投資の教科書

第6章 株を知る 6-5・読む時間 約6分・最終更新 2026年10月28日

個別株で大きく失敗しないために|1社への集中・ナンピン・信用取引の落とし穴を数字で見る

コインと日付の目盛り
コインと日付の目盛り

PERや配当利回りが分かってきて、「そろそろ自分で会社を選んで株を買ってみたい」と思っていませんか。一方で、「個別株で大きく損をした」という話を聞くと、どこに気をつければいいのか不安にもなります。

前の回では、株価が割安か割高かを測るものさし(PER・PBR・配当利回り)を見ました(割安・割高のものさし)。ただ、どんなに会社をよく調べても、予想が外れることはあります。個別株で大きくつまずく人の多くは、会社選びよりお金の置き方でつまずいています。はじめての人によくある失敗ははじめての人のよくある失敗でざっと見たので、この回では、個別株を選ぶ人に向けて、集中・ナンピン・信用取引の3つを数字で確かめます。

この回でわかること

  • 1社に集中すると、1つの出来事で資産全体が大きく動く理由
  • ナンピンで平均の買値は下がっても、損が広がりやすいしくみ
  • 信用取引の委託保証金・追証のしくみと、損が手持ちを超えることがある理由

結論

  • 個別株は、なくなっても暮らしに困らない額で、何社かに分けて持ちます。土台は投資信託の積立にして、個別株はその上に置きます
  • ナンピン(値下がりした株を買い増すこと)は、戻らなければ損と1社への偏りが大きくなります。買い増す前に、買った理由が今も正しいかを確かめます
  • 信用取引は保証金の約3倍まで取引でき、損も約3倍の速さで増えます。損が手持ちのお金を超えることもあります。はじめての人は使わなくて大丈夫です

1社に集中すると、1つの出来事で全体が動く

投資信託は、何十・何百の会社にまとめて投資します。1社がつまずいても、全体への影響は小さくなります(投資信託のしくみ)。個別株は逆で、選んだ会社の出来事を、そのまま受けます。

300万円を1社に入れると150万円減り、10社に30万円ずつなら15万円減る
図:同じ300万円でも、1社に集中すると全体の半分、10社に分けると全体の5%が減る(仮の例)

たとえば、300万円を投資するとします(説明のための仮の例です)。

持ち方 1社の株価が半分になったとき
1社に300万円 150万円減る(全体の半分)
10社に30万円ずつ 15万円減る(全体の5%)

株価が半分になるのは、めったにないことではありません。業績が大きく悪くなった、不祥事が起きた、といったときには、短い間に大きく下がることがあります。さらに、会社が倒産したり上場廃止になったりすると、株がほとんど売れない、値がつかない、ということもあります。

個別株で大事なのは「よい会社を当てる」ことより、外れたときに困らない持ち方にしておくことです。

  • 個別株に回すのは、投資のお金のうちの一部にする。NISAのつみたてなど、投資信託の積立を土台にする
  • 1社に偏らせず、何社かに分ける。業種もばらばらにする
  • 自分の勤め先の株も、1社への集中になる。給料と株が同じ会社の業績に左右されることを知っておく

ナンピン:平均の買値は下がるが、損も偏りも大きくなる

ナンピンは、値下がりした株を買い増して、平均の買値を下げることです。「安くなったのだから、もっと買えばお得」と思いやすいのですが、数字で見ると落とし穴が分かります(仮の例です)。

株価が1,000円から600円に下がる間、ナンピンで平均の買値は900円まで下がるが、株価はその下に離れていく例
図:仮の例。800円で買い増すと平均の買値は900円に下がるが、株価が600円まで下がると、損は買い増さなかったときの4万円より大きい6万円になる
  1. 1,000円で100株を買う(10万円)
  2. 800円に下がったので、100株を買い増す(8万円)。合計18万円で200株、平均の買値は900円
  3. さらに600円まで下がる
買い増さなかった ナンピンした
持っている株 100株 200株
使ったお金 10万円 18万円
600円での値打ち 6万円 12万円
損 4万円 6万円

ナンピンをすると、元の値段に戻るのに必要な株価は1,000円から900円に下がります。これがナンピンの魅力です。けれども、戻らなかったときの損は、4万円から6万円に増えています。そして、使ったお金の多くが1社に集まります。

もう一つ知っておきたいのが、下がった割合と、戻すのに必要な割合はちがうことです。1,000円から600円は40%の値下がりですが、600円から1,000円に戻るには約67%の値上がりが必要です。大きく下がった株が元に戻るのは、思っているより大変です。

買い増すかどうか迷ったら、株価ではなく会社を見直します。

  • 買ったときの理由(利益が伸びそう、など)は、今も正しいか
  • 株価が下がった理由は何か。業績が悪くなったのなら、買ったときとは別の会社になっているかもしれない
  • 買い増したあと、その1社が投資全体の中で大きくなりすぎないか

信用取引:手持ちの約3倍まで取引でき、損も約3倍になる

信用取引は、証券会社に担保としてお金(委託保証金)を預け、買うためのお金や売るための株を借りて取引するしくみです。日本取引所グループの説明では、次のように決められています。

委託保証金は売買代金の30%以上、保証金の約3倍まで取引でき、20%を下回ると追証、制度信用取引の返す期限は最長6か月
図:実際の保証金の率などは証券会社ごとに決まりがある。使う前に説明書面で確かめる
  • 委託保証金は、売買代金の30%以上。その額が30万円に満たない場合は30万円
  • そのため、保証金の約3倍まで取引できる
  • 株価が動いて、保証金から損や費用を引いた額が売買代金の**20%**を下回ると、**追加の保証金(追証、おいしょう)**を入れる必要がある
  • 取引所が決めたルールで行う「制度信用取引」では、借りたものを返す期限が最長6か月

実際の保証金の率などは、証券会社ごとに決まりがあります。使う前に、証券会社の説明書面で確かめます。

保証金100万円で、300万円分の株を買ったとします(仮の例です。計算を分かりやすくするため、手数料や借りたお金の金利は入れていません)。

株価の動き 損 保証金100万円に対して
10%下がる 30万円 3割が消える
約13%下がる 40万円 残りが60万円(売買代金300万円の20%)を下回りそうになり、追証の目前
30%下がる 90万円 ほとんど残らない
50%下がる 150万円 保証金を50万円超える損

株価が10%下がっただけで、預けたお金の3割が消えます。追証を入れられなければ、証券会社が株を売って損が確定することもあります。そして値下がりが大きいと、損が預けたお金を超え、足りない分を払うことになります。現物の株(自分のお金だけで買う、ふつうの株)なら、損は最大でも払った金額までです。この点が、信用取引のいちばん大きなちがいです。

さらに、借りたお金には金利が、借りた株には貸株料などがかかります。持っている間ずっとかかるので、長く持つほど負担になります。

信用取引は、手持ちの株を持ったまま値下がりに備える、といった使い方をする経験者向けの道具です。長く積み立てて増やしたい人には、使わなくて大丈夫です。 くわしく知りたい人は、上級の信用取引・短期売買のページにまとめています。

買う前に決めておくこと

個別株の失敗の多くは、買ったあとに、その場の気持ちで判断することから起きます。買う前に、次のことを書き出しておくと、迷ったときの支えになります。

個別株を買う前に確かめる5つのこと
図:買う前に書き出しておくと、下がったときに気持ちで売り買いしにくくなる
  • いくらまで使うか:なくなっても暮らしに困らない額か。生活防衛資金とは別のお金か(生活防衛資金)
  • なぜ買うのか:利益が伸びそう、配当が続きそう、など。1〜2行で書けない理由なら、まだ買わない
  • どうなったら売るのか:買った理由が崩れたとき、どこまで下がったら、など。前もって決めた値段で自動で売る「逆指値注文」を使う方法もあります
  • 1社に偏っていないか:その株を足しても、投資全体のバランスは保てるか
  • 信用取引ではなく、自分のお金で買うか

よくある質問

個別株は何社くらいに分ければいいですか?

決まった答えはありません。大事なのは社数より、「1社がだめになっても、投資全体と暮らしが大きく傷まないか」です。社数を増やすのが大変なら、土台を投資信託にして、個別株は少額にとどめる方法もあります。

ナンピンは絶対にしてはいけないのですか?

してはいけない、という決まりはありません。ただし、株価が下がったから買うのではなく、買った理由が今も正しいと確かめたうえで、1社に偏りすぎない範囲にとどめます。確かめずに「取り返したい」で買い増すのは避けます。

信用取引の口座は、作っておいたほうがいいですか?

使う予定がなければ、申し込まなくて大丈夫です。まずは自分のお金で買う現物の株と、投資信託の積立で十分です。

ここまでで、第6章「株を知る」はおしまいです。次の章では、金利・為替・景気のニュースが株価とどうつながるかを見ていきます。最初は、ニュースでよく聞く「金利」です(金利が上がると株はどうなる)。

出典:日本取引所グループ「信用取引の目的・仕組み」(委託保証金は売買代金の30%以上、20%を下回ると追証、制度信用取引の返済期限は6か月以内)、日本取引所グループ「信用取引制度の概要」(委託保証金の約3倍までの売買、制度信用取引と一般信用取引)、日本取引所グループ「委託保証金」(用語集)(30万円に満たない場合は30万円)、日本証券業協会「信用取引」(自主規制関連用語集)(いずれも2026年10月28日確認)。株価・金額の例は説明のために作った仮の例です。

この回のまとめ

  • 個別株は、なくなっても暮らしに困らない額で、何社かに分けて持つ。土台は投資信託の積立にする
  • ナンピンは「戻れば早く取り返せる」代わりに、戻らなければ損と1社への偏りが大きくなる。買い増す前に、買った理由が今も正しいかを確かめる
  • 信用取引は保証金の約3倍まで取引でき、損も約3倍の速さで増える。はじめての人は使わなくてよい

確かめ問題

  1. Q1. 1,000円で100株、800円で100株を買うと、平均の買値はいくら?

    答えを見る

    900円

    合計18万円で200株を買ったので、18万円÷200株=900円です。平均の買値は下がりますが、株価がさらに下がると損は広がります。

  2. Q2. 信用取引の委託保証金は、売買代金の何%以上と決められている?

    答えを見る

    30%以上(最低30万円)

    日本取引所グループの説明では、委託保証金は売買代金の30%以上で、30万円に満たない場合は30万円です。保証金の約3倍まで取引できます。

  3. Q3. 株価が1,000円から600円に下がった株が、1,000円に戻るには何%上がる必要がある?

    答えを見る

    約67%

    600円から400円上がる必要があり、400÷600で約67%です。40%下がったものを戻すには、40%より大きな上昇が要ります。

もっとくわしく

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