エンベロープとは、株式やFXのチャートで、移動平均線からどれくらい乖離しているかを表したテクニカル指標です。
移動平均線を、上下に一定の割合離しただけなので、移動平均線と同じ動きをするのが特徴です。
元々、エンベロープには「包む」「封筒」という意味があり、その名の通り、移動平均線を上下に包むようなインジケータです。
エンベロープは、私にとっては、FXで勝てるトレードルール作りの根幹となったテクニカル指標で、エンベロープのお陰で、スキャルピングで億を超える資産を築くことができました。
そこで、この記事では、
- エンベロープの基本
- エンベロープを使った私のスキャルピング
- スキャルピングする時の注意点
の3つに重点を置いて解説していきます。ぜひ、最後までお読み下さい。
執筆者
ぶせな
FXの専業トレーダー。認定テクニカルアナリスト。 本格的にFXを開始してから10年で1億6,500万円の利益を突破。著書に、『最強のFX 1分足スキャルピング』『最強のFX 15分足デイトレード』(共に、日本実業出版社)がある。ツイッターアカウントは、『@busena_fx』、ブログは『億トレーダーぶせなブログ』。
1.エンベロープの基本
まずは、エンベロープとはどんなテクニカル指標なのか、基本を押さえておきましょう。
1.1.エンベロープとは
冒頭でもお伝えしましたが、エンベロープは、価格が移動平均線からどの程度離れているかを測るインジケータです。チャート上では、下の画像のように、移動平均線を包み込むように上下に表示されます。

真ん中にローソク足が走っていますね。
そのローソク足に沿うように描かれている赤い線が、移動平均線です。そして、その移動平均線と同じ動きで上下に走っている2本の青い線が、エンベロープです。
このように、エンベロープは、真ん中の移動平均線をそのまま上下に一定の割合だけ離したものです。そのため、エンベロープは移動平均線と全く同じ動きをします。
《エンベロープとボリンジャーバンドの違い》移動平均線との乖離を測るその他のインジケータに、ボリンジャーバンドがあります。エンベロープは、移動平均線から一定の割合だけ離した線ですが、ボリンジャーバンドは一定ではなく、バンドが収縮することもあります。詳しくは、『
ボリンジャーバンドのFXでの実践的な使い方』を参考にして下さい。
1.2.私のエンベロープの設定数値
では、移動平均線と乖離させたところで、エンベロープをどう活用すればよいのでしょうか?
どれだけ乖離しているかの割合を「乖離率」と言いますが、これは自由に設定できます。どんなインジケータも同じですが、要は、使い方次第です。
私は、エンベロープを、1つではなく6つ設定します。先に、6つの設定数値(パラメータ)をお伝えしておきますね。
- 0.10%
- 0.15%
- 0.20%
- 0.25%
- 0.30%
- 0.40%
ちなみに、私が使うローソク足は1分足で、移動平均線はEMA(指数平滑移動平均線)を使っています。そして、期間は「20」に設定しています。
そして、これを設定すると、次のようなチャートになります。

移動平均線を挟んで、上下に6つのエンベロープが表示されました。そうすると、エンベロープとエンベロープの空間ができるので、5つのゾーンとして認識します。
5つのゾーンに分ける理由は後述しますが、移動平均線との乖離を5つのゾーンに分けることで、期待値の算出や資金管理を明確にすることができます。
整理すると、次のようになります。
《私のスキャルピングのチャート設定》
・ローソク足:1分足
・移動平均線:パラメータ期間は20で、Exponencial(EMA)を使う
・エンベロープ:パラメータ期間は20で、偏差は0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4
ちなみに、移動平均線の期間は、私はずっと20で使ってきたので20にしていますが、何でも良いと思います。20と25を比較した結果、25が全然ダメというわけではありません。ご自身のトレード経験や、その他の得意なツールとの組み合わせで、期間設定は考えていただくのが良いです。
私は、このエンベロープを活用したチャート設定で2009年からスキャルピングトレードを繰り返し、現在に至ります。詳しくは、次の記事で具体的に解説しているので、参考にして下さい。
それでは、トレードルールを見ていきましょう。
2.エンベロープを使ったスキャルピング
トレードで安定した利益をあげ続けるためには、勝てるトレードルール作りが大事です。そして、エンベロープは、私にとって、まさにトレードルールを作り上げるための核となったものです。
先ほどのチャート設定で、どのようなトレードを実践しているか、具体的に解説します。
2.1.ゾーンにタッチした時が売買のサイン
ローソク足には、「移動平均線から離れ過ぎたら、バネのように元に戻ろうとする力が働く」という習性があります。エンベロープを使うと、その「習性」が、具体的にどこで発生するかを高い確率で判断できるようになります。
例えば、次のチャートをご覧下さい。

このチャートの中の黄色い矢印の箇所は、全てトレードチャンスになります。
2.1.1.ローソク足がラインに接触してヒゲができた時にエントリー
上の①②は、ローソク足のヒゲが、下のゾーンに到達してから反発しているポイントです。また、③は、ローソク足のヒゲが、上のゾーンに到達してから反落しているポイントです。
①②では、ローソク足がラインに接触して(下)ヒゲができた時がエントリータイミングです。このタイミングで、買いエントリーして、数pipsの値動きで決済します。
一方、③では、ローソク足がラインに接触して(上)ヒゲができた時がエントリータイミングです。このタイミングで、売りエントリーします。
いずれにしても、「ヒゲを確認してからエントリーすること」が鉄則です。ローソク足がラインに到達した瞬間には、エントリーはしません。
例えば、①の箇所では、エンベロープにタッチしただけでは反発するか判断できず、さらに落ちていく可能性もありました。そのため、ヒゲをつけて、実際の反発を確認してからエントリーすることがポイントです。つまり、反落・反転の確認をヒゲでするということです。
2.1.2.ゾーンによってエントリー判断時のヒゲの長さを変える
ただし、エンベロープのどのゾーンでも、ヒゲが出たら即エントリーというわけではありません。ゾーンが外側になればなるほど相場は乱高下するので、上下のブレが大きくなります。つまり、①②ゾーンよりも、③④⑤ゾーンのほうが乱高下するということです。
そのため、外側のゾーンになるほど、ヒゲが出たとしてもダマシになり、エントリー直後に逆行してしまう確率も高くなります。そこで、ゾーンの外側寄りでエントリーする時は、ヒゲの長さを長めに取ってダマシを防ぐことがポイントになります。
厳密に数pipsと決めてはいませんが、目安としては、5つのゾーンのうち、ゾーン①②は1ティック、ゾーン③④⑤は2ティック反転した時としています。
ちなみに、ティックとは、1回の反転のことです。つまり、外側のゾーンでは、ヒゲができて少し反転し(1回目)、反転した方向へもう1回プライスを刻む(2回目)ことを確認した時にエントリーします。
このやり方だと、ヒゲが少々伸びた時のエントリーになるため、一番高いところや一番安いところではエントリーできません。しかし、元々これらの外側のゾーンは利幅も大きく取れるため、さほど気になりません。
それよりも、ダマシを防げるというメリットのほうが大きいと私は考えています。
2.2.ゾーンごとに勝率と値幅が異なる
なお、エンベロープのそれぞれのゾーンでは、勝率が異なります。
全てを正確に記録しているわけではないので、体感での数字になりますが、私が今まで何十万回とトレードを行ってきた経験則では、それぞれのゾーンでの勝率は次の表のようになります。
ゾーン |
勝率 |
利食い損切り幅 (目安) |
ゾーン① |
60% |
2pips |
ゾーン② |
65% |
3pips |
ゾーン③ |
70% |
4pips |
ゾーン④ |
75% |
5pips |
ゾーン⑤ |
80% |
6pips |
ゾーン①では、利食い損切り幅の目安は2pipsです。しかし、ゾーン②、③と離れるほど、その目安も広くなります。
このように、外側のゾーンにいくほど勝率が高くなり、利食い損切り幅も大きくなります。これは、先ほど述べたように、ローソク足には移動平均線から離れ過ぎたらバネのように元に戻ろうとする力が働く習性があり、離れれば離れるほど戻ろうとする力が強くなるからです。
つまり、移動平均線から離れると元に戻ろうとする力が強くなるので、反転する確率も上がるのです。また、ゾーン①では、移動平均線からの乖離はせいぜい10~20pips程度ですが、ゾーン⑤になると40~50pipsはあります。
最初は同じ長さのバネがあったとして、長く伸ばされた場合と短く伸ばされた場合では、長く伸びたバネのほうが戻る時の初速が早くなりますよね。それと同じで、より離れたゾーンにあるローソク足のほうが利幅も大きくなります。
2.3.勝率が高い時ほどロットを張って稼ぐ
私は、エンベロープを使ったスキャルピングで、勝率が高いチャンスの時は、大きな利益が得られるようにロット(通貨量)を大きく張り、利食い幅を広く取るようにします。
例えば、ゾーン①で10万通貨を基準として取引しているなら、ゾーン②で20万通貨…、ゾーン⑤では50万通貨という具合です。このように、勝率も利幅も大きいゾーンの外側へなるほどロットを増やすことで、利益を爆発的に増やすことができます。
しかし、ゾーン①に対するゾーン⑤でエントリーするロット(通貨量)の倍率は、最大5倍程度にしておくと良いです。なぜなら、この倍率が大き過ぎると、トレード全体のバランスに対するゾーン⑤の割合が大き過ぎてしまうからです。
つまり、ゾーン①や②のトレードがほとんど利益に貢献しなくなることを意味します。これでは、ゾーン④や⑤だけでトレードをするというルールになってしまいます。
逆に、倍率が小さ過ぎると、トレード全体に対するゾーン①の利益割合が大きくなります。これでは、せっかくゾーンが外側にいくほど勝率も利幅も取れるのに、メリハリがつきません。
ただし、倍率は必ず5倍ということはなく、私にとっては5倍が最適というだけです。ただし、相場によってロットは変えており、例えば、相場のボラティリティ(価格変動率)が小さくてゾーン⑤に到達する可能性が低い時期は、ゾーン①から③のロット数を増やして調整しています。
では、この章の最後に、私のエンベロープのゾーンごとの勝率と利食い損切り幅の目安、そして、エントリーする通貨量の目安を一覧しておきます。ぜひ参考にして下さい。
ゾーン |
勝率 |
利食い損切り幅 (目安) |
通貨量 (目安) |
ゾーン① |
60% |
2pips |
1万通貨 |
ゾーン② |
65% |
3pips |
2万通貨 |
ゾーン③ |
70% |
4pips |
3万通貨 |
ゾーン④ |
75% |
5pips |
4万通貨 |
ゾーン⑤ |
80% |
6pips |
5万通貨 |
この章の最後に、ポイントをまとめます。
ポイント!
エンベロープの5つのゾーンで勝率と値動きが異なるため、期待値が変わります。そこで、ゾーン毎に利食い損切り幅、ロットを変えることで、最大限の利益を叩き出せます。
3.スキャルピングする時の注意点
エンベロープを使った私のスキャルピングの手法をお伝えしましたが、次に、エンベロープを使う際の注意点を解説します。
3.1.スキャルピング禁止の4つのタイミング
私のスキャルピング手法には、トレード禁止の4つのタイミングがあります。
《私のスキャルピング禁止タイミング》
1. 経済指標発表時
2. 要人発言やイベント時
3. 高値安値などの節目をブレイクする時
4. 参加者が少なく流動性を保てない時
簡単に言うと、私がスキャルピングを控えるタイミングは、普通の値動きから逸脱しそうな時です。理由は、突発的に動いたり、プライスが飛んだりすると、エンベロープが機能しにくくなるからです。一つ一つ詳しく解説していきます。
3.1.1.経済指標発表時
指標発表直後の数分間は、価格が急激に動きます。このようなタイミングは、指標の内容次第で相場が動くので、トレーダーにとっては、上がるか下がるかは完全に予測不能になります。こうなると、どんなインジケータを使おうが、テクニカル分析は機能しにくくなります。
この経済指標は、発表の時間が大体決まっています。例えば、欧州時間は17時、ニューヨーク時間は21時30分などといった具合です。毎日トレードを始めたら、経済指標発表の時間を確認しておきましょう。
3.1.2.要人発言やイベント時
要人発言やイベント時も、先ほどの経済指標と同じ考え方です。
為替は、各国の要人が発言する度に急騰や急落する傾向があります。こうなると、テクニカル指標はほとんど機能しません。そのため、重要なイベントがある日は、1日中相場が乱高下することもあるので、初心者の方は、その日はトレードを控えることをおすすめします。
ただし、特定のインジケータを使い込んでトレードルールを確立しているならば、たとえ乱高下している相場でも、その値動きに合わせたトレードが可能になります。そうなれるように、トレードの基礎を固めましょう。
3.1.3.高値安値などの節目をブレイクする時
チャートの節目のブレイク時に様子見すべき理由は、どれぐらいのローソク足が伸びるか分からないからです。
例えば、プライスがエンベロープのゾーン①に入ったと思ったら、あっという間に⑤まで飛ぶこともあります。勢いが強ければ、すぐに20~30pipsは動いたり、1分間で50pips以上も動く時さえあります。
こうなると、どこで価格が反転するか分からず、運任せになるので、売買は控えるべきです。
なお、肝心のチャートの節目の見つけ方は、ラインの引き方がポイントになります。詳しくは、『サポートラインとレジスタンスラインで相場の反転を見抜くコツ』で解説しているので、参考にして下さい。
3.1.4.市場参加者が少なく流動性を保てない時
市場参加者が少ない時とは、例えば、機関投資家が夏休みやクリスマス休暇を取る時期です。
このような、機関投資家が参加していない時期は、ちょっと大きめの注文が入るだけで、価格が簡単に動いてしまいます。特に、8月のお盆の時期や12月後半は要注意です。
また、中長期的にレンジ相場になって膠着している時は、トレンドが発生するまで流動性が低いことがあります。
このような流動性が低くなるタイミングは、毎日トレードしていれば感じ取れるようになる上、FX会社のツールのマーケットニュースでも流れてくるので、よくチェックしておきましょう。
ポイント!
通常の値動きを逸脱する時は、エンベロープなどのインジケータは機能しにくくなります。全ての相場で有効なトレード手法はないので、シグナルを見送る判断も必要です。
3.2.値動きのあるメジャー通貨ペアを選ぶ
私のスキャルピング手法は、マイナーな通貨ペアではなく、売買ボリュームがあるメジャーな通貨ペアを選ぶことがポイントです。その際、最もメジャーなドル円だけでなく、ある程度メジャーな通貨ペアであれば、ドル円以外でもトレードの候補になります。
ちなみに、私は、次の6通貨ペアをスキャルピングの対象にしています。
- ドル円
- ユーロドル
- ポンドドル
- ユーロ円
- ポンド円
- 豪ドル円
ちなみに、上の3つをドルストレートで、下の3つをクロス円といいます。両者の違いが曖昧な場合は、『通貨ペアとは|FXで勝つための正しい選び方』で解説しているので、必ず理解しておくようにして下さい。
なぜ私が複数の通貨ペアを対象にしているのかというと、それぞれの通貨のボラティリティが時期によって異なるからです。
もし、ドル円だけしかトレード対象にしていないと、ボラティリティが高くて値動きが大きい時はシグナルが出やすくていいのですが、ボラティリティが低いとシグナルが出にくくなるので、稼げるチャンスは圧倒的に少なくなります。
このような、ドル円の注目度が下がってボラティリティが低くなる時期は、必ずやってきます。
しかも、ボラティリティが低下する時期は、場合によっては、数ヶ月から1年も続く時もあります。もし、専業トレーダーの場合は、仕事が無い状態と同じことなので、焦りますよね…。
そうならないように、複数の通貨ペアでスキャルピングする意識を持っておくと、ボラティリティが高い通貨ペアを対象にトレードすることができます。ボラティリティが高いことは、値動きが大きくてトレードチャンスも多いことを意味します。
ただし、マイナーな通貨ペアはスキャルピングに不向きです。
なぜなら、マイナー通貨は、スプレッドが広過ぎて、トレード1回あたりのコストが高くなり、何回も売買を繰り返すスキャルピングでは利益が残りにくいからです。
通貨ペアに関しては、この項でお伝えしたことを守れば、トレードチャンスが全く来ないという事態はなくなるはずです。
ポイント!
スキャルピングは、マイナーな通貨ペアは向いていません。メジャーな通貨ペアをいくつか選択しましょう。
まとめ
この記事では、エンベロープの基本と、エンベロープと活用した私のスキャルピング手法を解説しました。私の手法は非常にシンプルで、真剣に学んで取り組んでいただければ、誰にでも実践可能です。
しかし、実際にトレードしてみると、知識だけでは知りえなかった気付きが出てきます。そうした1つ1つの経験が、これから稼げるようになるための重要な教訓になります。