第5章 続ける 5-1・読む時間 約7分・最終更新 2026年10月28日
株価が下がったらどうする?|積立を売らずに続けるコツと、下がる前にできる準備


「始めたとたんに大きく下がったら、どうしよう」「ニュースで『株価急落』と聞くと、今のうちに売ったほうがいい気がする」。積立を始めた人が最初にぶつかるのが、この不安です。
第4章で、NISAとiDeCoの口座を開いて、続けられる額で積立を設定するところまで進みました。第5章は「続ける」がテーマです。この回では、始めたあとにいちばん迷う「下がったとき」の考え方をまとめます。先に知っておくだけで、いざというときに落ち着いて「何もしない」を選べるようになります。
この回でわかること
- 下がったところで売ると、なぜ損になりやすいのか
- 積立では、下がった月に何が起きているのか
- 下がったときに「何もしない」でいられるための準備と、売るかどうかの決め方
結論
- 値下がりは、投資を始めたときから入っている「値動きの幅」の一部です。下がったところで売ると、損がそこで確定します
- 積立は、下がった月に同じ額でより多くの口数を買っています。下がったときに止めないことが、積立のしくみを生かします
- 売るかどうかは相場ではなく、暮らしで決めます。お金を使う予定が先で、暮らしが変わっていなければ、何もしないのが基本です
下がるのは「起きるかどうか」ではなく「いつ起きるか」
株式に投資する投資信託の値段は、毎日上がったり下がったりします。そして、ときどき大きく下がります。
たとえば2024年8月5日、日経平均株価は前の営業日から4,451円(約12%)下がり、終値は3万1,458円でした。下げ幅は1987年のブラックマンデーの翌日を超えて過去最大で、下落率も歴代2番目でした(日本経済新聞の号外)。それより前にも、2008年のリーマン・ショックや、2020年に新型コロナウイルスが広がったときのコロナ・ショックなど、株価が短い期間に大きく下がった時期がありました。
大切なのは、こうした下落が「めったに起きない事故」ではなく、長く続けていれば何度か出会うものだということです。リスクとは「危ない」ではなく「値動きの幅」のことでした(リスクとは「値動きの幅」のこと)。下がる日も、その幅の中に入っています。
ただし、過去に下がったあと値を戻したことがあっても、これから先も同じように戻るとは限りません。だからこそ、下がることを前提に、続けられる額と期間で始めておくことが大事になります。
下がったところで売ると、何が起きるか
下がったときに売りたくなるのは、自然な気持ちです。ただ、そこで売ると、次のような流れになりやすくなります。
- 損がそこで確定する。 値下がりしているだけなら、まだ「画面の上のマイナス」です。売った時点で、本当の損になります
- 買い戻す時期が分からない。 「落ち着いたら買い直そう」と思っても、どこが底かは、あとにならないと分かりません。いつ値を戻し始めるかも誰にも分からず、気づいたときには売った値段より高くなっていることがあります
- 判断が2回に増える。 売るときと買い戻すとき、どちらも当てなければなりません。はじめての人が、これを続けて当てるのはとても難しいことです
投資家がなぜ下がったところで売ってしまうのかは、基礎アーカイブの「株式投資で失敗しないために知っておくべき5つの投資家心理」でも取り上げています。
積立は、下がった月に「多く買っている」
毎月同じ額を積み立てている人にとって、値下がりには別の面もあります。同じ額で、より多くの口数(投資信託の持ち分の単位)を買えることです。
| 1口の値段(例) | 毎月の積立額 | 買える口数 | |
|---|---|---|---|
| ふだんの月 | 1万円 | 1万円 | 1口 |
| 値下がりした月 | 5,000円 | 1万円 | 2口 |
数字は考え方を示すための例です。値段が半分の月は、同じ1万円で2倍の口数を買えています。下がっている間も積立を続ければ、安い値段で買った口数が積み上がっていきます。値を戻したときに、その口数が効いてきます。
反対に、下がったときに積立を止めてしまうと、安く買える月を自分から飛ばすことになります。積立のしくみ(時期を分けて買う)は、長期・積立・分散でくわしく扱っています。
なお、値下がりした個別の株を「平均の買値を下げたい」と買い増す「ナンピン」は、これとは別の話です。1つの銘柄に賭け金を集めることになるため、はじめての人にはおすすめしません(はじめての人のよくある失敗)。
下がる前にしておく準備
下がってから落ち着こうとしても、なかなかできません。売らずにいられるかどうかは、下がる前の準備でほとんど決まります。これまでの回でやってきたことが、そのまま準備になっています。
- 生活防衛資金を預金で持っておく。 収入が減っても、投資を売らずに暮らせます(生活防衛資金)
- 続けられる額で積み立てる。 3割下がった場面を思い浮かべて決めた額なら、下がっても想定の中です(毎月いくら、どちらの枠で)
- 近く使うお金を入れない。 使う時期に下がっていても、売らずに待てます
- 積立を自動にしておく。 毎月の判断がいらないので、ニュースに合わせて止めずにすみます
- 見る回数を減らす。 毎日見ると、下がった日ばかりが心に残ります。見るのは年に数回で十分です(見るのは年に何回でいい)
- 「下がっても売らない」と書いておく。 始めたときの理由と一緒にメモしておくと、下がったときに読み返せます
それでも迷ったら:売るかどうかは「暮らし」で決める
大きく下がって不安になったら、相場ではなく、自分の暮らしを見て決めます。考えるのは「お金を使う予定はいつか」と「暮らしが変わったか」の2つです。
- 使う予定が先で、暮らしも変わらない:何もしません。積立もそのまま続けます。多くの人はここに入ります
- 使う予定が近い:相場に合わせてではなく、使う予定に合わせて、使う分だけ売ります。取り崩し方は使うときのこと:取り崩し方で扱います
- 収入が減った・出費が増えた:まず生活防衛資金を使い、売る前に積立額を下げるか、一時止めることを考えます
- 暮らしは変わらないが、不安で眠れない:額が大きすぎた合図です。売って損を確定させる前に、積立額を下げて続ける方法があります
株と債券などの配分が大きくずれたときに戻す「リバランス」は、売り買いを伴いますが、これも相場の予想ではなく、決めた配分に戻すための作業です(リバランスと見直し)。
よくある質問
大きく下がったら、積立を一時止めたほうがいいですか?
暮らしに変化がなければ、止めないのが基本です。積立は下がった月に多くの口数を買っています。止めると、その安い月を自分から飛ばすことになります。止めるのは、生活費が足りなくなったときなど、暮らしの理由があるときです。
下がっているときに、多めに買い増してもいいですか?
生活防衛資金とは別に、当分使わないお金があるなら、成長投資枠で買い足すこともできます。ただし「もっと下がるかもしれない」ことも前提に、その分が下がっても続けられる額かを先に確かめます。
始めたばかりで、すでにマイナスです。失敗でしょうか?
始めてすぐのマイナスは、珍しいことではありません。積立は何年も続ける前提の方法なので、始めたばかりの時価だけで良し悪しは決まりません。暮らしが変わっていなければ、そのまま続けます。
下がったときに慌てないためには、値動きを見すぎないことも大事です。次の回は見るのは年に何回でいいです。
出典:日本経済新聞社「日本経済新聞 号外 2024年8月5日」(https://partsa.nikkei.com/parts/ds/pdf/20240805/20240805.pdf 、2026年10月確認)。日経平均株価は日本経済新聞社が算出する指数です。過去の値動きは、将来の値動きを示すものではありません。
この回のまとめ
- 株式の値下がりは、投資を始めたときから入っている「値動きの幅」の一部。下がったところで売ると、損がそこで確定する
- 積立は、値下がりした月に同じ額でより多くの口数を買っている。下がったときに止めないことが、積立のしくみを生かすことになる
- 売るかどうかは相場ではなく暮らしで決める。お金を使う予定が先で、暮らしが変わっていなければ、何もしないのが基本
確かめ問題
Q1. 毎月1万円の積立で、1口1万円の月と1口5,000円の月では、どちらが多くの口数を買える?
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1口5,000円の月(2口)
同じ1万円でも、値段が半分なら買える口数は2倍になります。積立は下がった月に多く買っています。
Q2. 下がったときに暮らしは変わっていないが、不安で眠れない。まず考えることは?
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売ることではなく、積立額を下げること
不安の大きさは、額が大きすぎる合図です。売って損を確定させる前に、続けられる額に下げる方法があります。
Q3. 下がったところで売ると、そのあと必要になる「2つめの判断」は何?
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いつ買い戻すか
売るときと買い戻すとき、両方を当てなければならなくなります。どこが底かは、あとにならないと分かりません。
もっとくわしく
- 株式投資で失敗しないために知っておくべき5つの投資家心理(基礎アーカイブ・2015年)
- リバランス|分散投資で失敗しない3つの方法(基礎アーカイブ・2018年)
- ナンピンとは?初心者が手を出してはダメな理由(基礎アーカイブ・2017年)
- リスクとは「値動きの幅」のこと
- 見るのは年に何回でいい