第7章 相場を読む 7-3・読む時間 約7分・最終更新 2026年10月28日
GDP・物価・失業率・賃金のニュースの読み方|発表元と発表の時期、相場の目で見るコツ


「GDPが年率○%」「消費者物価が前年より2%上昇」「実質賃金が○か月連続でプラス」。ニュースは数字だらけで、どれが大事なのか、株や積立に関係があるのか、分からないまま聞き流していませんか。
前の回では、為替が会社のもうけを通じて株価に届くしくみを見ました(円安・円高は株にどう効くか)。この回は、景気そのものの数字です。数字はたくさんありますが、まず押さえるのは GDP・物価・雇用・賃金の4つ だけ。だれがいつ出すかと、読むときのコツが分かれば、ニュースの見出しがぐっと読みやすくなります。
この回でわかること
- GDP・消費者物価指数・完全失業率・有効求人倍率・賃金が、それぞれ何を表すか
- だれが、いつ発表するか(2026年10月時点の最新の値と、次の発表予定)
- 1回の数字に振り回されず、相場の目で読むための3つのコツ
結論
- 景気の数字は、発表元と時期が決まっています。GDPは内閣府が3か月ごと、物価と完全失業率は総務省統計局、有効求人倍率と賃金は厚生労働省が毎月出します
- 物価と賃金はセットで見ます。名目の賃金の伸びから物価の伸びを差し引いた 実質賃金 が、暮らしの余裕を表します
- 相場の目で読むなら、1回の数字より流れ、良し悪しより予想とのずれ。速報はあとで直ることもあります。数字を理由に積立を変える必要はありません
まず、4つの数字の「だれが・いつ」
| 数字 | 何が分かるか | 発表元 | 時期 |
|---|---|---|---|
| GDP(四半期別GDP速報) | 国全体の経済の大きさと伸び | 内閣府 | 3か月ごと。1次速報は、その3か月が終わってから1か月と2週間ほど |
| 消費者物価指数(CPI) | 暮らしの物価の動き | 総務省統計局 | 毎月。全国の前の月の分を、原則として19日を含む週の金曜日 |
| 完全失業率(労働力調査) | 仕事を探している人の割合 | 総務省統計局 | 毎月。原則として調査した月の翌月末 |
| 有効求人倍率(一般職業紹介状況) | 仕事を探す人1人あたりの求人の数 | 厚生労働省 | 毎月。2026年8月分は10月2日 |
| 賃金(毎月勤労統計調査) | 働く人の給料の動き | 厚生労働省 | 毎月。2026年8月分の速報は10月7日 |
2026年10〜11月の発表の並び
実際の日付で並べると、2026年の10月から11月は次の順に発表があります。11月16日のGDPと10月30日の労働力調査(9月分)は、公表予定日です。
日本銀行の短観(全国の会社に景気の見方をたずねる調査)も、毎年3・6・9・12月に調べ、4月初め・7月初め・10月初め・12月中ごろに公表される大事な数字です。2026年9月調査は、10月1日に公表されました。前の回で、会社の想定為替レートの出どころとして紹介しました。
GDP:国全体の「もうけ」の大きさ
GDP(国内総生産)は、国内で一定の期間に生み出されたモノやサービスの付加価値の合計 です(内閣府)。付加価値は、売上から材料などの仕入れを引いた「新しく生み出した分」のことで、国全体のもうけの大きさと考えると分かりやすくなります。日本銀行も、日本経済全体の景気の動きをつかむにはGDPが適している、と説明しています。
ニュースで聞く言葉は、次の3つです。
- 名目と実質:名目は実際の値段で計算した値、実質は物価の上がり下がりの分を取り除いた値です。経済の伸びを見るときは、実質で見ることが多いとされています
- 前期比:前の3か月とくらべて、どれだけ伸びたか
- 年率換算:その伸びが1年間続いたらどうなるか、に直した数字。前期比より大きな数字になるので、どちらの数字かを確かめます
最新の値は、2026年4〜6月期の2次速報(2026年9月8日公表)で、実質GDPは前期比0.4%、年率換算で1.4%のプラスでした。次の7〜9月期の1次速報は、2026年11月16日に公表の予定です。
相場の目で見ると、GDPは3か月分をまとめた結果で、発表まで1か月半ほどかかる「少し前の成績表」です。株価はこの先のもうけの見込みで動くので、GDPの数字が出るころには、ほかの数字でおおよその様子が知られていることもあります。また、1次速報は2次速報で数字が変わることがあります。
物価:消費者物価指数(CPI)
消費者物価指数は、全国の世帯が買うモノやサービスの値段の動きをまとめて測った数字 です(総務省統計局)。2025年を100とし、暮らしの中で大事な589品目の値段を調べています。ニュースでは、ふつう「1年前の同じ月とくらべて何%上がったか」で伝えられます。
天候で値段が大きく動く生鮮食品や、エネルギーを除いた数字も作られています。除くと、一時的な値動きに左右されにくくなります。
2026年9月分(2026年10月23日公表)は、次のとおりでした(1年前の同じ月とくらべて)。
| 指数 | 上昇率 |
|---|---|
| 総合 | 2.1% |
| 生鮮食品を除く総合 | 2.1% |
| 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | 2.4% |
東京都区部の数字は、その月の「中旬速報値」として、全国より早く出ます。
相場の目で見ると、物価は金利につながります。日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%を「物価安定の目標」としていて、消費者物価指数の動きを特に注視しています。物価の数字は、日本銀行の金利の判断を考える材料として読まれます(金利と株価のつながりは金利が上がると株はどうなる)。
雇用:完全失業率と有効求人倍率
雇用の数字は、2つを並べて見ます。
- 完全失業率(総務省統計局「労働力調査」):働いている人と仕事を探している人を合わせた中で、仕事がなく探している人の割合です。仕事についていない・仕事があればすぐつける・仕事を探す活動をしていた、の3つにあてはまる人を「完全失業者」とし、就業者と完全失業者の合計(労働力人口)に占める割合で計算します。ハローワークに登録しているかどうかは関係ありません
- 有効求人倍率(厚生労働省「一般職業紹介状況」):ハローワークで仕事を探している人1人に対して、求人が何件あるかを表します。1倍より大きければ、求人のほうが多い状態です
最新の値は、どちらも2026年8月分(2026年10月2日公表)で、完全失業率は2.5%(季節の影響を除いた値)、有効求人倍率は1.18倍でした。
相場の目で見ると、2つは動く時期がちがいます。総務省統計局によると、有効求人倍率は景気とおおむね同じ時期に動く数字、完全失業率は景気に遅れて動く数字とされています。会社がまず求人を増やしたり減らしたりし、そのあとで失業する人の数が変わる、という順番でイメージすると覚えやすくなります。
賃金:名目と実質を分けて見る
賃金の数字は、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」で毎月発表されます。ここでも 名目と実質 が出てきます。
- 名目賃金:実際に受け取った給料の額
- 実質賃金:物価の上がった分を差し引いた給料。その給料で買えるモノの量を表します
ざっくり言えば、名目の伸びから物価の伸びを差し引いたものが実質です(実際は指数で計算するので、ぴったりの引き算にはなりません)。
2026年8月分の速報では
2026年8月分の速報(2026年10月7日公表)では、給料の総額(現金給与総額)が1年前の同じ月より3.8%増え、実質化に使う物価(消費者物価指数の「持家の帰属家賃を除く総合」)は2.2%上昇、実質賃金は1.5%増でした。
給料の伸び(3.8%)が、物価の伸び(2.2%)を上回ったので、実質賃金はプラスになりました。速報の値は、あとの確報で直ることがあります。
相場の目で見ると、実質賃金がプラスなら、暮らしに余裕が出て買い物が増え、国内で売る会社の売上を支えやすくなります。反対に、物価の伸びに給料が追いつかないと、暮らしが苦しくなり、消費が伸びにくくなります。
相場の目で読む、3つのコツ
- 1回の数字より、流れを見る:先月とくらべてどうか、数か月続いているか。1回だけの上下は、あとで戻ることもあります
- 良し悪しより、予想とのずれを見る:大きな数字の発表前には、市場で「このくらいだろう」という予想があります。株価や為替は、良い数字かどうかより、予想とのずれに反応しやすいものです。前の回の想定為替レートと同じ考え方です
- 速報は、あとで直ることがある:GDPは1次速報と2次速報、賃金は速報と確報があります。最初の数字だけで結論を出さないことです
そして、NISAで長く積み立てている人にとって大事なのは、数字を理由に積立を変えない ことです。景気の数字は、ニュースを理解するための道具です。売り買いの合図ではありません。
よくある質問
景気の数字は、どこで見られますか?
発表元のページで見られます。GDPは内閣府、消費者物価指数と労働力調査は総務省統計局、有効求人倍率と毎月勤労統計調査は厚生労働省です。どのページにも公表予定が載っているので、次にいつ出るかも分かります。
悪い数字が出たら、積立を止めたほうがいいですか?
止める必要はありません。景気の数字が悪い時期に株価が下がることはありますが、積立を続ければ、安いときにも同じ金額で買うことになります。積立額を見直すのは、相場ではなく暮らしが変わったときです(下がったときにどうするか)。
専門家は、景気の数字をどう見ていますか?
同じ数字でも、人によって受け取り方が分かれます。ご意見番のテーマ景気・インフレでは、何人かの見方を並べて読めます。
数字の意味と発表の時期が分かれば、専門家が「次のGDPは」「物価は」と話す内容も、自分で確かめられるようになります。次は、この章の最後に、専門家の見通しをどう読むかを見ていきます(専門家の見通しの読み方)。
出典:内閣府 経済社会総合研究所「統計の目的(四半期別GDP速報)」、内閣府「GDPとGNI(GNP)の違いについて」、内閣府「名目値と実質値の違いは?」、内閣府「統計表一覧(2026年4-6月期2次速報値)」(実質季節調整系列の前期比・年率)、内閣府「公表予定」、総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数の解説」(指数の性格・品目数・公表日)、総務省統計局「消費者物価指数 全国 2026年9月分」、総務省統計局「労働力調査 Q&A」(完全失業者・完全失業率、公表時期、有効求人倍率との関係)、総務省統計局「労働力調査(基本集計)2026年8月分」、総務省統計局「労働力調査 2026年公表予定日」、厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)について」、厚生労働省「一般職業紹介状況 用語の解説」、厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年8月分結果速報」、日本銀行「日本銀行は、景気をみるときに、何を判断材料にしていますか?」、日本銀行「『物価の安定』についての考え方および『物価安定の目標』について」、日本銀行「日本銀行は、物価をみるときに、何を判断材料にしていますか?」、日本銀行「短観(全国企業短期経済観測調査)の解説」(調査時期・公表時期)(いずれも2026年10月28日確認)
この回のまとめ
- 景気の数字は発表元と時期が決まっている。GDPは内閣府が3か月ごと、物価と失業率は総務省統計局、有効求人倍率と賃金は厚生労働省が毎月
- 物価と賃金はセットで見る。名目の賃金の伸びから物価の伸びを差し引いた「実質賃金」が、暮らしの余裕を表す
- 1回の数字より流れ、数字の良し悪しより予想とのずれ。速報はあとで直ることもある。数字を理由に積立を変えない
確かめ問題
Q1. 日本のGDP(国内総生産)を推計・公表しているのはどこですか?
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内閣府
内閣府の経済社会総合研究所が、四半期別GDP速報を3か月ごとに公表しています。
Q2. 名目の賃金が3%伸びても、物価が4%上がっていたら、実質の賃金はどうなる?
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減る(マイナスになる)
実質の賃金は、名目の賃金から物価の上がった分を差し引いて考えます。物価の伸びのほうが大きければ、買える量は減ります。
Q3. 完全失業率は、景気の動きより先に動く数字とされている。○か×か
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総務省統計局の説明では、完全失業率は景気に遅れて動く数字とされています。有効求人倍率は、景気とおおむね同じ時期に動く数字です。