投資の教科書

第4章 NISAを使う 4-5・読む時間 約7分・最終更新 2026年10月28日

iDeCoとNISAのちがいは?|節税のしくみと、2026年12月からの掛金上限・70歳になるまでの加入

年金手帳と電卓
年金手帳と電卓

「NISAを始めたら、iDeCoもやったほうがいいと言われた」「でも60歳まで引き出せないと聞いて、踏み切れない」。iDeCoは、名前は知っていても、NISAとどう違うのか、両方やるべきなのかで迷う人が多い制度です。

前の回(毎月いくら、どちらの枠で)で、NISAに回す金額と枠の決め方を見ました。この回では、もう1つの国の制度であるiDeCoを取り上げます。しくみはシンプルで、「税金が軽くなるかわりに、60歳まで引き出せない」の一言でつかめます。

この回でわかること

  • iDeCoで税金が軽くなる3つの場面と、NISAとのいちばんのちがい
  • 施行済みの改正と、2026年12月1日に施行予定の改正(掛金の上限・70歳未満までの加入)
  • NISAとiDeCoに、お金をどう分けるかの考え方

結論

  • iDeCoは、自分で掛金を出して運用する年金です。掛金が全額所得から引けるので、毎年の所得税・住民税が軽くなります。そのかわり、原則60歳まで引き出せません
  • 2026年12月1日から(予定)、掛金の上限が上がり、会社員は月6.2万円、自営業の人などは月7.5万円になります。加入できる年齢も、条件つきで70歳未満まで広がります
  • いつか使うお金はNISA、60歳まで使わないと言い切れるお金はiDeCo、と分けると迷いません

iDeCoとは:自分で出して、自分で運用する年金

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)は、自分で決めた掛金を毎月出し、金融機関が用意した商品の中から自分で選んで運用し、老後に受け取る年金の制度です。国の年金(国民年金・厚生年金)に、自分で上乗せする形になります。

基本の決まりは次のとおりです(iDeCo公式サイト)。

  • 加入できる人:基本的に、20歳以上65歳未満で公的年金に入っている人(一定の条件あり)
  • 掛金:月5,000円から、1,000円単位。掛金の額は1年に1回変えられる
  • 引き出し:原則として、60歳になるまで引き出せない
  • 受け取り:原則60歳から、75歳になるまでの間に始める。60歳から受け取るには、加入していた期間などが通算10年以上必要。10年に足りないと、受け取りを始められる年齢が遅くなる
  • 受け取り方:一時金(まとめて)、年金(分けて)、その組み合わせ(取り扱う金融機関に限る)
  • 手数料:口座の管理などに手数料がかかる。金額は金融機関によって違う

運用の結果で受け取る額が変わるので、投資信託を選んだ場合は元本を下回ることもあります。

税金が軽くなる3つの場面

iDeCoのいちばんの特徴は、税金の優遇が3つの場面であることです。

掛金を出すときは全額が所得控除、運用しているときは利益が非課税、受け取るときは公的年金等控除や退職所得控除の対象
図:NISAにないのは、1つめの「掛金が所得から引ける」こと。所得税・住民税を払っている人ほど得が大きい
  1. 掛金を出すとき:掛金の全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になります。iDeCo公式サイトの例では、毎月の掛金が1万円で、所得税10%・住民税10%の人なら、1年で2.4万円税金が軽くなります
  2. 運用しているとき:ふつうは運用で得た利益に20.315%の税金がかかりますが、iDeCoでは非課税のまま運用を続けられます
  3. 受け取るとき:年金で受け取るときは「公的年金等控除」、一時金で受け取るときは「退職所得控除」の対象になります

2と3は、NISAにも似た得があります(NISAは利益が非課税で、受け取りに税金はかかりません)。NISAにないのは1の「掛金が所得から引ける」ことです。毎年確実に税金が軽くなるので、所得税・住民税を払っている人ほど得が大きくなります。

逆に、課税所得がない人(収入が少なく所得税がかからない人など)は、掛金の所得控除を受けられません。この場合、iDeCoの得は2と3だけになります。

NISAとのちがい

NISAはいつでも売れて使い道が自由、iDeCoは掛金が所得から引けるが原則60歳まで引き出せない
図:NISAは「いつか使うお金」、iDeCoは「60歳まで使わないお金」に向いている
NISA iDeCo
目的 決まっていない(何に使ってもよい) 老後のお金
引き出し いつでも売って使える 原則60歳まで引き出せない
掛金・投資額の税金 所得から引けない 全額を所得から引ける
運用の利益 非課税 非課税
受け取るとき 税金はかからない 公的年金等控除・退職所得控除の対象
1年に入れられる額 年360万円まで(2つの枠の合計) 月ごとの上限あり(働き方で違う。下の表)

NISAのしくみはNISAのしくみで、両方を並べた使い方は解説記事「NISAをうまく使うコツ」でも扱っています。

改正:施行済みのものと、2026年12月1日からのもの

iDeCoは、ここ数年で何度も決まりが変わっています。ここでは、2026年10月時点ですでに始まっているものと、これから始まるものを分けて書きます。

2022年から2024年の施行済みの改正と、2026年12月1日に施行予定の改正
図:2024年12月までの改正は施行済み。2026年12月1日の改正はこれから(施行予定)

すでに始まっている改正(施行済み)

  • 2022年4月1日:受け取りを始める年齢の上限が、70歳から75歳に延びた
  • 2022年5月1日:会社員・公務員など(国民年金の第2号被保険者)は、60歳以上65歳未満でも加入できるようになった。国民年金に任意加入している60歳以上65歳未満の人なども加入できるようになった
  • 2022年10月1日:会社の企業型DC(企業型確定拠出年金)に入っている人も、iDeCoに入りやすくなった
  • 2024年12月1日:企業年金(確定給付企業年金など)がある会社員や公務員の上限が、月1.2万円から月2.0万円に上がった(会社の掛金などと合わせて月5.5万円以内)

これから始まる改正(2026年12月1日施行予定)

厚生労働省によると、2026年12月1日から、次の2つが変わる予定です。

2026年12月1日からの掛金の上限は、自営業・フリーランス・学生などが月7.5万円、会社員・公務員が月6.2万円、専業主婦(夫)などが月2.3万円
図:自営業などは国民年金基金などと合わせた額。会社員・公務員は企業年金と共通の月6.2万円に一本化され、企業年金がある人は会社の掛金などを引いた残りが上限

1. 掛金の上限が上がる(月額)

働き方 今(2026年11月まで) 2026年12月1日から
自営業・フリーランス・学生など(第1号) 国民年金基金などと合わせて6.8万円 国民年金基金などと合わせて7.5万円
会社員・公務員(企業年金なし) 2.3万円 6.2万円
会社員・公務員(企業年金あり) 2.0万円(企業年金などと合わせて5.5万円以内) 企業年金などと合わせて6.2万円
専業主婦(夫)など(第3号) 2.3万円 2.3万円(変わらない)

会社員・公務員は、勤め先に企業年金があるかどうかで分かれていた上限が、企業年金と共通の「月6.2万円」に一本化されます。企業年金がある人は、会社の掛金などを引いた残りがiDeCoの上限になります。

2. 70歳未満まで加入できるようになる

今は、iDeCoに入れるのは国民年金に入っている人だけで、掛金を出せるのも65歳までです。改正後は、国民年金に入っていない60歳以上70歳未満の人でも、次のどれかに当てはまれば、加入して掛金を出し続けられます。

  • iDeCoに加入している人
  • iDeCoで掛金を出さずに運用だけしている人(運用指図者)
  • 会社の企業年金のお金をiDeCoに移す人

ただし、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金をまだ受け取っていないこと、会社のDCで本人の上乗せ(マッチング拠出)をしていないことが条件です。施行日から3年の間(iDeCo公式サイトによると2029年11月末まで)は、上の3つに当てはまらない60歳以上70歳未満の人も新しく加入できます。

上限が上がっても、掛金は自動では増えません。増やしたい人は、加入している金融機関で掛金額を変える手続きをします。くわしい時期や書類は、各金融機関の案内を確かめてください。

NISAとiDeCo、どう組み合わせるか

両方を使うときは、「お金を使う時期」で分けて考えると迷いません。

  1. まず生活防衛資金を預金で持つ(生活防衛資金)。iDeCoは60歳まで引き出せないので、急な出費には使えません
  2. いつか使うかもしれないお金はNISAへ。教育費・住宅・車・転職のときのお金など、60歳より前に使う可能性があるお金です
  3. 60歳まで使わないと言い切れるお金をiDeCoへ。毎年税金が軽くなるので、所得税・住民税を払っている人には得が大きい部分です

iDeCoに回す額は、「今後の生活でどれだけ使うか分からない」と少しでも思うなら、少なめにしておきます。月5,000円から始めて、余裕を見ながら年1回の変更で増やす方法もあります。NISAは、いざというときに売って使えるのが強みです。両方の合計が毎月いくら、どちらの枠でで決めた「続けられる額」に収まるようにします。

50代以上で始める人は、受け取りを始められる年齢に注意します。60歳から受け取るには通算10年以上の加入などが必要で、60歳以上で初めて加入した場合は、加入から5年たってから受け取れます。60歳以降も働く予定がある人は、2026年12月からの「70歳未満まで加入」も選び方に入ってきます。

よくある質問

iDeCoとNISA、どちらを先に始めればいいですか?

使う時期が決まっていないお金が多いなら、引き出しが自由なNISAからが始めやすいです。毎年の税金を確実に軽くしたい会社員・自営業の人で、60歳まで使わないお金がはっきりしているなら、iDeCoを並べて使う価値があります。

専業主婦(夫)でもiDeCoに入れますか?

入れます。上限は月2.3万円で、2026年12月の改正でも変わりません。ただし、課税所得がない人は掛金の所得控除を受けられないため、得は運用の利益が非課税になる点などに限られます。

途中でお金が必要になったら、どうなりますか?

原則として60歳になるまで引き出せません。掛金の額は1年に1回変えられるので、家計が苦しくなりそうなら、早めに掛金を下げるほうを考えます。だからこそ、iDeCoには「60歳まで使わないお金」だけを入れます。

NISAとiDeCoで始める準備は、ここまでです。次の章では「続ける」ことを扱います。最初は、始めたあとにいちばん迷う場面、下がったときにどうするかです。

出典:厚生労働省「2025年の制度改正」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html 、2026年10月確認)、厚生労働省「iDeCo拠出限度額の引き上げ」(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001597573.pdf 、2026年10月確認)、厚生労働省「iDeCoの加入可能年齢の引き上げ」(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001597572.pdf 、2026年10月確認)、厚生労働省Webマガジン「2026年12月からiDeCoがパワーアップ!」(https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/column/20261020.html 、2026年10月確認)、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCoの特徴」(https://www.ideco-koushiki.jp/guide/ 、2026年10月確認)、同「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」(https://www.ideco-koushiki.jp/guide/structure.html 、2026年10月確認)、同「iDeCoのメリット」(https://www.ideco-koushiki.jp/guide/good.html 、2026年10月確認)、同「制度改正について」(https://www.ideco-koushiki.jp/library/2022kaisei/ 、2026年10月確認)。制度は変わることがあります。加入や掛金の変更の前に、iDeCo公式サイトと金融機関の最新の案内をご確認ください。

この回のまとめ

  • iDeCoは自分で掛金を出して運用する年金。掛金が全額所得から引けるのが、NISAにない得。そのかわり原則60歳まで引き出せない
  • 2026年12月1日から(予定)、会社員の上限は月6.2万円(企業年金がない人は2.3万円から)、自営業の人などは月7.5万円に上がり、条件つきで70歳未満まで加入できるようになる
  • いつか使うお金はNISA、60歳まで使わないと言い切れるお金はiDeCo。所得税・住民税を払っている人ほど、iDeCoの得が大きい

確かめ問題

  1. Q1. iDeCoで積み立てたお金は、50歳で必要になったら引き出せる。○か×か

    答えを見る

    ×

    iDeCoは、原則として60歳になるまで引き出せません。いつ使うか分からないお金はNISAに向いています。

  2. Q2. 毎月の掛金が1万円、所得税10%・住民税10%の人は、1年で税金がいくら軽くなる?

    答えを見る

    2.4万円

    掛金は全額が所得控除の対象です。年12万円の掛金に、所得税と住民税の合計20%をかけると2.4万円です(iDeCo公式サイトの例)。

  3. Q3. 2026年12月の改正で、上限が上がったら掛金は自動で増える。○か×か

    答えを見る

    ×

    掛金の額は自分で決めて届け出るものです。増やしたい人は、加入している金融機関で掛金額を変える手続きをします。

もっとくわしく

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