第2章 投資のしくみ 2-4・読む時間 約7分・最終更新 2026年10月28日
長期・積立・分散とは?|値動きとうまく付き合う3つの方法を、例でわかりやすく


「投資を始めたいけれど、買ったとたんに値下がりしたらと思うと怖い」。「今は高いのか安いのか、いつ買えばいいのか分からない」。そう迷っていませんか。
その迷いは、とても自然なものです。そして、プロでも「いつが底か」を当て続けることはできません。だから多くの人は、当てようとするのではなく、値動きとうまく付き合う方法を使います。それが「長期・積立・分散」です。金融庁も、NISAの特設サイトで、この3つを資産形成の基本として紹介しています。
前の回(複利と時間)では、長く続けるほど増え方が大きくなる、という話をしました。この回は、その「続ける」を、値動きがあっても続けやすくするための3つの方法です。
この回でわかること
- 長期・積立・分散は、どれも「分ける」こと(時間・買う時期・買うもの)
- 毎月同じ金額で買うと、安いときに多く、高いときに少なく買えるしくみ
- 1つの会社に集中しないと、1社の値下がりの影響が小さくなる理由
結論
- 長期は時間を分ける。1年ごとの上げ下げにふり回されず、複利の効き目を受けやすくなる
- 積立は買う時期を分ける。同じ金額で買い続けると、安いときに多く買え、「いつ買うか」で悩まなくてすむ
- 分散は買うものを分ける。値動きの違うものに分けると、1つが大きく下がっても全体の傷は小さくなる
3つとも「分ける」こと
長期・積立・分散は、別々の話に見えますが、じつはどれも「分ける」という同じ考え方です。
- 長期:持つ時間を長くとる。1年の上げ下げを、何年もの中に分けて薄める
- 積立:買う時期を分ける。一度にまとめて買わず、毎月など決まった間隔で少しずつ買う
- 分散:買うものを分ける。1つの会社や1つの国にまとめず、いろいろなものに分けて買う
1つにまとめると、当たれば大きく、外れても大きい。分けると、当たり外れの振れ幅が小さくなります。はじめての人にとっては、大当たりを狙うより、大きく外さないことのほうが、ずっと大切です。
長期:時間を分ける
株や投資信託の値段は、1年のうちでも大きく上がったり下がったりします(リスクとは「値動きの幅」のこと)。1年だけで見ると、たまたま下がった年に当たることもあります。
長く持つと、上がる年と下がる年の両方を経験することになります。1年の大きな下げも、10年、20年の中の1年になれば、全体に占める重さは小さくなります。そして、前の回で見たように、複利は時間が長いほど効きます。
ただし、長く持てば必ずプラスになる、という意味ではありません。長期は、利益を約束するものではなく、値動きと付き合いやすくするための方法です。そのうえで大事なのは、下がったときに売らずにいられることです。生活費まで投資に回していると、下がったときに売らざるをえなくなります。投資に回すのは、生活防衛資金とは別の、当面使わないお金にします(生活防衛資金)。
積立:買う時期を分ける
積立は、毎月1万円のように、決まった金額で、決まった時期に買い続ける方法です。金融庁も、積立には「値段が高いときだけ買ってしまう」のを避けやすい面があると説明しています。
なぜそうなるのか、例で見てみます。ここでは、1口の値段が毎月こう動いたと仮にします。
| 月 | 1口の値段(仮) | 1万円で買える口数 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 1,000円 | 10口 |
| 2か月目 | 800円 | 12.5口 |
| 3か月目 | 500円 | 20口 |
| 4か月目 | 1,000円 | 10口 |
| 合計 | ― | 52.5口(払ったのは4万円) |
金額が同じなので、値段が安い月ほど多くの口数を買えています。4か月目に値段が1,000円に戻ったとき、52.5口は52,500円です。払ったのは4万円なので、1口あたりの平均の買値は約762円になりました。
一方、1か月目に4万円をまとめて買っていたら、買えたのは40口です。4か月目に値段が元の1,000円に戻っても、4万円のままです。
このように、同じ金額で買い続ける方法は「ドル・コスト平均法」とも呼ばれます。
ただし、正直に書いておくべきこともあります。
- この例は、途中で値段が下がって、また戻った場合です。値段が一本調子で上がり続けた場合は、最初にまとめて買ったほうが結果はよくなります
- 値段が下がったまま戻らなければ、積立でも損は出ます
それでも積立がはじめての人に向いているのは、「いつ買うか」を考えなくてすむからです。毎月自動で買うように設定しておけば、高いか安いかで悩むことも、怖くて買えなくなることもありません。毎月の給料から無理のない額で始められるのも利点です(毎月いくら、どちらの枠で)。
分散:買うものを分ける
分散は、値動きの違うものに分けて買う方法です。
これも例で見てみます。ここでも仮の例です。100万円を、
- 1つの会社の株に100万円 → その会社の株の値段が半分になると、50万円
- 10の会社に10万円ずつ → そのうち1社の値段が半分になっても(ほかの9社は変わらないとすると)、95万円
1社に何が起きても、全体の傷は小さくすみます。1つの会社には、業績の悪化や不祥事など、その会社だけの事情が起こりえます。分けておけば、そうした「1社だけの事情」の影響を薄められます。
分け方には、いくつかの方向があります。金融庁は、国内と海外、株式と債券などのように、値動きの違う資産に分けることを紹介しています。
- 会社を分ける:1社ではなく、たくさんの会社に
- 地域を分ける:日本だけでなく、海外にも
- 資産を分ける:株だけでなく、債券など値動きの違うものにも
ただし、分散にも限りがあります。世界中の株が同じように下がるような時期には、分散していても全体が下がります。分散は、損をなくすものではなく、1つの外れで大きく傷つかないようにするものです。
自分で何十社もの株を買うのは大変です。そこで、少ない金額でたくさんの会社にまとめて投資できる「投資信託」がよく使われます。投資信託のしくみは、第3章のはじめ(投資信託のしくみ)で説明します。
3つを合わせると、続けやすくなる
長期・積立・分散は、どれか1つより、3つを合わせて使うと効き目が大きくなります。
- たくさんのものに分けて(分散)
- 毎月同じ金額で少しずつ買い(積立)
- 長く持ち続ける(長期)
この組み合わせだと、「何を買うか」「いつ買うか」「いつ売るか」を、毎回自分で当てる必要がなくなります。はじめての人がつまずきやすいのは、まさにこの3つを当てようとして、1つの銘柄に集中したり、下がったところで売ったりすることです(はじめての人のよくある失敗)。
NISAのつみたて投資枠は、この「長期・積立・分散」に向くものとして国が決めた基準を満たす投資信託などを、積立で買うための枠です(NISAのしくみ)。
よくある質問
積立と一括、どちらがよいのですか?
値段がこの先どう動くかで、結果は変わります。上がり続ければ一括のほうがよく、途中で下がれば積立のほうがよくなることがあります。どちらになるかは事前には分かりません。はじめての人には、「いつ買うか」で悩まずにすむ積立のほうが続けやすい、というのが積立をすすめる大きな理由です。
分散しすぎると、もうけが小さくなりませんか?
1つの会社が大きく値上がりしたとき、その会社に集中していた場合よりは、もうけは小さくなります。そのかわり、1つが大きく値下がりしたときの傷も小さくなります。はじめての人にとっては、大きく外さないことのほうが大切です。
値段が下がっているときも、積立は続けるのですか?
積立のしくみでは、値段が下がっている時期は、同じ金額でより多くの口数を買える時期でもあります。下がったときの考え方は、下がったときにどうするかで取り上げます。
長期・積立・分散で値動きと付き合えるようになっても、もう一つ、毎年じわじわと効いてくるものがあります。次の回では、見えにくいコストである「手数料と税金」を見ていきます(手数料と税金)。
出典:金融庁「資産形成の基本:NISA特設ウェブサイト」(2026年10月確認)。この回の値段や金額の例は、しくみを説明するための仮の数字です(手数料・税金は含みません)。
この回のまとめ
- 長期は時間を分ける。1年ごとの上げ下げにふり回されず、複利の効き目を受けやすくなる
- 積立は買う時期を分ける。同じ金額で買い続けると、安いときに多く買え、「いつ買うか」で悩まなくてすむ
- 分散は買うものを分ける。値動きの違うものに分けると、1つが大きく下がっても全体の傷は小さくなる
確かめ問題
Q1. 毎月同じ金額で買い続けると、値段が安い月にはどうなりますか?
答えを見る
多く(たくさんの口数を)買える
金額が同じなので、値段が安いときは多く、高いときは少なく買うことになります。
Q2. 仮に100万円を10社に10万円ずつ分け、1社だけ値段が半分になったら、全体はいくらになりますか(ほかの9社は変わらないとする)?
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95万円
半分になった1社は10万円→5万円。全体では5万円の減りで、100万円→95万円です。1社に100万円なら50万円になっていました。
Q3. 長く持てば、必ずプラスになりますか?
答えを見る
いいえ(必ずではない)
長期は値動きと付き合いやすくする方法で、利益を約束するものではありません。
もっとくわしく
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