陰線とは、株価や為替レートの価格が、始値に比べて終値が低かった場合に表示されるローソク足のことです。
陰線が出たということは、その期間、相場が下落したということを意味します。
しかし、陰線が出ているからといって、今後も、相場が下落し続けるとは限りません。前後のローソク足から得られる情報とよく比較した上で、その陰線にどのような意味があるのかを、分析する必要があります。
この記事では、精度の高い推測のために必須の4つの陰線のパターンと、その知識を実践で活用するための事例を解説しています。最後までお読みいただくと、具体的に、どのように推測すればよいのか、鮮明にイメージできるようになります。
ぜひ、参考にして下さい。
執筆者
ぶせな
FXの専業トレーダー。認定テクニカルアナリスト。 本格的にFXを開始してから10年で1億6,500万円の利益を突破。著書に、『最強のFX 1分足スキャルピング』『最強のFX 15分足デイトレード』(共に、日本実業出版社)がある。ツイッターアカウントは、『@busena_fx』、ブログは『億トレーダーぶせなブログ』。
1.陰線の4つのパターン
FXのテクニカル分析で必須のローソク足チャートでは、様々な形の陰線が現れます。しかし、そのパターンは、大別すると次の4つしかありません。

上にも書いてありますが、左から、以下のような名前で呼びます
- 大陰線(だいいんせん)
- 小陰線(しょういんせん)
- 上ヒゲ陰線(うわひげいんせん)
- 下ヒゲ陰線(したひげうんせん)
陰線は、これらの4つの形がキレイに現れることがほとんどです。しかし、大陰線なのか下ヒゲ陰線なのか判断しづらい、複合系の陰線も現れます。しかし、いずれにせよ、これらの4つのパターンの組み合わせでしかありません。
そのため、これらの4つのパターンをしっかりと頭に入れておくと、どのような陰線を見ても、その意味合いを正しく理解することができます。
それでは、1つずつ見ていきましょう。
1.1.大陰線は下落の可能性を表す

大陰線は、実体が長い陰線のことです。
始値よりも大きく下落した終値をつけているので、現在の相場は売り圧力が強く、これから先も価格が下落していく可能性(=先安観)を示すシグナルとなります。
大陰線も、大陽線と同じように何銭(円)以上の値幅が必要という定義はありません。前後のローソク足と比較して、状況を正確に理解するように意識することが大切です。
例えば、何十分も20銭前後の値動きだったローソク足(分足)が、突然、50銭以上の実体がある陰線を形成すれば、それは大陰線といえます。
ポイント!
大陰線は、これから先も価格が下落していく可能性を示すシグナル。前後のローソク足と比較することで、正確に判断できるようになる。
1.2.小陰線は気迷い状態を表す

小陰線は、実体もヒゲも短い陰線です。
小陽線と同じように、横ばい相場(=レンジ相場)の時に多く見られます。小陰線1本だけで何か大きなシグナルになることはありません。前後のローソク足の連続性と比較して、次の動きに備えておくと良いでしょう。
例えば、小陰線が連続した後に、大陽線が突然出た場合は、新たなトレンドが発生した可能性が考えられます。この場合、発生したトレンドが確実なものなのかを確信する材料を探して、確信が持てた時点でトレードを行う姿勢が大切です。
そこまでしっかりと分析をして、初めて本当の意味で相場の波に乗ることができます。
小陰線や小陽線が連続して、相場がどちらに動くか迷っている状態の時は、相場の波に乗るための準備期間といえます。この時にどれだけ準備できるかで、トレードの成績は決まると言っても過言ではありません。
なお、横ばい相場で次の波に備えるための具体的な行動は、『三角持ち合いとは|見方とトレード戦略』で詳しく解説しています。
ポイント!
小陰線や小陽線が連続している停滞状態の時こそ、無理に売買せず、戦略を立てることが大切。
1.3.上ヒゲ陰線は下落圧力が強いことを表す

上ヒゲ陰線は、上ヒゲが実体よりも長い陰線のことをいいます。
上ヒゲ陰線が上昇トレンドの最中に出た場合、買い勢力の衰えを示します。そのため、そこが一時的な天井になるシグナルである可能性があります。なぜなら、一度大きな高値を記録したにも関わらず、終値が決まる頃には、価格は始値すら下回る水準になっているからです。
また、下降トレンド相場の底の辺りで出た時は、そこで相場転換して上昇するきっかけになるという見方もあります。その理由は、一度でも始値を大きく上回る高値がついているため、買い勢力が強くなり始めたと想定できるからです。
ポイント!
上ヒゲ陰線は、どこで出現するかによって意味合いが異なるが、基本は弱気のサイン。
1.4.下ヒゲ陰線は押し目や戻りのポイントになりえる

下ヒゲ陰線は、下ヒゲが実体よりも長い陰線のことをいいます。
終値は始値より下がっていますが、安値から大きく戻っているので、下落圧力は弱まっているとも読み取れます。上昇トレンド、下降トレンドのどちらに出現した場合も、“押し目”や“戻り”のポイントになりえます。
このように、上ヒゲ陰線も下ヒゲ陰線も、どこで出現したかによって意味する情報が違います。ローソク足の4本値がどのように形成されたかを想像して、投資家の心理を探れるようになりましょう。
ポイント!
下ヒゲ陰線は、押し目や戻りのポイントになりえるので、注意して見ることが大切。
2.陰線の見方 ~実践編~
陰線についての必要な知識は、上の通りです。大切なことは、このような基本的な知識を、実践で活用できるようになることです。
人によっては、現時点では難しいと感じるかもしれません。現段階では、「FXで成功するためには、このように考えるんだな」というように考え方に触れる機会として捉えて下さい。心配しなくとも、毎日真剣にチャートに向き合うようになれば、あなたも自然とできるようになります。
具体例を見ていきましょう。下のチャートは、ドル円の日足チャートです。

矢印のポイントが、私がトレードをした日(以下、「トレード当日」)です。
トレード当日は、直前の2日と違い、陰線(赤色)が出ています。私は、この陰線を確認する前から、この日は下降トレンドであることを想定していました。その根拠は、2日前には上ヒゲの長い大陽線が、1日前には明確な上ヒゲ陽線が出ていたからです。
私は、この2本の上ヒゲ陽線から、「買いの勢いはもう失われており、相場は下降していくのではないか?」と想定して、トレード当日の戦略を立てていました。なお、陽線についての詳しい説明は、『陽線の4つのパターン』で解説しています。
次に、下のチャートをご覧下さい。これは、先ほどのトレード当日の5分足です。

Aの時点では、上ヒゲ陽線と上ヒゲ陰線が連続しています。
おさらいですが、相場が上昇している最中に現れる上ヒゲ陽線は、買い(=上昇)の勢いの衰えを示唆します。また、上昇相場の最中に見られる上ヒゲ陰線も、上述のように、買い勢力の衰えを示唆します。
この日は、結果的に、ここが天井となりました。しかし、ローソク足は、今後の相場の動きを「示唆する」のみで、必ずその通りになるわけではありません。
しかし、もし、前日と前々日の日足の陽線を確認していなければ、上ヒゲ陽線が連続しているポイントで、「これから上がるのか?」と勘違いしてしまった可能性があります。
ですが、前日までの日足で、買いの勢いは息切れ状態にあることを確認していた私は、ここから下がることを想定して、あらかじめショート(=売り)戦略の準備していました。
その後、チャートに斜め右下方向のトレンドラインを引くことができました。このトレンドラインが抵抗となって2回反落したことを確認した後、私は、現在が下降トレンドであることを確信しました。
そして、BとCのポイントで実際にショート(=売り)をして、利益を積み重ねられました。
なお、このように、異なる時間軸のローソク足(ここでは、日足と5分足)を見る習慣を付けることはとても大切です。どのようなトレードスタイルを選ぶにせよ、様々な時間軸のローソク足を見て、相場を多角的に把握するようにしましょう。
ポイント!前後のローソク足と比較して得られる情報、時間軸の違うローソク足と比較して得られる情報は、トレードに欠かせません。ローソク足から得られた情報を基に、トレンドラインや
レジスタンスラインを引き、より正確な分析をするイメージを持つこと。
まとめ
ローソク足は、チャート分析の基礎となるツールです。こう言うと、「何だ。自分はもっと実践的な分析技術を身に付けたい」と思う方もいるかもしれません。
しかし、ローソク足に関する確かな知識があって、初めてチャート分析が活きてきます。そして、チャート分析のスキルが向上することは、FXを制することに近付くことを意味します。
だからこそ、ローソク足の一つ一つの知識をしっかりと身に付けて下さい。そして、知識を実践の中で活用できるように、常にイメージしましょう。そうした努力の積み重ねが、将来のFXでの成功に繋がります。