投資の教科書

第7章 相場を読む 7-2・読む時間 約7分・最終更新 2026年10月28日

円安・円高は株にどう効く?|輸出の多い会社・輸入の多い会社と、外国の投資信託への影響

ドル札と硬貨
ドル札と硬貨

「円安で株価が上がった」「円高が重しになった」。ニュースで毎日のように聞くのに、なぜ為替で株が動くのか、自分の積立にどう関係するのか、よく分からないままになっていませんか。

前の回では、金利と株価のつながりを見ました(金利が上がると株はどうなる)。国と国の金利の差も、為替を動かす理由の一つとしてよく挙げられます。この回では、その為替が会社のもうけと株価にどう届くかを見ます。しくみは「外国のお金を円に直すと、いくらになるか」という計算だけです。分かってしまえば、為替のニュースを落ち着いて読めるようになります。

この回でわかること

  • 円安・円高の意味と、「1ドル=150円」の数字の読み方
  • 円安が、輸出の多い会社と輸入の多い会社で逆に効く理由
  • 全世界・米国の指数に連動する投資信託が、為替でどう動くか

結論

  • 円安は円の値打ちが下がることです。「1ドル=○円」の数字が大きくなるほど円安、小さくなるほど円高です
  • 円安は、輸出の多い会社には追い風、輸入の多い会社には向かい風になりやすく、影響は業種によって逆になります。株価には、会社が前提にしている為替レートとのずれで効きます
  • 全世界・米国の指数に連動する投資信託は、円安で上がり、円高で下がりやすい。為替は予想が難しいので、長く続ける人は為替だけを理由に売り買いしません

円安・円高とは:数字が大きくなるほど円安

日本銀行の説明では、円高は円1単位で交換できる他の通貨の量が相対的に多い状態、円安はそれが少ない状態のことです。言いかえると、円の値打ちが上がるのが円高、下がるのが円安です。

1万円を両替すると、1ドル=80円なら125ドル、100円なら100ドル、125円なら80ドル
図:「1ドル=○円」の数字が大きくなるほど、同じ1万円で手に入るドルが減る。円の値打ちが下がるのが円安

ニュースでは、ふつう米ドルとの比で「1ドル=150円」のように言います。ここで迷いやすいのが、数字と「高い・安い」の向きです。

為替レート 1万円を両替すると 円の値打ち
1ドル=100円 100ドル 基準
1ドル=125円 80ドル 下がった(円安)
1ドル=80円 125ドル 上がった(円高)

1ドルを手に入れるのに125円要るなら、100円で済んでいたときより円の値打ちが下がっています。「1ドル=○円」の数字が大きくなるほど円安、と覚えておけば十分です。

為替レート(円と外国のお金を交換するときの比率)は、外国為替市場で毎日動いています。急に大きく動いたときは、財務大臣の判断で「為替介入」(国が円やドルを売り買いして、急な動きを抑えること)が行われることもあり、実務は日本銀行が行います。

円安は、会社によって追い風にも向かい風にもなる

為替が株価に効くのは、会社のもうけを円で数え直すと、金額が変わるからです。説明のために作った例で見てみます。

円安のとき、輸出の多い業種は円で見た売上が増えやすく、輸入の多い業種は費用が重くなりやすい。外国の資産を持つ投資信託は円で見た値段が上がりやすい
図:円安の影響は、だれが外国のお金を受け取り、だれが払うかで逆になる。円高のときは、それぞれ反対の向きに働く

輸出の多い会社:円安だと、円で見た売上が増える

自動車など輸出の多い業種の会社が、アメリカで1台2万ドルの車を売るとします。

  • 1ドル=140円なら、円に直すと280万円
  • 1ドル=150円なら、円に直すと300万円

同じ車を同じ値段で売っただけで、円で見た売上が20万円増えます。日本で作って海外で売る割合が大きいほど、円安は円で見たもうけを押し上げやすくなります。円高になれば、反対に減りやすくなります。

輸入の多い会社:円安だと、費用が重くなる

反対に、原材料や燃料、商品を海外から買う割合が大きい会社では、円安は費用を増やします。1万ドルの原材料は、1ドル=140円なら140万円、150円なら150万円です。その分を売値に上乗せできなければ、もうけは減ります。

日本銀行が作る「輸入物価指数」(輸入品の値段の動きを表す数字)には、円で見た指数と、外国のお金で見た指数の2つがあります。ニュースで「円ベースの輸入物価が上がった」と聞いたら、品物の値上がりに加えて円安の分も入っている、と読めます。

同じ会社の中でも、効き方は一つではない

実際の会社は、輸出もすれば輸入もします。海外の工場で作って海外で売る会社もあります。そのため「輸出企業はみな円安で得をする」とは言い切れません。業種の大まかな向きとして知っておき、くわしくは会社の決算資料で確かめる、という使い方が向いています。

株価には「前提とのずれ」で効く

会社は、1年の計画を立てるときに「この先の為替はこのくらい」という前提を置いています。これを想定為替レートと言います。

為替が動く、円で見た売上と費用が変わる、会社の前提の為替レートとのずれが業績予想に表れる、株価が反応する、という流れ
図:為替が株価に届くまで。株価が反応するのは、為替の水準そのものより、会社が前提にしている為替とのずれ

日本銀行の短観(全国企業短期経済観測調査。全国の会社に景気の見方などをたずねる調査)は、この想定為替レートも集計しています。2026年9月調査(2026年10月1日公表)では、全規模・全産業の2026年度の想定は1米ドル=154.23円でした。

ここから分かるのは、円安なら必ず株高、ではないということです。

  • 実際の為替が会社の前提より円安で進めば、輸出の多い会社の業績予想は上ぶれしやすくなります
  • すでに円安が進んでいて、多くの人が「円安で業績が良くなる」と分かっていれば、その分は株価に先に入っていることもあります
  • 円安が輸入品の値上がりを通じて暮らしを苦しくすれば、国内で売る会社には逆風にもなります

為替のニュースを見たら、「どの会社のもうけに、どちら向きに効くか」「それはもう予想に入っていそうか」と考えると、見出しに振り回されにくくなります。

外国の資産を持つ投資信託は、為替でも動く

第3章で見た、全世界やS&P500などの指数に連動する投資信託は、中の株そのものの値動きに加えて、為替の動きも受けます(全世界・米国・日本:指数の種類)。外国の株は外国のお金で値段がつくので、円に直したときの金額が為替で変わるからです。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の教材でも、外国の株や債券は為替のリスクがあるものとして扱われています。

1ドル=150円から135円へ1割円高になると、外国の資産を持つ投資信託の円で見た値段もおよそ1割下がる例
図:計算の例。外国の株は外国のお金で値段がつくので、円に直したときの金額が為替で変わる
  • 円安になると、円で見た値段は上がりやすい
  • 円高になると、円で見た値段は下がりやすい

たとえば、中の株の値段が変わらなくても、1ドル=150円から135円へ1割円高になれば、円で見た値段もおよそ1割下がります(計算の例です)。

一方、日本の株の指数(TOPIX・日経平均株価)に連動する投資信託は円で値段がつくので、為替の直接の影響はありません。ただ、中に入っている会社のもうけが為替で変わるので、ここまで見てきた形で間接的には影響を受けます。

長く続ける人は、為替で売り買いしない

為替は、金利の差、貿易、お金の流れなど多くのことで動き、先を当てるのは専門家でも難しいものです。積立なら、円高のときも円安のときも同じ金額で買い続けるので、買う時期が自然に分かれます(長期・積立・分散)。為替の値動きが気になるときは、日本の資産と外国の資産を組み合わせることも、分散の一つです。

よくある質問

円安と円高、投資をする人にはどちらがよいのですか?

どちらがよいとは言えません。外国の資産を持つ人や輸出の多い会社には円安が追い風になりやすい一方で、輸入品の値上がりを通じて暮らしの費用は上がりやすくなります。立場によって、良い面と悪い面が入れ替わります。

円高のときは、外国の資産を持つ投資信託を売ったほうがいいですか?

為替だけを理由に売ることはおすすめしません。為替の先行きを当てるのは難しく、売ったあとに円安に戻ることもあります。売るかどうかは、相場ではなくお金を使う予定や暮らしの変化で考えます(下がったときにどうするか)。

専門家の為替の見通しは、どう読めばいいですか?

人によって見方が大きく分かれるのが為替です。ご意見番のテーマ為替・円では、何人かの見方を並べて読めます。読み方のコツは、この章の最後の回で扱います。

為替が会社のもうけに効くしくみが分かったら、次は景気そのものです。GDP・物価・雇用・賃金など、ニュースに出てくる数字の意味と、発表される時期を見ていきます(景気・物価・賃金:ニュースの数字の読み方)。

出典:日本銀行「円高、円安とは何ですか?」(教えて!にちぎん)、日本銀行「為替介入(外国為替市場介入)とは何ですか?」(教えて!にちぎん)、日本銀行「企業物価指数(2020年基準)の解説」(輸入物価指数の円ベースと契約通貨ベース)、日本銀行「短観(概要)2026年9月」(事業計画の前提となっている想定為替レート)、金融経済教育推進機構(J-FLEC)「社会人として知っておきたいお金の話(若手層社会人向け)」2026年6月版(為替変動リスク)(いずれも2026年10月28日確認)

この回のまとめ

  • 円安は円の値打ちが下がること。「1ドル=○円」の数字が大きくなるほど円安
  • 円安は、海外で稼ぐ割合が大きい会社のもうけを円で見て押し上げやすく、輸入の多い会社には費用の重さになりやすい。株価には、会社が前提にしている為替とのずれで効く
  • 外国の資産を持つ投資信託は、円安で円で見た値段が上がり、円高で下がる。為替は予想が難しいので、長く続ける人は為替だけを理由に売り買いしない

確かめ問題

  1. Q1. 1ドル=140円から1ドル=150円になった。これは円安か、円高か

    答えを見る

    円安

    1ドルを手に入れるのに、前より多くの円が要るようになりました。円の値打ちが下がったので円安です。

  2. Q2. 円安は、輸入の多い会社にとって、原材料などの費用を軽くする方向に働く。○か×か

    答えを見る

    ×

    外国のお金で払う代金は、円安になると円で見て高くなります。輸入の多い会社には、費用が重くなる方向に働きます。

  3. Q3. 米国の株の指数に連動する投資信託を持っている。指数が変わらないまま円高になると、円で見た値段はどうなりやすい?

    答えを見る

    下がりやすい

    外国の資産は外国のお金で値段がつくので、円高になると円に直したときの金額が小さくなります。

もっとくわしく

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