に支えられており、混乱は一時的だとの見方を示しました。長期金利はまだ上がる余地があり、ドル円は狭いレンジにあるが大きく動くとしたら円安方向だと述べ、11月3日の米中間選挙が市場に与える影響も整理しました。

    為替・円半導体・AI政治・政策

  2. 2026年10月1日・文藝春秋PLUS(YouTube)

    佐々木融「長期金利3%は下限、日銀しだいで170円方向も」|文藝春秋PLUS(2026年10月)

    文藝春秋PLUSの「BUNSHUN MONEY SCHOOL」で、日銀が政策金利を1.25%に上げても円安が進んだ理由と、30年ぶりの長期金利3%の見方を語った回です。佐々木氏は、3%は正常化の範囲で、むしろ新しいレンジの下限になるとし、インフレ率は上がってくる一方で日銀は十分に利上げできないとして、年内に160円、利払い費や減税をインフレで賄う方向なら170円方向へ向かうとの見方を示しました。

    金利・日銀為替・円景気・インフレ

  3. 2026年9月29日・THINKpod(講談社・YouTube)

    佐々木融「円安は続く、一番怖いのは家計の動き」|THINKpod(2026年9月)

    日米がそろって9月に利上げした後の回です。佐々木氏は、利払い費の急増で財源がなくなるため、政府はインフレで賄おうとして日銀に利上げさせない方向に圧力をかけるのではないかとし、実質金利のマイナスが続いて円安基調は変わらないとの見方を示しました。2026年内は155〜162円ぐらい、2027年は日銀しだいで165円、さらに170円方向も見えてくると述べています。

    為替・円金利・日銀日本株

  4. 2026年9月4日・PIVOT(YouTube)

    佐々木融「円高のカギは日銀がどこまで利上げできるか」|PIVOT(2026年9月)

    9月2〜3日の2日間でドル円が160円台前半から155円台前半まで下がった局面の速報解説です。佐々木氏は円高ドル安の理由として、日銀の利上げ期待の高まり、FRBの利上げ期待の後退、GPIFの資産配分見直しの思惑、輸入企業のドル買いの不在の4つを挙げました。当面は155〜163円ぐらいのボックス圏が続き、ポイントは日銀が本当にどこまで利上げできるかだと述べています。

    為替・円金利・日銀FRB・米金利

  5. 2026年6月19日・FFG公式チャンネル(YouTube)

    佐々木融「日経平均7万円は80年代バブルとは違うが過熱感」|FFG公式チャンネル(2026年6月)

    日経平均が7万円に迫った局面で、FFG公式チャンネルの短い解説動画に出た回です。佐々木氏は、今の株高は主に利益の増加によるもので倍率が膨らんだ1980年代後半のバブルとは違うとしつつ、最近は倍率も上がって少し過熱感が出ていると述べました。長い目で見れば、円安とインフレで名目GDPが増えれば株価は上がりやすいとの見方です。

    日本株半導体・AI為替・円

  6. 2026年5月1日・PIVOT(YouTube)

    佐々木融「介入の効果は一時的、本当に必要なのは日銀の利上げ」|PIVOT(2026年5月)

    ゴールデンウィーク中に円買い介入が行われたとみられる局面での速報解説です。佐々木氏は、政府は160円台という水準を相当嫌がっていると読みつつ、2022年と24年の例からドル安にならない限り介入で中長期の流れは変わらないと述べました。根本的な対策は日銀の利上げや国内投資を増やす政策で、介入で問題を覆い隠し続ければ、どこかで家計の資金が一気に海外へ逃げるリスクがあると指摘しています。

    為替・円金利・日銀暴落・リスク

  7. 2026年3月19日・日経ビジネス(YouTube)

    佐々木融「金利の引き上げか円安か、どちらかを選ばなければならない」|日経ビジネス(2026年3月)

    日経BPから出した著書『インフレ・円安・バラマキ・国富流出』をもとにした日経ビジネスのインタビューです。佐々木氏は、円が5年連続でほぼ最弱通貨なのは実質金利のマイナスと国外への資金流出という構造の問題だとし、利払い費の急増を考えれば日本は金利の引き上げか円安かを選ばなければならないと述べました。円安とインフレが続けば貧富の差が広がるとも指摘しています。

    為替・円金利・日銀政治・政策

  8. 2026年1月4日・PIVOT(YouTube)

    佐々木融「2026年末は165円、大幅な金利上昇か円安かの選択に」|PIVOT(2026年1月)

    PIVOTの「2026年超予測」で、佐々木氏は日銀の利上げを4月と10月の2回と予想しつつ、それでは実質金利のマイナスから抜け出せず、年末に向けて1ドル165円ぐらいまで円安が進むとの見方を示しました。2026年の日本は「大幅な金利上昇を許容するか、さらなる円安を許容するか」を選ばなければならないと述べています。

    為替・円金利・日銀政治・政策

2025年

  1. 2025年11月12日・FFG公式チャンネル(YouTube)

    佐々木融「2026年は米経済が強く、ドル円は165円へ」|FFG公式チャンネル(2025年11月)

    ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)のライブ配信「マーケットLIVE!」で、佐々木氏は2026年の市場を占う一番のポイントは米国経済の強さだとし、減税や海外からの対米投資、資産効果で米経済は予想以上に強くなると述べました。FRBは市場が織り込むほど利下げせず、日銀も利上げしづらいとして、ドル円は165円ぐらいまで上がり、株価も10%ぐらい上がるイメージだとの見方を示しました。

    為替・円FRB・米金利日本株

  2. 2025年10月6日・PIVOT(YouTube)

    佐々木融「高市トレードで円安は進む、年内155円へ」|PIVOT(2025年10月)

    高市早苗氏が自民党総裁に選ばれた直後の回です。佐々木氏は、記者会見での日銀に関する発言から利上げは難しくなると見て、実質金利の大幅マイナスから抜け出せず円安が進むとの見方を示しました。年内155円の予想が現実味を帯び、日経平均も年末までに4万8000円、遅かれ早かれ5万円も見えてくると述べています。

    為替・円政治・政策日本株

  3. 2025年7月17日・PIVOT(YouTube)

    佐々木融「日本売りの兆し、バラマキはインフレをさらに押し上げる」|PIVOT(2025年7月)

    参院選を前に円安と金利上昇、株安が同時に進んだ局面で、佐々木氏は「日本のトリプル安っぽい感じ」になっていると述べました。インフレで困っているところに減税や給付でお金を配ればインフレはさらに上がると指摘し、投機筋の円買いが巻き戻されれば155円、さらに160円をうかがう可能性もあるとの見方を示しました。

    為替・円政治・政策暴落・リスク

  4. 2025年4月4日・PIVOT(YouTube)

    佐々木融「トランプ関税は長い目で見れば円安を加速させる」|PIVOT(2025年4月)

    トランプ大統領が相互関税(日本は24%)を発表し、ドル円が146円台まで円高になった日の回です。佐々木氏は、足元はリスクオフの円買いとドル売りだが、関税を下げてもらう交渉で日本が出す案は対米投資や米国からの購入など円売りを伴うものになるとして、長い目で見れば円安要因になると述べました。目先は140円ぐらいまでの円高もありうるとしています。

    為替・円政治・政策FRB・米金利

  5. 2025年1月2日・PIVOT(YouTube)

    佐々木融「円は構造的に弱い、2025年は1ドル170円も」|PIVOT(2025年1月)

    PIVOTの「2025年超予測」で、佐々木氏は円が4年連続でほぼ最弱通貨になっているのは循環ではなく構造の問題だとし、実質金利のマイナスと対外直接投資による資金流出が続く限り円安は止まりにくいと述べました。2025年は150〜170円のレンジで、170円に届く可能性が高いとの見方です。

    為替・円金利・日銀

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ここに載せているのは、著名な専門家が公開の場(YouTubeの公式チャンネル・記事など)で話した内容の記録と要約です。投資の教科書が特定の銘柄や商品をおすすめするものではありません。見通しは話した時点のもので、外れることもあります。

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