投資の教科書

第6章 株を知る 6-3・読む時間 約8分・最終更新 2026年10月28日

決算書の読み方|損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書を、3つの問いでざっくり

書類とペン
書類とペン

「気になる会社の株を調べてみたら、『決算』『営業利益』『純資産』と知らない言葉ばかりで、すぐ閉じてしまった」「決算書は経理の人が読むもので、自分には無理だと思っている」。そんなふうに感じていませんか。

前の回(株の買い方:単元・指値と成行・手数料)では、株の注文の出し方を見ました。そして、その前の回(株とは何か:株価が動くしくみ)で見たとおり、株価を動かすいちばんの元は、会社の成績と見通しです。この回では、その会社の成績表=決算書を、ざっくり読めるようになることを目指します。

細かい数字を全部読む必要はありません。決算書には大きく3つの表があり、それぞれが1つの問いに答えています。その問いが分かれば、どの数字を見ればよいかが分かります。

この回でわかること

  • 決算書の3つの表(損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書)が、それぞれ何を表しているか
  • 損益計算書の5つの利益のちがいと、まず見るところ
  • 決算書をどこで見られるか(決算短信・有価証券報告書)

結論

  • 損益計算書は1年間で「どれだけもうけたか」、貸借対照表は決算の日に「何を持ち、どうやってお金を集めたか」、キャッシュフロー計算書は1年間の「現金の出入り」を表します
  • 損益計算書は、売上高から費用を順に引いていく表です。まずは、本業のもうけを表す営業利益を見ます
  • 利益と現金は同じではありません。3つの表を「もうけているか」「借金に頼りすぎていないか」「現金を生んでいるか」の3つの問いで読むと、会社の姿がつかみやすくなります

決算書とは、どこで見られるか

決算書は、会社の1年間(または3か月ごとなど)の成績と、お金の状態をまとめた書類です。上場している会社(取引所で株が売り買いされている会社)は、決算の内容が決まったら、すぐに公表することが取引所から求められています。

株を調べるときによく使うのは、次の2つです。

  • 決算短信(けっさんたんしん):日本取引所グループ(JPX)の用語集では、上場会社が決算発表・四半期決算発表をするときに、決算の内容の要点をまとめた書類です。1ページ目に、売上高や利益などの大事な数字がまとめて載っています。会社のウェブサイトの「IR(投資家向け情報)」のページなどで見られます
  • 有価証券報告書:決算書に加えて、事業の中身や役員などをくわしく書いた書類です。金融庁の電子開示システム「EDINET」(エディネット)で、だれでも見られます

決算書の数字は、多くの場合「連結」(子会社などを含めたグループ全体)で書かれています。はじめのうちは、連結の数字を見れば十分です。

ここからは、仮の会社「A社」の数字で、3つの表を順に見ていきます(数字はすべて説明のための仮の例です)。

損益計算書:1年間で、どれだけもうけたか

損益計算書(そんえきけいさんしょ)は、1年間の**売上と費用、そしてもうけ(利益)**を表す表です。英語の頭文字から「P/L」とも呼ばれます。

A社の売上高100億円、売上総利益40億円、営業利益10億円、経常利益9億円、当期純利益6億円
図:売上高から費用を順に引いていくと、最後に残るもうけ(当期純利益)は売上高の一部になる。まず見るのは本業のもうけの営業利益

上から順に、売上高から費用を引いていき、途中で5つの「利益」が出てきます。財務諸表のつくり方を決めた国のルール(財務諸表等規則)にそって、A社で見てみます。

項目 A社(仮の例) 意味
売上高 100億円 商品やサービスを売った金額
− 売上原価 60億円 売ったものをつくる・仕入れるのにかかったお金
= 売上総利益 40億円 いわゆる「粗利(あらり)」
− 販売費及び一般管理費 30億円 人件費・広告費・家賃など、売るため・会社を回すための費用
= 営業利益 10億円 本業でのもうけ
+ 営業外収益 − 営業外費用 +1億円 − 2億円 受け取った利息や配当、払った利息など、本業以外のふだんのお金の出入り
= 経常利益 9億円 ふだんの活動全体でのもうけ
+ 特別利益 − 特別損失 0億円 土地を売った、災害で損をしたなど、その年だけの出来事
− 法人税など 3億円 税金
= 当期純利益 6億円 最後に残ったもうけ。配当の元になる

まず見るのは営業利益

5つの利益のうち、はじめに見るとよいのは営業利益です。本業でどれだけもうけたかを表すからです。

  • 売上高が増えていても、営業利益が減っていれば、「売れているのに、もうけが出にくくなっている」ことになります
  • 当期純利益は、土地を売ったなど「その年だけの出来事」で大きく増えたり減ったりします。当期純利益が急に増えた年は、特別利益が入っていないかを見ます

数字は1年分だけでなく、前の年とくらべるのが基本です。決算短信の1ページ目には、多くの場合、前の年の数字や、増えたか減ったかの割合も並んでいます。株価は「これからの見通し」で動きやすいので、会社が出している来年の予想(業績予想)も、同じページに載っていれば見ておきます。

貸借対照表:何を持ち、どうやってお金を集めたか

貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)は、決算の日の時点で、会社が何を持っているかと、そのお金をどうやって集めたかを表す表です。「バランスシート」「B/S」とも呼ばれます。

A社の資産120億円は、負債70億円と純資産50億円で集めたお金
図:持っているもの(資産)の合計は、いずれ返すお金(負債)と返さなくてよいお金(純資産)の合計と同じになる

表は、左右に分かれています。

  • 左側:資産(現金・商品・工場・土地など、会社が持っているもの)
  • 右側:負債(借入金など、いずれ返す必要があるお金)と、純資産(株主が出したお金と、これまでのもうけを積み上げたものなど、返す必要のないお金)

右側は「お金をどうやって集めたか」、左側は「そのお金を何に使っているか」です。同じお金を両側から見ているので、資産の合計=負債+純資産になります。JPXの用語集でも、純資産は資産の総額から負債の総額を引いた金額、と説明しています。

A社(仮の例)は、資産が120億円、そのうち負債が70億円、純資産が50億円です。

見るところ:借金に頼りすぎていないか

貸借対照表でまず見るのは、資産のうち、純資産がどのくらいあるかです。A社なら、120億円のうち50億円、約4割です。

  • 純資産の割合が大きいほど、返す必要のないお金で事業をしていることになり、不景気で売上が落ちても持ちこたえやすくなります
  • 負債が多いこと自体が悪いわけではありません。借りたお金で工場を建て、もうけを増やす会社もあります。業種によって、ふつうの水準もちがいます

前の年とくらべて、純資産が増えているかも見ます。もうけのうち配当などに回さなかった分は、純資産に積み上がっていきます。純資産が年々増えている会社は、もうけを積み上げてきた会社です。

キャッシュフロー計算書:現金は増えたか

キャッシュフロー計算書は、1年間の現金の出入りを表す表です。財務諸表等規則では、次の3つに分けて書くことになっています。

区分 意味 A社(仮の例)
営業活動によるキャッシュフロー 本業で、現金がどれだけ入ってきたか +12億円
投資活動によるキャッシュフロー 工場や機械などに、現金をどれだけ使ったか −8億円
財務活動によるキャッシュフロー 借りた・返した、配当を払ったなどの現金の出入り −2億円
現金の増減 3つの合計 +2億円

利益と現金は、同じではない

「利益が出ているなら、現金も同じだけ増えているはず」と思いがちですが、そうとはかぎりません。

たとえば、商品を売って売上を計上しても、代金を受け取るのが2か月後なら、その間は現金は増えていません。反対に、何年も使う機械の代金は、損益計算書では何年かに分けて費用にしますが、現金は買ったときにまとめて出ていきます。A社も、当期純利益は6億円ですが、本業で入ってきた現金(営業活動によるキャッシュフロー)は12億円です。

見るところ:本業で現金を生んでいるか

まず見るのは、営業活動によるキャッシュフローがプラスかどうかです。

A社は本業で12億円の現金が入り、工場や機械に8億円、借入金の返済や配当に2億円を使い、現金は2億円増えた
図:本業で入った現金(営業活動によるキャッシュフロー)がプラスなら、本業で現金を生み出せている
  • プラスなら、本業で現金を生み出せています。A社は+12億円で、そのうち8億円を工場や機械に使い(投資活動)、2億円を借入金の返済や配当に回した(財務活動)、と読めます
  • 利益は出ているのに、営業活動によるキャッシュフローがマイナスの年が続くときは、売った代金をなかなか受け取れていないなどの理由がないか、気をつけて見ます

3つの表は、つながっている

3つの表は、ばらばらではありません。

もうけているかは営業利益、借金に頼りすぎていないかは純資産の割合、現金を生んでいるかは営業活動によるキャッシュフローで見る
図:3つの表を、それぞれ1つの数字で読む
  • 損益計算書で出たもうけ(当期純利益)のうち、配当などに回さなかった分は、貸借対照表の純資産に積み上がる
  • キャッシュフロー計算書で増えた現金は、貸借対照表の資産の「現金」に入る

全部を細かく追う必要はありません。はじめのうちは、次の3つの問いに、それぞれ1つの数字で答えられれば十分です。

  1. もうけているか → 損益計算書の営業利益(前の年より増えたか)
  2. 借金に頼りすぎていないか → 貸借対照表の純資産の割合
  3. 現金を生んでいるか → キャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフロー(プラスか)

よくある質問

決算書の数字がよければ、株価は上がりますか?

上がるとはかぎりません。株とは何かで見たとおり、株価は「これからの見通し」で動きやすく、成績がよくても予想ほどではなかったときは下がることがあります。決算書は、株価を当てる道具ではなく、会社の中身を知るための道具と考えます。

決算はいつ発表されますか?

1年に1回の決算に加えて、3か月ごとの決算(四半期決算)の内容も、決まったら公表されます。決算の時期は会社によってちがいます。発表の日は、会社のIRのページで前もって知らせていることが多いので、そこで確かめます。

投資信託を積み立てているだけでも、決算書を読む必要はありますか?

必要ありません。たくさんの会社に分けて投資する投資信託なら、1社ずつの決算書を読まなくても続けられます。個別の株に興味が出たときに、この回を思い出してもらえれば十分です。

決算書の数字が分かったら、次は、その数字と株価をくらべて「割安か、割高か」を見るものさしです。PER・PBR・配当利回りを見ていきます(割安・割高のものさし:PER・PBR・配当利回り)。

出典:e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(資産・負債・純資産の分類、損益計算書の区分と各利益、キャッシュ・フロー計算書の3つの区分)、日本取引所グループ「決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領」(決算内容の開示)、日本取引所グループ 用語集「決算短信」、同「純資産」、金融庁「EDINETについて」(いずれも2026年10月28日確認)。この回の「A社」とその数字は、説明のための仮の例です。実在の会社や銘柄をすすめるものではありません。

この回のまとめ

  • 損益計算書は1年間で「どれだけもうけたか」、貸借対照表は決算の日に「何を持ち、どうやってお金を集めたか」、キャッシュフロー計算書は1年間の「現金の出入り」を表す
  • 損益計算書は売上高から費用を順に引いていく。本業のもうけを表す営業利益をまず見る
  • 利益と現金は同じではない。3つの表を、もうけているか・借金に頼りすぎていないか・現金を生んでいるか、の3つの問いで読むと、会社の姿がつかみやすい

確かめ問題

  1. Q1. 会社の本業でのもうけを表すのは、売上総利益・営業利益・経常利益のどれですか?

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    営業利益

    営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費(人件費・広告費など)を引いたもので、本業でのもうけを表します。

  2. Q2. 貸借対照表では、資産の合計は、負債と純資産の合計と同じになる。○か×か

    答えを見る

    ○

    貸借対照表の右側(負債と純資産)は「お金をどうやって集めたか」、左側(資産)は「そのお金を何に使っているか」で、合計は同じになります。

  3. Q3. 損益計算書で利益が出ていれば、その年の現金も必ず同じだけ増えている。○か×か

    答えを見る

    ×

    売ったけれど代金をまだ受け取っていない、といったことがあるため、利益と現金の増え方は一致しません。現金の出入りはキャッシュフロー計算書で見ます。

もっとくわしく

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